タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

2023年に見た作品を振り返る(アニメ旅の完走から傑作・凡作・駄作まで)

去年は総括みたいなことが出来なかったので、今年は総括として2023年に視聴したアニメ・ドラマ・映画の振り返りをしようと思う。

 

アニメ旅の完走

まず最初に今年の6月に企画した「夏のアニメ旅」を完走したことを宣言しておく。

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まさか「ゾン100」が12月まで延期になるとは思っていなかったから当初の予定から大きく外れた"長旅"になったけど、1クールの間に三本の連続アニメを視聴してレビューを書くというこれまでやったことのない試みをしたことは自分にとっても、そして私のブログを読んでくださった方々にも良い刺激になったのではないかと思う。

 

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「アンファル」と「ダークギャザリング」の感想・解説は以上にまとめているが、「ゾン100」はそんなに大したことは書いてないからカテゴリーとしてまとめるのはやめた。とはいえ、「ゾン100」は以上の2作と比べると、専門知識に基づく感想・解説ではなく、私自身の経験や価値観が反映された感想になっていると思うので、私タリホーがどんな思想の持ち主か気になるという物好きな方は読んでみても良いかもしれない。

 

で、この3作を同時期に視聴して思ったけど、「アンファル」は19世紀末のヨーロッパという過去を舞台に描き、「ダークギャザリング」は幽霊という過去の存在を通した現在が描かれた作品だ。そして「ゾン100」は、これからの私たち日本人がどのようにして幸福を求めていくのかという未来を考えさせる一作だった。何の偶然かこの3作を通じて私は過去・現在・未来という時間の流れを感じながらそれぞれの作品を堪能し、この世界はどのような過程を経て今の形に落ち着いたのかが何となくわかったような気がする。そういう点でもこの「アニメ旅」は実に有意義な企画だった。

 

「犬神家」関連の作品が充実していた

有意義と言えばもう一つ、今年は面白いことに「犬神家の一族」関連の作品が充実していたということにも触れておきたい。

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まずは4月にNHKで放送された吉岡版「犬神家の一族」。前後編の3時間という尺で描かれた本作は特に最後の結末の改変で賛否両論となった。Twitter での私のフォロワーさんの評価を見ている感じだとほとんどは「賛」の意見だったと思うし私も本作を評価している。前作の「八つ墓村」が散漫な印象だったから、今回の結末の改変は高く評価したいし、「あんな激戦地を生き抜いて出征前と性格が変わらない原作の彼の方がおかしいのでは…?」と考えさせられる部分もあった。(その分ミステリとしてモヤモヤが生じた部分もあったのは否めないけどね)

 

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そして9月に公開された映画「ミステリと言う勿れ」では、遺産相続絡みの事件を描いた「犬神家」を彷彿とさせる作品だった。この映画では「犬神家」でも描かれた親世代が私たち子世代に振りかけてくる呪いを描いており、それを次の世代へと受け継がないために久能や狩集家の人々が奮闘する作品だ。原作に忠実な映画化としてもよく出来たクオリティだったと思う。原作は絵のタッチがマイルドなので鬼畜の所業に感じなかった部分も、映画だと生身の人物によって演じられていることもあって、予想以上にとある人物のえげつなさが表現されていて、そこも映画ならではの良さがあったね。ED曲の「硝子窓」も物語の余韻を後押ししていてグッドだった。

(連ドラのED曲「カメレオン」はお涙頂戴的演出のせいでイマイチ好きになれなかった)

 

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それから今現在も口コミで興行収入を更新し続けているまごうことなき大ヒット作「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」も、当主の死を発端とした連続殺人という点では「犬神家」につながる作品だ。上の感想記事ではインテリぶった感想になっちゃったけど、本当は「すっげぇ面白かったぞコレ!!」という語彙力皆無の興奮を伝えたかったんだよね。でも結局それが出来なかったので代わりにこちらのレビューを紹介するわ。(私も黄泉平坂まで行って水木大先生に感謝したいよ)

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先日注文していた映画のパンフレットが届いたので読んでみたけど、隠れミッキーならぬ「隠れ妖怪」がいると知って俄然2回目も観に行きたくなったよ。鬼太郎なんてほとんど見たことがないという映画レビュワーも次々と絶賛しているし、これほど鬼太郎を推していて鼻が高いと思ったことはないくらいに嬉しさがこみ上げている。それだけ制作陣がこだわりを持って作ったことが評価されているという証拠でもあるのだが、こだわりと言えば、YouTube で公開されている水木が夜行列車に乗っている場面。この場面だけでもこだわりを感じられるよね。

 

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列車内の場面一つとっても、タバコの煙が充満した車内、床に散らばったゴミ、咳き込む少女とそれを介抱する母親、二人を見つめる異様な視線と、様々な情報が押し寄せて来るし、水木がタバコをトントンとする行為にも上で紹介したホッカイロレン氏によるとちゃんと意味があるみたいで、ホントに感心させられるよね。動画の15秒辺りで水木の後ろに座っている客があくびをするけどさ、こんなのアニメーションにする手間を考えたら別にカットしても良いのにそこもアニメとして乗客の動きを見せているのだから、世界観の構築に手抜きが一切見られない。そりゃヒットするし何度も観に行きたくなるよね。

 

今年の凡作・駄作について

さて、傑作・名作だけでなく凡作や駄作についても言及しておかなければならない。

 

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ここ最近大ヒット作が出ていないどころか、何かと批判され炎上しているディズニー映画。「ホーンテッドマンション」も例によって初週こそ動員数1位を記録したもののそれ以降は伸び悩んで世間の評価は凡作止まりとなっている。ただ個人的には面白い映画だったと思うし、生と死という旧作以上に普遍的なテーマを扱った物語としては時代や流行に囚われない、いつ見ても楽しめる作品になっていたと思う。鬼太郎映画がマニア向けに作られたにもかかわらずヒットしたことを思うと、この「ホーンテッドマンション」は大衆向け作品として作られたけど中身はマニア向けの作品だと思うし、アトラクションを知っていればいるほど面白い映画だと評価している。物語の舞台となるニューオーリンズの知識もないと劇中で描かれたことの意味もピンと来ないだろうから、そりゃ凡作にしか映らないのも無理はない。

 

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ポアロの映画はミステリ映画としては間違いなく駄作だけど、ストーリーはクリスティらしさがあって駄作になりきらずに済んだという感じだろうか。前2作が映像化の定番である「オリエント急行」や「ナイル」だったのに対し、『ハロウィーン・パーティ』というマイナー作品をチョイスした辺り、ブラナーにとっては意欲作であり挑戦作だったのかもしれないが、結果的にブラナーのクリスティ作品を監督する上での長所と短所が明確になった。そういう点では興味深い作品だったかもしれない。

 

さて、ここからはブログで言及していない凡作・駄作の話に移るが、実は先ほど紹介した「アニメ旅」の3本以外にも「鴨乃橋ロンの禁断推理」というミステリ漫画原作のアニメを今期は視聴していた。

鴨乃橋ロンの禁断推理 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

一応原作を途中まで読んでからアニメを見たのだけど、まぁ~ミステリとしても凡庸だしキャラクターも魅力に欠けるしで、結局アニメは6話で視聴を打ち切っちゃったんだよね。ミステリ作品にあまり触れたことがない人にとっては入門としておススメ出来る作品だとは思うけど、私みたいなすれっからしのミステリマニアには全然響くものがない。天才の描き方にしてもとりあえず変人・偏食にしておけば良いという安直さが透けて見えるようなキャラ設定でそこも鼻につくというか何というか。ワトソン役の刑事のツッコミも無駄に長いしキレが悪いしな…。

まぁ、ミステリとしては決して出来が悪い作品ではないので、あくまでも私のセンスに合わなかったという話だ。(そもそも私ホームズよりもポアロ派だし、ホームズをリスペクトした本作が合わないのもある意味当然か)

 

あ、センスに関して一件言っておきたいことがあるけど、本作は「探偵学園Q」みたいな探偵養成学校があって、「密室」とか「変装術」といった各分野に精通するプロの教官が在籍している。その中で「時刻表学」担当の教官がいるのだけどさ、いや、そこは「アリバイ」でしょうよ!?

時刻表トリックなんて分単位で列車やバスを運行出来る日本だから通用するトリックだぞ!世界レベルの探偵を養成する学校でそんなニッチな学問教えてどーするんだ!と思ったし、これだけでも「あ~私この作者とセンス合わない…」って感じた。

 

そんな退屈な「鴨乃橋ロン」を凌駕し、今年私が視聴した映像作品で最も酷かった駄作として認定したのが、7月にフジテレビで放送されたドラマ「真夏のシンデレラ」だ。

真夏のシンデレラ

当初は主演の森さんや間宮さんをはじめとするキャスト陣の顔ぶれを見て「これは良い群像劇になるんじゃないか」と期待していたが、まぁ~恋愛ドラマに無知な私が見ても脚本もキャラ設定も全てが無茶苦茶で、登場人物の誰一人として感情移入も共感も出来ないという正真正銘の駄作だ!

 

湘南で飲食店の経営とサップのインストラクターをする女性・蒼井夏海、東京の大手建築会社のエリートサラリーマン・水島健人、住む世界の違うこの二人が恋に落ちるという王道のラブストーリーなのだが、この「住む世界が違う」ということを強調したいがために健人の同級生である佐々木修がやたらに夏海とその友人を見下す発言をするし、夏海の幼馴染みである大工の牧野匠が健人につっかかってくる。テーマありきで物語や登場人物を動かしているのだから、匠と修なんか5話までの段階だとマジで洒落にならないレベルのクズ野郎だし、修に関しては人格障害を疑うレベルの暴言のオンパレードだったからね。

まぁ百歩譲ってキャラ設定はこれで良いとしてもよ?せめて修が暴言メーカーになった原因や背景となる描写が入れられていたら、まだ作品として成立したと思うんだよね。教育熱心な上にエリート至上主義な親に育てられたせいで人格が歪んだという、この情報だけでも入っていたら修という人物に厚みが生まれたと思うのだ。でもドラマはそんな背景を描かずに、滝川愛梨の「修くんは根は優しい」という一言で片づけている。だから全ての登場人物が記号的であり、奥行きがない。メインである夏海と健人の恋愛模様にしても、お互い良い人というだけで相手に対する期待だったり自分のエゴがあまり出て来ないから、そこも実につまらない。

要は、メインの二人を単なる良い人として描いた結果、物語を大きく進展させられなくなったため、周りをとんでもない人格破綻者にすることで物語を動かしているのがこの「真夏のシンデレラ」の暴力的とも言えるストーリー運びの正体なのだ。

 

だから「真夏のシンデレラ」は実の所群像劇ではない。夏海と健人の二人の恋を進展させるために、周囲に人の心が欠如したクズ野郎を配置したドラマと称した方が正確だと私は思う。

5話で夏海の弟が同級生の女子生徒を妊娠させてしまったエピソードとか、7話で家に戻って来た夏海の母親が借金返済のため店の金を着服するエピソードとかマジでいらなかったし、妊娠騒動に関しては5話以降一切触れられないんだからね?言っておくけど未成年妊娠なんてちょっとした修羅場を盛り上げるために挿入するような類のエピソードじゃないし、何ならそのテーマだけで1本連ドラ作れるんだぞ!日テレで放送された14才の母を知らないのかここのスタッフたちは!

こういうトラブルとか修羅場って登場人物の本音だったり普段は見せない一面が見えるから、それを引き出す目的で挿入されるのだけど、じゃあ挿入された所で夏海と健人の意外な一面が露わになったかと言うと全然そんなことはない!結局引き出されたことと言えば、夏海が献身的なまでに家族を大切にしていることや、健人が優しいということぐらいで、そんなのとっくに視聴者も知っていることだからクソつまらないし「結局あの騒動は何だったのだ?」という感想しか出て来ない。「良い人」という情報しか引き出されていないのだから、何も心が動かされないんだよね。

 

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参考までに修を演じた萩原さんが出演していたBLドラマ「美しい彼」を比較として紹介するが、この「美しい彼」では萩原さん演じる平良一成の特殊性が引き出されているのが素晴らしいポイントの一つだ。一見すると地味で凡庸な陰キャの平良が清居奏という絶対的な王と出会ったことで、平良が内に秘めていた情熱・独特な思想や価値観が表に引きずり出されていく。そして清居を汚し貶める者に対しては狂気とも言える怒りを解き放ち、人殺しさえも厭わないというヤバさも抱えている。普段は社会や人に怯えながら生きている平良が清居のこととなると恐れ知らずの無法者になる。その異常なまでの純愛を描いているからこそ名作BLとして君臨したのだ。「真夏のシンデレラ」にはこのような狂おしいまでの執念とも言えるような愛が全くない。だから心に響かないと私は言いたいのだ。

 

「真夏のシンデレラ」はハッキリ言おう、もはやドラマとして成立していない。夏に海辺で出会った男女の恋愛模様を断片的につなぎ合わせたプロモーションビデオを毎週見せられたようなものだ。実際に湘南の砂浜でドラマチックな恋愛をした人には何かしら響く要素はあったのかもしれないが、海とは無縁な内陸出身の私には何にも面白くなかった。まぁ前半は修や匠のクズっぷりにツッコみまくっていたから、そういう粗探し的な面白さはあったと言えるのかもしれないけど、後半は特別大きな盛り上がりもなく終わったから本当にこのドラマの制作陣は「夏らしい恋愛ドラマ」が作りたかっただけなのだろう。せめてエンタメとして面白みがあれば良かったのだがそれすらもなかった。

 

恐らくだが、これは単に脚本家がどうしようもないまでの下手くそな新人作家だからこんな出来栄えになったとは思っていない。年配のプロデューサーが往年の、それも明石家さんまさんや大竹しのぶさんが出演していたような「男女7人夏物語」的なものを作ろうと言い出して、それで「この場面を入れてくれ」とか「こういう展開にしたらエモくない?」みたいな要望を全部受け入れた結果こんな酷い出来になったのではないかと邪推してしまう。

何か間宮さんもクランクアップの時のコメントで「今回のドラマの撮影で色々と口出しした」って言ってたから、見ている私たちですらこれだけツッコミが生じたのに演じている当人はそりゃ言いたくなることがあって当然だよなと同情せずにはいられなかったよ。本当に間宮さんを含めた役者の皆さんはこんな駄作を最後までやり遂げて偉いと思うよ。悲しいけどこれも人気俳優になったら避けては通れないことだからね。

 

さいごに(来年の予定)

ということで2023年の視聴作品の振り返りは以上となる。今回言及しなかったけど「ノッキンオン・ロックドドア」とか「パリピ孔明」も最高のドラマ化だったと当ブログの別記事で評価しているし、全体的に見たら今年は傑作・良作に恵まれた年だったと思う。特に下半期の充実ぶりたるや、2017年の「貴族探偵」のドラマ化以来の盛り上がりだったと個人的には思うよ。心残りがあるとすれば間宮さんが声優として出演している映画「BLUE GIANT」と、高橋一生さん主演の岸辺露伴の映画を見なかったことかな。どちらもなかなか評判が良かったらしいからちょっと後悔している。

 

そんな訳で来年も引き続き当ブログは作品レビューをメインにしていくが、一応予定をここで言っておくと、来年の1月期は特に気になるアニメもドラマもないので読書感想をメインにしていこうかと思う。幸か不幸か積読はわんさかあるし、横溝正史金田一シリーズも全然読めてないから、それを消化していきたい。

それと録画していてまだ見ていないBBC制作のドラマ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」は原作を読んでからレビューしたいと思う。あとこれはだいぶ先の話になるが来年の10月期に放送されるアニメで面白そうなものを発見したので、これもいずれは当ブログで感想をレビューしたいなと思う。

 

それでは、皆さま良いお年を!