タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

うさぎたちは何処へ消えた?「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」6話

悪いうさぎ (文春文庫)

早いもので来週事件のクライマックスと共にドラマは最終回を迎える。原作既読勢の一人として今回のドラマの掘り下げ方は非常に好感の持てるものがあったので、終わってしまうのが惜しまれるな。

 

(以下、ドラマと原作のネタバレあり)

 

「悪いうさぎ Y」注目ポイント

今回は原作(文春文庫版)の188頁~307頁(前半戦、第8節から中盤戦、第9節まで)までの内容。基本的に原作では葉村一人で新聞社に出向いたり、同業者の調査員に尋ねて情報収集をしているが、ドラマではMURDER BEAR BOOKSHOPの常連客仲間が情報収集をしてくれるし、本筋と関係のないストーカーとか結婚詐欺師を追いかける必要もないので、ドラマの葉村は(今のところ)心身共にだいぶ楽な方である

 

tariho10281.hatenablog.com

では、先週書いた記事の注目ポイントを振り返りながら、今回のポイントをおさえていこう。

 

・平家の悲劇

ミチルが親の前でカツラを外してショートカットの姿で、そして男っぽい服装をしていたのには訳があった。ミチルが生まれる前、平家には満(ミツル)という男の子がいたが、営利誘拐に巻き込まれて殺されていたのだ。その後に生まれたのがミチルだが、母親の貴美子は満の死を受け入れられず、娘のミチルを「息子の満」として扱うようになった。これがミチルと両親の間の確執となり、親元から離れたがるミチルの心理的要因となっている。

ドラマではあまり深く描かれなかったが、原作で葉村は父親の義光を「重荷を背負ってよろよろと坂を登っている巡礼」だと評する場面がある。ミチルに満の役目を負わせていることに対して負い目がありながらも、貴美子に現実を教える酷な真似もしたくないという葛藤を抱えた不憫な父親なのだ。

 

平家の悲劇は親と子、もっと広く言えば「家」「個人」の間に生まれる確執の一つを描いたに過ぎないが、ドラマではそんな「家」から断絶した女性たちを主人公の葉村や常連客のアケミも合わせて描いているのが地味に凄い

断絶の事情は人それぞれだが、拠り所を失くして「保護する者(≒神待ち)」を求める者や、それを良しとしない感情を持つ者。そして保護される側から保護する側にまわった者の思い(弱者を根本的に救済出来ない悩み)、善なる保護者(葉村やアケミ、富山店長)悪なる保護者…。救済者と被救済者の両面を深掘りした点は原作以上に評価すべきである。

 

・水地佳奈

葉村が行方を追っていたカナなる女性は、実は滝沢家の元家政婦・明石佳代(原作は香代)の娘の水地佳奈だと判明。美和と佳奈は主人の娘と使用人の娘の関係だったことになる。美和は佳奈の母親を(佳代に事情があるとはいえ)取ってしまったことに対する贖罪として経済的援助を続けていたが、佳奈は自分より年下の高校生から援助を受けることを良しと思わず、母親の葬式代200万は自分で稼いだ金ですませたいと考えていたようだ。これが前回美和のコートから見つかったハガキに書かれていた「三日で全額払えるくらい」ワリの良いバイトにつながる。

 

原作を読んだ時、美和の印象は「父親に似合わず正義感の強い子だな」というものだったが、前回と今回の美和の姿を見ていると、彼女はノブレス・オブリージュ、つまり富裕層としての務めを果たそうとしていたのではないだろうか?父親の権力と金を使って、友人の綾とヤクを回していた小島とのつながりを断ったり、佳奈の窮状に報いようとしていたが、そのために美和は首を突っ込み過ぎて失踪したということになる。

佳奈の荷物を引き取りにきた“叔父さん”と称した男と、佳奈を追ってアパートに来ていた美和の失踪。嫌な予感しかしないね。

 

・68会

前回、滝沢喜代志・平義光・野中則夫・山辺秀太郎には共通項があると言及したが、今回MURDER BEAR BOOKSHOPの常連・柿崎がもたらした情報でそれが明らかとなった。滝沢たちは同じ年に生まれたエリート仲間、通称「68会」(原作は二八会)のメンバーだったのだ。

 

68会といっても、仕事的な集まりではなく趣味としての集まりだったようで、ミチルが言うには狩猟をよくしていたのだとか。ただ、義光は何故かこの話になると激昂し態度を硬化させた。何故だろうかね…?(ほとんどの人は察しがつくと思うが)

そして、今回の終盤。ミチルによって山辺秀太郎が岡田警視の実の父親だということが明かされた。前回はまさかそこまで深いつながりがあったとは思わなかっただけに少々面食らった所はあるが、こうなってくると次回が楽しみだ。

というのも、この事実によって岡田警視が滝沢美和と水地佳奈の両方の面を併せ持つ人物だということになり、なおかつ事件とかなり密接に関わる人物でもあるからだ。

前回「エリートだと思われているけどそうでもない。生まれ持った知性・品格がそうさせた」的なことを仄めかしていたのは、エリートの親に生まれたものの、離婚して母方の姓を名乗っている伏線だったのだね。

さーて、そうなってくると“あの真相”に対して岡田警視が最後にどういった方向に転ぶのかが気になってくる。今まで葉村の味方側として物語に介入してきたオリジナルキャラクターだが、間宮さんが過去に演じてきた役柄が役柄なだけに大きく裏切ってくる展開も完全否定できないから、ファンとしては非常に楽しみですね、うふふっ。

 

・小島のリスト

あ、蛇足ながら小島が持っていたリストについて触れておくと、あれは小島の顧客リストではなく、ミチルが綾にあげたアドレス帳の一部。小島は綾から金を巻き上げた時にこのリストを取っただけにすぎない。ということで、事件とは無関係。

 

書籍紹介

今回劇中に登場した3冊のうち2冊は未読。ミステリマニアとはいえ、やはり海外は未履修の作品が多くて勉強不足だと思い知らされる。

 

アガサ・クリスティー『復讐の女神』

復讐の女神 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アケミがミス・マープルは凄い」と思った作品。正直言うと私はこれよりも『ポケットにライ麦を』のマープルの方が凄いと思ったのだが、感じ方は人それぞれなので置いておこう。

本作はカリブ海の秘密』でマープルと共に殺人犯を追った大富豪・ラフィール老人の死から始まる。マープルは、生前ラフィール翁が遺した依頼を解決するために、彼が用意した「英国庭園バスツアー」に参加する。ラフィールが依頼した「過去の殺人の真相解明」に乗り出したとはいえ、そもそも誰が殺されて誰が捕まったのか事態が不明瞭になっているのが本作最大の特徴であり、それがサスペンスを盛り上げている。

ちなみに、タイトルの「復讐の女神」とはネメシスを指す。

ja.wikipedia.org

ネメシスの行う復讐は神罰であり、義憤からくるものだ。ここに来て劇中でこの作品を入れてきたということは、次回の葉村が「復讐の女神」として真相を暴き立てることを予感させる。

 

〇マーサ・グライムズ『「悶える者を救え」亭の復讐』

「悶える者を救え」亭の復讐 (文春文庫)

原作未読のため簡潔に紹介。「リチャード・ジュリー警視」シリーズの一作で、舞台はドイルが著した『バスカヴィル家の犬』と同じダートムア。そこで起こった子供の連続惨殺事件を追ってジュリー警視とサム・スペード気取りの刑事が火花を散らす物語らしい。

 

〇コリン・デクスター『キドリントンから消えた娘』

キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

こちらも原作未読のため簡潔に紹介。「モース警部」シリーズの長編二作目。行方不明になった女子高生から両親に手紙が届くが、モース警部はこの手紙は偽装されたものであり、女子高生は死んでいると直感して捜査を進める物語。女子高生の失踪を扱った所は今回の原作『悪いうさぎ』と共通している。

『毒薬の輪舞』は泡坂版『盲目の理髪師』である

久しぶりの読書感想記事。紹介するのはこちら。

 

毒薬の輪舞 (河出文庫)

遠藤憲一さんがカバー表紙になっているけど、別にドラマ化する訳ではない。でも本作の主人公である海方刑事をやるとしたら、まぁエンケンさんが妥当だとは思う。

ただ、本作は精神科病棟が舞台なので、今の時代はどう転んでもドラマ化することはないだろう。あったとしてもネット配信止まりで地上波TV放送は無理。なので読みましょう。これはトリックが凄いとか以前に話が面白い。登場人物の会話を読むだけでも面白いのだ。

 

本作のあらすじは以下の通り。

鳴らないはずの鐘楼の音が聞こえたとき、事件がおきたーー。

夢遊病者、拒食症、自称億万長者の妄想患者、狂信者、不潔恐怖症、休日恐怖症のサラリーマン、誰も姿を見たことがないという特別室の入院患者など、怪しすぎる人物が集う精神科病院で続発する毒物混入事件。そして遂に犠牲者が……!

犯人は? 使用された毒物は?

病棟に潜入した海方と小湊は事件を解決できるか?

海方シリーズ第2弾!

(裏表紙を引用)

 海方刑事は一応シリーズもので、本作と前作『死者の輪舞』がある。別に前作を読まなくても本作は十分面白く読めるようになっているのでそこは御安心を。

 

実は上記に引用したあらすじの中で「続発する毒物混入事件」とあるが、これはちょっと誇張した書き方で本の内容に即していない。正しく言うのなら「続発する異物混入事件」。毒物が混入されたのは実質2回ほどで、その前に3回ほど水に強い苦味のある薬品が混入する事件が起こっているのだ。更には何も細工された形跡のない缶に、表示内容と別の飲料が入っていた事件もあるから、それもカウントすると都合6件の異物混入事件が本作で起こる。

メインは異物混入事件だが、他にも病院内では目の光る幽霊が目撃されたり、過去に未知の毒物開発が行なわれていた噂があったりと、事件に関係あるのかないのかわからない出来事がいくつもあるのだ。

 

この何が起こっているのかわからないほど大量の情報が読者に提供される展開に既視感を覚えたのだが、その既視感の正体は以前読んだジョン・ディクスン・カーの『盲目の理髪師』だった。

盲目の理髪師【新訳版】 (創元推理文庫)

『盲目の理髪師』も豪華客船という限定的な舞台上で政治スキャンダルを巻き起こすフィルムが盗難に遭ったり、エメラルドの象が盗まれたり、瀕死の女性が消失したり、酩酊者のドタバタ劇があったりと、際限なく色んな出来事が起こるんだよな。

だから、『毒薬の輪舞』は泡坂版『盲目の理髪師』だ、と言って良いのかもしれないが、『盲目の理髪師』ほどとっ散らかっている訳ではない。異物混入というメインの事件がある分、こちらの方がまだ頭の中で整理がつくというものだ。

また、『毒薬の輪舞』では各章に必ず一つ以上、薬品や毒物、化学物質に関するウンチクが入っており、それも物語に統一感を与えていると言える。このウンチクだけでも読み物として十分に面白いのでオススメである。

 

謎解きの部分は海方刑事が関係者を一同に集めて行う古典的なスタイル。そこで明かされる事実は事件と直接関係のないものまで含まれ、これまで描かれていたアレコレが全て伏線となって押し寄せて来る。特に事件関係者の“とある関係”がひっくり返る真相は圧巻モノだ。

 

 

最後に、ネタバレ感想を伏せ字で書いておく。読む場合はドラッグ反転してね(薬品を扱う作品だけにドラッグ、なんてね ♪)。

(ここからネタバレ感想)メインの毒殺事件は、言ってみれば「偶然の収束」によって起こったものであり、それ自体は特別凄い訳ではないが、事件の根底にある「入院患者全員が佯狂で、医者や看護師がむしろ病を抱えていた」という真相は驚き。正常が異常で異常が正常というどんでん返しのために、意味ありげな数式や規則性のあるホラ、小湊が目撃したものに関する矛盾点などが各所に配置されているのが最大の評価ポイントだ。

全員の嘘によって一人の子供が死んでしまったのだから、悲劇であることに変わりはないが、そんな感じがしないのは、やはり海方刑事のキャラクターと小気味よい台詞回しのおかげだと思う。っていうか、最初の缶の小細工はアンタの仕業だったんかい!(ネタバレ感想ここまで)

ゲゲゲの鬼太郎(6期)第94話「ぶらり不死見温泉バスの旅」視聴

私の人生初ハニワは、「どうぶつの森+」で自宅の前でクネクネ動いていたあのハニワ。

 

寝肥り

ja.wikipedia.org

寝肥りは妖怪というよりも、奇病の一種だとされている。普段は美人だが、寝ると身体が部屋いっぱいに膨れ上がり、大いびきをかくため、大抵の男は愛想を尽かして逃げ出すと言われている。そこから派生して、女性が矢鱈に寝ることを戒めた妖怪だとされているが、今となっては「男尊女卑」的な価値観だよな。別に男でも美醜を問わず寝るとみっともない人とかいくらでもいるしね。

アニメでは5期で登場。今期は生まれながらの妖怪なのに対して、5期寝太りの設定は伝承通り奇病として描かれている。

 

埴輪武者

鬼太郎国盗り物語(1) (角川文庫)

今回鬼太郎を襲った埴輪武者の元ネタは『鬼太郎国盗り物語の「決戦!箱根城!!(前/後)」だと思われる。原作の埴輪武者は、かつて鬼太郎の先祖にあたる幽霊族によって封印された凶王が操る軍団として登場。ただ、今回のアニメでは富士山の地底洞窟の守護者であり、その地底エネルギーで動くという設定になっている。鬼太郎に襲い掛かったのは、朱の盆が御神体を破壊したことによって、侵入者を見境なく殺す者に成り下がったからだが、当然ぬらりひょんの目的は鬼太郎の退治ではない。その目的については後程触れる。

ちなみに、埴輪武者ではないが3期の大百足の回で今期の埴輪武者と同じデザインの鎧武者を大百足が操り、キジムナーを苦しめていた。

 

最後の骨休め

画像

鬼太郎6期も今回を含めると残り4話。クライマックスに向けて西洋妖怪とかぬらりひょんとか収拾つくんかいなとヒヤヒヤしていたが、今回は最終戦前の鬼太郎メンバー最後の骨休みになったと同時に、最終戦の始まりとも言える前哨戦(埴輪武者との戦い)が描かれた起承転結の「転」にあたる回だったと言えるだろう。

 

今でこそ旅行は娯楽として楽しまれているが、昔の旅は文字通り命がけで、移動手段は徒歩、日暮れ前に宿場に辿り着かないといけないし、通行手形がないと関所を通れない。こんな具合に危険や困難を伴った、非日常の体験が旅にはある。だから、鬼太郎メンバーとまなが物語終盤で旅行をしたということ自体、彼らがこれから非日常の世界=最終戦に巻き込まれていくことを暗示しており、脚本を担当した金月龍之介氏もそういう意図で前哨戦にあたるこの回を旅行回にしたのではないかと考えている。

 

そういや西洋妖怪編の時と同様、今回もねずみ男は旅行に参加しなかった(ただし、今回は闇金に追われてたという理由)が、ねずみ男を旅行に参加させないのは彼を非日常の外、つまりこれから起きる終戦の渦中の外に置くことが脚本としての目的であり、渦の中で総倒れしてしまう鬼太郎メンバーを助ける役目を今度も果たすのではないかと思っている。これまでも西洋妖怪編でバックベアードの催眠にかかった鬼太郎の仲間を救ったり、名無しによって絶望状態の鬼太郎に喝を入れたりしてきたのだから、今度の最終戦でも鬼太郎メンバーの窮地を救ってくれると期待している。(っていうか、基本的に原作でもねずみ男は戦局を左右するキーパーソンだからね)

 

『鬼太郎国盗り物語』との関連性

今回の脚本はアニメオリジナル。しかし、埴輪武者が出て来たことや、劇中で描かれた諸々の事象は『鬼太郎国盗り物語』の「決戦!箱根城!!」とリンクしている部分がある。

『鬼太郎国盗り物語』は、地下帝国ムーの地上侵略を鬼太郎たちが阻止する物語で、「決戦!箱根城!!」ではムーの手下が凶王の封印を解き、凶王と同盟を組む。この事態を見て鬼太郎は、かつて敵だったぬらりひょんと同盟を組み、凶王が操る埴輪武者軍団と戦う…というのが大まかな流れ。

原作では同盟の後に埴輪武者が動き出す展開だが、今回のアニメはその逆で、埴輪武者が動き出した後にぬらりひょんと西洋妖怪の間で同盟が結ばれることになった。

また、原作では凶王を倒し地下帝国ムーとの繋がりを絶つ道具として、幽霊族が作り出した「火炎土器の白い炎」が重要アイテムになるのだが、この火炎土器のデザインが今回地底エネルギーを吸収するアイテムとして出て来た土器と全く同じなのだ!

画像画像

原作ではこの白い炎が凶王を焼き払い、地下帝国ムーと凶王の同盟を絶つ道具になったが、今回のアニメではバックベアード復活のエネルギーとなり、ぬらりひょんと西洋妖怪が同盟を結ぶための切っ掛けとなる道具として利用された。これも上述した展開と真逆の扱いになっているのが興味深い。

 

二つの旅

画像

それにしても、今期の朱の盆の戦闘能力の高さはこれまでと全然違って驚いたわ。ダイダラボッチの時でも凄いと思ったけど、西洋妖怪編の始まりで鬼太郎たちをボッコボコにしていたヴォルフガングを押さえつけているのだから只者じゃねーよ…。

鬼太郎たちは西洋妖怪編の終盤で何とか互角にやりあえていたけど、初対面時は手も足も出なかった。それに対して朱の盆は初対面で互角に亘り合っているのだから、もうこれで朱の盆は強キャラ確定だよ、うん。

 

4期の時はぬらりひょんが主でバックベアードが従の関係だったが、今期もへりくだった態度をとっているとはいえ、妖怪復権の手駒として西洋妖怪を利用する気だと思っている。参謀格のカミーラがいるとはいえ、やはり西洋妖怪の強みは圧倒的パワーな訳だから、ハナから彼らの頭脳を求めているとは思えないし、そうでなくては最終章のボスとして相応しくないからね。

 

あ、そういや劇中で「何のために東南アジアまで出向いたのよ」とカミーラが言っていたが、吸血鬼ピーを日本に上陸させたのはやはりカミーラの差し金だったのだろうか?

tariho10281.hatenablog.com

となると、ピーが下僕となる吸血鬼を増やして世界征服したのは西洋妖怪の計画の一端だったのだろうか?それとも利用するつもりが返り討ちに遭って結果的にピーのクーデターが成就してしまったと考えるべきか?

個人的な意見だが、バックベアード復活前にカミーラ含む西洋妖怪が吸血鬼を増やすなどという独断的な計画を実行に移すとは思えない(計画実行の優先順位的にもおかしいしね)から、やはり先週の世紀末的な展開はピーとモンローが主導と考えるべきだろう。

 

旅は非日常への入り口である。前回のピーとモンローの日本上陸も一種の「旅」と言えるし、彼らの「旅」が切っ掛けで世界吸血鬼化という非日常が生み出されそうになった。

そして今回は二つの旅が描かれた。一つは鬼太郎たちの温泉旅行、もう一つはぬらりひょんの洋行。片方は非日常に巻き込まれる旅となり、もう片方は非日常を生み出すための旅となった。この二つの旅の行先はもうしばらく先の3月15日までお預けとなる。

 

蛇足

・地底エネルギーの入った土器が奪われ寝肥りがその犠牲になったが、これは本来禁止されていた「人間を泊める」という非日常的行為の結果ではないかと思う。非日常的行為は災難に陥りやすいからね…。

 

砂かけ婆の「埴輪がはにゃっと暴れる」という駄洒落なのかどうかよくわからぬ一言。実は中の人である田中真弓さんが過去に「おーい!はに丸」で演じたはに丸の口癖らしい。

www2.nhk.or.jp

いや分かるかっ!私が生まれる前の教育番組ネタだぞ!

 

 

私がスポーツ嫌いなのは、単純に運動が苦手なこともあるが、スポーツ番組の生放送によって好きな番組が潰れることも関係しているとこの頃思うようになってきた。っていうか同じマラソン中継を流すのなら原作「妖怪マラソン」をアニメ化してよ~…。

雪のペンションは永遠のロマン、「アリバイ崩し承ります」4話(ネタバレあり)

アリバイ崩し承ります (実業之日本社文庫)

こう毎回お風呂シーンが続くと誰かしら由美かおるさんを思い出しませんかね?

(何を言っているかわからない方は「水戸黄門」で調べてみてください)

 

(以下、原作・ドラマのネタバレあり)

 

「時計屋探偵と山荘のアリバイ」

今回は原作6話「時計屋探偵と山荘のアリバイ」。原作では刑事の〈僕〉が休暇中に事件に巻き込まれ、容疑者として捕まった少年・原口龍平を助けるべく、帰省早々美谷時計店に駆け込む…という展開になっているが、ドラマではペンション拘留中に察時が時乃に応援を要請し、「出張アリバイ崩し」として時乃が山梨まで駆けつける展開になっている。また、渡海は時乃の〈アッシーくん〉として同行し、親の権威を利用して捜査情報を収集する役割を果たす。

これまでは渡海のボンボン設定が牧村や綿貫のヨイショ的態度につながっていて、彼らの態度にやや辟易とさせられていた所があったが、今回はボンボン設定が有効活用され、ここにきてやっとドラマオリジナルキャラとしての設定が花開いたな、というのが個人的な意見。

 

事件概要についてはほぼ原作通りだが、注目すべきポイントは2つ。

①ペンション裏口から時計台へ続く足跡(サイズ25cmの往路長靴の往復路

②察時が黒岩と時計台を目撃した時刻(午後11時~11時10分

現場の状況から見てサイズ25cmの往路は黒岩のものであり、その足跡の上に長靴の往路があったため、時計台には「黒岩→犯人」の順で来たと考えられ、更に察時の目撃証言から、犯人は11時10分以降に時計台に来て黒岩を殺害したと推察。ペンションのオーナー夫妻と宿泊客4人のうち、唯一11時10分以降のアリバイがなかった原口少年に容疑がかかった…ということである。

今回は前回のように犯人が意図的に原口少年のアリバイを消した訳ではないので、アリバイ探しではなく、彼以外の容疑者に成立したアリバイを崩して犯人が誰か特定するフーダニットものになっているのが特徴。

 

そして、謎解きのポイントは足跡。黒岩は一度立ち止まって時計台に行ったにも関わらず、黒岩のものと思しきサイズ25cmの往路に立ち止まった形跡がないことから、黒岩の往路は長靴の往路ということになり、長靴の往路はサイズ25cmの往路を踏んでいたことから実際は「犯人→黒岩」の順で時計台に来たと時乃は推理する。

つまり、現場に残った足跡はサイズ25cmの往路(犯人)長靴の往路(黒岩)長靴の復路(犯人)に分けることが出来るのだ。

更に、黒岩が自分の靴ではなく長靴をはいていたこと・周囲を気にしていたことから黒岩が犯人を殺そうとして返り討ちに遭ったという真相が導き出され、靴の入れ替えによって犯人がサイズ25cmの自分の足跡を黒岩の足跡に偽装したというのが、本作の秀逸な点だと言える。

 

実は劇中では言及されなかったが、黒岩の死体が手袋をしていたというのも黒岩が加害者として時計台に訪れたという“消極的”な手がかり(現場や凶器に指紋を残さないようにするため)になっている。いくら外が寒いとはいえ、ペンションと時計台は目と鼻の先。長時間外で話すのならともかく、時計台で話し込むのに手袋を着用して行くというのは不自然。ということで、足跡に着目しなくても手袋の違和感に気づければ、返り討ちの真相を暴くことは可能だったのだ。

 

さて、以上の推理から犯人を示す条件は、

①黒岩と同じ、サイズ25cmの足の人物。

②午後11時~11時10分のアリバイがなかった人物。

ということになり、これによって②の時間中に察時と一緒にいた原口少年はアリバイ成立で無実が証明され、①②の条件に当てはまる野本和彦が犯人だと特定された。

 

あ、蛇足ながら犯人特定の条件①について補足説明をしておく。

もしかすると視聴者の中には「黒岩に呼び出された犯人があえて自分の足のサイズより大きい靴をこっそり盗んではいて行った可能性があるのでは?」と思った方もいたかもしれないが、犯人に実は黒岩を殺す動機があり、その目的で時計台へ赴いたと仮定しても、普通は誰かの靴を盗んではいて行くなんてリスクの高い行為をとらず、長靴をはいて行くだろうし、盗んだ靴の当人に強固なアリバイが成立した場合、その努力は水の泡となる。

そもそも、上記で説明したように、黒岩が返り討ちに遭って死亡したのはあくまで偶然のアクシデント。予知能力者でない限り、自分が殺されると思わないのだから、当然自分の靴で時計台に赴いたことになり、よってサイズ25cmの往路(犯人)は偽装されたものではないと言えるのだ。

 

今回は雪の足跡と時計台が事件の謎解きに関わる要素であると同時に物語に情緒をもたらす題材になっていた。正直地球温暖化暖冬になっている昨今、雪が積もっているロケ地で時計台のセットを建てて原作通り映像化するのは難しいと思っていたから、「時計台は絶対に必要だから建てるだろうけど、どうせ雪の足跡は雨でぬかるんだ地面についた足跡に改変されるだろうな」と予測していた。しかし、その思いに反してキッチリ原作通り雪のペンションを舞台に映像化してくれたことが非常に嬉しかったのだ。

普通の視聴者にとっては別に大したことではないと思うが、ミステリ好きとして「雪が降り積もるペンションで起こる殺人」というのは永遠のロマンなんだよね。分かってくれるかな?

 

「アリバイ崩し」ミステリの紹介(足跡のアリバイと無罪証明)

今回は足跡が謎解きのポイントとなったが、本格ミステリにおいて足跡をテーマにしたアリバイ崩しはあまり見かけない。どちらかと言うと足跡は密室殺人の謎に使われる場合が多く、犯人が足跡を残さず出入りした密室(カーター・ディクスン『白い僧院の殺人』『黒死荘の殺人』)とか、犯人の侵入は認められるが出た形跡の無い密室(横溝正史『本陣殺人事件』)という形で扱われている。

ただ、今回のドラマのような形式のアリバイ崩しが全く無い訳ではない。過去に堂本剛さんによってドラマ化され、水曜日のダウンタウンでトリックが検証された、あの有名ミステリ漫画からこちらをご紹介しよう。

 

金成陽三郎(原作)/さとうふみや(漫画)「金田一少年の殺人」

金田一少年の事件簿」シリーズは「名探偵コナン」と並ぶ謎解き本格ミステリ漫画の代表作だから、今回紹介する「金田一少年の殺人」がどういう事件でどんなトリックが使われているのか知っている人の方が圧倒的に多いと思うが(なんなら現在発売されている「金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿」でネタバレされているし…)、改めて説明しよう。

 

金田一耕助の孫・金田一はじめは、知り合いのフリーライター・いつき陽介の依頼で、人気作家・橘五柳が開催する誕生日パーティーで行われる暗号解読ゲームに参加することになった。そしてパーティーの夜、橘は何者かに殺害され、金田一が殺人容疑で逮捕されてしまう。金田一は容疑を否認するが、犯行現場の離れの書斎に向かう地面に残った足跡は彼のものだけで、他には足跡どころか地面に何の痕跡も見当たらなかった…。

 

金田一が犯人でないことはわかっているので、この事件を「足跡なき密室殺人」に分類することも出来るが、見方を変えれば彼以外の事件関係者全員が「足跡のアリバイ」によって守られていると言えるだろう。そのため、金田一は警察から逃げながら真犯人に迫り、足跡のアリバイを崩すことになる。

メインは足跡のアリバイにあるが、橘が仕掛けた暗号も事件に大きな関わりがあり、それによって連続殺人に発展していくサスペンスな展開も素敵なんだよな。

 

で、肝心の足跡トリックについて。フィジカルなトリックで映像映えすることは間違いないが一点気になることがあって、もし使用人の菊さんが(一応伏せ字)寝室のドアを180°全開にしておかず、90°未満の角度で開いた状態にしていたら本館のドアと別館のドアの橋渡しは成立しない(伏せ字ここまで)ことになり、犯人にとって都合の悪いことになっていたという点。あくまで犯人は(一応伏せ字)菊さんに「寝室の風通しをよくしてくれ」と言っただけなので、ドアを完全に開かなかった可能性も大いにあったし、もしそうなっていたらまた電話をすることになって(伏せ字ここまで)余計な疑惑を生む結果になっていたと思うから、フィジカルな面と合わせてリスクの高いトリックだなと思っている。とはいえ、計画的ではなく咄嗟の機転でこのトリックを用いた犯人の頭の良さは評価すべきだろう。

 

金田一少年のシリーズではこれ以外にも「雪影村殺人事件」で犯人の足跡なき殺人を描いている。ただしこちらはアリバイ崩し要素はなく、不可能犯罪(屋外密室殺人)の色が強い。

“シリーズ最悪の事件”開幕、「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」5話

悪いうさぎ (文春文庫)

♡もう正直これだけで今回90点(100点満点中)あげてもいいですねっ!!♡

 

(以下、ドラマと原作のネタバレあり)

 

『悪いうさぎ』

今回から最終回にかけて描かれる物語の原作は『悪いうさぎ』。葉村晶シリーズ初の長編で、第55回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)候補

家出したとある大企業の会長の娘・美和を探して欲しいという依頼を受け、葉村はその娘の友人ミチル接触するが、しばらくして某公園で美和の友人の一人である綾子(ドラマでは綾)が扼殺死体で発見される。

序盤はこんな感じで話が進み、今回は原作(文春文庫版)の188頁辺り(前半戦、第8節)で終わった。

 

原作は葉村がMURDER BEAR BOOKSHOPに勤める前の事件のため、物語は家出した平ミチルを家に連れ戻す所から始まる。ちなみに、本作は葉村晶シリーズ中最悪の事件と称されるほど、葉村が酷い目に遭い、事件の真相もなかなか胸糞悪いものとなっている。原作既読者の立場として言うが、今回のドラマの始まりはまだ穏当な方で、原作の葉村は序盤からどエライ目に遭っている。これは是非読んで確認してもらいたい。

また(恐らくドラマでは映像化されることはないと思うが)、原作では失踪した娘の捜索だけでなく、葉村の友人の彼氏が結婚詐欺師ではないかという疑惑が浮上して葉村が独自調査したり、葉村が住んでいたマンションの大家さんから、店子のストーカーを追跡してくれと依頼が来たり、本筋の調査以外にも足を突っ込んでいてずっと忙しい。葉村にとって心も身体も休まる時がないのだ。

 

当初は「全3回に分けて放送するのだから、3分の1読んでドラマ見て、また3分の1読んで…」って感じで小分けにして読む予定だったが、原作が存外に面白かったのと、登場人物が多く人間関係がやや複雑な所があったため、一気読みしてしまった。

という訳で、原作既読者からみた今回の注目ポイントを以下に挙げていこうと思う。

 

「悪いうさぎ X」注目ポイント

・平ミチル

原作で葉村と行動を共にする一方、隠し事の多い女子高生ミチル。普段はカツラをかぶって生活しており、親の前ではカツラを外してショートカット姿になっている。何故彼女はこんな行動をとるのか?これには平の家が抱える“ある事情”が関係している。そのヒントは、母親貴美子がミチルにかけた一言にある。

 

・カナ

美和のコートに入っていたハガキに書かれた「カナ」という名前。そしてハガキに書かれていた「三日で全額払えるくらい」ワリの良いバイト。美和の友人だと考えるとこのカナなる女性も年の近い女性のはず。そんな若い女性が就ける高額バイト…?どう考えても危ないニオイしかしないが…。

 

・滝沢喜代志と平義光、そして野中則夫

もうドラマの公式HPで人物相関図が公開されているが、この三者は共通のつながりがある。詳しくはネタバレになるので今回は言わないが、このつながりが今後非常に重要になってくるので覚えておくように。

 

山辺秀太郎と岡田警視

ドラマオリジナルキャラクターである岡田警視が接触を図っていたのは、滝沢や平らとつながりのある山辺秀太郎山辺という苗字ではないが、原作では某省のキャリア公務員・新浜秀太郎という名が出てくる。ということは、ドラマの山辺は原作の新浜に相当すると予想されるが、彼が岡田警視に接触する理由も今後意味を成して来ると思うので一応注目しておく。

 

・〈ホン・コンおばさん〉

山辺との接触後、酔った状態で岡田警視は〈ホン・コンおばさん〉を求めてMURDER BEAR BOOKSHOPに立ち寄る(あの場面、ホント最高だったな…♡)。

案外まともな犯罪―ホン・コンおばさんシリーズ (Hayakawa pocket mystery books)

私は〈ホン・コンおばさん〉シリーズ未読のため、ネットで調べた情報を元に紹介すると、このホン・コンおばさんの本名はオノラブル・コンスタンス・エセル・モリソン=バーク。イギリスの女流本格ミステリ作家、ジョイス・ポーターが生み出した女探偵で、オノラブル・コンスタンス(Honourable Constance)の頭文字をとって〈ホン・コンおばさん〉と呼ばれている。

5つの長編と7つの短編に登場し、貴族の生まれらしからぬザンギリ頭に象のような巨体と、自分の意見は是が非でも押し通す持ち前の傲慢さで活躍する人物らしい。

ホン・コンおばさん(Hon-Con)

岡田警視が好きな探偵として劇中で紹介されたこの〈ホン・コンおばさん〉、一見すると意味のない情報に思えるが、〈ホン・コンおばさん〉の行動理念である「常に社会を正しく導く、貴族たる者の義務」ノブレス・オブリージュは今回の物語と全く無関係という訳ではないのだ

現代日本で貴族は存在しないから、ノブレス・オブリージュ「富裕層の責務」と換言するべきだろうが、これが物語でどう描かれるのか要チェックだ。

 

・小島のリスト

刑事の誰かが言及して終わるかと思っていたら、意外にもしっかり映像化してくれたNHK、やるじゃないか。原作はペンではなくて、昼飯で出されたカツ丼に付いていた割り箸でブスっとやるのだが、問題はそっちじゃなくて小島が所持していたリスト。このリストに美和の名前も載っていたが、これは事件と関係あるのかないのか…?

 

いや~、次回も楽しみで仕方ない。そして英国紳士スタイルの間宮さんをもっと見ていたい。

 

thetv.jp

ゲゲゲの鬼太郎(6期)第93話「まぼろしの汽車」視聴

吸血鬼ピー「私のことCOVID‐19だと思ったやつ出てこい」

『ゲゲゲの鬼太郎』第93話「まぼろしの汽車」の先行カット到着! 第3期で天童ユメコを演じた、色川京子さんがゲスト出演の画像-8

 

吸血鬼ピーとモンロー

爬虫類か魚類のような見た目に、しゃちほこを彷彿とさせるスタイル。二本の足があり、尾びれにあたる部分に手があるこの吸血鬼は、モンローと共に同族となる吸血鬼を増やそうと画策した妖怪。特別強い能力がある訳ではないが、鬼太郎を吊り鐘に閉じ込め蒸し焼きにしたり、蒸し焼きで肉団子状態になった鬼太郎を吸血鬼に変え仲間を襲わせる所から見て、頭脳プレイに長けた吸血鬼と言えるだろう。また、シルクハットや靴を着用し、身だしなみに気をつかう一面がある。

 

アニメでは2・3・4・5期に登場。ピーとモンローの関係は原作ではよくわからないが、2・5期では夫婦の関係だということが明言されている。2・3期は強キャラとしての面目が保たれている感じがするが、4期から怪しくなる。

何故なら4期のピーが吸血鬼繁殖の拠点として選んだ場所は老人だらけの限界集落であり、そもそも歯のない年寄りを吸血鬼にしても噛みつきが出来ないし機動力も低いのだから、遅かれ早かれ頓挫する事件だと思った。

5期では一応頭脳プレイを以て鬼太郎を陥れてはいるが、吸血鬼なのに血を吸わず、美貌を保つために生気を求めるというまさかの設定。生気を奪われた人間は人形と化し、ピーのコレクション兼下僕となったが、最終的に鬼太郎にあっけなく退治される(っていうか、自滅したんだよな…ww)。後に吸血鬼エリートの回で再登場するものの、トマトジュースを飲みながら「エリートはヤバイ」という情報を鬼太郎に与えて逃げていくという何とも言えない立ち位置で終わった。

 

まぼろしの汽車

画像

今回の原作は「まぼろしの汽車」。目玉おやじが最強だと言われる理由に挙げられるエピソードとして有名だが、原作通りまぼろしの汽車が目玉おやじによって召喚される展開になるのは意外にも2期と今期だけ。3期のまぼろしの汽車は地獄の管理下にあり、閻魔大王の許可を得て使用出来るものとして改変されている。

そして4・5期になると、ピーの回でまぼろしの汽車は出てこなくなり、かろうじて鉄道要素が残される形となる(ただし、4期劇場版で西洋妖怪がまぼろしの汽車を奪う事件が起こる)。4期では老人たちを吸血鬼に変える場・吸血鬼になった老人たちを町へ送る道具として機関車が出て来るが、その分老人たちを吸血鬼になる前の過去に戻して人間に戻す方法がとれなくなったため、別の方法を使って吸血鬼を人間に戻した。これは是非本編を見て確かめていただきたい(ヒントは河豚)。

5期の鉄道要素は、鬼太郎たちを罠に嵌める場としてピーとモンローが用意したミステリートレイン。行先を乗客に伏せた旅行企画としてメジャーなのだが、この企画をお膳立てして鬼太郎たちを列車に乗せ、モンローが実行犯として生気を抜き、ピーは列車を運転する役割を果たした。

 

今期は原作通り目玉おやじが召喚出来る汽車となっているが、原作は召喚したら約一ヶ月は起き上がれないくらい体力を消耗するのに対して、今期は召喚すると命を落とすレベルなので、正に切り札中の切り札と呼べるシロモノだ。

 

「許されざる運命」か、「“まだ”許されざる運命」か?

画像

今回の脚本は地獄の四将編以来約四か月ぶりの担当となる吉野弘幸氏によるもの。吸血鬼と化した世界で唯一猫娘が奮闘するプロットはウィル・スミス主演の映画アイ・アム・レジェンド(原作はリチャード・マシスン『地球最後の男』)を彷彿とさせ、そこにイムループの設定が加わり、同じ期間を何度も繰り返して悲劇を防ごうとする展開は西澤保彦『七回死んだ男』のようでもある。

アイ・アム・レジェンド 特別版(2枚組) [DVD]新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

偶然にも、今期における吸血鬼ピーの設定「東南アジアから日本に上陸した妖怪で、本体はさほど強くないが、下僕となる吸血鬼の繁殖力が異常に高く、確実な対策方法がない」というのが、今世間を騒がせるコロナウイルス「COVID‐19」のメタファーとなっているのが面白い(不謹慎かもしれないが)。こうもり猫回の献血ポスターといい、6期は狙って作られた風刺と偶然の産物の風刺が混ざっていて、メインの話よりもその符合に怖さを感じるわ。(^_^;)

 

物語の展開はほぼ原作通りだが、タイムループで時系列が行ったり来たりしていたので念のためおさらい。

(一・二周目の出来事は黒字でそれ以降の周は赤字。五周目以降、吸血鬼化した和尚や仲間に鬼太郎が襲われる周回があるが、便宜上カットし2月17日からの周を六周目としてカウントする)

 

《2月14日 夕刻》

猫娘、鬼太郎にチョコを渡し思いを告白する。

猫娘、鬼太郎と2ショット写真を撮りスマホの待ち受けにする。

・村の子供、ピーのシルクハットによって吸血鬼化したねずみ男を目撃する。

猫娘、ピーとモンローを退治する。(七周目)

《2月17日 昼》

猫娘、ツカサたちから吸血鬼化の原因を聞く。(六周目)

《2月21日 朝》

猫娘、まなとのお出かけの約束を反故にする。(五周目

子泣きじじい、ツカサという少年に出会い鬼太郎を呼ぶ。(五周目

《2月21日 午後》

猫娘、ツカサという少年に出会う。

・鬼太郎たち、吸血鬼解放区となった村へ赴く。

猫娘、鬼太郎に鐘楼の元へ行かないよう説得するも失敗。(四周目

・鬼太郎、ねずみ男・村人によって吊り鐘に閉じ込められ蒸し焼きにされる。

《2月22日 零時過ぎ》

・肉団子状態となった鬼太郎が仲間によって回収される。

・廃屋へ避難。砂かけ婆、恐山病院に往診を依頼する。

・モンロー、恐山病院の使いと称し、鬼太郎を奪う。

猫娘、モンローを追い払うが吸血鬼化したツカサに鬼太郎を奪われる。(三周目)

・鬼太郎、吸血鬼と化し仲間を襲う。

・ピーの下僕、吸血コウモリと化し、日本中の人間と妖怪が吸血鬼化する。

《2月29日 夜》

・世界中の人間と妖怪が吸血鬼化。残るは猫娘目玉おやじだけになる。

目玉おやじまぼろしの汽車を召喚する。

 

当初は鬼太郎が吸血鬼化するのを阻止する目的で動いていたため、本来の運命(=全世界吸血鬼化)は変えられず何度も同じ結末を迎えるが、目玉おやじが途中で死んだり吸血鬼化しなかったことは不幸中の幸いだったな。もし目玉おやじがやられてしまったら、その時点でその周回が確定した事実となり、もうどうすることも出来なかった訳だからね。

 

吸血鬼化した世界でぬらりひょんバックベアードがどうなっていたか気になるが、妖怪復権を目的としていたぬらりひょんにとって「全世界吸血鬼化=妖怪復権の野望が潰えた」訳だから、絶望のうちに吸血鬼となったかもしれない(或いは地獄に亡命したかも…)し、バックベアードにしても完全復活前にこんな事態が勃発した上に、部下のヴォルフガングやフランケンにカミーラも多勢に無勢でやられていることだから、ひっそり異空間で隠居を決め込んでいた可能性が高い。カミーラは元々吸血鬼だから襲われた可能性は低いかもしれないが、状況を見てピーの下僕に寝返ることもあり得るだろうし、襲われたとしたら、ただの吸血鬼から「ピーの下僕としての吸血鬼」に上書きされたかもしれない。

 

ま、それはさておき。まぼろしの汽車召喚時点の目玉おやじが死んだとしても、過去の目玉おやじが生きていて、タイムループ者本人が死亡しなければ何回でもタイムループが可能というのは予想外だった。これまでのまぼろしの汽車はあくまでも片道切符であり何回も往復可能なものとして描かれてこなかっただけに、この改変は目から鱗だった。

そして何といっても、世界を救うため自らの恋を犠牲にした猫娘が切なくていとしくて、何だかしんみりしちゃったよ。

人によって見方は色々あるだろうが、世界が吸血鬼化する運命を自然の摂理と受け取らず「誤った運命」と定めるならば、猫娘が鬼太郎に告白して友人以上の関係から恋人以上の関係に発展する運命も「誤った運命」となり、世界平和の名の下では「許されざる運命」となってしまう。

 

そもそも原作の鬼太郎と猫娘の関係は友人止まりで恋人まで発展せず、後に鬼太郎は南の島で出会った元酋長の娘メリーと結婚する。だから、猫娘が鬼太郎の恋人になるのは水木先生が描かなかった運命であり、描かなかったからこそこうして現在も続いていると言えるのかもしれない。

今思い返すと「鬼太郎夜話」において猫娘の前身であり鬼太郎の初恋相手である寝子は作中で自殺し鬼太郎の恋は悲恋に終わっていたのだよね。だから原作ファンとして「やはり猫娘と鬼太郎が結ばれる運命は作中世界において許されていないのかもな」とちょっと思っていたりする。

 

画像

とはいえ、アニメにおける鬼太郎の世界は今後の展開など考え方と演出で如何様にでも変えられる。原作の方は猫娘と鬼太郎が恋人になる運命は「許されざる運命」として完結している部分があるが、アニメは違う。

もし、このまま猫娘と鬼太郎が恋人になることなくアニメシリーズが終わってしまった場合、ゲゲゲの鬼太郎」において猫娘と鬼太郎が恋人になる展開は「許されざる運命」として確定してしまうが、今後猫娘と鬼太郎が恋人になる展開を描き、それが元でバッドエンドにならなければ、今回猫娘が鬼太郎に告白し恋人以上の関係になった運命は“まだ”許されざる運命」となるのだ

「許されざる運命」か「“まだ”許されざる運命」か。この物語における運命の是非は未来に託されている。今期で仮に猫娘と鬼太郎の関係が発展しなかったとしても、未来の猫娘と鬼太郎がどうなるかはわからない。それを描けるのはこの先アニメ業界を担う人々だけである。

 

…いや~何だか想像以上に壮大な話になったな。こりゃあ頑張って長生きしないといけないぞ。

 

蛇足

・今期モンローの声を担当したのは、何と3期のヒロイン天童ユメコを演じた色川京子さん!

『ゲゲゲの鬼太郎』第93話「まぼろしの汽車」の先行カット到着! 第3期で天童ユメコを演じた、色川京子さんがゲスト出演の画像-9

今回の物語に色川さんを起用したのは意図してなのか、偶然都合が良かったからなのかはわからないが、モンロー=天童ユメコに奪われた鬼太郎を猫娘が奪い返すという、ちょっとした恋の鞘当ての構図にも見えるようになっているのが巧いな~と思った。

 

吸血鬼が鐘の音を嫌がる理由について。原作では何故嫌がるのか書かれていないが、唯一3期だけは目玉おやじによってその理由が説明されている。興味のある方は是非見て確かめてもらいたい。

 

 

次回は鬼太郎ファミリーの温泉回。何度でも言います。

「もう最終回まであと少しだけどちゃんと終わらせられるの!?」

“崩す”のではなく“探す”、「アリバイ崩し承ります」3話(ネタバレあり)

アリバイ崩し承ります (実業之日本社文庫)

 

予告をみたら、来週も風呂に入るみたいだね。特別浜辺さんのファンって訳ではないから「キャー!嬉しい!」とはならないが、やっぱりファンの人は嬉しいのだろうな。

 

(以下、原作・ドラマのネタバレあり)

 

「時計屋探偵と失われたアリバイ」

 今回は原作4話の「時計屋探偵と失われたアリバイ」。特定の容疑者のアリバイを崩す所から始まるのではなく、アリバイがなく重要容疑者と目された女性が真犯人に嵌められたと考え、そのアリバイを探す所を起点とした物語となっている。とはいえ、最終的には真犯人のアリバイを崩さなければならないので、今回もこれまでと変わらずアリバイ崩しが為される。

 

事件概要についてはほぼ原作通りで大きな改変もないため、今回は特に言うことがないが、一応どうやって真犯人が河谷純子のアリバイを消し、自分のアリバイを作り上げたかは解説しておこう。

注目すべきは純子の長すぎる睡眠時間。純子のアリバイを消すだけにしては長すぎる睡眠時間にもう一つ別の目的があるのではないかと時乃は疑い、彼女が見た夢の話から、犯人が純子を姉・敏子の替え玉に利用していたことを推理する。

純子のアリバイを消し、なおかつ純子を敏子の替え玉に利用することで、敏子が事件当日11時20分まで生きていたと思わせ、それ以降アリバイがある自分を容疑者圏外におくことを目的とした、一石二鳥の殺人トリックが本作の見所と言えるだろう。

殺害動機は一種の三角関係で、愛人として纏わりつく敏子を抹殺するため。妻殺しの計画とみせかけて愛人を殺すというのは最早定番の動機だが、序盤で察時が妻と揉めていた場面がその動機の伏線になっていたのは良かったと思う。

 

ところで…。ツイッターの実況を見ていると多数の人が今回のトリックについてある指摘をしていた。その指摘というのは、睡眠薬を飲まされていたとはいえ、自宅から運ばれメイキャップされた上に、マッサージまでされて目を覚まさないなんておかしいのでは?」というもの。

この指摘について、これまで様々なミステリ小説を読んできた私が一言述べるなら、

本格ミステリにおける睡眠薬は、一度飲んだらよっぽどのことがない限りは目覚められない万能薬なんだよっ!!」

わかってるよ、現実に用いられる睡眠薬不眠症のためのものだから、動かしたり身体を揉んだら意識が覚醒する可能性は高いし、そもそも動かしても目覚めないなんて麻酔薬でも打たない限りはまず無理だからね!

第一、医者でもないマッサージ師が20時間以上眠らせるためにどれだけ睡眠薬を盛ったら良いのか、なんて知らないもんね普通!

…でもね、本格ミステリにはパズル的な所があって、「結果として〇〇が起こったから犯人は××をしたのだ」という論理が可能なのだ。だから実際に睡眠薬を飲ませて替え玉に利用出来なかったとしても、その点を挙げて揚げ足をとるのはハッキリ言って無粋というものである。結果としてあの状況が生まれた以上、あの世界の睡眠薬は強力なもので、犯人にも(どういう経緯で得たかは不明だが)服用量によって睡眠時間を操れる知識があったと認めるしかないのだ。

 

これは本作だけではなく、他作品でもあること。具体的な作品名は伏せるが、某社会派ミステリとして有名な作品で、世間では凄いと言われている〇〇も、本格ミステリ読者の私からすればツッコミ所は色々あるのだよ。

※その社会派ミステリというのは(一応伏せ字)松本清張の『点と線』(伏せ字ここまで)。

 

真犯人・芝田を逮捕する決め手になったのは、マッサージベッドの下の指紋。原作を読んだ当初は「証拠隠滅の時間は十分あったのに、指紋を残すなんて間抜けな犯人だ」と思っていたが、もしかしたらバレないと思ってちょっと天狗になっていた部分はあるかもしれない。

 

「アリバイ崩し」ミステリの紹介(アリバイ探し)

今回はアリバイ崩しならぬ「アリバイ探し」から始まる特殊なケース。「アリバイ探し」を描いた作品は国内ではなかなか見当たらないが、先週紹介した鮎川先生は「アリバイ探し」をメインにした話もちゃーんと書いていたのだ。

 

五つの時計―鮎川哲也短編傑作集〈1〉 (創元推理文庫)

鮎川哲也「急行出雲」(『五つの時計―鮎川哲也短編傑作集〈1〉』所収)

物語は大阪で恐喝を行っていた三田稔の経歴から始まる。五月某日、三田は何者かに自宅アパートで撲殺され、現場にあった煙草の吸殻から果樹園主の唐沢良雄に容疑がかかる。しかし唐沢は、事件前日の夜に東京発の「急行“出雲”」に乗っており、殺された時刻に事件現場に赴くことは不可能だとアリバイを主張する。

ja.wikipedia.org

警察は唐沢の主張を元に、彼が乗っていた11号車の同じボックス席の人物を調べるが、誰一人として、唐沢が座っていたのを見ていないと証言。唐沢のアリバイは成立しないことが判明する。

鬼貫警部も彼のアリバイが嘘だと思っていたが、ある証言を切っ掛けに唐沢が真犯人に嵌められたと確信し、彼の「アリバイ探し」をする。

真犯人に嵌められたのならば、どうやって唐沢はアリバイを“消された”のだろうか?

 

間違った客車に唐沢を乗せたとしたら、どうやって唐沢を誤らせたのかがわからないし、ボックス席の乗客全員が偽証をしているというのも現実離れしている。本作が発表された頃は国鉄によって運営されていたが、現代では到底使えないトリックを用いているのが面白い。勿論、今を生きる読者諸君も本文をちゃんと読んで、列車のある点について疑問を持てば謎を解くことは十分可能だ。

 

ちなみに、海外作品でアリバイ探しを扱ったものを挙げるなら、ウィリアム・アイリッシュの『幻の女』フレドリック・ブラウンの「踊るサンドイッチ」(『復讐の女神』所収)くらいだろうか。私は「踊るサンドイッチ」は未読なのでそちらが面白いかどうかは知らないが、『幻の女』は過去に日本でもドラマ化された有名作なので一読の価値はあるよ。

幻の女〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)復讐の女神 (創元推理文庫 (146-14))