タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

【新作レビュー】アトラクション愛に満ちた王道のホラーコメディ【映画「ホーンテッドマンション」】

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ⒸDisney

どうも、タリホーです。半年前に情報を知って観るのを楽しみにしていた映画「ホーンテッドマンション」を観て来ましたよ!

 

2003年の旧作から20年経って新たに制作された新作「ホーンテッドマンション」。面白かったということはTwitterの方で簡潔にツイートしたけど、このブログでは旧作と比較しながらより詳しい感想を語っていこうと思う。未見の人にも見てもらいたいから出来るだけネタバレなしでお送りするよ。

 

(旧作の感想はこちら ↓)

tariho10281.hatenablog.com

 

アトラクションが好きなら間違いなく楽しめる

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まず簡単に本作のあらすじを説明しておくと、舞台はニューオーリンズにある古い館。そこを買い取った女医のギャビーとその息子トラヴィスは、引っ越し初日から館に住みつくゴーストに悩まされていた。そこでゴーストを追い払ってもらうために、神父のケント・心霊写真が撮影出来るカメラを開発したベン・霊媒師のハリエット・館の歴史に精通した歴史学者のブルースを招聘。四人のエキスパートたちは、館のゴーストたちを相手にしながら、この館で過去に何が起こったのか、そして何故999人のゴーストが集まる館になってしまったのかを探ることになる。

 

館に秘められた謎と呪いを解くというプロットは旧作と共通するが、旧作が「愛の物語」という印象が強かったのに対し、本作は「生と死」というより普遍的なテーマを物語に組み込んでいる。

旧作は家族経営の不動産屋で、家族と共に館を訪れたジムが主人公だったが、本作では最愛の妻を喪い心霊写真が撮れるカメラ※1を開発したベンという黒人男性が主人公となる。最愛の人に会いたいがために霊との交信を求めるというのは、かの有名な脱出王ハリー・フーディーニのエピソード※2にも通じる設定で、ある意味ベタな設定と言えるだろう。

 

内容についてはひとまず置いておいて、やはり真っ先に注目したのはアトラクションの再現度。旧作でも動く胸像や水晶玉のマダム・レオタ、墓地のゴーストといったアトラクションの再現はあったけど、本作と比較するとアトラクションをベースにした映画という程度のもので旧作ではそこまでアトラクションの再現に力は入れてなかった。

しかし本作のアトラクションの再現度は凄い!旧作ではカットされた永遠に続く廊下天井の伸びる部屋、大広間でのゴーストたちのパーティーなど、アトラクションに一度でも乗ったことがある人なら「ああコレか!」となる場面が随所で見られるし、椅子や絵画といった小道具までアトラクションのものを再現しているのだから、ホーンテッドマンションのガチオタであればあるほど、映像に映りこんだ様々なアイテムやゴースト、諸々の小ネタに気付けて楽しめる仕様となっているのだ。

 

勿論、単にアトラクションの場面やアイテムを再現するというのなら馬鹿でも出来る芸当なのでそこまで興奮はしないけど、アトラクションで館の中を移動するあの黒い乗り物・ドゥームバギーを彷彿とさせる演出が映画本編で取り入れられているし、アトラクションでライドを降りる直前にゴースト・ホストが言うこの台詞。

「セーフティー・バーは私が上げる。それに、亡霊の一人をあなたの家までお供させよう

この台詞が物語に活かされていたのが良かったね。この台詞を膨らませて四人のエキスパートが否が応でもゴーストに関わらないといけない状況を作り出しているのも脚本として巧い部分だなと思った。

 

ただ一応言っておくと本作は当然ながら本国アメリカのアトラクションを題材にしているので、日本の東京ディズニーランドだけの知識だけでは正直ピンと来ない部分もあるのも確かだ。

その最たる例が、本作で重要な役割を果たすハットボックス・ゴースト。このゴーストは東京ディズニーランドのアトラクションには登場せず、本国アメリカのアナハイムにあるディズニーランドのホーンテッドマンションにいるゴーストだ。※3それだけに、日本の視聴者の大半はこのハットボックス・ゴーストが映画オリジナルのゴーストだと思っているだろうし、この点はどうしてもアメリカの視聴者と温度差が生じてしまう部分かなと思った。

ちなみにこのハットボックス・ゴースト、アトラクションがオープンした1969年からずっとアトラクションにいるゴーストかと思いきやそうではなく、特殊効果の出来が不十分でオープンからわずか数ヶ月で撤去され、2015年にようやくアトラクションに復帰したという逸話がある。アメリカのファンにとっては正に幻のゴーストだったのだ。

 

※1:心霊写真が撮れるとはいえ、別に「零」シリーズの射影機みたいにそれで霊を退治出来る訳ではないけど…ww。

※2:フーディーニは生前、愛していた亡き母と交信が出来る霊媒師を探していたが、どれもインチキだったため、インチキ霊能力者のトリックを暴くサイキック・ハンターとして活動した過去がある。

※3:Haunted Mansion 2023 - Disneyland Ride [4K POV] - YouTube(動画の8分15秒辺り、屋根裏部屋のエリアを出てすぐの場所にいる)

 

生との共存

先ほど言ったように新作「ホーンテッドマンション」は生と死が物語のテーマになっており、そのテーマの下地としてニューオーリンズという土地が舞台背景として活かされているのが旧作と明確に違うポイントだ。

旧作はあくまでも館の中だけで物語が進むのに対し、本作はずっと館にいる訳ではなく館から出て行動する場面もあるため、建物だけでなくそれが建っている土地にも意味がないといけないし、そこを物語の冒頭で描写しているから映画最後のあの場面にも生と死の共存というテーマが見出せるのだ。だから映画最後のアレは「悪い奴を倒して、めでたしめでたし。ハイおしまい!」という、単なるハッピーエンドではないと私は評価している。

 

これは重大なネタバレにならないから、映画未見の方に予備知識として舞台となるニューオーリンズについて簡単に言及しておくが、ニューオーリンズは海抜ゼロメートル、或いは海面よりも下という土地であり、ミシシッピ川の氾濫やハリケーンの影響で洪水や浸水が起こりやすいこともあって、死者を地下に埋葬出来ない場所なのだ。そのため、墓や霊廟を建てて地上に安置するという手法がとられており、セントルイス墓地をはじめとするニューオーリンズ墓所はさながら死者の住宅街のようになっている。※4

また、アメリカには幽霊屋敷のツアーやそれをガイドする職業の方もおり、日本と比べて生者と死者の距離感が近いというのも本作の舞台背景になっている。この幽霊屋敷のツアーは去る8月12日に放送された「世界!ふしぎ発見」のディズニー特集でも言及されていたし、今回の映画でも本編に幽霊屋敷ツアーの描写がある。

 

日本は死者を地下に埋葬し、出来るだけ安らかに眠ってもらうことを願っている。そして幽霊屋敷などの心霊スポットはほとんどが荒れ果てた廃墟で、そこに行くのは度胸試しに来る不良か恐れ知らずの若者・好事家といった連中だ。

しかし、アメリカでは(民族や土地によって差はあるものの)死は必ずしも忌み嫌うようなものではないし、隔離して遠ざけることもしない。幽霊屋敷は管理されビジネスとして利用されているし、そこを訪れるツアー客だって別に不謹慎で不信心な輩という訳ではない。それは死やそれにまつわるものに対する思想とアプローチの仕方が違うというだけの話なのだから。

 

そもそも本作のような幽霊屋敷モノが成立するのは死生観の違いだけでなく屋敷の立地や家庭環境も大きく関係してくる。日本は平地よりも山地の割合が高いから大きなお屋敷を建てにくいし、家庭事情も核家族化によって縮小してしまったから、幽霊が出る大邸宅という魅力的な設定が描きにくい(特に現代を舞台にした場合)のだ。だから私はこういった作品を見ると羨ましいと思ってしまう。別に作家ではないけど時代に囚われずに幽霊屋敷モノを書けるって何か素敵だな~って思うのだ。

 

※4:ニューオリンズの「死者の街」、永遠の眠りを美しく飾る、世界でも珍しいその墓地文化とは? | mAmerica

 

さいごに

という感じで新作映画「ホーンテッドマンション」の感想は以上となるが、旧作がしっとりとしたテイストの、ヨーロピアンなホーンテッドマンションだったのに対し、新作は正にアメリカ映画という感じの賑やかさと徹底したアトラクションの再現もあって、子供でも大人でも楽しめるホラーコメディになっていたと思う。旧作も小学生の時に見て面白いと感じたから旧作も勿論面白いけど、家族で見るなら今回の新作の方をおススメしたいね(旧作はカップル向きかも)。

 

面白かったとはいえ、ちょっと残念ポイントもあるので一応言っておくと、今回はコメディ色強めでギャグ描写が所々に入るのだけど、正直しょうもなさ過ぎてそのギャグはいらんかったなと思う場面もあった。予告編でマダム・レオタが言った「真実が知りたければ、3ドルもらおう」ってアレ、物語のキャラ設定としても不自然なボケだったから私ならあの台詞カットしたな。

あと本作の重要キャラであるハットボックス・ゴーストの生前の人物背景が駆け足で語られたから、彼の人物背景が初見ではイマイチわかりにくいのもマイナスポイントだ。折角重要なキャラにしたのにそこがわかりにくいと魅力が半減しちゃうからね。

でも不満点はこれくらいで8割方は満足なので、私はこの度の新作「ホーンテッドマンション」は、アトラクションに何度も乗るくらい大好きなファンなら間違いなく楽しめる一作になっているし、仮に知らなくても十分面白い内容にはなっているのでおススメですよ!

 

まぁ、いわゆる映画評論家とか年に100本見る映画通の方々はまたどうせ「キャラが凡庸で奥深さがない」だの「物語がありきたりで陳腐」だの低評価の意見やコメントを垂れ流すかもしれないけど、ハッキリ言ってそんな意見は無視して良いわい!

本作の監督ジャスティン・シミエンは「結果として、この作品が古典的なファミリー映画となっていることを願います」と述べている(映画のパンフレットより)。つまり、ハナからベタなホラーコメディとしてこの作品を撮ったのだから、「映画通もうなる作品を撮りました」とか言ったならまだしも、エンタメ重視の映画に奥深さだのキャラの魅力だの高尚なことを言うのはお門違いもいいところである。そんなことを言う暇があるなら、今すぐディズニーランドに行ってアトラクションに乗って来いと言ってやりたいね。あ、一回乗るだけじゃダメだよ。最低三回は乗りなさい

 

最後に、蛇足ながら上記以外に思った細々とした感想ツイートを載せておく。