タリホーです。

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【ゲゲゲの鬼太郎】だるま(1~5期)を見比べる

ゲゲゲの鬼太郎歴代セレクション、第三回目はだるまの回。

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個人的にだるまの回ってハズレなしの傑作揃いという印象をボンヤリと抱いていたのだが、今回の配信で改めて見てどう思ったかを書いていこうと思う。

 

1期(住宅難の極悪だるま)

まずは1期のだるま回となるが、実は1期のだるまはこれまで未見で、今回ようやく見ることが出来たのだ。そんな前情報なしでみた1期だるまは、歴代の中で何気に一番凶悪性が高いだるまだなと感じる。

原作は古アパートの存在しない4階に住む妖怪という限定的な物語だったのに対し、1期は銭湯の靴入れ・自動車・電話ボックスといった他に4の数字がつく場所にも現れ、序盤はそれらを元にしたアニメオリジナルの一騒動を描いているのが最大の特徴となる。

アパートの乗っ取りに加えて、女性をひき逃げするわ鬼太郎にガソリンをかけて火だるまにするわと、所業が完全にヤクザで可愛げがないのが1期のだるまなのだが、だるまの身体の中にいる内臓だるま(子だるま)も同じく可愛くない。映画「ハムナプトラ」に出て来る人喰い虫のスカラベみたいに猫を一瞬で喰いつくして白骨にするのだからね。

そんな1期の物語は住宅難をテーマにしており、これまで忌み数字となっていた4を人間が普通に使い始めたことが原因で、4の世界を根城にしていたアングラ妖怪が行き場をなくし、その結果だるまが妖怪世界の住宅難を解決しようとしたというのが動機となっている。60年代の住宅難がどれほどのものだったのかはわからないが、一応時世に沿った物語にしたと考えるべきだろう。

それにしても子供をターゲットにしたアニメのはずなのに、だるまの目玉が取れることといい、ロープを使う鬼太郎に対して「首でも吊る気かよ」と言うねずみ男の台詞といい、(絵はポップだけど)ちょっと今じゃ考えられない刺激的な演出・脚本で少しビックリしたよ。そういやこの次に放送された「笠地蔵」の回も今では完全にアウトな放送禁止用語が出て来るから、まだ60年代のテレビって規制・縛りがゆるかったんだなと思った次第である。

 

3期(妖怪の悲喜劇を描いた秀作)

3期はほぼ原作通り。ねずみ男が悪知恵をだるまに吹き込んだことでだるまはアパートの乗っ取りを目論むが、根は良い妖怪であるというのが3期だるまの設定で、鬼太郎に降参した後は管理人一家にキチンとあいさつをして去っている。この後のエピソードで味方妖怪として鬼太郎のピンチに駆けつけている所から見てもそうだろう。

この3期のだるま回は、原作者の水木先生も面白かったと評価しているお墨付きの回であり、確かに妖怪のユーモラスな描き方、原作が持つ奇妙な味わい、3期鬼太郎ならではの血気盛んなバトルシーンなど、どれを取っても申し分ない一作である。特に管理人一家を追い出すためにだるまに脅しを依頼された妖怪が全然脅しになっていないというのがイイですよね。吹っ消し婆なんてただの愚痴だし、油すましに至っては菜種油の要求に来てそのまま居眠りをするのだから、このズレているというか抜けている妖怪の感覚を悲喜劇として描いているのがこの3期だるま回の素晴らしいポイントだと私も評価している。

 

4期(被害規模は過去最大だけど、味わいは変わらず)

4期のだるま回は、「存在しない4階」とだるまの設定を除くと内容はほぼオリジナル。治法戸市という名の地方都市で、街の人間全てがだるま化するという怪現象が起こり、鬼太郎ファミリーが調査に来るというあらすじ。

あらすじからもわかるように、4期のだるまは街の住人をだるま化するという過去最大規模の革命(?)を一人で成し遂げた凄いやつで、バトルシーンにおいても子だるまを出すという従来の技に加えて火だるま・雪だるま攻撃にだるま落としと、だるま尽くしの内容になっているのが面白い。

4期は終盤からデジタル作画に移行したこともあり、キャラの動きがなめらかになっているのが特徴的だが、それに加えて今や日本のアニメーション監督として有名な細田守氏がこのだるま回に携わっているのも見逃せないポイントだろう。細田氏はこの回の他に「鬼太郎と置いてけ堀」「鬼太郎対三匹の刺客!」で演出に関わっているが、いずれもとぼけた味わいのある作品であり、決して見て損はない一作としておススメしたい。

だるま回に話を戻すと、子だるまの心臓としての設定を「だるまさんがころんだ」の遊びと絡ませているのが脚本として巧いなと思った。「願いと欲」という似て非なるテーマにしても、SNS隆盛の今見るとより一層耳が痛い批判になっているなと感じられる。だるまの思想自体は男尊女卑的な面が強く時代錯誤ではあるものの、「飽くなき消費と醜い自己顕示」と欲を言語化しているのは流石だなと思うが、どうだろうか?

ちなみに、だるまが言っていたウーマンリブとは1960年代後半から1970年代前半にかけて、ヨーロッパやアメリカ、日本などの国々において起こった女性解放運動のことで、これを90年代で言ってる時点で「あ、このだるま、頭が古い」ってことがわかるよね?

 

5期(同調圧力に喝!)

5期は明治時代から建つおんぼろビルという原作の設定を活かし、ビルの取り壊しに反対するだるまを描いている。存在しない4階は一貫しているが、だるまの弱点が笑いのツボに変更され、「だるまさん、だるまさん、にらめっこしましょ~」の掛け声を元にした改変がされているのは4期を彷彿とさせる。

この5期だるま回は周囲の声に押されてビルを味もそっけもない新築にしてしまいそうになるオーナーの金五郎を描いており、同調圧力に負けず自分の価値観を貫くことの大切さを訴えかけた、割と普遍的な、でも多くの人に響くメッセージ性のある回になっていたと思う。

5期のテーマについては私も似たような経験がある。私は小学生の頃から鬼太郎作品を切っ掛けに妖怪にハマったけど、当時の小学生と言えば、ポケモンとかワンピースなどが主流で、当然鬼太郎や妖怪はマイナーな部類の趣味だった。そういうこともあって私の母も「何でうちの子は妖怪なんて好きになったのだろう…」と面と向かって愚痴られたことがあるし、趣味が合う人が少ないから友達もなかなか出来なかった。そういう肩身の狭い思いも何度か経験している。でもそれを辞めなかったからこそ、今こうしてディープに鬼太郎ならびに妖怪関連のことが書ける人間になっているのだから、鬼太郎好き・妖怪好きを貫いて正解だったよ。

 

 

以上、1~5期のだるま回を視聴して改めて言おう、だるま回はやはりハズレなしである。テーマは異なれど脚本の秀逸さはどの期においても甲乙つけがたい出来栄え(特に3~5期ね)だし、3期の「ガブっといくぜ~!」とだるまを脅す鬼太郎、4期のちょっと笑みを浮かべて子だるまを握りつぶす鬼太郎、5期の変顔して即だるまに殴られる鬼太郎と、それぞれの期の鬼太郎にも個性が出ていて、それも見所の一つとして是非チェックして見てもらいたい。

 

あ、次の歴代セレクションは1~5期の「幽霊電車」になるようだけど、これは既に6期と5期の感想記事(↓)で言いたいことを全て言っているので、次回の見比べ感想はお休みということでよろしくお願いします。

tariho10281.hatenablog.com

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