タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

【ゲゲゲの鬼太郎】水虎(1~4期)を見比べる

ゲゲゲの鬼太郎歴代セレクション、第十二回目は水虎。

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5・6期は以前レビューした記事があるので今回は1~4期までを見比べてみよう。

tariho10281.hatenablog.com

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1期(ジェノサイド的恩返し)

初の映像化となった1期は意外にも原作とは違うプロットで物語が展開する。原作は壺に封印されていた水虎を飲んでしまった新一という少年が水虎に取り憑かれてメスの壺を探すという話になっているが、1期ではユリ子という少女が水虎の封印を解き、虎の姿で現れた水虎が木や土の水分を奪い取っていくという所から物語は進む。原作の水虎は幽霊のような姿なのであまり虎らしくないのに対し、1期の水虎は名前通りの見た目で自然災害的な側面のある妖怪として描かれているのが特徴だ。

このユリ子という少女は両親を亡くしており「親なし」として村八分の扱いを受けていた。この少女の設定が物語のスパイスとなっており、彼女を虐げる子供や村人たちを水虎は次々と襲い水分を奪っていく。こうして水分を奪われ干からびた人々の様子が描かれているのを見るとなかなかにホラーな話だと思うが、水虎が悪い妖怪にもかかわらず封印を解いた少女に恩返しをするという不思議なプロットになっているのが1期水虎回の独特な所であり、そのおかげか唯一無二な作品として仕上がっている。恩返しとはいえ富をもたらすのではなくジェノサイド(虐殺)で命を助けるというのも妖怪的で良いなと感じる部分だ。

 

3期(原作の筋書きに則った鬼太郎との友情譚)

3期は歴代の中で最も原作のプロットに則った展開になっているのが特徴。ただ新一は自分で飲んだ原作と違い、いじめっ子たちによって無理やり飲まされたことを考えると、最後の場面でちゃんといじめっ子たちには謝って欲しかったなと個人的には思う。何か鬼太郎を雪の中から掘り出すのに協力したからチャラになったみたいになっているけど私はそこを一緒くたにしてもらいたくないね!

新一がいじめられっ子になったことで母親の設定も少々息子に対して過保護な親という形になっており、3期では新一が自分の意思を持った子供に成長する様子と、それと併せて鬼太郎との間に友情が結ばれる様子が描かれていて、そこに他の期では見られない温かさを感じた。(5期とか完全に突き放してたからね)

原作では水虎が子供に取り憑く理由について特に説明がなかったが、3期では「子供には未来があるから、その子供を乗っ取れば未来はおれのものだ!」と水虎の動機が補足されていたのが細かいながらも良い改変になっている。

 

4期(子供のあやまちと親の対処)

4期の水虎は1期の水虎の自然災害的要素を継承しているが、これまでは水分を奪う水虎だったのに対し、4期は水を操って雪崩や洪水を引き起こす妖怪として描かれている。

子どもによって封印が解かれるのはこれまでと同じだが、4期の場合は宝探し目的でよく調べもせずに水虎の封印を解いてしまった昇少年のあやまちが前面に出たプロットとなっており、息子がしでかしたことによって起こった洪水に対して父親が責任を持って挑む様が描かれている。そういう意味ではこの物語は子供だけでなく親に対しても教訓的な物語であると同時に模範的な親の姿が提示されていると考えて良いだろう。子供のあやまちに対して親はどのように向き合うべきか、その答えがこの物語で描かれている。

そしてバトル面に関しては1・3期よりもスケールが大きくなった感じがする。水虎を凍らせて封印するのは同じだけど、そこに至るまでの戦いがこれまで以上に派手というか、水虎がちゃんと強大な妖怪として描かれている分、それに見合った戦闘になっているので見応えのある場面になっていたと思う。ただ、水虎は女房を身体に取り込み完全体になった割には特にパワーアップしたようには見えなかった。「正直そんな無敵じゃないよね?」ってツッコミが生まれるのは、それだけ私が大人になって引いた目線でこの作品を見ているということなのだけど…。

 

 

という感じで1~4期を見ていると、期によって物語のテイストは全然違うけど部分的に設定を継承・発展させているという所に歴代水虎回の特色みたいなものが見えて来る。5期は初回ということもあって水虎が1~4期、そして6期のいずれの要素も含まれていない、怪獣に近い妖怪として描かれたのが少々残念ではあるが、5期は子供でも悪いことをしたら冷たく突き放す鬼太郎を描く必要があったと思われるのでそこは致し方ないと言った感じだろうか?

6期は1期のプロットをかなり意識した話となっていて、「恩返し」から「契約」という形に改変することで水虎によるジェノサイドを人間の復讐譚として描いていたのが今思い返しても面白い試みだったなと思う。