タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

【予習】食わず嫌いは勿体ない(かも?)【パリピ孔明】

パリピ孔明(1) (コミックDAYSコミックス)

先日、と言っても1週間ほど前になるが、フジテレビの水曜10時枠で「パリピ孔明」がドラマ化される報を聞いた。

 

パリピ孔明」、ネット広告でチラホラと見かけてはいたが、パリピなんて拒絶反応を起こすような人々だし、諸葛孔明なんてネットのネタキャラ程度でしか聞いたことがないので、正直食指がそそるタイトルでは全然なかった。

てっきりタイトルから「聖☆おにいさん」みたいに、歴史上の人物が現代日本のアレコレに翻弄される様を面白おかしく描いた、ゆる~いノリのギャグ漫画だろうと思っていた。

 

で、何の気なしに漫画アプリからこの「パリピ孔明」を読んでみたら、全然予想していたのと違っていた。そして思った、これは面白いぞと。

確かに1話では孔明現代日本に転生したということもあって、スマホに驚くとか渋谷のハロウィンイベントを見て「地獄に落ちた」と勘違いするといったコメディ要素が前面に出ているけど、この物語はハロウィンの夜に出会ったクラブ歌手の月見英子(EIKO)を諸葛孔明が一流の歌手としてマネージメントしていくというお話で、天才軍師としての知識や戦術を現代日本の音楽業界でどう活かすのかが見所の一つとなっている。

だからタイトルの印象とは全然違ってストーリーは王道路線で堅実、音楽業界が舞台なので当然ライバル歌手・やり手のプロデューサーなんかも登場するので、自分をよく見せるために相手を蹴落とすようなことも仕掛けて来る。それをどうクリアするかも見所となるから、音楽に造詣が深くなくても普通に楽しめるプロットになっている。

 

また、孔明が天才軍師としてマネージメントをしているとはいえ、孔明の凄さだけが礼賛されたストーリーではない。物語の軸となるのは他ならぬ歌姫・EIKOである。彼女の人柄や歌唱力が仲間やサポーターを引き寄せ、群像劇としてより物語が深く面白くなっている。あくまでも孔明は裏方で、巧妙な戦略にしてもその要となるのはEIKOの歌手としての力量にかかっていると言えるのだ。

勿論原作は漫画なので彼女の歌唱力の高さは知ることは出来ないし情報として鵜呑みにするしかないのだが、映像化するとなるとEIKOの歌手としてのカリスマ性や「ダイヤの原石」としての存在感を楽曲として表現しないといけないので、そこは制作陣の腕の見せ所である。

 

一応去年放送されたアニメはざっと見たが、EIKOの歌唱力に関してはちゃんと本職の歌手の方を起用しているので、全く問題はないし作品に説得力を与えていたと言って良いだろう。これは同じく作中で登場するラッパー・KABE太人にも言えることで、リズム良く韻をふんだラップを実際に披露する必要があるのだから、本職の人が見ても納得のいくクオリティでないといけない。まぁ私は素人なので普通に「すごっ!」と思ったけどね。

 

ドラマ化で気になること

これから随時情報は明かされていくだろうが、今の所ドラマ化するにあたって気になるのは以下のポイントになる。

 

(ここから一部原作・アニメのネタバレあり)

 

EIKO&KABEを演じるのは誰か?

やはり一番気になるのはEIKOとKABE太人を演じるのは誰かだ。どちらも才能あるスターの卵として描くのだから、秀でた歌唱力だったりリズム感がないといけない。普通のドラマと違ってただ有名な若手俳優(女優)を起用すれば良いという話でもないし、放送までの間にトレーニングや練習を積み重ねて演じるのか、それとも歌唱パートはアニメ版のように本職の方に任せるのか、気になる所である。

 

②どこまで映像化するのか?

アニメ版では音楽フェス「サマーソニア」出演権をかけた「10万イイネ企画」編で一旦物語を完結させている。これは約30分×12話というアニメの尺から考えても妥当な完結の仕方である。

一方ドラマは水曜10時枠なので、1話あたり45分で最低でも10話分は制作されると予想がつく。となると、アニメ版みたいに「10万イイネ企画」編だけでうまく完結させるのは難しい。どうしても「10万イイネ企画」編の後の展開、つまり原作の「京都・五商祭」編までやらないと物語として歯切れの悪い終わり方になってしまうのだ。

 

実をいうと、アニメ版「10万イイネ企画」編は内容はともかく1クールの物語としてはバランスが悪く、視聴者からも中盤で失速したという意見が多数出ている。

www.mation-anime.com

この失速の理由は上に載せた記事で詳しく言及されているが、「10万イイネ企画」成功のためにKABE太人を仲間にする下りを原作以上に丁寧に描いてしまったことが最大の理由だろう。KABE太人はこの後の「京都・五商祭」編や「サマーソニア」編で大きな活躍をする作中の重要人物の一人なので、原作既読勢は彼の重要性を知っているし彼の過去を丁寧に描くアニメの方針にしても好意的に受け取れたと思っているが、アニメから入った人にしてみれば、「何故メインのEIKOを差し置いて途中参戦したKABE太人の過去を深掘りしているのか意味がわからない」と不満に思っただろう。

それも当然で、EIKOの過去については「京都・五商祭」編で両親(特に母親)との確執やそれに関わる悩みが描かれており、「10万イイネ企画」編の段階では複雑な家庭事情があって一度自殺しようとした、ということしか明かされていない。だから「10万イイネ企画」編でEIKOの過去ではなくKABE太人の過去を優先して描いたのには、原作のエピソードの都合があったのと、原作通りやると10話に満たない分量になるためアニメオリジナルのエピソードで補完する必要があったという制作側の事情あってのことだろう。

 

「10万イイネ企画」編におけるKABE太人の役割は無名の歌手・EIKOにオーディエンスの注目を(良くも悪くも)集めるという程度なので、それだけの役割を果たすに過ぎない人物のスピンオフ的な物語を本編に入れたというのはアニメにおけるマイナスポイントと言えるかもしれないが、その点ドラマは「京都・五商祭」編も描けるだけの尺があるからアニメ版のような追加エピソードを入れる必要はないだろう。ただ、ドラマは果たして「京都・五商祭」編をしっかり描けるのか、ちょっと疑わしい

これは原作を読んでいただければわかってもらえると思うが、五商祭は京都市内で(文字通り)五つの商店街が互いに演芸の力量でバトルをして観客の反応・投票で優勝を競う。そのため地元内外から有名なアーティストまで呼ぶというなかなか大規模なイベントなのだ。祭の当日は道路を封鎖して演芸披露のための山車が通るのだから、それだけのイベントをドラマで再現するとなると、当然京都市の全面的な協力がないといけないし、そんな映画並みの撮影を今のフジテレビが果たして出来るのだろうか…?と疑問に思ってしまうのだ(フジテレビでなくとも難しいと思うが…)。まぁ別に京都市にしなくてもどこかの県の地方都市の祭として改変すれば映像化は可能かもしれないが、それも何かな~…。一応これでも私タリホー、京都出身なのでそこは原作通りの風景が見たいんだよね。

或いはエピソードの順序を入れ替えて先に「サマーソニア」編をやるっていう手もあるかもしれないが、そうなると物語の整合性がとれなくなりそうだし、どちらにしてもドラマの脚本を担当する根本ノンジ氏をはじめとする制作陣がどう料理するか注目したい。

 

③楽曲をどうするか?

これも言わずもがなの注目ポイントだが、作中で披露された楽曲をどうするかも気になるポイントの一つだ。アニメ版で制作された楽曲をカバーするのか、それともまた別に新しい楽曲を制作するのか。

新たに制作するとなると当然アニメ版に匹敵するクオリティでないと話にならないし、EIKOだけでなくライバル歌手・アーティストの楽曲も含めると結構な数になるから、やはりアニメ版と同じように音楽制作にはエイベックスのような大手音楽事務所が携わると思うが…。

 

仮に新しく楽曲を制作するとしても、個人的には原作の世界観を尊重した楽曲作りが為されることを希望したい。こんなの当たり前だろうと思うけど、アニメ版のOPテーマ曲「チキチキバンバン」を聞くとその当たり前を徹底するのって実は難しいんだよね。

www.youtube.com

最初はアニメ用に制作されたオリジナル楽曲なのかと思ったけど、実はカバー曲で元はハンガリーの歌手・JOLLYが20年以上前に発表した楽曲なのだそう。

 

www.youtube.com

原曲のMVを見たら一発でわかるように100%パリピ成分で構成された楽曲で歌詞もサタデーナイトを楽しむパリピの様子を描いただけの完全パーティー用の曲だ。こう言うと悪いが深みもクソもない、ノリとリズムの中毒性だけが売りの曲というのが率直な感想である。

ある意味「パリピ孔明」というタイトルには相応しい楽曲だが、ここで原曲と同じ意味の歌詞にせず、原曲の歌詞を空耳として別の歌詞に変換しているのが素晴らしいポイントで、しかもパリピとして週末を楽しむ様を描いた原曲をパリピを楽しませるアーティスト側としての楽曲にアレンジしているのがまた凄い。

 

www.youtube.com

比較用の動画があったので参考までに載せておくが、原曲の原語を空耳の日本語歌詞として変換するだけでなく「決戦は週末の宿命」「みんなスーパースターの卵さ」などの物語に即した歌詞にしており、パリピな世界観を提供する側のアーティストとしての苦悩が見え隠れする楽曲になっている。

原曲のパリピ曲としてのノリ・中毒的なリズム感を損なわずに原作の物語を尊重した歌詞にしているのだから、これ以上ないほど完璧なOP曲になっていると思うし、異国のさほど有名でない楽曲を日本のアニソンとしてYouTubeで1000万回以上再生される楽曲にしたのだから、正に作中の孔明さながらの大偉業と言って良いのではないだろうか?

 

ここまで語れば、私がドラマにアニメ版に匹敵する楽曲を求めるのもわかっていただけると思う。それだけ音楽は原作を含めて物語を動かす大事なファクターなのだから。

 

さいごに

以上、予習がてら原作を読んだ簡単な感想と、ドラマ化で気になるポイントについて述べたが、記事のタイトルにもあるように今までタイトルだけで判断して避けてきたのが勿体ないくらい面白かったし、「音楽で心を一つに」という陳腐で使い古された謳い文句が今の時代においては昔以上に困難で、だからこそ実現すれば壮大で感動的な物語になることを示している作品だったと評価したい。これに関してはまたドラマが放送された時に詳しく語ろうかなと思っている所だ。

ちなみに、今回ドラマの監督を担当することになった渋江修平氏は、当ブログでも絶賛したあの30分犬神家を実現させた方である。

tariho10281.hatenablog.com

渋江氏はどちらかと言うとMVやCMといった路線でドラマ畑の監督ではないから、この「パリピ孔明」の監督として起用されたのは個人的には好感・期待が持てる。そう言えば、脚本の根本氏も加藤版で犬神家の脚本を経験しているから、今回のドラマの監督と脚本は犬神家経験者なんだよね。まぁ、別にそれは今回のドラマ化とは全然関係ないけど…ww。