タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

新作放送記念、ドラマ「金田一少年の事件簿」を語っていこう(第四回:初代・堂本剛版)

4月から放送される道枝駿佑版・五代目金田一による新作ドラマも放送まで二週間をきった。第四回目、つまり歴代金田一の振り返り企画もこれで最後になるが、最後は初代・堂本剛版の感想をお送りしよう。

初回放送から20年以上経った今でも金田一少年といえば堂本剛!」と主張する人が大勢いるほどの根強い人気を誇る初代は放送当時も高視聴率を記録し、特別番組や映画化と、金田一少年の映像化では過去一のメディア展開を広げた。この人気の理由を私がここで説明する必要は今更ないと思うが、改めて初代の魅力や(特別番組を除く)各エピソードの特徴を語っていきたい。

 

SPドラマ1:「学園七不思議殺人事件」

記念すべきドラマ金田一少年の始まりは1995年4月に放送された「学園七不思議殺人事件」。原作の第一作目は「オペラ座館」だが、はじめのホームグラウンドである不動高校を舞台にした本作をドラマの一作目にしたのは賢明な判断だった(アニメの1話も「学園七不思議」から始まる)。学校は誰もが知っている場で「オペラ座館」と違って専門的な文学知識も必要ないから、初見の視聴者でも取っつき易いという理由もあるが、1990年代と言えば学校の怪談が全国的にブームになった頃であり、そういう当時のトレンドに乗っかって「学校の七不思議」をモチーフにした本作をドラマ一作目として起用したのかもしれない(ちなみに映画「学校の怪談」が公開されたのは3ヶ月後の7月)。そのせいかわからないが、ホルマリン漬けの生首がカッと目を見開くといった、ホラー演出に気合いが入っているのがドラマの特徴の一つである。

当時弱冠15歳だった堂本さんがはじめを演じているのは言うまでもないが、物語の最初ははじめが自転車で転校先の不動高校に向かうシーンから始まる。この時のブレーキが壊れた自転車というのは本家・金田一耕助のドラマでは定番のアイテムで、石坂浩二さんが金田一を演じた映画「悪魔の手毬唄」や、古谷一行さん主演のドラマ「犬神家の一族」でも同様のシーンで自転車から転げ落ちる金田一が見られる。序盤からこのような場面があるのは、本家ジッチャンに対するリスペクトが感じられて良かったと思う。

肝心の事件についてはトリックこそ原作と同じだが、事件の構図にはドラマオリジナルの部分があり、はじめの推理も実は事件全体の半分くらいしか解いていない。では残りの半分は誰が解いたのかというとあの剣持警部なのだ。初代の剣持はかなり紳士的な性格で、原作で初登場した「オペラ座館」の時の横柄で短絡的な剣持とは全然違う。しかも剣持が解いた半分というのは原作の犯人の犯行動機であり、はじめが解いた半分はトリックとドラマオリジナルの犯行動機だから、はじめが単独で解いたというより剣持と合同で事件を解決した印象が強い。

そういう訳で、推理面に関してははじめの推理だけが一際輝いているという感じはなく、犯人に対する説得や訴えかけみたいな場面もなかったので、一作目から初代金田一の魅力が十全に発揮されていた訳ではない、ということが今回改めて見てわかった。

あとこれは既に知っていると思うが、五代目・道枝版金田一の初回が本作「学園七不思議」に決定した。過去エピソードのリメイクはこれまでにない試みなので、令和版の「学園七不思議」はどういう脚色になるのか、また放送後に感想をUPするつもりだ。

(ここからネタバレ感想)原作は的場先生単独の犯行によるものだったが、ドラマは学園七不思議の成立と美雪の襲撃は的場先生の仕業で、それ以外の青山を含めた殺人はドラマオリジナルキャラの浅野先生による犯行として改変された。これは原作通りやると単なる自己保身のための殺人であり、ドラマとして余りにもあっけないというか、犯人がただのクズ野郎という感想しか心に残らない可能性があったため、教師と元教え子が恋愛感情を抱きお互いに庇い合っていたという、メロドラマ的な動機でカバーしたと思われる。(ネタバレ感想ここまで)

 

 

連ドラシーズン1

SPドラマから約3ヶ月後に放送されたシーズン1は、最終エピソードを除き1話完結の構成。長編エピソードのため本来なら前後編でゆっくり世界観を描くべき所をあえてスピーディーかつテンポ良く、それでいて原作の骨となるトリックはキチンと押さえて描いているのがシーズン1最大の特徴だ。

 

1話:「異人館村殺人事件」(欠番)

「学園七不思議」から約三か月後に放送が始まったシーズン1初回のエピソードは「異人館村殺人事件」。だが、本作は使用されたトリックが島田荘司氏の『占星術殺人事件』のトリックを丸パクリしたということで原作が発表された当時島田氏本人から抗議を受け、現在でもドラマは欠番扱いとなっており、原作でも『占星術殺人事件』のトリックを使用したという注意書きがある。当然ながらアニメ化には至っていない。

そういうこともあって、この初回は幻の回でもあるが、一部動画サイトでは欠番となった初回の内容がアップロードされており、全く見れない訳ではない。勿論この方法は邪道なので視聴は個人の責任でお願いするが、見ない選択をとる方のために一応原作との違いを言っておくと、原作では村の名称が六角村で6軒の異人館があったのに対しドラマは尺の都合で十文字村に変更され、名家の数も時田家・兜家・風祭家・冬木家の四家に減っている。それ以外は大体原作通りで、今では考えられない衝撃的かつ猟奇的な殺人模様を目の当たりにするだろう。

(ここからネタバレ感想)丸パクリで問題となったトリックは、切断したミイラのパーツを入れ替えてミイラの数を本来の数から一体増やすというもの。パクってしまったこと自体問題ではあるが、本作では身体のパーツが一部欠けていることに対する理由付けが「まるで悪魔に持ち去られた」という漠然としたもので、島田氏の作品で用いられた理由付けに比べると余りにも改悪に近い用いられ方をしているのが残念なポイントだ。また、このパーツ入れ替えのトリックが島田氏の作品ではフーダニット+意外な犯人につながっているのに対し、本作では真犯人を特定する材料に全くなっていないというのも輪をかけて悪い点と言えるだろう。しかも、最初の時田若葉殺しにおけるベッドの吊り上げトリックも、実は島田氏の同作品からパクったものだから、そりゃ苦情も来るわな、と納得せざるを得ない。

トリックの盗用に関しては抗議を受けて当然だが、意外にもファンの間では人気のあるエピソードで、犯人の猟奇性と狂暴性がシリーズ史上トップクラスということもあって私もかなり印象に残っている。「悪名は無名に勝る」とはよく言ったものだ。(ネタバレ感想ここまで)

 

2話:「悲恋湖殺人事件」

1話が欠番扱いとなり事実上の初回となった2話は、原作でも犯人の動機が(ある意味)シリーズ中最高レベルに狂っていることでお馴染みの「悲恋湖殺人事件」。1話完結のため倉田壮一と河西さゆりがカットされているが、あとは大体原作通り。後にシーズン2でも登場するフリーライターのいつき陽介は本作が初登場となる。「13日の金曜日」に出てくる殺人鬼・ジェイソンをモデルにしたこともあって猟奇度もシリーズ中なかなかのレベルだが、ちゃんと本格ミステリとして秀逸な部分もあるので、金田一少年を始めて知った人にまずおススメしたいエピソードだ。

(ここからネタバレ感想)本作はミステリとしては「顔のない死体」に分類される内容で、被害者と加害者の入れ替わりというオーソドックスな手法がとられている。それでもミステリとして秀逸なのは、被害者の顔が潰されているにも関わらず身元がはっきりしている(=顔を潰す合理的なメリットが一見するとない)ことや、橘川が舞台となる悲恋湖にいないことが「被害者と加害者の入れ替わり」という真相を見えにくくさせているからだ。また、美雪が負傷したことに対する負い目から率先してボートに乗り、結果犯人に殺されるという「悲劇の人物」としての演出が真犯人の計画・動機を巧妙にカモフラージュしている所がまた凄い。

ミステリとしての巧妙さもさることながら、やはり「S・K皆殺し」という衝撃の動機が強烈。あれだけ巧妙に橘川を殺して入れ替われたのだから、もうちょっと知恵を働かせたらターゲットを絞れたのではないかと正直思わないでもないが、やはりこの狂気の動機あってこその「悲恋湖」だと思う。(ネタバレ感想ここまで)

 

3話「オペラ座館殺人事件」

オペラ座館殺人事件」は原作の記念すべき最初のエピソード。歌島のオペラ座館は後に二度も(37歳の事件簿も含めると三度)殺人が起こる呪われた土地であり、正に金田一少年シリーズの原点とでも言うべき作品だ。

アニメ版の「オペラ座館」はかなり気合を入れて作られており、犯人や設定など改変・脚色されているが、このドラマ版も同じく大幅な改変がされており、演劇部員の早乙女・仙道・神矢がミス研部員の鷹島・真壁・佐木に置き換えられている、演劇部顧問の緒方先生がカットされている等の変更がある。特にドラマ版の鷹島は本作に加えてシーズン2の「墓場島」でも重要な役を担っており、原作で潔癖症の地味キャラという印象しかなかった鷹島の設定がいじられているのが初代金田一少年を語る上で外せないポイントと言えるだろう。ネタバレになるので詳しくは言えないが、ドラマ版の鷹島は何というか、二重底かと思ったら三重底だったという感じの闇の深い女なのだ。

ドラマの見所としては、当然ながら怪人「歌月」の暗躍と、オペラ座館のオーナー・黒沢を演じた夏八木勲さんの存在感ある演技だろうか。正直な所ドラマ「オペラ座館」は若い俳優が大半を占めており演技的な面では拙い部分やたどたどしい部分が目立っているのだが、夏八木さんの名演のおかげで特に終盤の展開はキリっと締まった感じがしたと思う。

(ここからネタバレ感想)本作のトリックの一部は『オペラ座の怪人』の作者、ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』からとってきたもので、ルルーの小説の方では廊下で犯人が消えるという謎として提示されたのに対し、本作では犯人が窓から海へ飛び降り自殺したように偽装するためのトリックとして利用されている。トリックは同じながら見せ方が違っているので丸パクリでないことだけは弁護しておきたい。

個人的にちょっと気になるのは二番目の桐生殺しのトリック。窓枠に沿って輪っか状にワイヤーを張り、ターゲットが窓から首を出した所を見計らって真上の部屋から引き上げ吊るすというトリックだが、滑車もなしに窓枠を支点として女性一人を吊るし上げるってかなりの腕力というか筋力がないと出来ないのでは?吊るされる本人も必死で抵抗することを思うと下から上へ引き上げる力よりも上から下へ引き下ろす力の方が強くなると思うから、実際にはあんなにうまくいかないはずだ。

原作では犯人が仕掛けておいたボウガンの矢を外しておかなかったため、犯人をみすみす自殺させてしまう大失態を犯したはじめだが、ドラマでは矢を外していたためその点は良かったと思う(結局自殺することに変わりはないけど…)。また、黒沢が月島に演技指導をしていたという改変のおかげでドラマは1話完結ながらも物語として深みが出ていたのも評価ポイントの一つである。(ネタバレ感想ここまで)

 

4話「秘宝島殺人事件」

「秘宝島殺人事件」は財宝が隠された島で起こる連続殺人で、殺人が起こる度に人形が減るというのはアガサ・クリスティそして誰もいなくなったをオマージュしたもの。

島に置かれている石像や、死体をバラバラにするという犯人の猟奇さから本作の怪人を「山童(やまわら)」だと思っている方もいると思うが、原作含めて本作の怪人の正式名は「招かれざる客」であり、犯人の正体も物語の中盤である程度は限定されてくる。特にドラマ版はツアー参加者の火村康平、茅杏子がカットされているため、より犯人が限定されてわかりやすい作りになっている。

内容は大体原作通りだが、真相判明後は原作と真逆の結末を迎えており、原作とはまた違うドラマチックな展開と演技が見所の一つだ。あとクリス・アインシュタインを当時14歳の金子ノブアキ(当時は「金子信昭」名義で活動)さんが演じていたのは小ネタとして挙げておく。

(ここからネタバレ感想)アニメ版を見た時はあまり気にしてなかったが、今回の怪人を「山童」ではなく「招かれざる客」にしたのは招待客の中に犯人=佐伯航一郎がいると読者(視聴者)にミスリードさせ、ホスト役の美作碧を容疑者圏外におくという狙いがあったと思われる。招待客に注意を向けさせる他にも、死体をバラバラにする(ドラマは胴体部分から真っ二つに切断)行為がある種の目くらましになっているのもミステリとして巧妙な部分だ。死体をバラバラにするというのは猟奇的だが、合理的に考えれば死体の運搬を容易にするためであり、そこから殺害現場誤認のトリックも導き出せるし、犯人が力のある成人男性よりも非力な女性や未成年者に絞られる。

はじめはトイレの中蓋から航一郎の変装を見破ったが、改めて見るとこれだけで碧が男性ではないかと疑うのはちょっと無理があるかな…ww。あの状況では彼女(彼)が必ずしも用足しをしていたと断定は出来ないからね。(ネタバレ感想ここまで)

 

5話「首吊り学園殺人事件」

5話は「首吊り学園殺人事件」。原作初期のエピソードで「異人館村」と並んでアニメ化されていない話だが、これはトリックの問題ではなく、物語の背景となるいじめ描写がかなり陰惨で、被害者も胸糞の悪い人物だったことも含めてアニメに向いてなかったからではないかと思う。ただ、ミステリとしては、はじめを途中まで完全に騙したという点でシリーズトップクラスの知能犯であり、犯人自体は犯行計画において全くミスをしていなかったというのもそれを裏付けている。

原作は四ノ倉学園という予備校を舞台にしているが、ドラマは不動高校の特別クラスで起こった事件に改変されている。つまり、「学園七不思議」に次いで起こった学内の連続殺人という点で原作以上に不動高校は魔所となっているんだよね…ww。まぁそもそも原作も本作含めて、不動高校の教師や生徒が殺人をやらかすヤバい学校なので、どっちにしろヤバいことに変わりはないのだが。

他にも登場人物が一部変更されたり被害者の殺害順が原作と異なっていたりと色々改変されているが、メイントリックや殺害動機、そしてはじめが犯人特定に至った手がかりなどは原作準拠だ。

ドラマの見所としては、原作にあったニワトリの首吊りというショッキングな情景の映像化や、髪がのびる絵というオカルト要素などあるが、個人的に犯人の必殺仕事人みたいな殺害シーンにはちょっと笑ってしまった。三味線屋の勇次とか組紐屋の竜を彷彿とさせるよアレは。

(ここからネタバレ感想)殺害の順番を誤認させることでアリバイを確保するトリックはミステリ小説では前例がいくつもあるが、教師という立場を利用してターゲットにのみ別時限のテストを受けさせたり、わざと重要容疑者として勾留されることでアリバイを確保したり、更には犯人の障害となる探偵を逆に利用しているのが歴代一の賢さと言われる所以だ。カンニングと筆圧の手がかりさえなければ、完全犯罪は達成していたに違いない。

ドラマは深町が描いた絵の女性の髪が何故伸びるようになったか説明されてなかったが、これは上から塗った水彩絵の具が劣化により少しずつ剥がれていった結果、髪がのびて見えるようになったとのこと。

あとこれは余談だが、本作は後に四代目でドラマ化した「獄門塾殺人事件」と少々プロットが似通っている。予備校を舞台にした殺人・いじめが殺害動機の背景・教師の立場を利用したアリバイ工作といった共通項があり、レギュラーメンバーの真壁が犯人に殺されるのではないかと怯える下りは、四代目の佐木からも見受けられた。(ネタバレ感想ここまで)

 

6話「首無し村殺人事件」

6話は横溝正史テイストが横溢する「首無し村殺人事件」。原作は「飛騨からくり屋敷殺人事件」というタイトルだが、ドラマの舞台は宮城県のためタイトルが変更されている。とはいえ、作品全体を見るとからくり要素は巽家の合わせ扉の間くらいしかないので、タイトルとしては「首無し村」の方がピッタリな気がする。また本作は剣持とはじめがお互いに「はじめ」「オッサン」と呼び合う間柄になる切っ掛けとなった事件であり、そういう意味では(事件の真相も含めて)剣持警部にとって特別な事件だったと言えるだろう。

遺産相続による家庭内の波乱や落ち武者の祟りなど「犬神家の一族」「八つ墓村」といった横溝正史の代表作を物語に取り入れているほか、顔のない死体をテーマにしているのも本作をより横溝らしくしている一因だと思う。横溝も自身の小説で顔のない死体をテーマにした作品をいくつも発表しているが、本作では顔のない死体に密室殺人を掛け合わせているのがポイントで、それがミステリとしての面白さになっているのと同時に、犯人特定の手がかりにもなっているのが優れた所だ。

あとこれは個人的には注目ポイントと言うほどでもないが、ゲスト出演として現在は政治家として活動している山本太郎氏が巽龍之介役で出演している。

(ここからネタバレ感想)一体の死体の首と胴体を切り分け二体の死体として偽装するのが本作のメイントリックだが、そこに嬰児交換猿彦というスケープゴートが組み合わさることで真相が見えにくくなっているのが巧妙。実の子供に遺産相続させるため、何十年も手をかけて育てた子供を殺すという信じがたい犯行動機もトリックに一役買っていると言えるだろう。鬼畜と言えば鬼畜な犯人だが、原作・アニメでは征丸が遺産相続人だと判明した時の彼の顔に、昔紫乃をいじめ抜いた同級生・綾子の面影があったことが描かれており、綾子本人に復讐出来なかった鬱憤をその子供に向けたという点に関しては、悪いことに変わりはないが1ミリくらいなら同情の余地があると思う。

はじめが指摘した猟銃を征丸に向けた龍之介に対する紫乃の態度だが、正直これはどっちともとれる態度であり、龍之介を助けるための行為ともとれるし、征丸を助けるためにも見える。要はダブルミーニングとして意味がある場面なのだが、実際銃が暴発して龍之介が死ぬ可能性があったとしても、それが実の息子かどうか関係なく普通は止めるだろうから、これで紫乃を犯人と推理するのは論理的に弱い。(ネタバレ感想ここまで)

 

7・8話「蝋人形城殺人事件」

シーズン1最後のエピソードは「蝋人形城殺人事件」。シーズン1で唯一前後編として放送された本作は、クローズドサークル内で推理作家・探偵・刑事といった殺人に関連した職業の人々が招待され、城主・Mr.レッドラムによって招待客が次々と殺される。正に王道のプロットでありシーズン1の最終回に相応しい内容だ。また、アイアンメイデンを用いた殺人や首切断など、トラウマ級の名場面も原作以上に盛り沢山なのがドラマ版「蝋人形城」の特徴と言えるだろう。

原作との違いは、まず明智警視が登場しない代わりに剣持が参加する。そして明智から剣持になったことにより、原作ではじめと推理を戦わせる役どころとして銭形ケンタロウというドラマオリジナルの登場人物が追加された。彼はあの銭形平次の子孫であり、これによって金田一 VS 銭形による子孫同士の推理対決が展開されるのが本作の見所である。また、弁護士・山田隆明も同じくドラマオリジナルの登場人物だが、彼は原作の坂東九三郎の役割を一部継承する。

また、本作では芸術犯罪・完全犯罪についても語られており、それに対するはじめや剣持の怒り、感情の吐露は視聴者の心を打つ名シーンであった。同じ芸術犯罪を目論む「魔術列車殺人事件」の犯人と違って、本作の犯人は壮絶な過去を負っているため、その犯人に対するはじめの訴えかけがちゃんとドラマとして成立しているのも素晴らしい点ではないだろうか。

(ここからネタバレ感想)蝋人形を利用したアリバイトリックは、換気扇のトラブルがなく、人形に打ち込むための杭を別で用意しておけば、ほぼ完璧だったと思う。あとは指輪を暖炉に誤って放り込んでしまったのも良くなかったが、指輪ってそうそう簡単に指から外れなさそうだから、これはフーダニットとしてダメ押しで加えられた手がかりと考えるべきだろう。原作では3番目に死ぬはずだった坂東はドラマだと落ちて来た鉄の十字架が身体を貫通したことで死亡するが、刺さるなんてレベルではなく背骨も貫通してたからね…ww。ちょっとあり得ない感じはするが、ある意味オカルトというか因果応報的なオチだからあれくらいでちょうど良いのかもしれない。(ネタバレ感想ここまで)

 

 

SPドラマ2:「雪夜叉伝説殺人事件」

SPドラマ2本目は「雪夜叉伝説殺人事件」。金田一少年では冬の雪山を舞台にした事件がいくつもあるが、意外にも原作通り冬に起こった事件を扱ったのは本作くらいで、撮影時期に合わせて冬設定だった原作を夏の時期に変更している事件がこの後放送される第二シーズンにはある。そもそも、本作は冬でないと成立しないトリックを用いているので、季節をいじる訳にはいかないのだけど。

怪人「雪夜叉」による殺人シーンが冒頭から描かれているが、本作はドラマ撮影ではじめと剣持が背氷村に訪れているという設定で、冒頭の雪夜叉による殺戮シーンもドラマ撮影のものだったという劇中劇の構成がドラマに良いアクセントを与えている。

そして今回から明智警視が登場。当初は噛ませ犬的な扱われ方であまり良い役どころではなかったが、後にはじめと良きライバルとして関係を育む眉目秀麗な刑事である。だが、ドラマで明智警視が登場するのは初代のみで、原作の明智が持つ嫌味要素をより強調させた性格の悪い刑事として描かれている。彼の性格は後に登場する「金田一少年の殺人」でも変わらず、ドラマの明智は最後まで噛ませ犬だった。本作では、そんな性格最悪の明智警視(+真壁) VS はじめ(+剣持)」の推理対決が物語の見所の一つになっている。

原作との主な変更点は、比留田の性別が男性から女性に変更され、比留田の役割を高田洋一というドラマオリジナルの人物が担うこと。事件の元凶となった飛行機事故がバス事故に変更されたこと。鬼火の証言をした老人がより重要な登場人物になったこと、この三点くらいだろうか。他にも一部登場人物がカットされている等細かい改変が見られる。

それから、物語の最後に堂本光一さん演じる銀狼怪奇ファイル」の主人公・不破耕助がはじめと会話を交わしているが、次クール放送するドラマの主人公が前クールのドラマの主人公と絡むのは、日テレドラマ定番の演出である。

(ここからネタバレ感想)犯人の殺害動機――母親を見殺しにしたテレビクルー達への復讐――は、雪夜叉が生まれることになった元の伝承をなぞったような動機だが、ドラマでは綾辻親子が背氷村の出身で、そもそも親子がバスに乗ったのは綾辻の祖父に追い返されたことが原因だった。その追い返した祖父が鬼火を目撃した老人だったという、より因縁めいた物語としてドラマは描かれている。原作で殺された比留田は死ぬことはなく、バス事故当時も足を負傷して綾辻親子のことは全く知らなかったので、原作に比べればまだ同情の余地があると言えるだろう。

メイントリックの氷橋作りは、言うまでもなく極寒の中一人で作らなければならない体力と気力が求められる作業だが、この後に明石を殺して雪だるまに埋め、それから加納を殺しに行ったのだから、物凄いスタミナと精神力の持ち主だったんだなと驚くばかりだ。(ネタバレ感想ここまで)

 

 

連ドラシーズン2

はじめの引っ越しというエンディングでしばしの別れを告げたシーズン1から、年末の「雪夜叉伝説」を挟んで約1年後にシーズン2が放送された。シーズン2は前後編のエピソードが3つもあり、より作品としての厚みが出て来たのがシーズン2の大まかな特色と言えるだろう。また、CM明けに容疑者一覧が追加され、死亡した人物の写真には「DEAD」の表記が付くようになった。

 

1話:「悪魔組曲殺人事件」

シーズン2の初回となるエピソードは「悪魔組曲殺人事件」。原作は漫画ではなくドラマCDで、トリックも画ではなく音がポイントとなっているのが本作の特徴だ。悪魔組曲はドラマ版とアニメ版があるが、どちらも登場人物の変更や設定の改変が為されており、同じエピソードでも味わいは全く違い、推理のプロセスも全く違っている。劇中で流れる悪魔組曲も当然ながら違うので、聞き比べてみるのも一興ではないだろうか。

シーズン2の初回ということもあってか、ドラマ映えする派手な演出もあり、特に冒頭の雷鳴轟くなかでの「悪魔組曲」の演奏シーンや、最初の事件の悪魔のステンドグラスなどは印象的な場面だったと思う。普通に考えたらあり得ないドラマ的演出も当然あるが、そんな演出に紛れ込んだ伏線の秀逸さもミステリドラマとして私は評価している。

ドラマで御堂周一郎を演じたのは寺田稔さんだが、彼は市川崑監督の「犬神家の一族」で猿蔵を演じており、本作でもまたアクの強い役を演じることになった。

(ここからネタバレ感想)原作とアニメでは、最初の被害者が握っていた鍵が容疑者の名前そのものを指し示すダイイングメッセージだったのに対し、ドラマはもみ合いでたまたま被害者が犯人の首に下がっていた鍵を握り死亡したということになっている。鍵の本当の意味を隠すため見立て殺人を演出した点は同じだが、ドラマは鍵をバイオリンケースの鍵にしたため、それが犯人特定の材料になっているのも良い改変だと思う。

紅が御堂を誤解することになった耳の障害は、調律されていないピアノだけでなく、冒頭の雷鳴轟くなかでの演奏シーンにも伏線が張られているのが何気に凄い所である。よく見たら御堂は弟子の質問には一切答えていないことがわかるし、木やピアノに雷が落ちたのにも関わらず全く驚くどころか、反応すらしていないのだから。(ネタバレ感想ここまで)

 

2・3話「タロット山荘殺人事件」

「タロット山荘殺人事件」は「雪夜叉伝説」でも登場した速水玲香が再登場。玲香の父が経営する山荘を舞台にタロットカードに見立てた殺人事件が起こる。「雪夜叉伝説」では容疑者の一人にしか過ぎなかった玲香が今回は事件の重要人物であると同時に、彼女の数奇な運命が明らかとなるという点で非常にドラマチックなエピソードと言えるだろう。

初代における定番の怪人も登場せず、残虐的なトラウマシーンもないが、それでも十分面白いのは玲香が物語の軸として機能していることや、事件自体の複雑性・トリックの秀逸さが映像として表現されていることも大きい。特に素晴らしかったのは解決部で犯人が実行したアリバイトリックの説明。その場面は山荘内部のセットを俯瞰視点で撮影し、犯人を含めた事件関係者がどのように動いていたか一目瞭然となっているので、わかりやすいのと同時に、ドールハウスの中にいる人形が動いているような不思議な感覚があって、ミステリドラマの演出として唯一無二だと思う。

(ここからネタバレ感想)原作は冬の時期に起こった事件のため、はじめはリフトの動かない風車山に置き去りにされあわや凍死寸前の所を驚異的な知恵で見事山荘まで戻って来ている。ドラマは夏の設定で、ダム近くの川に落とされ急流に流されそうだったが、持っていたロケット花火を打ち上げ、捜索に来た美雪たちに気付いて救助してもらっている。比較的ドラマの方が現実味のある助かり方だった。

最初の伊丹殺しの時の話になるが、原作の風車と比べるとドラマの風車は小型のため、原作と比べるとだいぶ楽に見立てが出来たのではないかと思う。

そして問題の雄一郎殺しのアリバイトリックは、実際に映像で見てみると、雄一郎の部屋に行く時は美雪が戻ってくる前に美雪の部屋を通過しないといけないし、自室に戻る時は美雪がドアをノックするまでに戻らないといけない(自室から電話したことになっているからノックしてすぐ出ないとおかしい)から、結構忙しいし時間的にもギリギリだったことがよくわかる。(ネタバレ感想ここまで)

 

4話「金田一少年の殺人」

4話はシリーズ中はじめが殺人犯として追われる「金田一少年の殺人」。以前「水曜日のダウンタウン」で本作のメイントリックが検証されており、そちらから知った人も多いと思う。

有名作家の誕生日パーティーで開催された暗号解読ゲームが事件の鍵となる本作は、原作通りやると1話で収まらないため、暗号の内容と答えが改変されており(解読のプロセスは同じ)、それに伴い一部事件関係者の名前や職業が変わっている。

いつきや明智警視といった過去エピソードからの登場人物がいるが、双子のメイドや原作ではじめを犯人として追いかけた長島警部はおらず、その役割を明智警視が引き継ぐ。そういうこともあって今回も明智警視は憎まれ役を演じることになり、原作で明智警視がとった「ある行動」は、剣持が代わりにやることとなった。

他の作品と違い表立って犯人が怪人として現れることはないが、大量の血が流される殺人シーンはある意味トラウマもので、特にウサギの着ぐるみ(犯人)に大量の返り血がかかる場面は子供だけでなく大人にも強烈なシーンだったのではないだろうか。

また、本作で都築哲雄の娘・瑞穂を演じた鈴木杏さんは後に二代目美雪を演じることになった。

(ここからネタバレ感想)ドアからドアへと渡って移動し、地面に足跡を残さず本館に戻るトリックは、高校生のはじめならともかく、中年男性がやるにはかなりハードな気がする。あとドアノブに体重がかかるから体重が重いとドアノブが壊れる恐れもあっただろう。それに、使用人のお菊さんが本館のドアを全開にしなかったら最後のドアに届かなかった可能性もあるので、やはりそこは事前に計画したトリックとは違う即席ならではの危なっかしさがあった(でもそれが面白い!)。

原作の暗号とは違って大時計ではなく石仏の中フロッピーディスクを隠しているのがドラマ版のアレンジだが、石仏を壊さないと見つからない=偶然見つかる可能性がほぼ0という点で原作より難易度が高く、そういう所にドラマの橘五柳の性根の悪さが垣間見えると思うのは考えすぎだろうか?(ネタバレ感想ここまで)

 

5・6話「怪盗紳士の殺人」

犯人が事件当時世間を騒がせていた「怪盗紳士」をスケープゴートに利用しようとした本作は、原作とドラマでは大きな違いがある。原作でははじめ・美雪・剣持というお馴染みの三人で蒲生の別荘に赴くが、ドラマは美雪が沖縄旅行に行くため、代わりに真壁が参加することになる。更にドラマオリジナルキャラとして、真壁の弟の実(みのる)が登場。兄の下の名前「誠」と合わせてはじめから誠実コンビと呼ばれ、兄・誠の一途な恋模様と弟・実のおませさんな性格がドラマを彩る。

他にも、一部登場人物がカットされていたり殺害人数が増えていたりと様々な改変があるものの、基本的なトリック・プロットは原作準拠。ドラマの見所としては、前述した真壁兄弟や犯人の壮絶な過去がやはり印象に残る。

(ここからネタバレ感想)本作のフーダニットは、蒲生殺しのアリバイトリックがわかれば芋づる式にわかるという点でシンプルかつ意外性があり、犯人の殺害動機の壮絶さ――実父が蒲生に利用された挙句薬漬けにされて殺された――に胸を打たれた視聴者も多かっただろう。最後に死にかけの犯人をラベンダー畑へ連れて行くシーンがあったが、流石に担架とかに乗せて運んであげて欲しかったな…。いくら両肩を支えていても胸にナイフ刺さっている人を歩かせたらダメでしょ…ww。

蒲生殺しのアリバイトリックについてだが、ドラマは完全に目を潰しているのが何気にグロい。ただ、あんなにガッツリ目潰ししたらあまりの痛さで場所の把握なんて出来なさそう。ちなみにアニメ版は粘着テープで目隠しをしているよ。(ネタバレ感想ここまで)

 

7話「異人館ホテル殺人事件」

7話の「異人館ホテル殺人事件」ははじめに代わってヒロインの美雪が事件の推理をするという原作からの大幅な改変が行われた一作であり、前クールに放送されていた「銀狼怪奇ファイル」の天神学園高校新聞部が美雪の助手として登場するという別ドラマとのコラボ回でもあった。そんなある意味スペシャルなこの回は、この前の「怪盗紳士」の事件で2週連続美雪の出番がほぼなかったために、釣り合いをとるため美雪を主人公としたエピソードにしたのだろうが、(その弊害なのか)視聴率はやや下がって19.5%とシーズン2内で最低の数値となった(それでも高いよね)

また、舞台となる異人館ホテルは原作で設定された冬の函館から夏の横浜へと変更。それに伴い怪人「赤髭のサンタクロース」も「冥界の道化師」というピエロの仮面・衣装を身に着けた姿の怪人に変更されている。そして原作ファンなら当然知っているはずだが、原作では〇〇が犯人によって殺されるという衝撃の展開が待ち受けている。幸いにもアニメ版でその人物は一命をとりとめており、ドラマではそもそも登場していないため難を免れている。

大幅な改変と1話完結という構成にしたためか、今回はフーダニット的な面白みが減っており、個性派揃いの劇団員たちが花蓮を除いてほぼモブ扱いになっていたのは少々残念なポイントである。それでも大女優である鰐淵晴子さんを万代役に起用したり、冥界の道化師による豪快な殺人シーンがあったりと、しっかりドラマとして面白い作りになっているのは素直に評価すべきだろう。

(ここからネタバレ感想)クセの強いスプーンの握り方は兵頭(原作は不破)警視と花蓮が双子であることの伏線…というにはあまりにもあからさま過ぎるが、これは原作でもあった描写なので致し方ない所。それにしても花蓮は整形済みの兵頭を見てどうして姉だと気づいたのだろう。確か双子ってシンクロニシティが起こりやすいと言うから動物的直感で見抜いたのだろうか。

それはさておき、意外な犯人を軸に置いていることもあって今回のエピソードにおけるハウダニット自体は実は小粒。万代の毒殺トリックは台本のト書きだし、虹川殺しにおけるアリバイも赤のカラーフィルムを利用した部屋の誤認トリックだから、シリーズ中かなりコスパの良い犯罪計画だったのではないだろうか。ただし、原作は万代殺しの毒殺が失敗した時の保険としてトリカブトを塗った毒の真剣を用意していたので、原作の方がコストはかかっていると思う。(ネタバレ感想ここまで)

 

8・9話「墓場島殺人事件」

シーズン2最後の作品は「墓場島殺人事件」。戦時中多くの兵隊が死んだ島でサバゲ―合宿に来た大学生らと、はじめ達不動高校のメンバーが島に閉じ込められ、そこでサバゲ―のメンバーが次々と殺される。この殺害の場面が本作では特にトラウマレベルのシーンとなっており、爆殺・寝袋で寝るターゲットをメッタ刺しと、今では放送出来ない描写がゴロゴロ出て来る。

原作では玉砕により死んだ「亡霊兵士」が本作の怪人だったが、ドラマは終戦を知らないまま島に潜伏している「生き残り兵士」がはじめ達を脅かす存在となる。以前視聴したアニメ版と比べると、ドラマの方が極限状況下におけるサバイバルという面が強調されており、その状況がストレスとなって真壁が逆上、はじめを逆恨みし、しまいには暴走するというのがドラマ版ならではの見所だ。原作では美雪がいたのだが、ドラマでははじめと美雪が喧嘩したため、はじめは森下・鷹島(彼女も原作には登場せず)・佐木・真壁と共に墓場島へ行くことになる。

不動高校のメンバーだけでなくサバゲ―メンバーの方も変更があり、ケイン・コスギさん演じる岩野は(中の人に合わせて)日系人という設定になった。他にも、殺害の順番やダイイングメッセージの文面等の細かい改変はあるものの、基本的なトリックは原作通りだ。ただし、犯人像は改変によって原作とはかなり違っており、本作だけなら共感出来るが、過去作の「所業」を考えると素直に共感出来ない犯人になっているのがドラマの面白くもやや残念なポイントと言えるだろう。

(ここからネタバレ感想)鷹島を檜山の共犯者にしたことは、原作未読勢にとっては意外な犯人として効果的だったかもしれないが、東京の不動高校へ行ってからの彼女と言えば、

・真壁のゴーストライターとして影に徹し、事件後は真壁をコキ使う(学園七不思議)

・月島冬子の自殺に関わっていたため犯人に殺されかける(オペラ座館

という具合に事件の容疑者や犯人のターゲットになっているため、岩野らサバゲ―メンバーへの復讐を胸に日常を送っていたという設定がちょっとというかだいぶブレてしまっている。特にオペラ座館の事件では冬子を自殺に追い込むことをしておきながら反省もせず役を演劇部のメンバーと取り合っていたという始末だから、岩野たちに復讐する資格は正直ないと思う。それにもしオペラ座館の時に殺されていたら、そもそも今回の計画自体頓挫していただろう(もしかしたら檜山単体で頑張ったかもしれないが)。

鷹島に関しては正直共感性は低くなってしまったが、檜山は原作通りアリバイ作りや共犯関係を隠蔽するため憎まれ役に徹し、最後は鷹島をかばって岩野の凶刃に斃れ帰らぬ人となった。その分岩野は原作以上にクズな形で描かれ、最終的にはじめによる怒りの鉄拳制裁を喰らっている。原作でもはじめを身代わりに利用したりとなかなかのクズではあったが、ドラマは最後の悪あがきで大幅に減点となった感じ。(ネタバレ感想ここまで)

 

 

映画:「上海魚人伝説殺人事件」

初代・金田一少年の最後を飾るのは小説が原作の「上海魚人伝説殺人事件」。最終作ということもあってロケ地はスケールアップ。上海という実在の都市を舞台にし、これまでのフィクションとして作られた世界観とは異なる、リアルな上海の都市模様が写されているのが見所の一つだ。

また、雑技団内で起こった連続殺人がテーマとなる本作は実際に舞台上で雑技団による演戯が行われるほか、オリジナルの魚人遊戯も制作されており、推理モノということを忘れて一つのエンターテイメントショーを見る楽しさがある。勿論、本作で中国の警察から最重要容疑者として疑われる小龍(シャオロン)とはじめの逃避行や怪人による殺人場面、(ジャニーズではお馴染みの)ローラーブレードを駆使したはじめの逃走シーンなど、シリーズ定番の演出や映画らしい派手な展開もある。そんな中にしれっと事件解決のヒントを盛り込んでいるのも心憎い。はじめと美雪が最後にお互いの思いを伝え合って終わるという、シリーズ最終作としてキチンと完結させた内容になっているのも評価すべきポイントだ。

ゲストとして水川あさみさんが雑技団団員の楊蕾麗(ヤン・レイリー)を演じているが、水川さんは本作が映画初出演であり、当然演技も心許ない。しかし、それを物語に上手く組み込んでいる所にキャスティングの妙がある気がする。そして、中尾彬さんが出演しているのも横溝正史のファンとしては見逃せないポイントだ。中尾さんはかつて映画「本陣殺人事件」で金田一耕助を演じたことがあり、そういう意味ではジッチャンと孫のコラボも為されていたということになる。

(ここからネタバレ感想)映画化された作品だからさぞトリックも大がかりで派手なのかと思いきや、本作は凶器消失トリックやアリバイトリックといった細かいトリックを組み合わせているのが特徴。また、連続殺人と見せかけて実は不連続殺人事件(団長は自殺)だったという金田一少年における定型を崩した事件なのも、本作の異色さに影響を及ぼしているのではないだろうか。

前述したキャスティングの妙というのは、まだ演技の拙い水川さんを中国人を装った日本人という役に組み込んだ点であり、その拙さが日本語に慣れていない中国人という形で違和感なく活かされているのが何気に凄かった。このキャスティングと劇中の役の組み合わせの巧さは堤幸彦監督を評価する上で重要なポイントの一つであり、「TRICK劇場版 ラストステージ」で水原希子さんが演じた呪術師・ボノイズンミからも、水川さんの時と同じキャスティングの妙を感じた。(ネタバレ感想ここまで)

 

さいごに

今なお根強い人気を誇る初代金田一少年を改めて見ると、やはり弱冠15歳にして金田一はじめを演じた堂本さんの演技力もさることながら、難解な推理パートの台詞をキチンと覚えて演技しているというのがまた凄いと思う。普通に見てしまうけどよくよく考えたらあの年頃で膨大な台詞を覚えてちゃんと感情表現を演技として魅せるってかなりハードワークだし、今15歳で主演をはれるような人ってまずいないんじゃないかな。

原点回帰をテーマにした四代目もコミカルとシリアスのメリハリがあるという点では初代と同じだが、それでもやはり違いを感じるのは演技面といった違いも勿論あるけど、初代のコミカル部分は当時15歳だった堂本さんの身の丈に合ったゆるさ・初々しさが滲み出ている感じがする。一方の四代目の山田さんは当時20か21歳くらいの時だから、当然バラエティ番組やドラマの経験が豊富であり、それが反映されていることもあって、コミカルな部分も「やり慣れた感」が強い。それに、初代は犯人が自殺するエピソードが多いため、はじめが犯人に怒ったり涙を流して訴えかけたりする場面も多く、そこで堂本さんの演技力が発揮されると同時にはじめの素人探偵としての魅力が引き出されるので、その辺りも初代が人気となった理由の一つではないかと思う。二代目以降は犯人も自殺することがなくなるし、はじめが必死に訴えかけるような場面も自然と減っているので、そういう面でも初代は(難しい部分は多々あったと思うが)エピソード面でのアドバンテージがあったと思われる。

 

主演だけでなく美雪や剣持といったレギュラー陣の関係性も、初代~四代目までを全部見るとやはり初代が一番安定していると思う。二代目・三代目のチャレンジ精神は評価したいが、美雪・剣持の性格・行動のエゴが強くイラっとする所も少なからずあった。初代はどれだけ事件が悲惨でも後味良く物語は終わっているが、そういった夾雑物のないレギュラー陣の好演も影響しているのではないだろうか。

それから準レギュラーとして登場した真壁誠も初代を語る上では外せないポイントだが、本シリーズにおける真壁の扱いはドラえもん」のスネ夫というのが一番ピッタリくる。お坊ちゃま体質で長いものに巻かれ、良い所もあるが基本的にはダメ男というのがドラマオリジナルの真壁像と言えるだろう。

 

以上が初代金田一の総括となる。怪人やトラウマ的な殺人場面が引き合いに出されがちだが、それだけが初代の魅力でないことがわかっていただけたら幸いだ。