タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

富豪刑事 Balance:UNLIMITED check-3「金は戦力なり」視聴

 久~しぶりの富豪刑事感想。

(前回と前々回の感想はこんな具合でした↓)

tariho10281.hatenablog.com

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check-3「金は戦力なり」

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今回のサブタイトルは西洋の格言「金は権力なり(Money is power)」をもじったもの。似た表現として「One law for the rich and another for the poor.(金持ちと貧乏では法律が異なる)」などがあるが、それだけ金と権力は切っても切り離せないことを端的に示した格言と言えよう。

 

再放送から視聴した方以外は約三か月ぶりの視聴となるが、前回香港出張エンドを見ていた私は「次回は香港での大捕物みたいな感じかな~」と思っていた。が、予想に反して出張時の経緯はすっとばして今回は新幹線での立て籠もり事件が描かれた。

そのため正直「え、香港では何も無かったの?な~んだ」と思ったが、幸か不幸かコロナウイルスによる放送延期で2話と3話の間に大きなブランクが生じたため、個人的にはそこまで大きな肩透かしでなかったという感じ。むしろそのブランクがよくドラマで最終回に主人公が外国へ出張し、続編の初回で日本へ戻ってくるというお馴染みの演出に繋がっていて結果的に怪我の功名とでも言うべき演出になったと思っている。

 

さて、冒頭で大助の祖母・喜久子と加藤が初対面するが、原作既読勢の方はご承知の通り、この喜久子が原作の神戸喜久右衛門に相当し、執事の服部(アニメオリジナル)は原作の鈴江のポジションに付くことになった。ただ、喜久子は喜久右衛門とは真逆のキャラクターで、旧家の大奥様・厳格な家長を絵に描いたような人物。

どうもここの一連の場面を見ていると、この喜久子の存在が大助の性格形成に影響を及ぼしたのではないかと思う。勿論これは良い意味ではなく悪い意味での影響であり、大助が最新鋭のガジェットを用いたり上下関係にこだわらない振る舞いをするのは、旧弊的な祖母に対する反発心がもたらしたものではないかと推察するが、まぁこの辺りはおいおい言及されるかもしれないので、今回はこの辺りにしておく。

 

有閑マダムと金のために罪を犯す若者

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名古屋へ行く途中、加藤は新幹線で一人の青年と言葉を交わす(ここでの加藤の対応、人道的には真っ当なのに現代社会という色眼鏡のせいかすっごくうざく感じるのよね…ww)。この青年が立て籠もり事件を引き起こし、それによって加藤はこの青年を「救うべき若者」か「罰すべき凶悪犯」かで懊悩する羽目に陥る。

 

前回の記事でも言及したが、今回加藤が懊悩したのはトラウマとなった過去の銀行立て籠もり事件とシチュエーションが似ていたせいもある。そこで女性行員を負傷させたことが彼にとってのトラウマとなったみたいだが、その場面を見る限り、どうもその女性行員は俗に言うストックホルム症候群で撃たれた犯人に同情して加藤に銃を向けた感じがするし、加藤も自己防衛のため発砲しただけで他意はないだろうから責め苦をそこまで負わなくても良いと思うが、警察官として「守るべきものを傷つけた」という点が致命的だったのだろう。元部下である星野もその点を突いて批判しているのだろうが、少々手厳しい感じがする(女性行員に銃を向けられた事情を知っての批判かどうかは不明だけど)。

 

青年の犯行動機に関しては加藤と出会った下りで妹のことを口にしていたし、動画配信サービスの「チェーンチューブ(ChainTube)」による仮想通貨のことも通行人によって言及されていたので、妹の手術代を捻出するという動機を推理するのはそう難しくなかったと思う。そんな訳で、加藤が懊悩する点に関して言えば「冷静になれば気づけたのではないかな?」と思わないでもない。

 

それよりも今回私が刺さったのは犯人である青年と人質となってしまったおばさん連中の対比的な図である。

前述したように青年は浪人生で予備校に通っているため資金的余裕がなく犯罪行為によって妹の手術代を捻出しようとした、持たざる者として描かれている(腹をすかせていたから食費もケチっていたフシがある)。一方のおばさん連中は「横恋慕スターライツ」(通称「横イツ」)の解散ライブのため新幹線ではせ参じた人たちで、パッと見た感じ中流階級以上の有閑マダムとして描かれている。

一方は金のために犯罪を犯さざるを得ない若者で、一方は有り余る金を推しアイドルのために費やす中高年。実に対照的な不平等の図、格差社会がこの回では描かれている。

 

あ、言っておくけど今回の有閑マダムたちは不平等な社会を象徴する存在として配置されたようなものであって、1話のアブラー首長国王子みたいな利己的な考えで不均衡をもたらす愚か者とは全然別モノだからね。あのおばさん連中の中にだって自分で一生懸命働いた金で推しに投資している人もいるかもしれないし。

 

そんな社会的不平等を生じせしめるのが金であり、資本主義の批判対象となる材料なのだが、不平等を是正するのもまた金なのだ。

今回の場合、大助によって青年の妹の手術費用が保証され(最後の「今回計上された費用」一覧には記載されていなかったが…)、解散ライブに行けないおばさん連中には「横イツ」を現場に来させて(!?)特別ライブを開催することで両者の損失を補った。カオス過ぎる展開だったが、「横イツ」を視聴者各々が思う推しアイドルに当てはめて妄想すると「何て手厚い補償…!!」と大助をはじめとする神戸財閥の懐の広さに敬服するばかり。

 

蛇足

・「犯罪行為をライブ配信して仮想通貨を得ようとしているのに、何故管理者は配信を強制停止しなかったのか?」と疑問に思った方もいただろうが、これについては以下のサイトで管理システムの違いなどを挙げて疑問を解消してくれている。

www.gizmodo.jp

こういった最新鋭のガジェットは社会的な身分といった格差を克服するシステムを備えている一方で、今回の事件のような無法者を生み出す道具にもなりかねないのが如何ともしがたいところ。まぁこれはどんなツールにも言える話なのだが…(ハサミだって使いようによっては便利な道具になるし、人を殺せる凶器になるのと同じ)。

 

・大助が最新鋭のガジェットやAI執事を駆使するのは単に便利なツールとして使う以上に旧弊的な身分・階級制度に反発する心理があるからだろうと今回の話で思った次第。加藤に対してタメ口なのも別に加藤を見下している訳ではなく対等な人物として見ている表れだろうし、(形式的にでさえ)へりくだる態度をとらないのも旧弊的な階級制度に反発してのことだろうと思う(人間の執事を持たないのも同じくそのため)。

となると、鈴江の立場は大助の秘書ではなく(OP映像にもあるように)対等な配偶者(パートナー)と考えるべきだな(劇中で明確に言及されていないが)。

 

・「横イツ」特別ライブはおばさん連中が逆上する展開を見越して大助が用意したとは思えない。流石にそれだと準備が間に合わないだろうから、立て籠もり事件が発覚した段階で大助がヒュスクにリサーチさせておき、損失補填として準備を進めていたのだと思われる。だから逆上からのライブ開幕は単にタイミングが良かっただけの話

あと言うまでもなく床に倒れていたおばさんは青年によって負傷したのではなく事件のショックで倒れていただけ(もしかすると推しの最後に会えないショックもあったかも)。