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富豪刑事 Balance:UNLIMITED check-9「金で開かない扉はない」視聴

 溝は出来たが隔絶ではない、ということがよく表れた回。

 

check-9「金で開かない扉はない」

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今回のサブタイトルは英語のことわざ「a golden key opens every door」を訳したもの。同じ意味の日本のことわざに「地獄の沙汰も金次第」があるが、これは2話のサブタイトルと同様、金の万能さを示した言葉である。

 

前回、死亡していたはずの茂丸の生存が明らかとなり、茂丸の凶刃に仲本と武井が斃れ帰らぬ人となる。今回はそれによって大助と加藤の間に溝が生じ、また捜査一課の介入によって現対本部が見張られ加藤は重要参考人として拘束される。始めこそ関係の悪化を予感させる展開が見受けられたが、結果的に今回は様々な結びつきが生じた回であった。

 

死の溝が融和を生ず

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バディものあるあるに物語の途中で両者が仲たがいをして一旦は別れてしまう展開がある。本作と同じ岸本卓氏がシリーズ構成を手掛けた「啄木鳥探偵處」も途中で探偵役の石川啄木と助手役の金田一京助が仲たがいをする展開があるが、色々あって関係が修復される。

この「色々あって」の部分は大抵自分が相手のことを誤解していたとか、両者が考えを改めることによって関係が修復される、というのが基本パターン。今回は大助と加藤の間に溝が出来たので、完全な修復は事件決着後になるだろうが、問題はそこではない。

前述したように、今回は溝が出来たことによって別の所の関係が修復されるというバディものとしては比較的珍しい展開が注目すべき点。仲本と武井の死は「二度と会えない」という点で大きな溝となってしまったが、それが結果的に現対や一課の結びつきを強くしたという効果をもたらしている。

 

特にそれが如実だったのは加藤と星野の二人。過去の立て籠もり事件が原因で銃を撃つことがトラウマとなり現対本部へ送られた加藤。この時星野は加藤が自身のトラウマを発砲を許可した上司の武井のせいにしていたと誤解し、それが切っ掛けで加藤に対し辛辣かつ冷笑的な態度をとることとなった。

しかし実際はトラウマを抱えた加藤は刑事を辞めるつもりでおり、武井が当時言っていた「認めないぞ!」という発言も星野が勘違いした「(加藤のわがままを)認めないぞ!」ではなく「(辞めることを)認めないぞ!」という意味だった。ほんのささいな誤解ではあるが、この誤解が武井の死によって解消されているのが何とも言えない所で、もし武井が生きていたら加藤の辞表も当然星野の眼に触れることがなかった訳であり、考えれば考えるほどに重すぎる代償だったという感じがするのだ。

 

さて一方仲本の死は現対本部のメンバーの結びつきを強くしたと言えるだろう。彼ら自身特別仲が悪かった様子はないが、それぞれバラバラの方向を向いていたものが事件解決へと向きを揃えて協力したのは、身近にいた者の死があってこそだと思う。弔い合戦とまではいかないにせよ、一課に対する反骨精神も多少はあったはずだし、室長の清水をはじめとする彼らのしたたかさが良い具合に作用していた。

また、島流し状態で他の部署とのつながりが皆無だと思われていたが、実は総務部長とのつながりがあって通信に必要な備品を調達出来たというのも見逃せない点で、隔絶されていたものが実際は地続きだったのだから、この辺りも今回のテーマ性に沿っていると思われる。

 

これは大助と加藤にしてもそうで、溝こそ生じたものの隔絶はせず、両者とも黒幕に向かって動いているのだから、どちらかが死なない限り融和は遠からず訪れるのである。

 

さいごに ~二人が克服すべきこと~

アニメは全11話のため残り2回となるが、あとの2回は事件の決着と茂丸の犯行動機がメインとなるだろう。妻や警察関係者を殺してでも達成しなければならない野望とは一体何か気になる。

また、大助と加藤がそれぞれ黒幕の茂丸に近づいたことで克服しなければならない部分が見えて来たのも注目ポイント。加藤は言うまでもなく銃が撃てないトラウマの克服で、終盤大助が窮地に陥っていた場面でも誤って大助を殺してしまう=守るべきものを傷つけることを恐れて撃てずじまいだったが、加藤は克服出来るのだろうか?それとも克服しないで解決出来る方策があるのか(アタマが回るキャラじゃないから多分ないと思うけど…)。

そして大助は茂丸の克服。父が母を殺すという子にとっては許せない罪業をどう処理するのか。いやそれ以前に大助の武器であるガジェットを無効化する技術を持った相手とどう戦うのかが問題だ。ワイン大好きおじさん…じゃなかった、ワインスキーとかいう武器商人の用心棒というオマケ付きだしね。