タリホーです。

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富豪刑事 Balance:UNLIMITED check-2「愛は多くを成し得るが、金は全てを成し得る」視聴

 サブタイトルは英語のことわざ「Love does much, money does everything.」を訳したもの。

類似の言葉は「Love is potent but money is omnipotent.(愛は有能であるが金は万能である)」「Money talks.(金がものを言う) 」「Money will do anything.(金さえあれば飛ぶ鳥も落ちる)」などがある。

 

check-2「愛は多くを成し得るが、金は全てを成し得る」

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今回はグラビアアイドル・星田アキコのオーバードーズ(過剰摂取)による薬物中毒死から端を発した違法ドラッグを売買する暴力団の摘発が描かれた。

 

犬も歩けば何とやらで、帰庁の途次新宿駅前でコントを行っていた芸人からメスカリンの臭いを嗅ぎつけた神戸は、その二人を逮捕。取り調べを行う。

ja.wikipedia.org

言うまでもなく、メスカリンは麻薬であるが、その臭いを神戸が知っていたというのはどういうことだろう?

薬物の知識は書物でも得られるが臭いとなるとそれを嗅ぐ機会はかなり限定される。メスカリンの場合、1971年に向精神薬に関する条約」で国際的に禁止されているが、唯一アメリカのネイティブ・アメリカン・チャーチの儀式でメスカリンを含有したサボテンのペヨーテの使用が認められていることから推測するに、神戸は過去にネイティブ・アメリカン・チャーチの儀式に参加したことがあるのではないだろうか?

 

……いや、単にかつて麻薬絡みの事件を捜査した経験があるってだけの話で、ネイティブ・アメリカンとの交遊があった可能性の方が低いか(神戸財閥の人間だからそういった外交経験もあるかな~とは少し思うが)。

いかんせん神戸は過去を読み取りにくいキャラクターだけに憶測・推測の域を出ないが、取り留めのないことを考えるのも一つの楽しみ、という訳でこの話はここで終わり。

 

神戸の過去は読み取れなかったものの、彼の性格は少しずつ見えてきて、少なくとも一般庶民が食べるものに拒否感を示したり蔑視するような人間ではないことがわかった。

食べたことのないものを受け入れる、しかもそれが普段口にしているものより低いレベルのものとなると案外受け入れるのが難しいが(ほら、日本人が海外旅行先――特に発展途上国――の料理を美味しくないとか見た目が悪いと言ってけなす、ああいう感じ)、それが出来るって長所の一つだと言えるよね。

 

金と心の必要条件・十分条件

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前回も豪快だったが今回も豪快な解決手段。それは権田原組が主催するドラッグ・パーティーの会場となった「ザ・タワー」を830億で買収し、そこに催眠ガス弾をぶち込んで一斉検挙、というやり方だ。

「他人のビルディングに催眠ガス弾をぶっ放したら問題ありだけど、自分が買った(=所有する)土地に催眠ガス弾をぶっ放すのだから文句ないだろ?」という理屈だろうが、まったく、よくやるよ(笑)。

 

相変わらず加藤は神戸の「金でものを言わす手法」が気に入らないようで、物語序盤における取り調べで最新鋭のガジェットを使い、100万で薬物売買の情報を得る手段よりも、ベテラン刑事・仲本長介のように相手の情に訴えかける「泣き落とし的手法」こそが理想だと信じてやまないタイプの人間だが、さ~て、これはどうでしょうかねぇ?

一見すると仲本の「泣き落とし的手法」は相手に寄り添っていて良い印象を与えるが、実際のところは無責任で非情なのだ。「全部吐いてやりなおせ」とは言うが彼の今後の人生を物質的に支援する訳ではないし、「たった一人でお前を育て上げたおふくろさんのことを思うと、おれはやりきれねぇんだ」と言うものの、いちいち世の犯罪者のおふくろさん連中に同情していたら精神的にもたないはずだ。

だからあの一連の手法は加藤が言うような「心と心のぶつかり合い」などではない。長年の経験に基づくマニュアル的手法であって必ずしも血が通っているとは言えないものなのだ。

 

むしろ、非情とも思える神戸の手法の方が、見ようによっては相手を更生させるのに有効的ではないかと思うのだ。

あの芸人二人は間違いなく違法薬物所持の前科がつくことになる。前科者が社会的にどういう風に見られるかはニュースを見ている読者の方々ならおわかりだろう。それが資金面に余裕のある人ならば身の振り方にも選択肢がまだあるのに対し、彼らは駅前でコントを披露し日銭を稼ぐレベルの零細芸人。何をするにしても先立つものは金なのだ

そんな彼らを更生させるには愛より金の方が重要ではなかろうか?

まぁ、「あの時かけてくれた一言が心の支えに…」云々で身を立て直すタイプの人もこの世の中にはいるけれども、それは自己管理の上で成し得ることであって、本人にそれだけの能力がない人間には無理だ。現に、彼らは神戸の1万円の投げ銭によってコントを途中放棄している。それだけ志の低い人間なのだから、愛よりも金の方が有用だということになる。

要するに、愛は更生に必要な条件であるが十分な条件ではない。一方で、金は更生に必要かつ十分な条件なのだ(倫理的な面を考慮から抜いたら、だけどね)。

 

金と心に関する話はこれだけではない。

今回の事件の解決手法の中には「週刊文秋」の記者・三田彰の買収(500万)も含まれている。加藤的には既知の知り合い、しかも以前目をかけたことのある彼を金で買収した神戸が許せないという思いがあるだろうが、この辺りの経緯を考えると非情さというものはあまり感じられない

神戸は加藤がどういう風に動く人間か、そしてその行為が必ずしも成功するものではないことを事前に知っていただろう(事実、加藤は過去に立てこもり事件で失態から重傷者を出している)。加藤はパーティー会場に潜入し薬物売買の情報が入った梅津のスマホを奪うことが目的だったが、銃が持てないトラウマを抱えた彼には自衛手段がほぼなく、相手に返り討ちに遭った場合、彼だけでなく薬物売買の情報も闇に葬られた可能性が高かった(そもそも、バレた時の対策を立ててないのだから向こう見ずな潜入だった)。

そう考えれば加藤をカバーしてくれる人間を保険として潜入させておくという考えは至極合理的なものだ。

「だったら、三田じゃなくてもプロの人間を雇えば良いではないか」という意見もあるかもしれないが、プロを雇う資金があってもそんな人物をすぐに現場によこせる時間的余裕はなかったに違いない(鈴江はヘリ操縦要員だから勿論無理)。だからこそ「加藤さんのためなら命かけれる」と言った三田が選ばれたのだ。

ここで依頼ではなく買収にしたのは、義理というのがいかにいい加減な代物かを神戸が弁えていたからだと思う。昔の封建制度じゃあるまいし、いくら恩義を受けた相手が窮地に陥ったからといって三田が100%加藤を助ける保証はどこにもない。その責任を果たさせるには買収という契約的手段をとるのは妥当ではないだろうか。それに潜入先は薬物を扱う暴力団主催のパーティー生きて帰れる目算が低い仕事をタダでやるなんて、よっぽどのアホでない限りは引き受けないから、相応の報酬が支払われるのは当たり前である。

 

あ、「義理がいい加減な代物」とは言ったけど、神戸は義理を軽んじるような人間ではないと私は思っていて、それを裏付けるのが三田にふるまった特注カップラーメン(10万円)だと言いたい。劇中で神戸が食べたカップラーメンは加藤が用意したものか、それとも三田が用意したものかは不明だが、三田が用意したものだと仮定すると、これはカップラーメンのお礼返しと言えるのではなかろうか?

三田が今回の買収にのったのは、加藤に対する義理立てもあっただろうが、神戸のカップラーメンのお礼返しが想像以上のものだったため、それに対する義理立ても多少はしなければならないという意識が向いた可能性もある。「自分のことを本気で叱ってくれた人間」に義理を感じる男なら、「自分のために10万円で特注カップラーメンを作ってくれた人間」に義理を感じないはずはないからね。

 

さて、こうやって色々振り返ってみると、神戸大助という人物はエキセントリックで、正義で動くというタイプではないけれども、かといって非情ではないことが窺える。

(1話の強盗ごと車を落とす手法は非情だったけどね…ww。でもアレは神戸が「悪党だからそれ位の犠牲になるのは仕方ない」と思っていたと弁護出来なくはない)

そして解決手法は何でもアリな乱暴さがある一方で、理知的・合理的。また彼自身が万能ではなく、鈴江のような協力者やヒュスクといったAI によって支えられている。手段が異常なだけで目的は正当だから「うっわ、ヤな奴!」とはならないのだ。

 

そういや神戸鈴江って大助の身内の者なのはわかるが、続柄は何だろう?原作では浜田鈴江という神戸喜久右衛門の秘書が出て来るが、アニメの鈴江はそれに相応する人物なのだろうか。神戸の姉か妹か、或いは配偶者か?その辺も気になる。

 

 

そして次回、神戸・加藤、香港に行く!

…だけど、コロナの影響により放送延期が決定。じわじわと文化・芸術を侵食していくコロナ、神戸財閥の力でどうにかなりませんかねぇ!

 

※3話以降の放送は7月16日まで延期されることが決定した。

 (2020.04.23追記)