タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

「気」の戦争【ダークギャザリング #13】

2クール目突入しました!OPもちょこっと変わっていたけど、卒業生らの動きが素早過ぎるな!

 

「出獄」

危険度Sランクの心霊スポット「H城址」の霊を仲間にした夜宵たちは次の目的地、O市の旧Fトンネルへと向かうが、その前に戦力として多摩川河川敷に保管してある卒業生を回収する、というのが今回のお話。原作16話の「回収」に相当する話となるが、アニメではサブタイトルを「出獄」という名に変更しており、今回回収した卒業生の性質に相応しいサブタイトルとなった。

2クール目は1クール目以上に捕獲対象となる霊や手駒として使役する「卒業生」の強さや恐ろしさが段違いにスケールアップする。そのため2クール目はバトル面を中心に読み解いていくことになると思うが、夜宵たちと悪霊との戦いだけでなく、「空亡」を復活させようとする謎の組織が暗躍していることも見逃せないポイントだ。この組織は「空亡」を「暁闇の胚」と呼んでいることから見ても、あの巨大な霊体は成体ではなく幼体、つまり生まれていない赤子のような存在であり、「空亡」も何やら女性の霊を母体として利用しているようだ。

 

あ、そうそう。前回のうちに言っておきたくて忘れていたことがある。夜宵が霊を捕縛するのにぬいぐるみを使っているのはもう言うまでもないことだけど、H城址の霊を捕縛するのにゾウのぬいぐるみを使ったというのが個人的にはセンスの良さを感じたね。夜宵は知っているかわからないけど、外国のことわざに「象は忘れない(An Elephant Never Forgets)」という言葉がある。象は記憶力が良いということから、記憶力の良さを称賛するポジティブな意味でこのことわざを使う場合もあるが、一方で受けた仕打ちや恨みを忘れないというネガティブな意味で使うこともある。H城址の霊は夜宵たちによって苦しめられた恨みがある一方、呪物の呪いから解放された恩もあるため、正に「象は忘れない」を体現した存在であり、その霊がゾウのぬいぐるみで捕獲されたというのも実に象徴的だったと言えるのだ。

 

「気」を制する者が勝つ戦い

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

2クール目、つまり神様との全面戦争を念頭に置いた戦力補充としての亡霊狩りをメインに展開されていく物語の始まりとして軍人の霊を出して来たというのは、ここから本作が一種の戦争として物語が展開されていくことを視聴者(読者)に提示していると解釈出来るし、原作では描かれなかった戦争の描写がそのことを強く訴えかけている。

今回の物語で示されたように、戦争においては武器だけでなく食料や水といった物資も勝敗を分ける要素であり、それが不足していた日本は飢えと渇きによって死んだ兵士も多かったという。そもそも、武器となる鉄が足りなくてお寺の鐘を供出させていたくらいだから、武器が足りないのに食料が足りる訳がない。全体的に物資が不足した中で精神論に走ったが故に日本は第二次世界大戦で敗北したことは、ほぼ間違いない。

 

では、本作における霊と霊がぶつかり合う戦争において要となるものは何かと自分なりに考えてみたのだが、そのキーワードとなるのが「気」である。

古代中国において、「気」はこの世のあらゆるものを構成する要素であり、火も水も、そして人間も「気」の構成によって成り立っていると考えられていた。そのため東洋医学では体内の気をコントロールすることで病気の治療や予防を行うし、この「気」には陰とという二つの性質があると言われている。これが陰陽道における陰陽五行説にもつながってくるのだが、この辺りの話はかなり専門的な上に説明するのがなかなか難しいので、とりあえず「気」は一種のエネルギーみたいなものであり、陰と陽という対極する二つの性質があることがわかれば、今回私が語ることが伝わるだろう。

 

「気」は言うまでもなく目に見えないものであり、それゆえ「空気」「蒸気」「湿気」といった目に見えないものを指す言葉としても使われている。霊もまた目に見えない非物質的なものだから「霊気」という言葉がある。この「気」を制することが、本作における戦いの勝利につながるのではないか?というのが私の意見だが、本作「ダークギャザリング」では戦いの要となる「気」が様々な所で見出せる。

例えば夜宵が自分の部屋で霊を集めて行っていた蟲毒は、本来毒虫を集めて行うものである。毒虫を共食いさせることで毒虫が持つ「毒の気」を凝縮させ、呪いの効果を高める訳だから、夜宵が行った蟲毒のシステムは「気」をコントロールしてより強い「気」を持つ者を生成する狙いがあったと表現出来るのだ。

そして、今回の卒業生が保管されていた多摩川の河川敷は、龍脈という地中を流れる「気」のルートの上に位置する場所であり、その「気」が卒業生の身体を維持するエネルギーとして用いられていた。霊同士の戦いにおいて、「気」は食料や水に相当する重要なものであることがわかっただろう。

 

また「気」は目に見えないため、物質的なものだけでなく精神的なものを指す場合でも使われる。「強気」「弱気」「勇気」「士気」「怖気」「血の気が多い」といった具合にだ。

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

本作においても悪霊・怨霊に立ち向かう「勇気」が一つの武器になるが、しかしそれだけでは不十分だし太刀打ちできない。悪霊という常道から外れた者と戦うのに正攻法でやっていては勝てないし、前回・前々回のH城址のバトルでも相手は幻覚で惑わせてきた。そこで「狂気」という「気」を武器にして戦っているのが本作の面白いポイントで、相手が正攻法で挑まないのだからこちらも普通の考えから逸脱した思想、つまりは「狂気」を武器にしないといけない。それを象徴するのが他ならぬ詠子の存在だ。

詠子の所業については1クール目で色々と描かれて来たが、螢多朗を普通の女性のように愛さずストーカーのように愛していたから5話のT団地の事件で螢多朗を助けることが出来たし、狂気は飛躍的な発想がないことには生まれない。そして飛躍的な発想なしに窮地を脱することは困難なのだから、霊や神様を相手にする戦争で「狂気」というのは実は結構重要な武器になってくるのではないかと思った。

 

さいごに

2クール目の始まりとなる今回はこれから先の戦いが「気」の戦争になることを私なりに解説してみた。「気」は人間同士の戦争における食料や水にもなるし、戦術にもつながる重要なものということである。今回は「気」をメインで語ったので、回収された軍人の「卒業生」についてはまた次回以降詳しく言及する予定だ。

前哨戦となる「卒業生」の回収だけでもヘトヘトになった螢多朗と詠子だが、気を休める間もなく本戦となる旧Fトンネルへと向かう。果たして、トンネルで待ち受ける霊はどのような存在か。私は既に原作を読んでいるので知っているけど、ホラーとしてのジャンルがこれまで出て来た霊と異なるので、耐性がない人にはなかなかキツいかもしれないね。(ジャパニーズホラーというよりは海外の〇〇〇〇〇ー系ホラーって感じ?)