タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

心霊スポットはダークサイドヒストリーの場【ダークギャザリング #11】

今回の物語でシソンヌの「ばばあの罠」を思い出した。

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「H城址-危険度S」

「空亡」打倒計画及び「神代家の神」捕縛計画の最初の一歩として夜宵と螢多朗が訪れたのは、都内だけでなく全国有数の心霊スポットとして知られているH城址。モデルとなる舞台は八王子城※1であり、実際に心霊スポットとして有名な場所であるが、一方で小田原北条氏で氏康の三男である北条氏照が築いた山城としても有名で、日本城郭協会から日本百名城の一つとして認定されている。

これまで夜宵たちが訪れた心霊スポットとは明らかに質が違う由緒あるこの城跡は、1590年7月の八王子城合戦豊臣秀吉の軍勢に加わった上杉景勝前田利家真田昌幸らの部隊一万五千人に攻められ落城。アニメ本編でも言及されているように氏照の正室である比左を含めた城内の女性たちが自刃、あるいは御主殿の滝に身を投げ自殺した悲劇の場でもある。

そんな歴史がある場所なだけに鎧武者の姿をした亡霊が目撃されたり、女のすすり泣く声が聞こえるといった怪現象が噂されているが、霊能力者の方が訪れた所、八王子城址の霊は残留思念に近いものであり、我々生きた人間に危害を及ぼすことはないと診断している。※2

 

※1:八王子城址についてはこちらのブログ(↓)で現場写真も載せた訪問レポートが記されている。(ただし心霊スポットではなくお城巡りとしての訪問)

八王子城の記事リンク - ちょっと山城に (正規運用版)

※2:八王子城趾(東京都) - 霊視検証!有名心霊スポットの真相!

 

心霊スポットには「闇の歴史」が隠されている

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

前述したように、今回の舞台であるH城址は多くの女性の血が流れた悲劇の場であり、教科書やテレビ番組では紹介出来ない戦国武将たちの非道な行いが語り継がれた場でもある。

一応大学で歴史学を学んだ者として皆さんに言っておきたいのだが、歴史というのはその当時の権力者、勝者によって都合の良いように書き換えられたり、或いは史料が燃やされてなかったことにされてしまう場合がある。一般的にテレビで紹介される戦国武将についても、それは彼らの功績や人柄ばかりが取り沙汰されて、戦国武将が率いる軍勢によって殺された人々の歴史というものはほとんど語られることがないし、時にはまるで英雄のようにそういった武将たちを語る者さえいる。

私に言わせてみれば戦国時代にロマンなどない。多くの女性や子供、そして兵士が血を流した時代であり、彼らを率いる主君も負ければ首をとられるというシビアな世界だったのだから、そんな時代にロマンなど感じられる訳がないのだ。それに、無名の民衆が犠牲となるような悲劇は文献史料として残ることがほとんどないから、私たちはつい戦国武将の功績ばかりに目を向けてしまう。

 

そして敗者の歴史、犠牲者の物語は表沙汰に出来ないが故に怪談として語り継がれやすい。とはいえ今回のH城址のようにまだ悲劇が現在まで語られている場所は良いとして、実際は語られずに闇に葬られた歴史の方が恐らく多いと思われる。

私たちが心霊スポットに惹かれるのは、大半は野次馬根性に近い好奇心でそこに行くというのは間違いないにしても、心のどこかで我々は心霊スポットに教科書やテレビ・新聞・雑誌などで書かれていない闇の歴史を見出したいという欲求があるからそういった場所に惹かれるのではないだろうか?

 

そう言えば、今回のH城址の話を見て思い出した心霊スポットがある。それは山梨県甲州市にある「花魁淵」と呼ばれる場所だ。

ja.wikipedia.org

以前テレビ番組の心霊特集で放送していたのを見ていて凄く印象的だったから覚えていたのだけど、この花魁淵の近くには武田氏の軍資金となる砂金が採掘された黒川金山があり、戦国時代には金山を掘る坑夫たちの慰安目的で遊女(花魁)が呼ばれたという。しかし、武田家の滅亡と共に金山は閉山。徳川軍に金山を横領されることを恐れた武田氏の金山奉行は、砂金発掘に従事した坑夫や下級武士・遊女を口封じのため殺害しようと計画した。

ある晩、金山奉行の主導で柳沢川の上に藤蔓で吊った宴台が設けられ、そこで55人の遊女が舞を踊るという酒宴が開かれた。そして遊女たちが踊っている最中、宴台を吊っていた藤蔓は切られて55人の遊女は谷へ真っ逆さまに落ち、淵に沈んで亡くなったと言われている。

 

この遊女殺害の伝説はあまりにも手が込んだ殺害方法のため創作されたエピソードではないかという意見もあるのだが、実際に花魁淵周辺では着物姿の女性の霊が目撃されているため遊女殺害自体がフィクションだったという可能性は低い。現在花魁淵に続く旧道は立ち入り禁止となっているが、この花魁淵もまた歴史の闇に葬られた人々の歴史、ダークサイドヒストリーが語り継がれた場である。

 

さいごに

以上、今回の舞台となったH城址から、心霊スポットがダークサイドヒストリーの場であることを簡単に説明してみた。ほとんどの心霊スポットは前回の記事で言及したように創作で語られる悲劇が多い中で、八王子城址や花魁淵といったある程度ハッキリとした歴史が語られている心霊スポットがあることもこれでわかっていただけたかと思う。

夜宵と螢多朗の予想に反してH城址の霊は想像以上に強大であり窮地に立たされた二人だが、次回は遂に問題の卒業生が解禁される。この卒業生について私なりに分析したことがあるので、次回はそのことをお話しようかな。