タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

【ACMA:GAME】洞察の天才 VS 演技の天才【アクマゲーム #05】

アイドル(我が推し含めて)がファンに嘘をつくのは別に人間だから構わないと思うけど、それだったらプロとして最後の最後まで嘘を貫いてほしいよなと思ってしまう私。

(だからその嘘を暴き立てようとする下世話な週刊誌風情はムカつくんですよね…犯罪行為を暴くのはともかく熱愛とかそんなの追いかけ回す必要ないのでは…?)

 

(以下、原作を含むドラマのネタバレあり)

 

「隠蔽看破 Hide & See

ACMA:GAME(7) (週刊少年マガジンコミックス)

今回からいよいよグングニル主催のトーナメント戦がスタート。斉藤初の闇堕ちという意表を突く改変によって波乱の幕開けとなった第二章、その初戦の相手として照朝の前に立ちはだかったのは、ドラマの3話で登場した式部紫。ドラマではあまり彼女の経歴について詳しく語られていなかったが、原作では家庭環境に問題を抱えた17歳の女性で、病弱な母親と三人の弟妹を抱えながらアイドル活動をしている。そんな彼女の母親がグングニルの人質となってしまったため、強制的にトーナメント戦に参加する羽目になった。これが原作における紫の設定だ。

一方ドラマの紫は親に捨てられ幼少期から寂しい思いをしてはいるが、あくまでも参加目的は利己的なもので、別に親を人質にとられているという事情もない。そういう訳だから、ドラマの紫は性悪な感じが否めないかな?

 

そんな彼女の特筆すべき点は演技力だ。一応原作ではドラマや映画などにも出演している超売れっ子スーパーアイドルとして描かれており、その演技力を駆使して自分より立場が上の人間を翻弄し、弱みを握るといった形で芸能界をサバイブしている。勿論それは自分の家族を守る(+借金返済)ためではあるが、そのアイドルとしての求心力と演技力をグングニルに見初められてしまいトーナメントに参戦することとなった。その点ドラマでは特にアイドル活動の描写が詳しく描かれていないので、演技力に関する設定がやや唐突に感じるのは、尺が限られた連ドラの弱点と言えるだろう。

(悪魔の鍵を手にしてからアイドルとしての人気が出て来たことを思うと、多分演技力はあっても所属事務所の方針とかでそれを活かすことが出来ず、くすぶっていた可能性はあるかもね)

 

ではいつものようにゲーム解説に移るが、今回の「隠蔽看破」は隠されたコインの場所を当てるという内容で、1話の「真偽心眼」において照朝がやった五百円玉を使った問いの応用とも言えるゲームだ。

隠したコインに最も近いテーブルを6卓あるテーブルの中から最大5卓まで回答出来るというルールで、テーブルの指定数が多いとその分得点も減るため、出来るだけ1卓指定で正解することが望ましいのだが、この「隠蔽看破」は騙す余地・仕掛ける余地がいくらでもあるので、1卓指定で正解を当てるのはかなり困難だ。実際照朝と紫はそれぞれ所持しているアイテムや悪魔の能力を利用して互いに騙し合っている。この双方の騙しのテクとそれを見抜くための探り合いが今回のゲームの見所となる。

 

ここからは各ターンごとの照朝と紫の対決を振り返っていきたい。

まずは1ターン目(表)、看破役が照朝、隠蔽役が紫からスタート。ドラマでは具体的な時間が不明だったが、原作で照朝は回答するのに1時間かけており、わざと回答に時間をかけて相手を焦らすことで、相手の反応を観察して正解のテーブルを導き出すという作戦をとった。しかし流石はスーパーアイドル、そんな焦らしにも折れずに演技で別のテーブルにコインを隠したと思わせ、照朝の回答を見事誘導した。

 

役を交代して1ターン目(裏)、このターンで照朝はテーブルの下の死角をなくすため、テーブルクロスを卓上にまくり上げ、その際に卓上のナンバープレートを移動、更にこれ見よがしにコインを4番のテーブルの下に投げ込むという行為で紫を翻弄する。これはナンバープレートの移動に注意を向けさせてコインの真偽に目を向けさせないという、1話の「真偽心眼」でやったのと同じ手口だ。

それにしても、偽のコインとか五百円玉とか、照朝って貨幣の偽造がホント好きだよね。1話の感想記事でもチラッと触れたけど貨幣の模造品を作るのは法律違反だから割と危ない橋だよ。今回は悪魔が用意したコインだからともかく、1話で使った偽の五百円玉は完全に法律違反だったしね…ww。

 

そして2ターン目(表)は紫の不自然な動き、つまり1・2・3番のテーブルには近寄らず、4・5・6番の周囲を巡るという動きを見て、照朝は彼女の悪魔の能力が分身と透明化ではないかと推理する。ただ、個人的には照朝のこの推理はかなり深読みし過ぎたなという印象で、基本的に本作における能力はこれまで「場所の移動」「物質の固定」「見た目の偽装」と一つの能力に限定されており、そう考えると「分身」と「透明化」は一つの能力というよりも二つの能力と言った方が正確だ。だから私としては裏を読まずに素直に4・5・6番の3卓指定の回答で良かったのではと思わないでもない。

とはいえ、そういう能力があるように見せかける紫の演技力は流石の一言だし、原作ではとあるアイテムを使って「分身と透明化」の能力が本物だと信じ込ませているのも注目すべきポイントだ。(女性アイドルが護身のために持っていても全然おかしくないアレを利用したという点も評価したい)

 

2ターン目(裏)では照朝が悪魔の能力を駆使して紫の視線を逸らすことに成功。コインの場所を絞り込めない状況にしたが、残りは1ターンという差し迫った状況に追い込まれた彼女は当たる確率が低い1卓指定ではなく複数卓指定で確実に点を取ることに決める。

1卓指定:100点

2卓指定:50点

3卓指定:30点

4卓指定:20点

5卓指定:10点

4卓指定で確実に20点を獲得しておけば、照朝は勝つために1~3卓指定で得点をゲットする必要があるし、3ターン目(裏)で紫が再度4卓指定で20点を獲得することを見越した場合、照朝は3ターン目(表)で50点獲得(2卓指定の回答)する必要がある。2卓指定で当たる確率は約30%という点から考えても、ここで20点を獲得しておいた方が自分に有利になると紫は判断、サイコロを振って出た目を元に4卓指定で回答し20点を獲得する。

 

そして3ターン目(表)で照朝は攻めの姿勢をとる。相手の動きを観察するのが必須となるこのゲームでわざと”見ない”という行動をとり、隠しカメラの存在をにおわせることで、コインを隠させない=コインを持った状態で「工作完了」と宣言させることに成功。これは「真偽心眼」の時の経験が活かされているなと感じたし、手に持った状態でも隠したことになるという読者(視聴者)の盲点を突いた手口だ。それを思いついた紫も流石だが、それを誘導して実行させた照朝が一枚上手だったね。

 

紫にとって後に引けなくなった3ターン目(裏)、ここで彼女は悪魔の能力「万物目覚」(オールタイマー)を使用する。これはどんなモノでも一定時間(ドラマは10分)経つと音が鳴るように出来る能力で、これをコインに仕掛けて場所を特定するつもりだったが、照朝によって見破られることに。

ちなみに、ドラマでは紫がガドに対してゲーム中に声を出さず黙っていてほしいと指示したことがヒントとなってしまったが、原作は紫の待ちの姿勢・態度から彼女の能力を推理し見抜くというかなり高度なことをやってのけている。

 

以上、ゲームにおける両者の駆け引きを見ると、紫は己の演技力と「万物目覚」を活かして、照朝はゲーム会場にあるテーブルやカーテンなど場を利用した仕掛け(+悪魔の能力)で相手を翻弄した。悪魔の能力に関して言えばこのゲームにおいて紫の方が圧倒的に有利で、下手すれば確実に100点をとられていたかもしれなかったが、それを封じ込める洞察力と、騙しの手数の多い照朝に勝利の女神がほほ笑んだことになるだろうか。

 

※ちなみにわざと時間をかけたのには原作だともう一つ別の目的があるのだが、それについては原作の8巻を読めばわかるので割愛。

 

さいごに

今回のゲームは原作の場合照朝も紫もお互いのっぴきならない状況でゲームに挑んでいるため、読者が「どちらも負けないでくれ!」という共感を抱くような構成になっているのに対し、ドラマは紫の設定を大幅に削ったこともあって、照朝を翻弄する魔性の女という形で描かれている。ドラマオリジナルの過去背景にしても同情すべき点はあれど結局は利己的な部分が多いし、そう考えると人間ドラマとしての描き方は原作の方が圧倒的に上である。

ただ、ドラマは原作の紫も持っていたサイコロに着目して「何故彼女がサイコロを持っているのか?」という疑問からオリジナルの過去背景を生み出した所は評価しても良いのではないかと思う。普通サイコロなんて持ち歩く訳がないし、そんなアイテムを持っているということは何かしら彼女にとって思い入れがあるはずだからね。原作では彼女がサイコロを持っていたことに対して何の言及もされていなかったから、ここは地味ながらも脚本として穴を塞いでいる感じがした。

 

照朝と紫の対決の裏では初と心理学者である伊達との対決があったようだが、ちなみに原作では別のゲームで初は勝利しており、限られた情報から見るに激辛ロシアンルーレット対決(相手が食べた辛いものを当てる内容)で勝ったっぽい。伊達としては今回みたいに心理戦がものを言うゲームの方が得意そうだが、原作の方は相性の悪いゲームに当たってしまい負けになったという感じだろう。(そう考えるとドラマの初はかなりの大健闘だったことが予想されるな)

 

LIAR GAME 8 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

そうそう、蛇足だけど今回の「隠蔽看破」はライアーゲーム「回らないルーレット」と実はやっていることはあまり変わらないんだよね。「回らないルーレット」は原作だと8巻、ドラマだとシーズン2の4話で放送されたから、多分見たことがある人もいると思うけど、「隠蔽看破」も「回らないルーレット」も、相手が入れた(隠した)ものを当てるという点では同じ内容だし、それが「隠蔽看破」だと部屋全体を使ったゲームで6分の1の正解、「回らないルーレット」はテーブル上で行われ4分の1で正解するという規模・確率の違いで差別化されている。気になる方はライアーゲームの方も是非読んでみてはいかがだろうか?

(とはいえ「回らないルーレット」って心理戦としてはさほど高度なことはやってないんだよな…)

 

次回は残りの二組の対戦が描かれるようで、悠季と潜夜による仲間同士の一騎打ちというまさかの展開に。この展開については原作6巻の時点で二人が対戦することは明かされていたので私は意外ではなかったが、悠季のキャラ設定に関して原作とドラマとでは照朝や初と同様違いがあるので、それについて言及しようと思う。

 

それにしても、トーナメント会場が絶海の孤島だったらさ、わざわざ眠り薬を飲ませずとも目隠しで送れば十分だったんじゃないかな~グングニル?陸路なら所要時間とか音で場所がバレるからともかく、空路ならヘリのプロペラの音で誤魔化しがきくし目隠しすれば場所特定されないでしょ?(まぁ抵抗される可能性を見越しての薬かもしれんが…)

っていうか、どうせ会場に行く必要があるのに何で袋詰めにして森に放置するんだよ、嫌がらせかよ。「水曜日のダウンタウン」じゃないんだから普通に会場に送ろうよ。照朝はリアクション芸人じゃないんだからさ…ww。