タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

招待を求める霊【ダークギャザリング #07】

(螢多朗の部屋、ミニマリストかってくらい殺風景だったな…)

 

「Sトンネル」

螢多朗と詠子が互いの思いを伝え合い、螢多朗は夜宵の悪霊狩りに協力することを決意する。ということで今回は都内最恐と言われているSトンネルの霊を狩るという内容だが、モデルとなったのは東京都渋谷区千駄ヶ谷二丁目にある千駄ヶ谷トンネル

 

千駄ヶ谷トンネルは昭和39年に開通した全長61メートルの短いトンネルで、東京オリンピックに合わせて開通したことで知られている。また、トンネルの上は千寿院という寺院が所有する墓地になっており、お墓の下を通るトンネルといった立地が心霊スポットとしての箔をつける結果になった。このトンネルではアニメ本編で詠子が語ったような女性の幽霊の目撃談が絶えず、そのためテレビや雑誌の心霊特集で取り上げられることが多いという。

有名な心霊スポットなだけあって霊能力者による現地調査も行われているが、霊能力者曰く、トンネルの上の墓地は幽霊とは無関係であり、原因は富士山から流れる龍脈という風水エネルギーがちょうどこのトンネルの辺りで落ちくぼみ、その気の乱れが多くの人に悪影響を及ぼし本来存在しない霊を生み出したとのこと。

嘘か真か、まぁそれはともかく、本作「ダークギャザリング」も蟲毒という中国の呪術を元にしているし、風水も中国伝来の思想なので、その点に関しては世界観的に一致していると言えるだろう。

 

千駄ヶ谷トンネル(東京都) - 霊視検証!有名心霊スポットの真相!

 

車に乗り込む霊(霊は招待されたがる)

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

今回のSトンネルに限らず、トンネルは定番の心霊スポットである。道のあちら側とこちら側をつなぐ境界としての役割を果たし、トンネル内は昼間でも薄暗いことから常世の世界のような異界の入り口(或いは異界そのもの)としても語られやすい。また古いトンネルには落盤事故といった死亡事故の噂もついてくるため、人はそんな逸話に恐怖を感じ、またトンネル内部の壁にシミなんかがあったりすると、それが人の顔に見えたりするといったように、トンネル自体が怪談話の土壌を備えた場所でもある。

 

トンネルを舞台にした怪談話には車がつきもので、本作のように車に乗っているとバックミラーに女の霊が映りこんだとか、ボンネットに無数の手形がベタベタと付いていたとかそういった話は枚挙に暇がない。何より、車と言えばタクシー幽霊という定番の怪談話がある。雨の日に墓地のそばで女を乗せたタクシー、女は行き先を告げたあとは一切何も言わずにうつむいている。あまりにも静かなので不審に思った運転手が後ろを見ると、後部座席には誰もおらず、女が座っていたシートの部分はぐっしょりと濡れていた…という物語だ。

タクシー幽霊の物語はタクシーが存在する前、つまり駕籠や馬があった頃から同様の怪談話は存在していたし、海外にも「消えるヒッチハイカー」という怪談があるくらいだから、乗り物に乗り込んで来る霊というのは全世界共通なのだ。

 

Ⓒ近藤憲一/集英社・ダークギャザリング製作委員会

で、何でそんな話をしたのかと言うと、今回のSトンネルの霊は自分から車に乗り込めない。つまり招待されないと入れない霊だからであり、そこが先述したタクシー幽霊に通じる所があるなと思ったのだ。

基本的に霊は浮遊霊と地縛霊というタイプがいて他にも守護霊・指導霊・背後霊といった具合に分けられるが、大まかに分けるとその土地に未練や執着があって離れられない地縛霊と、それ以外の現世地上をさまよう浮遊霊の二つに分けられる。一見すると今回のSトンネルの霊もトンネルに縛られている地縛霊かと思いきや、普通に車に乗り込んで螢多朗の家まで付いてきているのだから、分類上は浮遊霊、それもタクシー幽霊のような乗り物を通じて移動する霊と言えるだろう。

 

霊も元は人間なのでネガティブ・ポジティブ問わず生きた人間に対して接触をはかろうとする。基本的に霊は見えない存在なのでその交信は一方通行であり人間が見たとしてもビックリして逃げられてそれでおしまいなのだ。しかし、まれに霊的感度の良い人だとその交信を受け取ってしまい、場合によっては憑依されてしまう。霊の方も自分のことを知ってもらいたいという欲があるから、あらゆる手で招待されようと、相手に入りこもうとする。招かれることで、分断されていたあの世とこの世につながりが出来るという訳だ

つながりが生じて生きた人間が霊を観測した瞬間、霊はようやくこの現世に存在することが示される。5話で、死者の魂を喰らうことで現世に留まる霊が存在することが語られたが、その方法は必ずしも霊を喰らうだけではなく、生きた人間との関わりを持つ。つまりは見られる・干渉されることで自分の存在をこの世に留めようとする訳だ。

 

「招かれた」と判断したSトンネルの霊は厚かましくも螢多朗を乗っ取ろうとし、夜宵に捕縛されてもなお螢多朗のリュックに潜り込むなど狡猾さを垣間見せた。このように霊というのは一度でも関わると執拗に付きまとうケースがあるため、リアクションを起こさず無視を決め込むか、ちゃんと力のある人に出会って成仏出来るようお祈りをするのが良いと言われている。「袖振り合うも他生の縁」、干渉した時点で縁が生じてしまうからね。

 

さいごに

今回は「招待を求める霊」という観点から感想を書いたが、西洋の吸血鬼も招待されないと家に侵入出来ないため、自分が人間であると偽って家人に招かれ侵入するという話があるらしい。それくらい「招待」には自分の存在を認めるという意味合いが込められているということだろう。

次回からは新たなキャラが登場するということで、物語に大きな動きが出る模様。夜宵の母を連れ去った霊が「空亡」と呼ばれていることが判明し、更なる闇へと近づく感じがするが、それにしても「空亡」って他の方の感想で見かけたけど精子卵子を連想させる見た目で、あれが完全体ではない子供のような霊体だとすると一体どうなるのか、非常に気になる所だ。