タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

【ゲゲゲの鬼太郎】妖怪大裁判(2~5期)を見比べる

11月に映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が公開されることを記念して、YouTube東映公式チャンネルが過去の鬼太郎アニメを期間限定で配信するとのこと。

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第一回目は歴代の「妖怪大裁判」回(2~5期)が配信された。6期の感想は既に当ブログで言及したので(↓)、ここでは配信されている2~5期の感想をまとめて述べていきたい。

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2期(ほぼ原作通りだけど結末は原作より平和)

原作「妖怪大裁判」の初映像化となる2期はほぼ原作通りの内容。ただ原作の結末部は見上げ入道をはじめとする妖怪が「今回の一件でパーティーを盗撮・公開した人間側を懲らしめないのは不公平じゃないのか」と愚痴に近い批判を鬼太郎に投げかけている。一方アニメ版は完全に和解し握手しているし、最後には手を振って鬼太郎を見送るという後腐れのないハッピーエンド。原作はまだ完全なヒーローものにしたくないという水木先生の頑なさが垣間見えるが、アニメ2期は「ゲゲゲの鬼太郎」が完全な勧善懲悪モノでないことを他のエピソードで示しているので、今回は普通にハッピーエンドにしたのだろう。

ところで、改めて見ると2期ねずみ男事件を引き起こすトリガーとして他期よりも重要視されているなと感じた。最初の映画会社でカンパを求める下りなんか、彼の弁舌の巧みさというか、スラスラと言葉が流れ出す感じが実によく描かれていて、やはり2期がねずみ男を一番丁寧に扱っていると感じた。まぁこれは2期が鬼太郎の登場しない短編も映像化しているというのも少なからず影響しているのかもしれないけど…。

 

3期(だいぶ賑やかになった印象)

3期はヒロイン枠のユメコちゃんや猫娘が介入する以外は2期と同様にほぼ原作通りの内容。作画が細やかになったこともあって、モブ妖怪も2期以上に充実度が増した感じがする。

3期の特徴としては、このエピソードの前に登場し鬼太郎に助けられた鏡じじい・さざえ鬼といった味方妖怪が登場すること、百々爺とのバトルが原作以上にバトルシーンらしくなっているという点だろうか。百々爺の鼻もんもという幻覚術は原作だとあまり活かされている感じがしなかったが、この3期ではそれをバトルシーンとして描いておりアクション重視の3期に合った改変だと思う。

捕まえた百々爺を連れて鬼太郎が処刑場へ戻るというラストで物語を締めくくっているため、百々爺・ねずみ男の量刑や他の妖怪がどうなったのか不明になっているのは気になる所ではあるが、元凶の百々爺が退治され鬼太郎は無実を証明し、人質として確保された目玉おやじは助かっているので、別にマイナスポイントではない。

っていうか、処刑場にいた天狗ポリスが安堵している様子を見ると、天狗ポリスも内心では鬼太郎が無実だと思ってたんじゃないかな~?っていうのが伝わってきて、ああやはり鬼太郎はみんなのヒーローなんだなっていうのが感じ取れて良かったよ。

 

4期(前後編で描くタイムリミット・サスペンス)

4期では逮捕の切っ掛けが秘蔵の地獄絵図を人間に公開したという形で改変され、前後編の長尺で展開されるという見応えのある「妖怪大裁判」となった。また、この回で鬼太郎の宿敵であるぬらりひょんが初登場。事件の黒幕として鬼太郎を罠に嵌めるのだが、ぬらりひょんを黒幕に配置した影響か、4期は2・3期とは違い他の妖怪が鬼太郎退治に介入することはなく、あくまでも証人・傍聴者という形でしか参加していない

そういうこともあって、4期の「妖怪大裁判」はこれまでのようなお祭り騒ぎ的な感じはほとんど無く、どちらかと言うとイムリミット・サスペンスの色が強い。鬼太郎ファミリーが戦う相手も鬼太郎を捕らえようとする天狗ポリスたちであり、両者の攻防の様子が描かれていることもサスペンスを高まらせている。だから3期ではかろうじて可愛げがあった天狗ポリスもこの4期はヒール役として徹底している。

 

5期(鬼太郎、めっちゃ愛されてるやん)

さて、5期は始まりの段階からして違う。5期はこの直前のゴーゴンの回で鬼太郎が閻魔大王の忠告を破って地獄の炎(獄炎乱舞)を使用し人間の街に甚大な被害を出してしまったので、その罰を受け留置されている所から始まる。

罪状もこれまでとは異なり、妖怪専用の秘湯を人間のカメラマンにリークした罪で裁かれることになる。また、過去に鬼太郎に倒された妖怪が検事側証人として登場するため、3期以上に過去作とのつながりや物語としての連続性を意識したプロットになっているのも5期ならではの「妖怪大裁判」と言える所だ。

そして何と言っても特筆すべきは、これまで鬼太郎を嵌めてきたねずみ男が弁護側として百々爺の悪事を暴露するという逆転劇だ。これは2~4期までの鬼太郎アニメとしての積み重ねがあったからこそ活きる改変であり、「もしもねずみ男が味方に付いてくれていたら…」というファンの妄想を具現化したという点でも凄いことをやっていると改めて思った。

 

でもね、この改変が成功したのは5期鬼太郎を「愛されキャラ」として描いたからなんじゃないかなと私は思っていて、この「妖怪大裁判」の前に放送された40話「大フィーバー!鬼太郎グッズ」なんて正に鬼太郎が愛されていることを如実に描いた回だった。40話自体は正直そんな大したことがない(というか、古参としては脚本が暴走していたと評価せざるを得ない…ww)エピソードなのだけど、40話で描いたことが結果的にこの47話の妖怪大裁判における横丁メンバーや鬼太郎ファミリーたちの鬼太郎に対する思いを後押ししている。

ねずみ男にしても、47話以前に放送された各エピソードによって鬼太郎を助けた動機が視聴者になんとなく伝わってくるし、やっぱり5期鬼太郎ってクールな面もあるけど放っておけない可愛らしさもあるから、みんな助けてくれるんだよね。この鬼太郎に対する愛は必ずしも鬼太郎ファミリーや横丁メンバーだけではなく、裁判長の大天狗や閻魔大王も鬼太郎の裁判の行方を気にかけていたし、黒鴉は官吏としては公平性に欠けることをしたけど味方になってくれた。

そして敵役のぬらりひょんも今回に限って(文字通り)助太刀をしているというね。鬼太郎が有罪になったら鬼太郎を殺せなくなるから助太刀するってそれはもう愛なんですよ。この助太刀も心憎い演出で、百々爺の声が4期ぬらりひょんと同じ西村知道さんだから、ある意味ぬらりひょん(3期)がぬらりひょん(4期)を妨害したというぬらりひょん同士の鞘当てみたいなことになっているのも面白いポイントとして評価したい。

 

 

以上、2~5期を見比べた各期のレビューとなるが、やはり改めて見ると5期がうっとりするほど鬼太郎愛に満ちた回だったことに気付かされて、配信してくれてありがとうって気持ちですね。勿論これは2~4期があったからこその成功なので当然他期の妖怪大裁判も評価はしているのだけど、5期は連続アニメとしての長所を活かしているから原作から大幅に改変しても物語として破綻していないし、過去作のファンも置いてけぼりにしていないと(少なくとも私は)感じる回になっていた。だからこの機会に是非とも歴代の「妖怪大裁判」を見比べてみてもらいたい。2時間半あれば全部見られるよ!