鬼太郎が脱がない。
百々爺が鼻もんもを出さない。
バトルシーンが一切ない。
ないない尽くしの妖怪大裁判だったが、過去作を振り返りながら語っていこう。
「これまでの妖怪大裁判」と「6期妖怪大裁判」
妖怪大裁判は鬼太郎作品の中でも人気のエピソードであり、アニメでも2・3・4・5期と続いてアニメ化されている。特に4期は前後編のエピソードであり、鬼太郎の宿敵ぬらりひょんが初登場する記念すべき回だ。
42話ゲスト妖怪「百々爺」
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2019年2月3日
原作「妖怪大裁判」に登場。悪知恵に長けた爺の妖怪。妖怪パーティーを人間のテレビ局に撮影させ、パーティーの主催者を鬼太郎と偽り、妖怪の秘密を漏洩した罪で鬼太郎を罠におとしめた。鼻毛針と幻覚を見せる鼻ちょうちん(鼻もんも)の技をもつ。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/PfW5u9w38J
プロットはおおよそ「鬼太郎が捕まる→裁判で有罪判決→鬼太郎脱走し真犯人を突き止める→首謀者、百々爺とのバトル→裁判で逆転無罪」という流れ。
2・3期は原作同様、妖怪パーティーを人間に公開し、妖怪世界の秘密を漏洩した罪で逮捕されるが、4期は門外不出の地獄絵図を人間に公開した罪で、5期は妖怪の秘湯を人間界の雑誌にバラした罪で逮捕されており、同じ秘密漏洩とはいえその理由が異なっているのが特徴。
しかし6期は、これまでの秘密漏洩の罪ではなく一つ目小僧の抹殺罪に改変されている。そしてこれまでのプロットと異なり裁判の公判に比重をおいているのが最大の改変と言えるだろう。尋問・証拠物件の提出・反対尋問等、人間の裁判と同様の公判が行なわれているので、今期が最も裁判らしい裁判を行っている。
バトルシーン簡潔化の功罪
6期の特徴の一つとしてバトルシーン・技の簡潔化が挙げられる。3期・4期はオカリナという道具によって原作には無い新しいバトルが加わったし、原作も妖怪原子炉・カメレオン舌・胃液等々、身体の各器官を利用した技が披露された。
しかし、6期はというと、定番の髪の毛針・リモコン下駄・ちゃんちゃんこ、そしてとどめの指鉄砲くらいしかない。体内電気もこの40話程の中で数回しか披露されていないし、その他の技といえば、蟹坊主回の髪の毛槍くらいだから、今期の鬼太郎の技がいかに限定化されているかがわかるだろう。
これはひとえに脚本(物語のプロットやそれぞれの回にあるテーマ)を重視しているが故だろう。バトルシーンを簡略にして、妖怪と人間との間に生まれるドラマを描いたことでこれまでの鬼太郎にはない味わいが出ている回もあるし、コメディ・感動・シリアス・ブラックネタ等々、バリエーション豊かな鬼太郎アニメが生み出されているのも6期鬼太郎の功績である。
しかしである、バトルシーンを簡潔にしたことがマイナスになってしまう場合があり、個人的に今回の「妖怪大裁判」はその場合にあてはまってしまったのだ。原作では有罪判決後に鬼太郎が脱走、裸状態のまま首謀者の百々爺や妖怪たちと戦うことになるのだが、今回はその下りが一切カットされており、原作で百々爺が披露する鼻毛針や鼻もんもの技が一切見せられない結果となった。
個人的にはかなり致命的なことをやらかしていると思う。百々爺は原作でねずみ男から「鼻毛針と鼻もんもの二つの術しかもっていない」妖怪として紹介されている。この二つの術を駆使した描写がカットされているから今期の百々爺の妖怪としての特色が殺されているのだよな。
いや、別に百々爺が好きって訳ではないのだけど、術を使っている姿あってこその百々爺だからそれがないとホントにただの悪い爺さんだからねぇ…。
6期「妖怪大裁判」に物申す
鬼太郎シリーズの中でも「妖怪大裁判」は異色作の一つだ。妖怪が実力行使ではなく、奸計をもって鬼太郎を退治しようとした点。そして鬼太郎を快く思わない妖怪たちが集団で鬼太郎を起訴した点も、単体戦が多い鬼太郎作品の中では珍しい。
妖怪パーティーで踊る妖怪、百々爺の奸計にのせられて鬼太郎を襲った妖怪、鬼太郎に助けられた恩はあるが百々爺らの威圧で何も言えない妖怪。様々な妖怪が出て来る、ちょっとした“妖怪大集合”回であるのも、妖怪大裁判の特色だ。
それにもかかわらず今期では原作の一種お祭り的な賑やかさがなくなってしまった。検事側にいる妖怪も首謀者の百々爺だけだし、傍聴席にいる妖怪も「夜にしか出られない者に考慮」という名目で姿が映っていない。絵面が地味なのだ。
百歩譲ってこの地味な状況を認めたとしても、まだ不満はある。裁判で提出された毛針・鬼太郎の下駄・現場の地面に残った下駄の跡という証拠品の扱いに関してだが、下駄と地面の跡の照合鑑定は行ったにもかかわらず、現場の毛針と鬼太郎本人の毛の照合鑑定が行われていないのだ。
勿論この時点で照合鑑定が行われ、一致しないと判明してしまうと鬼太郎は無罪となってしまい話が成立しなくなるので、これは明らかに脚本が意図的に歪めてしまった部分であり、最大の欠点と言ってよい。これなら原作通り秘密の漏洩罪にしておいた方がまだマシだったのではないか。
あともう一つ気になったのが、烏天狗の小次郎の件。どうも今回といい前に酷評した悪魔ベリアル回といい、今期の制作陣は小次郎を持て余している感じがするのだ。
烏天狗は原作でいう所の「天狗ポリス」に相当するが、今期の大山の烏天狗は天狗ポリスに所属しているのだろうか?という疑問がある。そして故意でないにせよ、悪魔ベリアルを復活させてしまった小次郎が裁判の官吏という立場にいるのがどうも釈然としない。私情が原因で悪魔を復活させてしまう失態をやらかすような奴に裁判の官吏など私は任せたくないのだが…。
事件の裏に名無しあり
今回の脚本はシリーズ構成の大野木氏。大野木氏が脚本即ち名無し登場回なので、今回も出た名無し。そして予想より早く犬山まなに四つ目の印「金」を刻み、残るは「水」の一つとなってしまった。
正直な所、今回名無しは出て欲しくなかったかな。名無しが出た分の尺をバトルシーンに活かして欲しかった。
更新が遅くなったので、これからおどろおどろ回の感想を書くとするか。明日もお休みだし。