ワル妖怪 妖対法で 要逮捕
…な~んて標語が生まれそうな情勢になって参りました。
手の目
89話ゲスト妖怪「手の目」
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2020年1月19日
原作「手の目」などに登場。盲目の老人姿の妖怪。掌に目玉がついており、その目から放射される眼力で相手の手を操る。ピンチになると掌の目玉を飛ばし、相手の眼窩に入って幻覚を見せるが、目玉を潰されると無力化する。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/dBOIMLzDsD
鳥山石燕『画図百鬼夜行』や『百鬼夜行絵巻』に描かれたこの妖怪、一説には花札や賭博に関係した言葉を使って描かれた創作の妖怪だとされているが、藤沢美雄『岩手の妖怪物語』では岩手県に手の目が出没した話も残っており、それによると夜盗に殺され金品を奪われた盲人が、自分を殺した夜盗を探すため妖怪と化し、その怨恨と執念から手に目が生まれたと言われている。
また『諸国百物語』では手に目のある化け物が肝試しに来た男を食い殺し、皮だけ残して去って行った話があるが、こちらの化け物は顔にも目があるため、水木先生は「手の目かじり」という別の妖怪として描いた。
アニメでは1・3・5期に登場。一貫して悪党妖怪として描かれており、1期では原作通り人間の手を操って強盗をはたらかせ、大金を得ようとした。ちなみに、1期は一応子供が見ることに配慮したのか、原作における手首の切り落としや目潰しといったグロい要素はカットされている。
3期では32話と77話に登場。32話では原作「妖怪大裁判」と同様に検事側妖怪として登場するが、77話では入らずの山の奥にある神殿の水を守る妖怪として登場。ただし77話の原作は鬼太郎の登場しない短編「迷路」が元であり、本来は餓鬼と人間との攻防がメインの物語にオリジナル要素として手の目が挿入された形になっている。
5期ではメインで登場することはなく、天邪鬼と共に妖怪大裁判や地獄横断クイズで鬼太郎を抹殺しようと企む卑怯な悪党妖怪として描かれた。特に地獄横断クイズの回、閻魔大王のお膝下で鬼太郎を抹殺しようとする手の目・天邪鬼の馬鹿さ加減には呆れたものだ。バレないとでも思ったのかよ…。
あやつる者はあやつられる者
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
今期の手の目は原作「手の目」の設定に則ったもので、手を操る能力や自分の目玉を相手の眼窩に入れて幻覚を見せる術は原作と同じ。メインとして登場したのは3期以来で、原作「手の目」のアニメ化は1期に次いで二度目となった。
ちょっと話がそれるかもしれないが、ここで鬼太郎作品における手の目の印象について語りたい。
上述した原作・アニメでの立ち位置からもわかるように、手の目はあんまり悪党妖怪としての強キャラ感はない。見た目こそ不気味だが、やっていることは人を操って強盗殺人を犯させ大金をせしめようとする俗っぽい悪行だったり、大物妖怪(百々爺)の後ろについて鬼太郎を抹殺しようとする等、立ち位置にショボさを感じる。
3期の77話は例外なのかもしれないが、あの話における手の目は「人間の仕業で餓鬼と共に山奥に封印されてしまい、その結果神聖な泉が餓鬼に侵されないよう守る羽目になった」という不遇な立場の妖怪として描かれている。
手を操る設定にしても、後に登場するそれ以上の能力と強さをもった悪魔ブエルにインパクトをかっさらわれ影が薄くなった所があるため、総合的に不遇な立場に追いやられているのが、個人的な手の目に対する印象なのだ。
で、今期においても手の目の立場は不遇と言わざるを得ない。妖怪を合法的に排除する法律が成立しようとしているため、それを阻止すべく法律に関わる委員会の有識者たちの手を操って不審死に追いやる。妖怪の尊厳を守るためのテロ行為に尽力した手の目だが、結局はぬらりひょんの手駒であり、猫仙人同様ぬらりひょんのマニフェストと革命行為をより正当化させるための「殉職者」として仕立て上げられることになった。
手を操る手の目は可視化された操縦者だが、実際の所は「見えざる手」によって操られた被操縦者であったという訳であり、その「見えざる手」とは言うまでもなくぬらりひょんを示している。また今期の手の目は「普段は人間に悪さをしない妖怪」という善寄りの妖怪に設定されており、それだけにぬらりひょんの操りの悪辣さが際立っている。
ぬらりひょんの「見えざる手」
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
ぬらりひょんの「見えざる手」は何も手の目だけに働いているとは限らない。劇中で寺がブルーライトでライトアップされる場面があったが、あれもぬらりひょんの「見えざる手」が作用したと思っている。あのブルーライトによって手の目の眼光がカモフラージュされ、鬼太郎の手を操るための隙を生み出すことになったのだが、寺をライトアップするための資金提供をしたのは間違いなくぬらりひょんだろうし、他の場所に鬼太郎が現れる可能性も考慮して、鬼太郎が来るだろうと予想される様々な寺社仏閣にブルーライトの仕掛けが用意されていたかもしれない。
あくまでもこれは私の推測でしかないが、土転びを味方につけるだけのためにゴルフ場開発の実行と中止を画策したヤツだから、それくらいの大規模なことはやりかねない。
更にこの「見えざる手」について言及すると、手の目が「殉職者」になったのも勿論偶然ではなく必然の結果。手の目に自爆用の爆弾を提供したのは言うまでもないが、鬼太郎が手の目によってやられないために、助けとなる猫娘の手は操らないよう手の目を誘導していた可能性がある。ホントに鬼太郎を抹殺する目的があったならば猫娘の手も乗っ取るのが一番良いのにそうなっていないのだから、ここにも「見えざる手」が作用していたと考えるべきだろう。
いや~、どこまで操っているのかちょっと混乱しそうになるが、押さえるべきポイントは「法案が可決される前に如何にして妖怪に危機感を持たせて戦力要員を確保し煽動させるか」ではないだろうか?
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
法案が可決され人間側の対策が十全に整った段階で煽動しても戦力となる妖怪は人間に狩られてしまうのだから、法案可決には至らせず、なおかつ妖怪の危機感を煽る事件を起こすことが今回のぬらりひょんの計画だったと思う。その目標を達成するため「手の目の殉職」が演出され、妖怪を排除する法律が可決されようとしていること・対妖怪用の武器が開発されていることを妖怪にアピールした。一方人間側に対しても妖怪によるテロ行為とその恐怖を植え付け、対立を激化させる方向へと差し向けた。
ここまで対立を激化させるからには、妖怪復権後はその功労者として優位な地位にいたいのだろう。「支配が目的ではない」と言っているが、やはり支配者階級に祀り上げられることは十分見越しているはず。
「妖怪による不当な行為の防止等に関する法律」(妖対法)
1月に入ってEDテーマが変わり、そこに女性総理が映っていることから政府レベルでの激突が予想されると以前述べたが、今回早くも妖怪と人間の関係を悪化させる出来事となる「妖怪による不当な行為の防止等に関する法律」(以下「妖対法」)を成立させようとする目論みが明らかとなった。
言うまでもなく「妖対法」は公平性に欠けた法案であり、人間を妖怪の脅威から守るという名目で「妖怪狩り」を行うことが合法的に許されることになり、妖怪が人間から不当な行為を受けたとしても人間側が罰を受けることはない、どう考えても妖怪にとって不利な法案なのだ。
この法案の背景には一昨年起こった狸軍団による政権の乗っ取りや昨年起こった黒坊主による水質汚染騒動が関係している※。正直狸軍団の時点で動いておくべきだと思ったが、まだその頃は政権を奪われたことに対する責任問題を対処するのに精一杯だっただろうから、そこまで思い至らなかったのだろう。
1年目は妖怪がいるかどうか人によって認知度合いが違う世界だったが、2年目となると名無し騒動もあって妖怪が完全に社会的に認知された世界となり、当然妖怪が起こした騒動を国が無視するのは物語として不自然。だから「妖対法」を成立させようという動きが出るのは当たり前だが、これに関してもぬらりひょんの「見えざる手」が働いているのだよな。狸軍団は名無しが黒幕だからともかく、黒坊主に関してはぬらりひょんが黒幕だから、間接的に法案成立の後押しをしていたことになる。
手の目の騒動によって一旦白紙となった「妖対法」、女性総理がこのまま引き下がるとは思えないので、次はどのような手を使うのか注目したい。(というか、どうせぬらりひょんがまた間接的に動かすのだろうな…)
※他にはブリガドーン計画や名無しによる騒動、ダイダラボッチなども影響していると考えられる。玉藻前に関しては、表面上は妖怪が関係していると一般市民が察することは出来ないが、政府関係者はねずみ男が乗り込んできた事実を知っているので、薄々あれも妖怪の仕業だったのではないかと思っているだろう。
さいごに(雑感等)
・吸血鬼ラ・セーヌ回で原作通り鬼太郎の手首が動く展開がなかったから、今回も手首切り落としはないと思っていたらまさかの手首チョンパ。手首を切り落とすまでは許容範囲で釘付けはアウトということなのだろうか。
・原作「手の目」では、退治された手の目が事件の真犯人として警察に引き渡される。その際「おれは妖怪だから人間の法律なんかつうようしない」と口答えする。「妖対法」を阻止する殉職者として手の目が選ばれたのは、もしかすると原作のこの台詞が関係しているかもしれない。
あ、ちなみに原作は猫娘ではなく砂かけ婆が鬼太郎の相棒となって活躍する話だから、今回おばばが出なかったのは少し寂しかったかな。手首チョンパの役目があったから猫娘だったのかもしれないが、そこは砂塵扇辺りの道具でクリアしてほしかった。
・今回は割と感想を書くのに手こずったが、その原因は「ぬらりひょんがどこまで操っているのか、幾らでも推測の輪を広げようと思えば広げられる」点にある。妖怪だけでなく人間も動かせるから、どこまでが偶然の結果でどこまでがぬらりひょんが意図的に動かしているのかを見極めるのが難しい。もう色々疑っていて「名無しが誕生したのもぬらりひょんの仕業だったりして」とかヘンな方向に今疑惑が向かっている所です。タスケテ…オーバーヒートしちゃう…。
・今回「妖対法」反対派として登場した壬生陽子。最後に総理から危険人物としてマークされた、ということは後々鬼太郎の味方として動くキャラクターとして活躍するのだろうか?一応彼女の存在は覚えておこう。
・時に鬼太郎の味方になったり敵になったりするねずみ男のグレーな立ち位置がぬらりひょんの革命への煽動を一蹴する発言につながるのはカッコよかったよ。
ねずみ男の言ってることが深い
— なっツン (@Nattsun___3) 2020年1月19日
#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/cM3IEGmhf9
何の因果か今ちょうど他局でシロクロつけたがるパンダのドラマが放送されているから、今回のねずみ男の一言がよりアンチテーゼとして際立っているように感じた。(ドラマの方は演出がクソ寒そうだったので見てない)
さて来週はさざえ鬼。鬼太郎がアイドルデビューという、ここにきてまたカオスな回になりそうな予感。ネットの情報では「6期鬼太郎は3月で終わり」※というのがほぼ確定の情報として流れているが、ここで悠長に一話完結回をやっていて収拾がつくのか少し不安。まだ西洋妖怪の方も話が進んでないのに大丈夫なのか…?
※3月で終了することが確定した。けど残り話数少ないのにベアード復活もやってぬらりひょんの話も決着させるんだよね?マジで収拾つくのかな…。
(2020.01.21追記)