タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ブラック企業と「ホワイト・ゾンビ」の共通項【ゾン100 #01】

ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~(1) (サンデーGXコミックス)

どうも、タリホーです。今期注目アニメの二つ目、「ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」が始まりましたよ。

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以前原作を読んで「これは面白いな!」と思っていたのでアニメ化は素直に嬉しかったけど、まさか日曜17時にやるとはね。ゾンビものってグロとかゴア描写が強いから無難に深夜枠のアニメになると思っていたのに。でもまぁ本作はゾンビものに抵抗感がある人にもおススメ出来る作品なのでこれはこれで良しかと。

 

「アキラ オブ ザ デッド」

本作の主人公、天道輝(アキラ)が意気込んで入社した会社は俗に言うブラック企業。連日の徹夜・月150時間超えのサービス残業パワハラ上司の怒号…と最悪の環境で心も身体もズタズタになりながら3年間も勤務していたアキラだが、ある日ゾンビ・パンデミックにより社会秩序が完全に崩壊。街中にゾンビが溢れかえりアキラもゾンビの群れに追いかけられる。

しかしその時アキラは思った、「今日から会社に行かなくてもいいんじゃね?」

ブラック企業から解放されたアキラはまるで人が変わったように生気を取り戻し、前から気になっていた美人社員の元へ様子を見に行く…というのが初回のあらすじである。

 

よりにもよって日曜のこの時間帯にブラック企業ネタのアニメを流すなんて、明日出勤する人の心の傷に塩を塗り込む所業だな…wwと思ったが、ブラック企業の描写は今回だけで今後は快活な冒険ものって感じの内容になるのでご安心を。

実は私タリホーも(アキラの会社ほどではないが)ブラック企業経験者なので共感出来るポイントが結構あって、例えば劇中でアキラが真っ暗な部屋でテレビを見て夜更かししている場面があったけど、心が病むと夜更かししちゃうんですよね。明日が来るのが怖いのと、今日やれなかったことを取り戻そうとしていつまでも起きてしまい、結果睡眠不足で仕事に行くという悪循環に陥るというパターンだ。

 

あと一番キツかったのが上司の存在で、パワハラまではいかないけどモラハラの要素が強い人で、ちょっとしたことでキレるタイプのお局様だから、報連相をするだけでも恐怖で、その人がその場にいると何か言われるのじゃないかという気がして、なるべく気配を消そうと息を殺して仕事をするから、(その当時は全然気づかなかったけど)今思えば肺全体の半分くらいの呼吸量で仕事をしていたような気がする。

で、辞める直前の頃は会社に行く前になると身体が震え出して「絶対に怒られる」という感情で頭がいっぱいになったし、吐き気がしてえずく、計画が立てられない(ずっと怒られ続けているので何が正解かわからなくなる)、人の名前を聞き間違える等のあり得ないミスをする、ストレスで昼食がほとんど食べられない等、明らかに今までの人生で経験したことがない身体的不調が起こった。そして希死念慮を抱くようになってツイッターの方でそんなことを言っていたらフォロワーさんの何人かに心療内科に行った方が良い」って言われたので病院を受診、適応障害という診断を受けて診断書をもらい会社に提出、そのまま逃げるように退職した…というのが私のブラック企業体験談だ。

 

そんな訳で、一応ブラック企業経験者だから本作の主人公・アキラは感情移入しやすいキャラクターだったし、「仕事に行かなくてもいい!」という解放感もすっごいわかるんだよね。流石に景色が色づいたとかそこまでではないけど、自分を否定する存在がいないという安心感、しばらく働かなくても良いという免罪符を得た感覚があったし、仕事を辞めた翌年にコロナウイルスが蔓延し、家にいることが美徳という空気感の広まりもあって、罪悪感なく実家で「あつまれどうぶつの森」をプレイしていたわ。

 

「ホワイト・ゾンビ」から見出すブラック企業の様相

ちょっと話はそれて、ゾンビ作品の歴史を少し語る。今現在のゾンビパニック作品の礎を築いたのはジョージ・A・ロメロ監督であり、彼が1968年に発表したナイト・オブ・ザ・リビングデッドがその始まりとなるが、ゾンビ映画自体は30年以上前にあり、その原点と言われているのが「ホワイト・ゾンビ」(邦題:恐怖城)である。

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ただし、この当時発表された「ホワイト・ゾンビ」に出てくるゾンビは、ブードゥー教の呪術によって操られた死体という中国のキョンシーに近い怪物で、人を積極的に襲う今のゾンビとは全く趣が異なる。これは舞台となるカリブ海の島・ハイチに伝わる民間信仰に基づく設定であり、そのためこの作品ではゾンビに襲われる恐怖ではなく、ゾンビとして操られる恐怖が主軸となっているのが注目すべきポイントだ。悪い呪術師に使役されるゾンビという設定なので、劇中では工場で奴隷同然の働きを強いられており、そこに自分の意思はなく機械の歯車として操られている。

 

さて、以上をふまえると「ゾン100」における最初のブラック企業の様子、そこで労働を強いられる社員は「ホワイト・ゾンビ」そのものである。彼らは自分の意思など関係なしに会社に使役される哀れなゾンビであり、アキラもそのゾンビの一人となっていた。そのゾンビ状態から抜け出す引き金となったのがゾンビなのだから、全く皮肉というか何というか。

 

さいごに

初回の感想は以上となるが、ゴア描写となる血しぶきがカラフルなペンキの色になっていて絶妙にグロ要素を回避しているのと同時に、アキラの解放された喜び・目に映るもの全てが彩り溢れて見えるという心象風景の描写にもなっていて、ここは普通に感心した。ゴールデン枠ということもあってか、アキラの動きの作画にもダイナミックさがあって、この先の波乱だらけの展開もアニメーションとして非常に期待出来るんじゃないかと思える初回だった。

個人的にこの「ゾン100」は深読みするタイプの物語ではなく、自分の経験とか価値観を反映させた視聴スタイルがしっくり来ると思ったので、今回のブラック企業みたいな"自分ごと"として捉えた感想をこれからは述べていこうと思う。