タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

『エラリー・クイーンの冒険』後半部(「見えない恋人の冒険」から「いかれたお茶会の冒険」まで)感想

前回の感想から20日近くも経っているのか!すっかり遅読になってしまったな…。

さぁ、後半部の感想いってみようか。

 

「見えない恋人の冒険」

ニューヨーク州コーシカの町で好青年ロジャー・ボウエンが殺人容疑で逮捕された。被害者マクガヴァンは射殺されており、被害者の体内から見つかった銃弾はロジャーの所有する拳銃から発射されたものと断定。動機の面から見てもロジャーに不利な状況のなか、エラリーは事件の調査をすすめる。

(ネタバレ感想)自分の職業を悪用した犯罪。弾が貫通していなかったら彼は完全犯罪を達成していたんだよな…。(ネタバレ感想ここまで)

 

「チークのたばこ入れの冒険」

宝石の盗難事件が続発していたアパートで殺人事件。殺されたのは事件があった部屋の住人ジョン・ルボック…と似た何者か。後に被害者がジョンの弟だと判明。そしてシガレットケースからエラリーはジョンに疑いを向けるが…。

(ネタバレ感想)収録作のなかで一番地味だったな。事件も地味だし「警視の言葉を聞いていた人物」という推理材料も地味だし、犯人も地味だし、地味尽くしだ。(ネタバレ感想ここまで)

 

「双頭の犬の冒険」

エラリーが旅先で宿泊した「双頭の犬」では3ヶ月前に宝石泥棒のジレットが宿泊しており、ジレットのあとを追っていた官憲が踏み込むという騒ぎがあった。ところがジレットは姿を消し、後に残ったのはジレットが連れていた犬の死骸だけだった。逃走のお荷物となる犬を殺してジレットは行方をくらませてしまったようだが、その後ジレットの宿泊していたバンガローで不思議な音が聞こえるようになり…。

(ネタバレ感想)ホラーだ。ロジック云々以前に、自分の殺した男の飼い犬に噛み殺されるという因果応報さにゾッとするし、真相が宿の名前で既に記されていたというのもホラーと言わざるを得ない。(ネタバレ感想ここまで)

 

「ガラスの丸天井付き時計の冒険」

骨董商マーティン・オールが自分の店で撲殺された。現場の状況から被害者は宝石のしまっているケースのガラスを割り紫水晶を持ち出したあと、更に床を這ってガラスの丸天井付き時計を手に取ったのち力尽きた様子。この不可解な状況を見たエラリーは容疑者と被害者の関係を調べ始める。

(ネタバレ感想)いわゆるダイイングメッセージもの…と思わせてからのひっくり返しがお見事で、短編として贅沢過ぎる構成。捻った誕生日祝いのメッセージをしたが故の墓穴。(ネタバレ感想ここまで)

 

「七匹の黒猫の冒険」

エラリーはペットショップの店員ミス・カーレイから奇妙な話を聞く。それは近所のアパートに住む寝たきり状態の老婦人から受けた猫の注文だったが、その老婦人は猫嫌いにもかかわらず黒猫を、しかも6週間立て続けに1匹ずつ注文してきたのだ。この話に興味を持ったエラリーはアパートに向かうが部屋に老婦人の姿はなく…。

(ネタバレ感想)被疑者の生死が不明のまま物語が進むので、収録作の中で最もサスペンスに満ちている。猫を毒見役に使った老婦人が猫と同じ末路を辿る結末もえげつない。ところでJ.K.ローリングは本作を知っているのか非常に気になる。知らなかったら是非とも読んで欲しい(笑)。(ネタバレ感想ここまで)

 

「いかれたお茶会の冒険」

J.Jの友人リチャード・オウェンの招待を受けたエラリー。彼の家では明日9歳の誕生日を迎えるジョナサンのために『不思議の国のアリス』のいかれたお茶会の寸劇のリハーサルが行われていた。しかし、翌日家の主人リチャードが寸劇の帽子屋の姿のまま失踪を遂げる。そのうえ、屋敷では次々と奇妙な出来事が起こり…。

(ネタバレ感想)この話のおかしな所は、物語の謎の大半が他ならぬエラリー自身による創作であるということ。ただ、「時計が映らなかった→時計が持ち出されていた」から「時計が映らなかった→鏡が動いていた」という推理は鮮やかだし、そこから『鏡の国のアリス』に繋がるのもお見事。(ネタバレ感想ここまで)

 

収録作個人的オススメランキング

1位「七匹の黒猫の冒険」

2位「ガラスの丸天井付き時計の冒険」

3位「アフリカ旅商人の冒険」

4位「首吊りアクロバットの冒険」

5位「いかれたお茶会の冒険」

6位「双頭の犬の冒険」

7位「見えない恋人の冒険」

8位「三人の足の悪い男の冒険」

9位「ひげのある女の冒険」

10位「一ペニー黒切手の冒険」

11位「チークのたばこ入れの冒険」