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【ゲゲゲの鬼太郎】赤舌(2~5期)を見比べる

ゲゲゲの鬼太郎歴代セレクション、第十五回目は水分を吸い取る妖怪赤舌。

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赤舌も毛羽毛現と同様6期で登場しなかった妖怪なので先に赤舌の基本情報を紹介しよう。

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赤舌は鳥山石燕画図百鬼夜行』に掲載された妖怪だが、解説文が一切ないためどのようなことをする妖怪なのかは不明。絵の中に水門が描かれていることから水に関係のある妖怪だとする説や、名前から陰陽道の赤舌神とつなげて、凶事をもたらす妖怪と解説する場合もある。

原作では水を操る妖怪として登場。人間の水分を好物とし、骨女やねずみ男に人間を集めさせていた。

 

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そして赤舌の手先として登場した骨女は鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に描かれている妖怪。ただ、厳密には妖怪ではなく『伽婢子』に収録された怪談「牡丹灯籠」の女の幽霊をモデルに描いている。

原作では「赤舌」のエピソードの他に「大首」のエピソードでも登場し、基本的に大物妖怪に仕えることを生き甲斐としているようである。どちらのエピソードでも何故かねずみ男を仲間に引き入れ悪事に加担させており、その設定がアニメでは思わぬ形で発展することになる。

 

2期(怪獣的恐怖を体現)

2期はほぼ原作通りだが、牛鬼回と同様劇画調の作画が赤舌の迫力を際立たせていて怪獣さながらの圧と怖さがある。

原作と同様赤舌は鬼太郎の胃液の力で溶けて退治されてしまうのだが、アニメでは目玉おやじがわざと鬼太郎の身体のパーツを競売にかけることを提案し、鬼太郎の胃液を赤舌に飲ませるよう誘導している。原作では鬼太郎の復活を恐れて鬼太郎を解体していたから、そう考えると原作は完全なる自滅パターンで何とも間抜けなオチになっているが、アニメの方は目玉おやじの機転のおかげで人間に被害が出なかったし、「幸福の国」に招待すると騙された人々も原作と違い鬼太郎が来てくれたからギリギリ助かっている。そういう改変の影響もあって、骨女や赤舌が間抜けな敵キャラではなくちゃんと脅威として描かれているのが2期の優れたポイントだと思った。

 

3期(戦隊ヒーローものっぽさがある)

3期もプロットは原作と同じだが、赤舌の復活理由が地下の酸素不足から千年の眠りから目覚めたという壮大な形に変更されており、千年王国建国のため水分を奪い取った人間を建築資材として利用している。そのためスケールは2期よりもデカくなったし被害者は多数出ているものの、赤舌と骨女は2期と比べるとだいぶ怖さはなくなりタイムボカンシリーズに出て来るドロンボーみたいなテイストになっている。

恐怖度は下がってしまったが、その分戦隊ヒーローものとしての面白さを付け足して物語を盛り上げており、原作や2期の胃液による退治ではなく、炎の妖怪五人衆を引き連れて体内から赤舌を蒸発させるという作戦で見事赤舌を退治した。ここら辺はやはり3期のヒーローものとしての強みが活かされていて良いなと思うし、色んな妖怪が見られて楽しい。ちなみに、炎の妖怪五人衆は今年の1月にサービスが終了したスマホゲーム「ゆる~いゲゲゲの鬼太郎 妖怪ドタバタ大戦争」に登場しており、戦隊ヒーローものでお馴染みの巨大ロボットに乗り込んで敵を攻撃する要素が盛り込まれていた。

 

さて、忘れてはならない注目ポイントはまだある。他ならぬ骨女とねずみ男の関係だ。原作で二度もねずみ男を仲間として引き入れた骨女を3期ではねずみ男にご執心という形で改変することで動機付けを行い、好きでもない女性に絡まれるねずみ男の悲喜劇を描いているのが3期の特徴だ。骨女はこの「赤舌」のエピソードの後は「大首」と「人喰い家(家鳴り)」の回に登場し、ねずみ男に猛アプローチをかけている。

多分だと思うが3期は孤独なキャラを出来るだけ描かないというコンセプトがあって、それでねずみ男のような、どうしようもない半妖怪にも魅力を見出して惹かれる骨女を設定したのかな?と私は思った。ちなみにねずみ男に惚れる骨女の設定は5期でも継承されており、ゲームだとPS2の「ゲゲゲの鬼太郎 異聞妖怪奇譚」でその様子が見られる。

 

4期(キングコング的物語)

4期になるとストーリーは完全オリジナルになり、赤舌も北国の水の精という設定になっていて人間の水分を奪う悪妖怪ではない。しかも巨大化する前の姿は赤いマリモみたいでカワイイとくるのだから色んな点でこれまでの赤舌回と一致する要素がない。強いて一致する所を挙げるなら原作の「地下の酸素不足」と水のタイヤで走る設定が物語に組み込まれているという程度だ。

そんな4期赤舌回は一言で評するならキングコング的感動譚」である。

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有名な映画とはいえ、名前だけ知っていて内容は知らない方もいるだろうからざっと紹介するが、「キング・コング」は1933年にアメリカで公開された映画で、それ以降リメイク作や漫画・ゲームが発売されている。その原点となった1933年の映画は絶海の孤島にいた巨大な類人猿(コング)が大都会ニューヨークに運ばれ見世物となり、それによって引き起こされる大騒動を描いた物語なのだが、コングはジャングルで出会った美女・アンに心を奪われており、ニューヨークに運ばれた後は彼女を探し出して片腕に抱え、エンパイアステートビルによじ登るという場面がある。

 

以上を踏まえると4期赤舌回は、北国の田舎にいた妖怪が少女の危機を感じて南下、大都会のコンクリートジャングルに出現し大暴れするという、正に「キング・コング」を意識して書いたプロットであり、それを人間と妖怪の純粋な友情という4期の感動路線に沿った物語に仕上げたのだから、単なるオリジナルエピソードとして評価するのではなく、過去の有名作のオマージュに挑んだ作品として見るべきだと言いたい。

 

5期(水神としての赤舌)

5期も原作とは違うオリジナルエピソードであり、2年目の縦軸となった妖怪四十七士探しに絡めた内容となっている。そんな5期の赤舌は水神として描かれており、温泉ブームに乗じて温泉を掘りまくり川の水量を減少させた人間に対して怒りを露わにしている。水分を吸い取ったり温泉に化けて鬼太郎たちを誘い出すのは原作と同じだが、動機そのものは正当な理由があるし、青森代表の四十七士として覚醒したのも妥当と言える。

そしてこの回は四十七士編のエピソードの一つなのでアマビエの活躍も見所となっており、同じ熊本県出身の油すましに対抗するためアマビエが鬼太郎たちを引き連れて温泉が枯れた青森へ向かい事件解決にいそしむ姿が印象的だ。それに、かわうそのエピソードで異彩を放った川男のコンビが再登場しているのも見逃せない。

 

5期赤舌回はアマビエが四十七士として覚醒する過程をメインにした回なので鬼太郎ファミリーがあっさりと赤舌に水分を奪われ次々と石化する下りは若干の都合の良さを感じるし、つるべ火に至っては「炎の妖怪なのに水分を奪われ石化っておかしいだろ!」と思いっきり突っ込ませていただいたが、瑞祥・予言獣としてチヤホヤされることに浸っていたアマビエが本気で仲間のために敵と戦う成長が見られたのは良かったし、真水は電気を通さず塩水は電気を通すという理科の知識が赤舌退治に絡められていて、そういう点ではタメになる物語だったと思う。

 

 

ということで赤舌のエピソードを見比べてみると2・3期が原作通りのプロットで4・5期はオリジナル色が強い。特に4期に関しては鬼太郎の物語でキングコングをやるという脚本の大冒険を今回は高く評価しても良いんじゃないかなと私は思っている

これまでの見比べ感想でも4期は妖怪と人間の友情や感動路線の物語を描くために原作を改変、或いは完全オリジナルの物語として描いており、正直それがイマイチ口に合わなかった回もあるのだけど、この4期赤舌回は少女と巨大な赤舌という表層はアンバランスながらも互いを思う心は純粋そのものな関係性を描いており、そのためにレギュラーメンバーは鬼太郎・目玉おやじ・一反木綿しか出さず、不純物となる要素を徹底的に除いているのが効果的なんだよね。4期の火車回はそこが不徹底だから私は低評価を下したのだけど、今回はそれが出来ていたからプロットに既視感があっても感動作たり得るのではないだろうかと思った次第である。

これは6期のすねこすりの回にも当てはまるのだけど、あの話も正直ペットとその飼い主の関係という点では物凄くベタなことを描いているんだよね。それでも感動作として成立しているのは、すねこすり自身の努力ではどうにもならない溝があるからで、望んでいても叶わないという部分に視聴者の感動と共感を呼び起こすものがあるのだ。

 

さて、次回からは過去の人気エピソードが11月2日まで毎日配信されるようで6期も4つのエピソードが配信されるが、6期のエピソードは既に当ブログで感想は言及済みなので割愛。当ブログでアップするのは、

・「妖怪アイドル!?アマビエ」(5期)

・「死神と貧乏神」(2期)

・「おばけナイター」(1期)

の三本に搾る。「足跡の怪」は6期の時に2期と合わせた感想を述べているし、「隠れ里の死神」も同じく6期の感想で言及しているので割愛する。そういうことで、引き続き鬼太郎感想を読んでいただけたら幸いである。11月17日から公開される映画については、諸事情により27日以降に感想をアップする予定なのでどうかよろしく。