タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ゲゲゲの鬼太郎(5期)第23話「美食家!? さざえ鬼」視聴

今回は1月6日までの配信。

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年末バイトで感想遅れましたが、新年一発目の感想として気を引き締めてやっていこうと思います。

 

5期さざえ鬼がグルメな心理的背景(「食べる」ことをどう見るか?)

さざえ鬼については6期の感想記事で紹介したので今回は割愛。

tariho10281.hatenablog.com

5期のさざえ鬼はリッチな美食家という設定があり、粘液を利用して攻撃を無効化するアニメオリジナルの技があるものの、展開の6・7割くらいは原作準拠でアニメオリジナル要素が多かった5期では比較的原作寄りのエピソードと言えるだろう。

 

今期のさざえ鬼が(原作通り)ニセ鬼太郎に化けずに鬼太郎をおびき出したのは6期の時点では単なる他期との差別化だと思っていたが、前回の22話でニセ鬼太郎が現れるエピソードを既に描いてしまったため、展開の重複を避ける目的であのような導入になったのだと今回の配信で気付くことが出来た。

 

さて、6期の感想でも言及したが、さざえ鬼回は各期によって鬼太郎を食べる動機が異なっており、人間への復讐だったり病気治療だったりと色々あるが、今期の場合は美食への探求というのが表面的な動機だ。

なぜここで「表面的な動機」と言ったかというと、単なるグルメとして食べる場合基本的に同種族(この場合妖怪)を食べるというのは避けるべきことであり、人間社会ではタブーでもある。鬼太郎は幽霊族だから厳密には共食いにはならないかもしれないが、広いくくりで妖怪である鬼太郎を同じ妖怪であるさざえ鬼が食べるというのは、ある意味タブーを犯すような部分があると思うのだ。

 

さざえ鬼のエピソードだけに限らず赤舌とか別のエピソードでも鬼太郎を食べようとする妖怪がいるとはいえ、赤舌や他の妖怪は食べるというより水分やエネルギーを吸収するといった鬼太郎の一部を奪い糧にするという印象が強く、さざえ鬼みたいに食事そのものが目的(=食べ方にこだわる)というのは、お化け旅行編に登場するロシア妖怪のヴォジャーイくらいだろうか。私の記憶が確かなら、さざえ鬼とヴォジャーイのエピソードが鬼太郎作品の中では「食べる」ことを前面に押し出したエピソードだったはず。

 

原作のさざえ鬼は他作品と同様「鬼太郎を食べて神通力を得る」ことを目的に鬼太郎を食べるのであまりタブー感はなかったが、5期のさざえ鬼にタブーさを感じてしまうのはそこに美食という享楽的要素があるからだと自分は考えていて、つまり生存のための食事というより娯楽・快楽としての食事というニュアンスが強いから余計にそう思うのだ。

 

同族を食べるだけでなくそこに享楽的な「美食」という概念を持ち込んで来ると必然的に私が思い出してしまうのは、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士だ。レクター博士が食人に走るようになった動機については同著者の作品で明かされているが、ある方の説ではレクター博士が食人に走ったのは同族を喰らうことで自分がより上位の存在になるためだと語っている。要は食物連鎖の頂点にいる人間を喰らうことで人間より上等の支配階級になろうとしたのではないかということだ。

食物連鎖は今回のさざえ鬼のエピソードにも関連している。食われる側のさざえが300年生き抜き、ようやく妖怪として食う側にまわったことを劇中で述べているが、そうやって食う側にまわったからこそ、食事に享楽性を取り入れようとするし、妖怪の中でも強い鬼太郎を食べることでより高みに昇ろうとしたと考えられるのだ。

 

そう考えると5期のさざえ鬼が美食家だけでなくリッチマンとして描かれているのも見逃せない点で、自分が金持ちを気取るのは猫娘をダシに鬼太郎をおびき出す目的でそうしただけかもしれないが、見ようによっては人間社会の上層階級を模倣することで妖怪世界の上位者であることをアピールしているようにも見える。1期のさざえ鬼は人間に対する復讐心があるから人間を食べようとしたが、5期のさざえ鬼は(人間より上等の存在になろうとしたかどうかは不明だが)少なくとも妖怪の世界で上位にたちたい願望があったのではないかと思っている。そうやって食物連鎖の頂点に立つことがさざえ鬼にとって300年生き抜いた自分へのご褒美ではないだろうか?

 

※人間の模倣をして上位者をアピールした辺り、少なくともさざえ鬼は人間と妖怪とでは人間の方が食物連鎖の世界では上位だと認識していることがわかるよね。言わずもがな、人間が地上を支配していることを思えば妖怪の方を下等に思うのも無理はないかもしれない。

 

 

次回はまくら返しの回。この回はさっき見たので出来るだけ早く感想をUPしたいと思います。