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ゲゲゲの鬼太郎(6期)第64話「水虎が映す心の闇」視聴

水虎

水木先生の作品には3種類の水虎が登場する。

まず、上記の「墓場の鬼太郎」期に登場する水虎。こちらは虎の姿ではなく髪の長い幽霊のようなビジュアルで、液体・水蒸気といった具合に身体の形を変形させて鬼太郎に攻撃を仕掛けた。

次に登場するのは「妖怪ラリー」の水虎。こちらは中国の古書『本草綱目』に記された通り、身体が硬い鱗に覆われた姿をした中国妖怪。その姿形は鳥山石燕『今昔画図続百鬼』に描かれている。

ja.wikipedia.org

作中で毛沢東語録を片手に持ちながらレースをする場面には思わず「競争する気あんのか」とツッコミたくなる。

そして最後は「鬼太郎国盗り物語」に登場する河童姿の水虎。相撲が得意な妖怪として狒々と共に登場する。

 

この3種類の中で最も伝承に近いのは「妖怪ラリー」の水虎。河童姿の水虎は中国から水虎の伝承が伝わった際に、日本の河童と混同したものなので、厳密に言えば水虎ではないのである。

 

水虎は1・3・4・5期でアニメ化。「妖怪ラリー」の水虎は1・3・4期に登場するが、今後6期で放送される可能性もあるため、ここでは割愛。「墓場の鬼太郎」期の水虎について言及する。

原作通り子供が水虎に身体を乗っ取られるプロットで話が進むのは3期のみで、後はオリジナル要素が強い。水のような身体を凍らせて封印するという方法が基本パターンだが、これにも例外があり、5期の水虎は「竜の息」という吸水性・発火性に優れた砂で身体の水分を吸われて最終的には鬼太郎の体内電気で蒸発という形で封印された。

 

5期だけ退治方法が各期と違うのは、その回が記念すべき第1話「妖怪の棲む街」だから。第1話と言えば鬼太郎ファミリーのお披露目回でもある訳だから、敵を凍らせる戦法だと仲間の活躍が出来ないことになり、当然他期と異なる退治方法になる。子供が水虎の封印を解くのは原作と同じだが、姿形は河童という点も他期と違う。

(画像はあにこ便から引用→http://anicobin.ldblog.jp/archives/55579160.html

5期を除けば、いずれの期でも水虎は虎の形をしているが、雌雄の区別があるのは3・4期のみ。特に4期は雌の水虎と合体した完全体の水虎が登場しており、雪崩や洪水を起こす強敵として印象深い。

 

辰川翔子=キャリー

 

 意図的に1期の記述を避けていたので察しの良い方はわかったと思うが、今回の脚本を担当した長谷川氏は1期の水虎回をベースに人の心の闇を描いた。

では1期はどんなストーリーだったのか?簡単に説明すると、以下の通り。

両親の墓参りで山を訪れたユリ子という少女が水虎の封印を解いてしまう。木や地面の水分を吸収し川の水まで枯らしてしまった水虎は村へ向かう。この異常事態を見たユリ子は急いで村の子供に知らせるが、以前から「親なし」としてユリ子は虐められていたため、話を信じるどころか石を投げられる始末。ところが、それを見ていた水虎は虐めっ子の水分を吸収してミイラにしてしまう。水虎は自分を復活させてくれたユリ子に恩を感じており、ミイラにしたのもその恩に報いるためだった。しかしこれが原因でユリ子は村の人間から報復を受ける羽目になり…。

 

©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

1期では恩返しという形になっているが、今回の話は契約と言うべきだろう。3ヵ月前に辰川一家が越して来た土地は鬼久保一家が牛耳る土地であり、夫の勲は鬼久保社長から理不尽な扱いを受け、息子の蓮は社長の息子から虐められ、妻の翔子は婦人会で社長夫人から虐められる日々を送っていた。我慢の限界に達した翔子は自殺を図ろうとするが、その時祠から水虎に呼ばれる。この苦しい現状から解放してくれることを条件に翔子は水虎の封印を解き、水虎は鬼久保一家と一家の言いなりになって同じように虐めていた町の人間を次々にミイラ化させていく…というのが今回のストーリー。

 

長谷川氏のツイートや角銅氏のブログでも言及されているが、このストーリーにはスティーヴン・キング原作の「キャリー」なる作品が大きく影響している。生憎原作を読んでいないし映画も観ていないので詳しいことは言えないが、キャリーという少女が自分を虐めたクラスメイトを超能力で殺していくというパニック・ホラーものらしい。

キャリー (1976年の映画) - Wikipedia

つまり、今回水虎の封印を解いた翔子がキャリーと同じ役回りを果たしたということになる。キャリーの方は殺した相手が復活することは無いが、水虎の方は水虎を封印してしまえばミイラ化した人間は元通りになるため、まだマイルドだと言えるだろう。

 

でもそこはゲゲゲの鬼太郎だけあって、単なるパニック・ホラーでは終わらない。水虎の魔の手は翔子の夫や息子にまで及ぶのだが、今回のサブタイトルで「水虎が映す心の闇」と言うのは単に辰川一家を虐めた鬼久保一家と町の人間に対する憎しみの念だけではなく、虐めによって変わってしまった家族を疎んじ「いらない」と思ってしまった翔子の心の闇も意味しているのがポイント。

 本来なら助け合い支え合うべき所が、虐めにより疲弊してしまった結果、そんな家族からも解放されたいと思うようになったのだろう。夫も子供も自分の辛さをわかってくれないのに、日常の家事をこなさなければいけない状況に嫌気が差したのだろう。

最終的に翔子が自らの意思で水虎に立ち向かったから水虎が退治されたようなものの、あのまま絶望して何も出来なくなっていたら事態は最悪の方向に向かっていただろうな。あくまで予測だけど、家族もミイラ化されてしまい絶望した翔子は水虎に自分自身もこの世から解放させてくれと懇願、翔子もミイラとなり死亡、というバッドエンドもあり得たと思うのだ。

 

リアルタイムで今も虐めを受けている人にとって、水虎みたいな妖怪は救世主だよね。でも契約満了後のことを考えると、やはり怖いと思う。

ところで、水虎が人間と契約を結び復讐代行をした目的は結局何だったのだろう?単純に封印から解放されたかっただけなのか、人間の水分を欲していたからなのか…。

 

 

さて、来週は1年ぶりの鳥取・境港編。現れる妖怪は魔猫

石妖と同様、今期が初アニメ化となる原作だが、予告から察するに「翔んで埼玉」のようなローカルネタ満載のギャグ回臭がする。