タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

髪形というか毛量が気になって(霊媒探偵・城塚翡翠 #2)

先週の初回放送時のツイートが珍しく50以上もの反応(いいね)をいただいた。

原作未読の方からしたらやはり気になる所ですもんね。ミステリとして視聴継続するべきかどうかの参考になりますし。

 

(以下、ドラマのネタバレあり)

 

「水鏡荘の殺人」

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)

2話は原作の第二話に相当する「水鏡荘の殺人」が映像化された。内容はほぼ原作と同じなので改めて言うことは特にないが、物語の序盤でいきなり犯人名が明らかになるという、麻耶雄嵩氏の『さよなら神様』と同様の形式になっているのが本作の特徴の一つだ。

 

さよなら神様 (文春文庫)

ただ刑事コロンボ古畑任三郎といった倒叙モノと違って、明らかになっているのは犯人が誰かという点だけであり、犯行の過程やトリック・犯人特定のロジックは伏せられている。そのため、推理から犯人を導き出すのではなく、その人物(本作の場合若手推理作家の別所幸介)を犯人とするならどのようなロジックで推理を完成させる必要があるのかという一種の虫食い算の要領で推理をしていくのがミステリとしてユニークなポイントだ。

本作の場合、別所を犯人と特定する手がかりとして翡翠が夢に見た別所幸介・有本道之・新谷由紀乃の三者三様の行動が読者(視聴者)に提示されているが、やはり小説よりもドラマの方がわかりやすかったな。文字だけで説明されるよりも映像で見た方が一目瞭然だし、夢の中で別所が顔を近づけていた理由も映像だとすぐにピンとくる。

 

ところで、他の方はどう思ったか知らないが、あの別所のモッサモサの髪形は一体どういうコンセプトであんなことになったのだろう。恐らく伏線とかではないし、原作でも特に特徴ある髪形の人物として描かれなかったからな…。本筋の事件よりもむしろそっちが気になって仕方がなかったよ。

 

あとこれは個人的な偏見かもしれないけど、日曜夜のドラマにしては珍しくドラマ特有の過剰な演出が抑えられていて、人によっては落ち着いたテイストで見やすいと思うか、或いは物足りなさを感じた人もいただろう。私はどちらかというと前者の方だが、日本のミステリドラマ、それも深夜に近い枠のドラマだと探偵役に決め台詞を言わせがちだし、以前同時間帯に放送されていた「臨床犯罪学者 火村英生の推理 」では火村に「この犯罪は美しくない」というドラマオリジナルの決め台詞を言わせている。※1

 

まぁ、本作は原作者が直々に脚本協力で関わっている※2から下手にドラマっぽい脚色をしてつむじを曲げられたら困るから忠実にやっているのかもしれないが、それでも昨今のミステリドラマとしては演出が(良い意味で)抑えられている。ショッキングな死体も出てこなければ、奇想天外なトリックが仕掛けられている訳でもない。霊媒による特殊な手がかりはあるものの、推理自体は堅実で飛躍的な発想が必要なものでもない。これはよっぽど原作の真相に自信がないと出来ないことだし、後半のサプライズのためなら序盤が地味でも構わないというドラマ制作陣の意思が垣間見える感じがする。

そんな訳で(まだドラマは始まったばかりだが)今のところ私は好意的にドラマの出来を評価している。主演の清原さんの翡翠も原作通りだし、ドラマっぽい嘘くささがなく実にナチュラルでそこも好感触だったよ。

 

 

※1:ちなみに、ドラマ放送当時私は同志社大学で開催された有栖川有栖先生の講演会に行き、その際ドラマ化の話も聞いた。原作者である有栖川先生もプロデューサーの方から問題の決め台詞のアイデアを聞いた時は困惑気味だったよ…ww。

 

※2:でも(これも同局同時間帯に放送されていた)「ネメシス」はミステリ作家の脚本協力があってあの出来だったからな…。詳しくは当ブログの「ネメシス」感想記事で語ってます。