タリホーです。

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ゲゲゲの鬼太郎(5期)第25話「妖怪大運動会」視聴

今回は1月20日までの配信。

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今回は妖怪大運動会ということもあり、大多数の妖怪が登場するが流石に全部紹介するときりがないので、今回とくに目立ったこの二体をまず紹介しよう。

 

アカマタ

アカマタは沖縄に伝わる妖怪。同じ名で来訪神としてのアカマタや、実在する蛇もいるが、今回は蛇の姿の妖怪の方を紹介する。

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アカマタは美男美女に化けて人間を誘惑し、子供を産ませたり時には相手を殺したりする。同類の妖怪として芭蕉の精が挙げられるが、芭蕉の精も美男に化けて人間に子供を産ませた話があり、生まれた子供の顔はまるで鬼みたいに牙が生えていたという。

 

しかし、原作のアカマタは沖縄の妖怪ではなく南方妖怪(≒海外妖怪)として扱われており、伝承のような蛇の姿をした妖怪ではなく、人間の老人に寄生しているというオリジナルの設定・ビジュアルになっている。アニメでも4期までは原作の設定通りだったが、今回の5期で伝承に沿った設定・ビジュアルとなり、日本妖怪でありながら南方妖怪(やし落とし・ランスブィル・アササボンサン・ポ)とも仲間であるという、これまでの鬼太郎アニメにはなかった特殊な交友関係を視聴者に示している。当初は鬼太郎のライバルとして対立的な関係にいたが、後に鬼太郎を助けたり妖怪四十七士の沖縄代表として覚醒するなど、鬼太郎の味方としての立ち位置が強くなる。

 

雨降り小僧

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鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』に載っている妖怪で、雨神に仕える子供の妖怪として紹介されている。

原作には登場しないが、アニメでは3期で初登場。3期は雨神ユムチャックに仕える妖怪として登場。4期は今回と同じく妖怪大運動の回で登場するがそれに関しては後ほど言及する。そして6期はたくろう火の回で登場し、火と水という相容れない両者が友人関係を結ぶ物語として描かれた。

 

ハンデとスポーツの苦しみ・楽しみ

今回の物語はOPテーマ曲の一節「夜は墓場で運動会」から案をとった物語で、4期でも同様の物語があるが、4期は運動が苦手な人間の子供が絡む物語に対し、5期の妖怪運動会回は人間が絡まない妖怪世界内で完結した物語になっている。そういうこともあってか、物語も競技の展開にスポットが当てられており、リレー競争・綱引きといった人間界でも定番の競技もあれば、キジムナー入れ・輪入道転がしという妖怪ならではのユニークな競技もあるのが今回の面白い点の一つだ(4期は特に妖怪らしい競技はなかった気がする)。

 

今回のユニークなポイントは他にもある。実は25話放送前にアニメ公式サイトで「視聴者が考えたオリジナルの妖怪」を募集し、選ばれたものはアニメ本編に登場するという何とも素敵な企画があった。劇中では7分19秒・10分55秒・11分45秒・13分00秒・14分25秒・17分28秒・19分34秒・19分55秒・20分14秒に観客席で応援している妖怪が、放送当時視聴者が考えた妖怪なので、選ばれた人にとって今回の物語は間違いなく一生ものの価値があると言えるだろう。

 

4期と5期で雨降り小僧の役割が違うとはいえ、同じスポーツをテーマとした回であり、両者ともスポーツの楽しさ・面白さを異なるアプローチで示している回だと思った。4期の場合は運動が苦手な子供に軸があるため、上手下手関係なく楽しくやることがスポーツの醍醐味であることを示した物語になっていたと思う。

実際はチームでプレイするスポーツとかで上手い子と組むと足を引っ張ることになって責められたり迷惑がられるケースがあるから、現実世界で人間関係のしがらみなくただ純粋に楽しんでスポーツをするのは難しい話だが、運動会は障害物競争・パン食い競争・借り物競争といった身体能力が勝利に必ず結実しない競技があるので、やはり運動会はいわゆる球技大会と違って楽しさを前面に押し出した印象があると私は思う(ただ最近はそういう競技をやる学校も減った気がするような…)。

 

で、今回の5期はというと、運動とは無縁の妖怪がコーチの目玉おやじ砂かけ婆によってしごかれる展開があり、一部の熱血漢に合わせて運動させられる羽目になる人間社会の縮図みたいなものを感じた。そんな運動・スポーツのマイナス面を描く一方で、この回では雨降り小僧が運動が苦手以前にそもそも自由に運動・スポーツが出来ない妖怪として描かれているのがポイントで、身体的にハンデを抱えたマイノリティの立場が描写されているのも今回の優れたポイントだと思う。「やりたくないのにやらされる苦しみ」と「やりたいけどやれない苦しみ」、これは自分が学生の時にも感じたしんどさ・辛さ(特に前者)だったので、そういうマイナス面を描いたことは評価したい。

 

前半部~運動会終盤までは以上のようなスポーツのしんどさや出来ない辛さ・名誉や損得が絡む競争としてのスポーツが描かれてきたが、終盤に移ってからは雨降り小僧を受け入れ泥んこになりながらリレー競争をするという、勝ち負けや利害得失・ハンデを超えた純粋なスポーツとして会場一体となって楽しんでいる様が描かれた。泥に滑って転ぶ選手がいても罵倒せず笑いに変え、転んで遅れをとった雨降り小僧にもエールを送る。当初は冷めた気分で運動会に臨んだ鬼太郎があれだけ一生懸命に走れたのも、純粋なスポーツとして運動会が展開されたからだと思うよ。人間社会のスポーツもこれだけ純粋に出来たらどんなに楽しいことか。

 

あ、蛇足になるかもしれないが、リレー競争で接戦した場合、今回の審判は「アカマタの舌が先にゴールに着いた」として南チームに勝利の決を下したが、(以前テレビで聞いた情報だと)本来は胴体が先にゴールに着いたかどうかで順位を決めるらしいので、間違っても舌を出してリレー・徒競走で勝とうなどと思わないように(まぁいないと思うけど)

 

 

さて、次回は2020年に再ブレイク(?)したあの妖怪が初登場する回だが、噂によるとYouTubeでの5期鬼太郎配信は今回で最後らしいので、次週は26話以降の展開をざっくり紹介して、私が記憶している限りの5期鬼太郎の印象とか感想・どの回が好きだったか等を語ろうかなと思う。