タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

感動の押し売り的演出に違和感、「ミステリと言う勿れ」2話視聴

ミステリと言う勿れ(2) (フラワーコミックスα)

どうも、タリホーです。

 

今回の感想に入る前に、前回の感想記事で体癖論に関してのご意見が届いたので一応補足説明みたいなものをしておきたいと思う。いつかはこういう懐疑的な意見も来ると覚悟してはいたのでちょうど良かったよ。

tariho10281.hatenablog.com

出来るだけ誤解がないように言いたいが、体癖というのは血液型占いや星座占いみたいに「太っているからあなたは怠慢な性格だ」とか「痩せているからあなたは神経質で小食な人だ」といった短絡的な判断で相手の性格・資質を推測するのではなく、体型・重心移動・行動原理といった様々な点から分類・診断するものなので、ある程度経験や知識がないと分からない学問分野なのだ。

一応断っておくと私は専門家ではなく、趣味と実益を兼ねた気分でこの体癖というものに興味を持ったにすぎない人間だ。だから専門家でもない私が安易に相手に対して「あなた〇種で、こういう人ですよね」なんて突きつけるマネは決してしないし、あくまで自分の頭の中でその判断・推測は完結させている。私が体癖を持ち出すのはあくまでもエンタメ関連の話だけだし、実在の人物に対して言及する時でも、下世話・侮蔑目的で体癖を持ち出すことはないので、その辺り、ご理解いただければありがたい。

 

まぁ、少なくともこのドラマに関しては原作とのビジュアル面での比較はやるだけ無駄だと前回気付いたので、今後は脚本・演出面のみの感想でいこうと思います。

 

2話(バスジャック編)

2話は原作1・2巻で展開されるバスジャック編。久能が乗ったバスで突如バスジャックが起こるが、バスジャック事件と並行して描かれる連続生き埋め殺人事件がバスジャック事件と意外な形で結びついていく…という物語だ。

原作との相違点は、乗客の一人・小林大輔の存在がカットされていること、会話のテーマ・内容が一部カットされていること、風呂光による捜査パートが大幅に追加されていることの3点が主なポイントだろう。風呂光の捜査パートが追加されたのは、このドラマが風呂光の刑事としての成長譚の面もあるため、原作で捜査を大きく進めた青砥に代わって風呂光にその役割があてられたと思うがそれはさておき。

 

個人的に今回気になったのは原作における会話劇が結構カットされていて、駆け足と思うほどに展開がちゃっちゃと進んだ点だろうか。原作で重要なテーマとして持ち出されたロッコ問題もカットされているし、堂兄弟がバスジャックを起こした動機も早々に乗客たちに明かしているのも展開の駆け足さを感じさせる原因になっていたと思う。

そのせいで、原作における”奇妙な”バスジャック事件としての面白みがなくなっているのがミステリ的にもったいない。原作ではバスジャック犯が乗客に様々な質問をしてくるが、この質問にどういう意図があるのか、何をバスジャック犯は知ろうとしているのか?という謎が読者に提示されているのも物語として面白ポイントになっていたのに対し、ドラマでは物語半ばでその目的を明かしているのでそこがマイナスポイントとなった。

 

また物語を駆け足気味にしたこともあって、各登場人物の1つ1つの話が全体的に見ると何か浮いている感じがするのもちょっと気になった。「何故人を殺してはいけないか」「いじめる側を治療すべき」「毎日コツコツ地道な作業をしている人がいるから社会は成り立つ」「不妊治療も自然の一つ」といった劇中で久能が語った内容は確かに生きづらさを感じる人や悩み・トラウマを抱える人にとっての救いになる話だ。

ただ、そういった話ばかりクローズアップさせるような脚本・演出にするのは違うのではないかと思っているし、特に今回はそれをEDテーマ曲や劇伴によって殊更に強調しているのがまるで「はい!ここ感動ポイントですよ!」と言われているみたいで、これでは感動の押し売りではないかと思った。

 

身もふたもない言い方になるが、こういった感動的な久能の語り・登場人物の悩みはミステリ的な視点から見れば本筋の事件に関わるヒント、或いはそのヒントをカムフラージュするための「森」(木を隠すなら森の中っていうアレです)であり、その役割を無視してただただ良い話を取り上げる作りにしてしまうのはドラマとして本末転倒ではないだろうか?

特に原作既読者として真相(連続生き埋め殺人の犯人)を知っている私としては、その真相に関する伏線が今回の2話であまり機能していない、むしろ原作にあった伏線をカットしていると思う部分もあるので、やや厳しい評価を下すのにはそういう訳があることを承知してもらいたい。

 

次回はバスジャック編の解決部に移るが、原作通りだとあとは犯人を明かしてバスジャック編は終わる。流石にそれだとドラマは尺が余るので、原作であっさり語られた犬堂愛珠の物語を膨らませた内容になると予想しておく。