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鍵のかかった部屋(特別編)エピソード6「はかられた男」視聴

ミステリークロック (角川書店単行本)

仁義なき戦い」のテーマ、今じゃすっかりギャグ用BGM。

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「はかられた男」(特別編)

原作は『ミステリークロック』所収の「ゆるやかな自殺」。ドラマはやくざ上がりの貿易会社という設定だったが、原作は暴力団の設定で、青砥も登場しない。そのため榎本は生命の危機を感じながら単身犯人の密室トリックを暴く羽目になる。

暴力団→貿易会社になったことで役職も「組長→社長」「若頭→副社長」という具合に変更。野々垣・坂口・犬山・八田は原作と同様だが、組長の塗師は富樫という普通の名前に変更されている。また、組長の娘・美沙子は八田の娘・美沙になり、年齢も小学生に引き下げられている。

 

原作では犯人が誰か事前に明かす倒叙スタイルで話が進む。「ゆるやかな自殺」というタイトルは作中で「飲酒はゆるやかな自殺」であることが言及されており、酒がトリックに関わるため題名として冠されたが、ドラマの方はそっちの面に比重を置いておらず、決まりきった生活パターンが防犯において問題となることが主張されている。そのため原作以上に榎本が防犯探偵として面目躍如しているのが評価出来る点と言えよう。

 

(ここからネタバレ感想)酒入り水鉄砲を本物の拳銃とすり替え自殺に偽装する点は原作と同じだが、酒がウイスキーから日本酒に変更されている。また、ドラマではすり替えトリックのアイデア八田と美沙の遊びから来ている描写が為されており、原作以上に野々垣の悪辣さが際立っているのが上手い。

原作ではアリバイ確保のため、八田がすぐに拳銃を撃たないよう野々垣自身が八田に電話をかけていたが、ドラマは毎晩決まった時刻に娘と電話をする八田の習性を悪用してアリバイを確保している。ここで冒頭で榎本が言っていた生活パターンの話とつながってくるのが細かいながらも巧みな改変だ。

原作では死体発見後すぐに推理をする羽目になった榎本だが、ドラマは死体発見から犯人の追及までに数日以上の時間がある。そうなると野々垣はトリックに使った水鉄砲を処分してしまい、犯行を証明することが出来なくなるのでは?と思いきや、ちゃんとその可能性が予知防犯のため設置された防犯カメラで潰されているのもこれまた巧い改変。

という訳で、地味ながらも防犯探偵の面に即した改変が為されているのがこの回の評価点。本来なら父親が殺され孤児となった美沙が痛ましく感じられるはずだが、榎本への逆プロポーズと、遊びに誘われ引っ張られていく榎本の姿が微笑ましく、後味の良い結末に仕上がっている。ちなみに、美沙を演じた子役の畠山彩奈さんは「警部補 矢部謙三2」で少女探偵として活躍する。シーズン1の方が視聴率が良かったらしいが、ミステリ的にはシーズン2の方が面白かったな。(ネタバレ感想ここまで)