タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

名探偵ポワロ「クラブのキング」視聴

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

よっぽど仲良しでない限り、家族とカードゲームなんてしないよね。っていうか、今はテレビとかスマホがあるから余計カードゲームなんかしないか。

 

「クラブのキング」

教会で死んだ男 (クリスティー文庫)

原作は『教会で死んだ男』所収の「クラブのキング」。ある夜、カードゲームをしていた一家に突然女性が現れ隣家で人殺しがあったと言って気絶。警察に通報すると女性の言葉通り隣家で死体が発見された、という事件。原作ではヘイスティングスがこの事件の新聞記事を読んで「事実は小説よりも奇なり」と言っていたが、真相はより一層小説的と言えるだろう。

 

(以下、ドラマと原作のネタバレあり)

 

個人的注目ポイント

・ダンサーから映画スターへ

原作のバレリー・サンクレアはダンサーであり、ロシアの公爵夫人の娘ではないかといった噂がつくミステリアスな女性として描かれているが、ドラマでは時代錯誤な設定と判断されたのか映画女優として改変され、ヘンリー・リードバーンに脅されていたという設定になっている。ちなみに、リードバーンもバレリーの改変に伴い撮影所のボスという肩書きになっている。

例によって40頁ほどの原作を46分のドラマとして膨らませるために、リードバーンに恨みを持つ俳優のラルフ・ウォルトンや、映画監督のバニー・ソーンダースがドラマオリジナルキャラとして登場する。原作ではポール公の要請で初めてポワロとヘイスティングスが事件に関わることになるが、ドラマはソーンダースとヘイスティングスが友人関係を結んでいるため、事件が始まる前に関係者と接触している。

 

・消えた占い師

原作では事件が起こる前にバレリーとポール公がとある占い師から「クラブのキングに気を付けろ」と忠告を受けた話が挿入されているが、ドラマでこのエピソードはカットされている。

このエピソードは「クラブのキング=リードバーン」を指していたと思わせて実は…という展開につながる材料で、「忠告ってそっちか!」と初読時に思ったものである。

占い師のエピソードはカットされたが、占い要素は実はドラマの劇中にわずかながらにあって、それはジャップ警部がバレリーの証言から犯人特定のために近所にいたジプシーから靴を回収していた場面。

ja.wikipedia.org

日本では差別用語とみなされているため、ドラマでも本来ジプシーと言っている部分がカットされていたり吹き替えされていない形になっているが、一応「あの集団は何だったのだ?」と思った方のために説明しておく。

 

・何故ポワロは見逃したのか

今回、ポワロは珍しいことに(真相こそ暴いたものの)犯人を警察に引き渡すマネはしなかった。「海上の悲劇」において「殺人は許せませんからね」と言っていたのにこれは矛盾しないのか?と思った方もいただろうが、「海上の悲劇」が謀殺(計画殺人)だったのに対し、今回の事件は事故による死(傷害致死という違いがあり、犯人に明確な殺意が無かったことからポワロは見逃す選択をとったのだ(依頼人が高貴な家の出というのも多少は関係しているのかもしれないが…)。

 

ちなみに、オグランダー一家がバレリーを庇っていた伏線は、序盤でオグランダー家に着いたバレリーは立っていたのに、オグランダー夫人がポワロに「気絶した」と証言した場面や、夫人と娘のカードゲームでの座り位置の矛盾がそれに該当する。また、原作で重要な手がかりとなったバレリーの靴の汚れについての下りはカットされているが、その分近くの表通りではなく、隣家の歩きづらい所を通った違和感が劇中で言及されることになった。

 

前述した占い師の忠告「クラブのキングに気を付けろ」とは、「リードバーンに気を付けろ」という意味ではなく、「クラブのキングのカードがカードゲームをしていたという偽装工作を見破られる手がかりとなるから気を付けろ」という意味だったことが明かされるが、占い師の存在そのものをカットしたため外連味がなくなりやや物足りなさを感じた。まぁ元々原作も大したことがないので、大きな瑕疵ではないのだが。

 

 

次週は「夢」。被害者が個性的だったのでこれはよく覚えている。