突然だが、人間誰しも出来ることなら楽に死にたいものである。しかし残念ながら日本は安楽死は法的に認められていないし、ミステリという虚構の中においても楽に死ねた被害者はあまりいない。
ということで、ミステリ作品限定で特に嫌な殺され方をした人が出て来るものを列挙し、グランプリみたいなのを決められたら良いなと思う。
一応「嫌な殺され方」は殺害方法の残虐性で判断しているので、被害者死亡後の凌辱や切断などは、ここでは勘定に含まれないことをあらかじめことわっておく。死体の扱いの酷さもカウントしていると到底キリがないので。
「こんな殺され方は嫌だグランプリ」、自選候補作
エントリーNo.1「本陣殺人事件」
横溝正史作品からは有名なこの作品を。殺害方法自体は特別残虐的ではないものの、あのシチュエーションで突然殺された被害者のことを思うと、肉体的な痛みに伴う辛さが身体を貫いたのではないだろうか。
エントリーNo.2『暗闇坂の人喰いの木』
島田荘司作品からはこれを。本筋となる殺人事件は殺害後の死体の扱われ方が酷いだけで殺害方法に残虐性はなかったと思うが、問題は殺害動機となったある人物の所業の方だ。その人物がやっていたアレコレが「嫌な殺され方」としてグランプリ候補となった。
エントリーNo.3『殺人鬼 ‐‐覚醒篇』
綾辻行人作品からは、グロいことで有名なこの作品を選んだ。基本的にスプラッター系はグロい殺し方だし、本作もそういったスプラッター系なので、当然グロい殺し方オンパレード。続編にあたる「逆襲篇」もあるが、どちらがよりグロいかはちょっとわかりかねる。何遍も読めるほどライトな作風じゃないので。
エントリーNo.4『碆霊の如き祀るもの』
三津田信三の刀城言耶シリーズ中最も嫌な殺され方をした被害者が登場するのがこの作品。ノックスの「密室の行者」に通ずる変死事件が正に「嫌な殺され方」なのだが、個人的には「密室の行者」よりも嫌だと感じた本作をグランプリ候補とした。
エントリーNo.5『人狼城の恐怖〈第2部〉フランス編』
二階堂黎人の作品からは、長大なこの作品を。ドイツ編もフランス編も惨い殺し方をしているが、残虐性にかけてはフランス編の方が強め。『有栖川有栖の密室大図鑑』で紹介された密室殺人は前代未聞の残虐さだ。
エントリーNo.6『魍魎の匣』
京極夏彦の百鬼夜行シリーズでも有名かつ衝撃度の高い作品。本作におけるバラバラ殺人が嫌な殺され方に相当するが、一部殺害動機についても「そんな理由で殺されるの!?」という点で嫌なものがある。
エントリーNo.7「コロッサスの鉤爪」
貴志祐介作品からは『ミステリークロック』所収のこの短編を。溺死は肉体的には勿論精神的な恐怖感も相当あるので、恐怖度としては随一だと思っている。被害者は悪人なので殺されて当然なのだが、あのような殺され方を想像すれば、悪いことは出来ないものである。
エントリーNo.8『屍人荘の殺人』
言わずもがな、映画化もされた有名作。他ジャンルの映画ではよくある殺され方だが、ミステリでは結構珍しい殺され方なんだよな。グロい殺し方というのは、被害者の罪の重さがそれだけ酷いことを意味している場合が多い。
エントリーNo.9『紅蓮館の殺人』
阿津川辰海作品はまだこの一作しか読んでいないが、吊り天井で潰されて死ぬというそうそう滅多にない殺され方をした被害者がいるため、かなり印象に残っている。絡繰り仕掛けの屋敷なんて冗談でも所有するものではないことを教えてくれる作品(違う)。
エントリーNo.10『悪いうさぎ』
今年NHKでドラマ化された作品(最高でしたね~)。「本陣殺人事件」同様、殺害方法自体に残虐性はないものの、やはりシチュエーションが狂っている点で嫌な殺され方として候補に入れた。
エントリーNo.11 探偵ガリレオ「第一章・燃える」
月9でドラマ化された東野圭吾の探偵ガリレオシリーズの第一作目。シリーズ幕開けとなる事件は殺され方としてかなり嫌な部類の焼死。しかも頭部が燃えるというハードさが印象に残る。特殊な手段を用いているため、通常の焼死と異なり被害者本人の苦痛度は低いかもしれないが、それでも嫌なものは嫌である。
さて、ここからは海外作品になる。海外の方は正直あまり読めてない作品の方が多いため、エントリー数は少ない。
エントリーNo.12『メソポタミヤの殺人』
クリスティのポワロシリーズからはこの作品を。メインとなる殺人よりも、口封じ目的で殺された人の殺害方法がも~嫌で嫌で。あんな目に遭うならいっそ毒薬で一思いに殺してもらいたいものだ。
エントリーNo.13『ボーン・コレクター』
ジェフリー・ディーヴァーの代表作。本作では他作品では見られない珍しい殺し方がある。殺される方も嫌だが、その現場の鑑識をするのもまた嫌である。
エントリーNo.14「モルグ街の殺人」
ミステリ小説の始まりとされた本作は、殺され方も実に嫌な歴史的名作。グロいというよりかは人間らしからぬ無秩序と不条理によって殺される。そんな感じの嫌さだ。
ここからは、小説だけでなく漫画や映像作品などの候補作を。
エントリーNo.15 金田一少年の事件簿「蝋人形城殺人事件」
基本的に金田一少年シリーズは初期に嫌な殺され方が集中しているが、とりわけレアな殺され方をしているのがこの「蝋人形城殺人事件」。既にドラマ化されているから知っている人も多いと思うが、後にも先にもあの道具で殺される人は出てこないはず。
エントリーNo.16 金田一少年の事件簿「剣持警部の殺人」
同じシリーズから何作も候補を出すのは避けてきたが、この作品は初期とは異なる残虐さがあるため、特別に候補作とした。まぁ被害者が人でなしのクズなので、殺害方法が過激になるのは当然なのだが…。
エントリーNo.17「TRICK DS版 〜隠し神の棲む館〜」
知る人ぞ知るドラマ「TRICK」のゲーム版。実は本家のドラマよりもグロい殺し方が多いのがこの「隠し神の棲む館」で、圧死とか首チョンパとかなかなかのハードぶり。ボリュームが山田の胸並みなのが短所だが、ミステリとしてはなかなかの出来だったので候補とした。
名探偵ポワロシリーズからはこの名作を。何故原作ではなくドラマを候補にしたかというと、殺害時のやり方が原作と微妙に異なるから。ドラマでは被害者に己の罪業をわからせるために、敢えて覚醒状態にし、口もきけず身体も動かせない薬を飲ませてから殺している。そのため、この場面は原作以上の恐ろしさを感じる。これだけでも重いのに全体を通して陰鬱な感じになっているからこれは最早イヤミスなのだ。
エントリーNo.19 名探偵コナン「ジェットコースター殺人事件」
正直私は名探偵コナンはあまり詳しくないし、有名すぎるが故の敬遠みたいなものがあるのだが、それでもアニメの初期は惨殺死体(目をクワッと見開いたまま死んでいる血みどろなやつ)がよく出て来たことだけは覚えている。そんな初期作品の中でもやはり「ジェットコースター殺人事件」が間違いなく殺され方としては嫌だ。殺される本人的には苦痛度はあまりないのかもしれないが、でもやはり普通に死にたいものである。それにしても、これをゴールデンタイムで放送していたなんて、信じられないな…。
エントリーNo.20 刑事コロンボ「死者のメッセージ」
倒叙ミステリドラマの金字塔からは、女流ミステリ作家が犯人の「死者のメッセージ」を候補とした。年老いた女性が用いる殺害方法としては理にかなったものだが、被害者にしてみればたまったものではない。とはいえ、それだけのことをされる被害者なので仕方ない。後に古畑任三郎が初登場した「死者からの伝言」でも同じ殺害方法がとられている。
以上の20作品が現在私が読んだ(見た)ミステリの中でのグランプリ候補だ。
いつもならば紹介するだけで終わってしまうが、折角なので上記20作品からグランプリを選んでみたい。
Twitter で行われている「横溝作品クズキャラ総選挙」と同じ形式でやろうと思うので、以下に投票方法を記載しておく。
①投票期間は本日5月13日から11月13日までとする。これは上記20作品を知らない人のための配慮であり、半年もあれば上記20作品の大半を網羅することが可能だと思ったからだ。あとは単に個人的趣味でやっていることなので、短期間の集計は負担になると思ったからである。
②投票は一人5ポイントの持ち点制。1作品に5ポイント全てを投票するも良し、5作品に1ポイントずつ投票するも良しだ。ただし、0.5ポイントといった小数点以下のポイント投票は無効とする。持ち点以上の投票をした場合も同じく無効とする。
③投票先は当ブログのこの記事の下の「コメントを書く」から投票するか、私のTwitter アカウントのこのツイート(↓)に直接リプライとして投票を送っていただければ良い。
ミステリ小説における「こんな殺され方はいやだ」という作品を募りたい。またブログとかで自選作品も挙げるが。
— タリホー@サラリーマン山田 (@sshorii10281) 2020年5月12日
投票を見られたくない場合は、ブログのコメントからの投票をおすすめする。つまり、ブログに投票として送られたコメントはブログ上に公開されないのでご注意を。
以上が投票方法になる。もし質問等あればコメントで送っていただければ幸いである。
出来れば他の方が知っている「こんな殺され方は嫌だ」ミステリを募ってグランプリを決めたいところだが、私自身のミステリの知識がまだまだ広くないため、安易に募った作品を候補に入れてしまうと、殺された後の処遇が酷いミステリ(殺害方法そのものに残虐さ・恐ろしさがない)も含めてしまう恐れがあるため、今回は20作品に限定した。どうかご容赦願いたい。
ただ、投票に関係なく「こんな殺され方は嫌だ」ミステリは常時情報を募集しているので、コメントはお気軽にどうぞ♪