タリホーです。

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新作「聖恋島殺人事件」開幕!(五代目「金田一少年の事件簿」#2)

はじめちゃんの「やる気スイッチ」は死体とか殺人じゃないの?

 

(以下、ドラマと原作のネタバレあり。ただし今回は前編のため真犯人やトリックについての言及はしないのでご安心を)

 

File.2「聖恋島殺人事件」(前編)

金田一少年の事件簿R 聖恋島殺人事件 (講談社プラチナコミックス)

今回のエピソードは、2016年の12月から翌年の4月にかけて連載された「聖恋島殺人事件」。はじめと美雪が剣持警部と共に磯釣り大会に参加し、決勝戦の会場となる聖恋島へ向かうが、その島は「セイレーンの泣き声」と呼ばれる不可解な怪奇現象が起こる曰く付きの土地であり、「墓標の島」という不吉な名でも呼ばれている。本作は聖恋島を舞台に大会参加者が次々と殺される物語で、事件の背後に隠された「セイレーンの泣き声」の正体が、事件解決の重要なポイントとなる。

長編作としては比較的近年に発表されており、分量も全15回と長めでボリュームがある。そして原作では「シリーズ屈指の殺人トリック」という謳い文句があるほどトリックに力の入った作品であり、実際作中で用いられたトリックは(ややわかりやすい所はあるものの)バリエーションに富んだトリックが三種類も用意されている。

今回は初の映像化作品のため、まずは原作の事件関係者を紹介し、現段階での原作との相違点を振り返りたいと思う。

 

※ちなみに、セイレーンはギリシャ神話における半人半鳥の怪物。しかし、後年海の魔物である人魚と混同されるようになり、姿も鳥から魚へと変わるようになった。

 

原作のおさらいと相違点

〇本作の登場人物

まずは大会参加者から。(括弧内は年齢)

潮小次郎(28)

若きイケメン医師。同業者の影尾に頭が上がらない。

 

寒野美火(30)

ツンツンとした性格の女医。同業者の影尾に頭が上がらない。

 

影尾風彦(55)

帝王大学医学部教授。殿様然とした態度で周囲を見下す。

 

鰐瀬たかし(25)

医療機器メーカーの営業マン。取引相手でもある影尾に頭が上がらない。

 

伊豆丸険(50)

ゴマスリ製薬の医療情報担当者。取引相手でもある影尾に頭が上がらない。

 

右竜あかね(42)

女流作家。大会を素材にした小説を書く予定。

 

奥ノ木武蔵(29)

編集者。右竜の取材の付き添いとしても参加している。

 

続いて大会の運営者側の人間を紹介。

鬼島高彦(37)

音羽アイランド広告の社員で大会のイベント担当者。凪田と結託し、派手な展開作りのためわざと悪天候の時を狙い大会を決行した。

 

凪田空也(38)

サウスアイランドケーブルTVのプロデューサー。鬼島と結託し、ド迫力の画を撮影する目的でわざと悪天候の時を狙い大会を決行した。

 

海星終吾(32)

サウスアイランドケーブルTVのカメラマン。地味で大人しい性格。大会参加者のある人物と面識がある。

 

霧声昼子(87)

聖恋島唯一の住人で、大会の世話係を務める。「セイレーンの泣き声」について知っている模様。

 

以上の11人に、はじめ・美雪・剣持のレギュラーメンバーを加えた14人が原作で登場する。

 

〇原作との相違点

・磯釣り大会 → フィッシングツアーに変更。

・鰐瀬と伊豆丸が同じ医療機器メーカー「トーディインテック」に勤務する営業マンとして変更。

・編集者の奥ノ木とカメラマンの海星がカットされ、海星の代わりに佐木が劇中でカメラマンの役割を果たす。

・右竜の職業が作家から「アスタニッシュ出版」の記者に変更。それに伴い来島の目的も「セイレーンの泣き声」の正体を調査するという形に変更されている。

・鬼島と凪田が統合され、ツアーガイドの凪田夏見という女性に改変されている。

・凪田が元看護師として影尾らの職場で働いていたという設定が追加。

・被害者の殺害順が「影尾→潮→寒野」から「寒野→潮→影尾(後編で殺される予定)」に変更。

寒野の手紙が手書きからパソコン入力の文章に変更。

・参加者がそれぞれ宿泊する水上コテージがなくなり、宿泊施設はメインコテージにまとめられている。その影響で、寒野の殺害現場も彼女が泊まる水上コテージの部屋からメインコテージの一室に変更されている。

・潮を救助するため海に飛び込んだのが剣持からはじめに変更されている。

 

原作で磯釣り大会としてはじめ達は聖恋島を訪れているが、上記の通り剣持の計らいでドラマはフィッシングツアーに参加したことになっている。詳しいことは来週の感想で述べるが、この改変のおかげで原作でモヤモヤとさせられたある疑惑を推理する必要がなくなり、スッキリとした構成になっているのがまずドラマの改変ポイントの上手い所だ。

そして大会からツアーに変更したことで、邪な目的で大会を開催した鬼島と凪田が凪田夏見として統合され、被害者を殺す動機を持った人間の一人として改変されているのも評価したい。原作では鬼島も凪田も容疑者候補としては弱い部分があったので、容疑者数自体は減ったものの、有力容疑者は原作以上に多い状況が作られているのはミステリ的に良いことだと思う。それは、嫌々影尾らの接待をする羽目になった鰐瀬もそうだし、右竜も影尾を煽ったり「セイレーンの泣き声」を調べようと霧声をつついたりと場をかき乱す役割を果たしているので、各登場人物のキャラの濃さが強くなっているのがドラマを見た印象だ。(原作の右竜は奥ノ木がいるせいか、あまり他の人とガツガツ絡んだ感じはなかった)

 

肝心の事件については、やはり被害者の殺害順が入れ替わっているのが注目すべき点だが、個人的にこの変更は犯人の殺害動機を鑑みると、ドラマの方がその目的が効果的に達成されているのではないだろうか。被害者たちが何をやらかしたのかは来週明らかになるので今回は伏せておくが、原作を読んだ時「こいつを一番先に殺したら効果的ではないんじゃ…?」と思ったので、個人的にはドラマの方が犯行動機に適した殺害プランになっていたと評価したい。

 

さいごに(五代目金田一食欲特化型?)

前編を見た様子だと、少なくとも前回の「学園七不思議」のような、ミステリとして砂を噛むような消化不良感はなさそうなので後編の展開に期待しておくが、それはともかく。

道枝さん演じる五代目金田一は、前回と今回を見た様子だと食欲という面が通常モードでは強調されていて、少なくとも原作や初代・四代目で見られたスケベ要素はないみたいだ。やはり、コンプライアンスにうるさい時代だから、ラッキースケベ的なことを期待する主人公を出しづらくなっているということだろうか。それでいて三枚目要素はなくさず探偵モードの時とのギャップを見せないといけないので、意外に難しい注文を要求されているのではないかと思うが、そこは頑張ってもらって五代目独自の色を視聴者に見せつけて欲しいと期待を込めて応援するつもりだ。

特に金田一少年シリーズは、他のミステリ作品と違って身体を張る展開も結構多いし、現に今回は海に飛び込んだり洞窟にすべり落ちたりとフィジカル要素満載だったので、コロナに感染したのもあの場面を見れば無理ないと思う。それだけに、健康面でも問題なく撮影が進むことを祈りたい。また一週間お預けとかあったら嫌だもの。

 

来週は解決編になるが、原作未読の方がいるなら今回の犯人はわかりやすい方なので是非推理してもらいたい。正直メタ的な推理でも当たるよ。