タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

世情に背いて『日本現代怪異事典』の怪異を描いてみた

日本現代怪異事典

突然だが、コロナウイルスの蔓延でアマビエという妖怪が話題になっているにもかかわらず、アマビエの絵を一枚も描くことなく、『日本現代怪異事典』に載っている怪異をいくつも描くという、縁起でもないことをしている私。

 

普段の私はお絵描きは趣味にしておらず、お絵描き趣味全盛期は小学生の頃に既に終わっていたのだが、何故急に描こうという気になったのかと言うと、ツイッターで6期鬼太郎完結記念として「#私が推したい水木作品キャラ」という企画が持ち上がったことから始まる。

漫画のコマを撮ってアップするのも芸がないし、かといって改めて描くのもちょっと面倒くさいと思っていた時に、小学生時代の自由帳に色々水木先生のキャラクターを描いていたことを思い出し、それを引っ張り出してきて、そこに描かれていた「さがり」をアップした。

で、自由帳には他にも「集団亡霊」とか「しらみゆうれん」とかも描いてあって、それを久しぶりに見ていたら、ふつふつと自分の中で“描きたい欲”が出て来た。

 

それで、折角描くなら既出のものは出来るだけ避けたいと思って選んだのが『日本現代怪異事典』。これならまだ絵にされていない怪異も多いだろうし、描いていて楽しいと思ったのでこれにした。

という訳で、以下は今現在私が描いてみた怪異たちの紹介。ほとんど落書き感覚なのでハッキリ言ってうまくはないけどね(紹介の順番は描いていった順)。

 

 

画像

【座布団ババア】:家で一人で留守番をしていると突然カーテンの中から現れる怪異。宙に浮いた紫色の座布団に乗った老婆の姿をしており、糸車を引きながらひたすらまとわりついてくることがあるという。

(何故座布団が二枚重ねかというと、描いている途中で座布団が薄いことに気づいて付け足したから。名前に座布団って付いているのに座布団がペラペラだと箔が付かないものね。糸車を引く老婆というのは、昔話の山姥でも見受けられるが、カーテンから出て来るというのがよ~わからん)

 

画像

【黒いもや】夜の12時12分12秒に、ある学校の校庭の中央に現れるという怪異で、黒いもやのような姿をしている。これを見ていると女の姿となって鎌を振り回して襲ってくる。この女から逃げ切ることができても、八日後に恐ろしい祟りがあるという。

(鎌はもやの一部なのか、それとも女の姿になったもやがどこかから鎌を調達して襲ってくるのか、それはわからない。女性系統の怪異は執念深いのだろうか、逃げても何かしらの障りが出てくるのはよくあるパターンだ)

 

画像

【アクロバティックサラサラ】:主に福島県で目撃される怪異。背が異様に高い女性で、服装は赤い服を着て赤い帽子を被っているが、足は素足とされる。名前の由来ともなった長くサラサラとした頭髪の他にも、左腕に多数の切り傷がある、口が大きくその中に生えた歯も大きい、眼孔に眼球がなく黒く染まっている、などといった容貌が語られている。建物の屋根や屋上、電車や自動車、公園のベンチやバスの座席、断崖絶壁などに現れ、この怪異に目を付けられると家までついてこられて攫われるという話や、目撃しただけでも近い内に事故を起こすと言われている。

(背の高い女の怪異といえば、昔なら高女、現代なら八尺様が有名。名前のインパクトにつられて描いた。本当ならば服と帽子を赤く塗りたかったが、赤鉛筆も赤インキのボールペンも持っていなかったのでやめた)

 

画像

【ナタデナタ】:この怪異の話を聞いた人の元に現れる怪異。話を聞いた人間は、夜中にふと目が覚め、このナタデナタが現れる。現れ方には3パターンあって、1つはトイレに行くと突然大量の血がトイレに流れ、血と一緒にナタデナタの肉片が大量に流れてくる。この時、肉片がひとかけらでも流れないよう手でせき止めないと、殺されて地獄に連れていかれてしまう。もう1つは、目が覚めた途端目の前にナタデナタが現れ、口から血を流してくる。この時、口から垂れるナタデナタの血を口で受け止め飲み込まねばならず、もし一滴でも零してしまうと殺されて地獄に連れていかれてしまう。最後のパターンは突然出現し、対処することが出来ずに殺されてしまう

(具体的な容貌が語られていないためイメージで描いたらなんか可愛くなってしまった。が、怪異としては非常に危険でタチが悪い。ゲーム的な試練を与えたり登場にパターンがあったりと、比較的愉快犯に近い性格だと思う。名前から想像するに、鉈を使って殺すのだろうか)

 

画像

【イルカノアシイル】:電話の怪異。13歳の誕生日になると何者かから電話がかかってきて「イルカの足いる?」と尋ねられる。その際「いる」と答えると足を切断され「いらない」と答えると事故に遭って死んでしまう。さらに何も答えず電話を切ると何者かに殺されてしまう

(答えても答えなくても死ぬ、という点で理不尽かつ恐ろしい怪異。「いる」と答えて後日自分の足がイルカみたいになってた、ならまだ可愛げがあるのだが、切断して放置だから嘘もいいところである。イラストは勿論イルカがモチーフだが、単純にイルカを描くのも芸がないと思って足を付け加えてエイリアンじみた姿にした)

 

画像

【イサルキ】兵庫県のある小学校に出現した怪異。全身真っ黒の人間といった姿をしている。飼育小屋のセキセイインコやウサギの赤ん坊をナイロン紐で括り殺す残忍な行動をとり、しかもその犯行には小屋の中に侵入した痕跡が一切残っていなかったとされる。また、この怪異を目撃した少年はそれを人に話した次の日から行方不明になり、元々存在していなかったかのように全ての記録も消えていたという。

(この怪異を聞いた時、私は牛打ち坊という妖怪を思い出したが、牛打ち坊は牛馬といった家畜を狙う妖怪で、存在を知った人間に危害を加えた話は残ってないため、やはり異種の怪異かと判断した。「地獄先生ぬ~べ~」では小学校のウサギが殺される話があったけど、アレは変質者の仕業だから違うな。ビニール紐を使うところが人間っぽいから、やはりイサルキは人霊系統の怪異なのだろうか)

 

画像

【石女】:ピンク色の傘を差した女の姿をした怪異。顔には目・鼻・眉がなく、真っ赤な口だけが存在している。この石像は額から血を流していたり口が笑っていたりすることがあり、それを見てしまうと高熱を出して寝込むことになる。また額から血を流し、口が笑っている状態が同時に発生しているのを見てしまうと、この石女が家までやってきて食べられてしまうという。

(傘の中心部分を描くのを誤魔化すため帽子を被せたが、正直いらなかったと後悔。そして古風な着物にせず洋服の方が傘とも合っていたことに気づいて、あぁしまったとまたまた後悔。…という具合でこれはあまり良い出来ではない。屋外に出没し、見ると高熱で倒れてしまうところを見るに、行逢神的な感じがする)

 

画像

【シシノケ】:石川県に現れたという怪異。外見は寝袋の表面に鋭く固い毛を生やしたような姿をしているという。その細長い体には手足はないが、先端の顔にあたると思われる部分には触覚のようなものが三本、三角形を形作るように生えており、さらにその先端には目玉と思しき器官があるとされる。そして三本の触覚の中央には鼻または口にあたる器官なのか、穴が一つ空いており、その下に髭のようなものが生えているという。発情期の猫の声や赤ん坊の泣き声のような音を発する他、「ッチ……ッチ……イトッ……シャ……ノウ」と言葉らしきものを発する。

(これは描いていて楽しかった怪異。他の怪異と比べて具体的な容貌が説明されていることもあってか、『日本現代怪異事典 副読本』でこのシシノケのイラストが載っているのを見つけた。シシノケの正体にまつわる話も残っているが、それを見る限り、山の妖怪としての側面が強そうに思える)

 

画像

【定規のような顔の女の子】:ある少年が夏の夜中に寮へ帰る途中、女の子の泣き声が聞こえてきた。見ると髪の長い女の子が俯いて泣いている。そこで声をかけてみると、その女の子が振り向いた。しかしその顔はまるで定規のように細く長い顔をしていたという。

(これは江戸時代の『三州奇談』に収録された長面妖女の怪談の現代版と言って良いだろう。髪型をツインテールにしたのは特に意味はない。強いて言うなら髪の長い女を描くのに飽きを感じていたから)

 

画像

帝国陸軍第一二六号井戸の怪物】:インターネット上で語られた怪異。首都高速中央環状線に存在する、あるトンネルの中にある合流地点。そこには奥へ奥へと進むことが出来る道が設置されており、金網や鉄柵の扉の鍵を開けて歩を進めると「無断立入厳禁防衛施設庁」と書かれた鉄扉が現れ、さらにその奥へと複数ある鉄扉の鍵を開けながら進むと帝国陸軍第十三坑道」と記された鉄扉が現れる。これを開き、また奥に続く狭い道を進んでいくと、帝国陸軍第一二六号井戸」と書かれた鉄扉が出現する。扉の向こうは小中学校の教室くらいの広さの部屋で、その中央に鉄の蓋を載せられた井戸がある。蓋の端には天井の滑車に繋がる鎖がついており、滑車からぶら下がるもう一つの鎖を引いて回すと蓋が開く仕組みとなっている。その井戸の底には真っ白な肌で禿頭、目にあたる部分に小さな穴があいた不気味な怪物が棲みついており、一部の暴力団などが殺人の証拠隠滅のため人間をこの井戸に落して処理するために利用しているという。そして何故か、人間を井戸に投げ入れる時は、必ず生きた状態でなければならない

(陰謀的な話が付随した井戸の底の怪物という、食指をそそる怪異だったので描いてみたが、話通りの容貌を描くとやはり可愛くなってしまい、ややベイマックスみが出てしまった。イラストでは井戸から出た感じで描いたが、実際の怪物は井戸から出られる力はないと思う。井戸を塞ぐ蓋が滑車で開け閉め出来る程度で厳重にしていない点を見てもそれはわかるが、蓋をしておくのは開放状態だと怪物が吐く毒気が上にまわってくるとか、そういう理由があってのことだろうか。生きた人間=生贄であり、井戸に棲みついていることを考えると、水神に関連した怪異のような気がする)

 

画像

【マグロの幽霊】市場で並べられていたマグロを見ていた人間の元に現れ、追いかけ回したという怪異。

(突拍子ない怪異だと思うかもしれないが、すっぽんの幽霊が怪談話として残っているのだから別にマグロが幽霊になってもおかしくはない。マグロに追いかけられるのだから、人間の背丈かそれ以上の大きさでないと怖くないかな~と思ったので比較材料として逃げる人影を描いた)

 

画像

【リアルの悪霊】:主に「リアル」と題されることが多い、ネット怪談に登場する悪霊。経帷子を着て、背は150センチくらい、傷んだ髪を腰まで伸ばし、顔全体にお札のようなものを何枚も乱暴に貼り付けている。これが出現した後には異臭を放つ泥が残されている、常に小さい振り幅で左右に揺れているといった特徴があり、体をくの字に折り曲げて人の顔を覗き込む動作をよく行う。また、これに取り憑かれると「どおして」という言葉が繰り返し聞こえたり、首を赤い紐で括られるような発疹ができ、それが次第に悪化して出血するようになるなど、さまざまな怪奇現象に悩まされることになる。この悪霊は時間をかけて取り憑いた人間を苦しめることを好み、決して殺さずに何年もその人間に苦痛を与え続けるという。そしてそれから逃れるには、自殺するしかないと言われている。

(顔にお札が貼り付いていることを除いたら、あとはオーソドックスな幽霊像なので描きやすい方ではあった。創作だったらお札が剥がれてその顔を見たら死ぬ、みたいな展開になるのだろうが、“リアルな”悪霊なのでそういった演出はしない模様。生かさず殺さず苦しめるという点も悪霊としての務めを果たしていてエライ。って褒めちゃダメか)

 

 

また気が向いたら描いてみよう。