タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ゲゲゲの鬼太郎(6期)第72話「妖怪いやみの色ボケ大作戦」視聴

公式が病気とはこのことである。※褒めてます

 

いやみ

モデルは鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』の否哉(いやや)。女装をした爺という容貌以外の情報が一切無い妖怪なので、石燕の創作なのかどうかはわからないが、少なくとも女装した爺はオバケみたいなものという認識が当時はあったのかもしれない。

ja.wikipedia.org

昔こそ女装した男性はオバケだったのだろうが、今やLGBTの認識が広まりつつあり、女装したタレントがワイドショーのコメンテーターとして出演しているのも当たり前の時代。ある意味否哉は妖怪として絶滅したと言えるかも。

原作では1971年の週刊少年サンデー版と1997年の週刊漫画サンデーに掲載された「鬼太郎霊団」シリーズの「セクハラ妖怪いやみ」に登場。

ちなみに、1981年に掲載された「雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎」シリーズの「妖怪いやみ」にも、いやみという名の妖怪が登場するが、容貌や能力共に週刊少年サンデーや鬼太郎霊団シリーズのいやみと異なるため、別個体と考えて良いだろう。

 

「いやみ」への思い

 ↑公式がこう言っているので、ちょっと脱線して「いやみ」回に関して個人的な話を少々。

鬼太郎アニメをリアタイしたのは5期からだが、私タリホーが生まれて初めて見た鬼太郎アニメは実は2期。父が買ってきてくれたビデオに収録されていた「心配屋」「いやみ」「死神」「妖怪水車」が私の鬼太郎アニメとのファーストコンタクト。そのうち「心配屋」「妖怪水車」は鬼太郎が登場しない原作なので、鬼太郎作品の初コンタクトを厳密にするなら、それは「いやみ」ということになる。

2期のいやみの声を担当したのは大竹宏さん。3期でもかまいたちや海座頭の声を担当していた方で、「鬼太郎アニメと言えば大竹さん」って位私の中で印象に残っている。

そんな大竹さんの怪演もあってか子供ながらにいやみがヤベェ妖怪だと頭の中にインプットされた。「楽しみを吸う」というのはイマイチピンと来てなかったけど、話ぶりとか笑い方とかで漠然とヤバさを感じていた。

そんな「いやみ」が6期でアニメ化されると聞いた時は嬉しかったよ。6期の脚本は割と攻めてる回も多かったし、昨年のEDでいやみの本体がちらっと映っていたからいつかはやってくれると思っていたが、いや、信じて良かったぜ。

 

原作・アニメ共にヤバい「いやみ」

「いやみ」はこれまで2・3・4期でアニメ化。※ 2・3期は原作準拠の内容だが、4期のいやみはイロ気を吐いたり楽しみを吸い取るのではなく、“ショウ気”を吸い取る妖怪として登場。ショウ気を吸い取られて理性を失い凶暴化した人間を元に戻すために鬼太郎が活躍する話となっている。ショウ気の設定に加えて、いやみが売れない落語家に取り憑いている点や、鬼太郎がキスされる強烈なシーンがあるのも見逃せない。

 ※5期にいやみは登場しないが、25話「妖怪大運動会」でいやみらしき妖怪の姿が映っている。

 

色ボケ状態の鬼太郎(2・3・6期)・キンタマを蹴って退治(2・3・6期)・キスされる鬼太郎(4期)…と、アニメにおける「いやみ」回はネタに事欠かないカオス回であるが、原作も子供向けとは思えないヤバい発言がいくつかある。

 

【原作「いやみ」のヤバい発言集】

・「にいさんが山に迷うなんてことがあるか!!」と弟を殴る兄。(←完全なる逆ギレ)

・冬眠状態のいやみを運んで帰宅した兄弟に対して、

 父「ばか、生き返ったらだれが面倒みるんだ!!早くどこかへ捨ててきなさい

 母「どこかの社会事業団体にでもおいてきなさい!!」(←!?)

ねずみ男の「花ちゃん、いいモモしてるねえ」発言。(←変態発言)

 

子供向けだからといって、人命救助に努めた兄弟を褒める両親を描かないのが水木先生の凄い所だ。

また、1997年の「セクハラ妖怪いやみ」は1971年版の「いやみ」における下ネタ要素を軽々と乗り越えた、R18案件のスケベ&下ネタオンパレード話。その余りにもどぎつい下ネタは、日本テレビの番組「月曜から夜ふかし」でも紹介された(詳しくは「鬼太郎 月曜から夜ふかし」で検索してみてね)。読みたいのなら、ちくま文庫京極夏彦が選ぶ! 水木しげるの奇妙な劇画集 』に収録されているので是非。

京極夏彦が選ぶ!水木しげるの奇妙な劇画集 (ちくま文庫)

 

いやみ×ラブコメ

さて、今期のいやみは「人間の楽しみを奪う」要素は完全にカットされ、「イロ気を振りまいて色ボケにする」に特化している。人の楽しみを奪わない分、これまでのいやみに比べるとあまり危険に感じないし、何なら使い方次第では世界平和に貢献出来る様な気がしなくもない(紛争地域に派遣するとかね)。けど、色ボケになるってことはその分、痴漢や強姦といった性犯罪が増えるような気がするから、ヤバいことに変わりはなさそうだ。

脚本は魔猫回を担当した井上亜樹子氏。魔猫回のカオスっぷりを今回も遺憾なく発揮しているが、今回はレギュラーメンバーの色ボケによるドタバタ劇を盛り込みながら、これまでのシリーズでも描かれた猫娘の鬼太郎に対する恋愛感情を描いている。

鬼太郎に対する恋愛感情の描写は3期以降でも見られたが、今回は猫娘脳内における心象風景が演出として際立っていた。

 恋に鈍感な鬼太郎と素直に愛情表現が出来ない猫娘。そんな6期の鬼太郎と猫娘の関係性を掘り下げるのに「いやみ」が原作として用いられるとは正直予想出来なかった。スケベ&カオス要素が強かった原作やこれまでのアニメ作品とは全く別のアプローチをしながら、尚且つ原作の要素は忘れず取り込んでいる。

…革新的すぎるだろ。

まなと猫娘がキスしたり、子泣き爺が砂かけ婆にぬりかべドンしたり、そういった表層的な部分を見ると何だか話題性狙いの話に見えてしまうかもしれないが、実際は猫娘の「ラブ」に対する姿勢をしっかりと描いた作品であり、今後の鬼太郎との関係にも影響を与える可能性を秘めた回としてよく出来ている。

 

 

さて次回はヤマタノオロチが登場。原作は鬼太郎が登場しない短編で2期で初めてアニメ化された作品。今のところ「欲望」というワードが気になるな…。