6期だからこういう結末になると予想していたが、それにしても…朝から重い。
おどろおどろ
43話ゲスト妖怪「おどろおどろ」
— タリホー (@sshorii10281) 2019年2月10日
原作「おどろおどろ」に登場。全身毛むくじゃらで大きな顔だけを出した妖怪。もとは毛生え薬の研究をしていた科学者だが、試薬を飲んで体が変化し、人間の血を吸わないと生きていけない妖怪になった。体中の毛を手のように操りそこから血を吸う。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/nwCd9gYAg1
アニメでは1・3・4・5期に登場する吸血妖怪。ただし、5期では人間が妖怪化したのか、それとも最初から妖怪だったのかは不明(自分の意思で姿を変えられるので恐らく後者ではないかと思うのだが…)。
鬼太郎作品には生まれてから妖怪だったものと、人間から妖怪になってしまったもの、妖怪ではなく未知の生物…といった具合に様々なパターンがあるが、今回のおどろおどろは妖怪化した人間の代表と言ってよいだろう。原作では他の作品でもう一人妖怪化した人間がいるのだが、それは今後アニメ化する可能性もあるので伏せておくことにしよう。
因みに、おどろおどろは「おとろし」という妖怪が元ネタであり、妖怪図鑑では神社の鳥居の上にいて、不信心な者が通ると上からどさっと落ちてくる妖怪として紹介されている。が、絵巻物だけで伝承がある妖怪ではないため謎の多い妖怪でもある。
謎の多い妖怪ゆえに水木先生も独自の設定を入れやすかったとみえる。
哀れのニュアンス
原作・アニメのおどろおどろに共通する点は、科学者という点。特に原作のおどろおどろは妖怪の島流しと子供の誘拐に利用したプラモデルにホウキ元素(魔女のほうきに入っている、人間がまだ発見していない元素)を混入させたり、誘拐し血を吸った子供を幽閉する霊界輸送機を作ったりと、人間としてかなりの天才だったことが窺える。
相違点は、原作と1・4期は開発した毛生え薬の試薬を飲んで妖怪化、3期は神から与えられた運命に逆らい、人としての心を失ったために妖怪化(牛鬼のように人に取り憑く妖怪という設定)、6期は遺伝子研究で不死の細胞を自らの身体で実験したことにより妖怪化したという違いがある。
その中でも6期がこれまでの回と一線を画しているのは、おどろおどろ自身が「自分を殺してくれ」と鬼太郎に依頼していることだ。これまでのおどろおどろは少なからず妖怪になってしまったことを受け入れていた。そして妖怪化しても人間としての意識と生への執着を捨てられず、子供の血を吸うことを求めた。一方6期では妖怪化している間は吸血欲求しか頭になく、理性ある人間としての意識や自我が無くなってしまう。自殺したくても、不死の細胞ゆえに死ねない。
そう、これまでのおどろおどろと6期のおどろおどろとでは同じ哀れでも微妙にニュアンスが違うのだ。これまでは生に執着する人間の哀れが描かれていたように思うが、今期は死ねない哀れという真逆の方向から描かれているのが興味深い。
しかも不死の細胞ゆえに、他者に殺させるという選択を委ねる点もこれまでの鬼太郎作品にあまり見られないケースであり、自発的に妖怪退治を行っていた鬼太郎にこれまでとは異質な「業」を背負わせ、原作以上に重いストーリーに仕立て上げた点はスゴイとしか言いようがない。
残された美琴
原作では父を殺した鬼太郎に石を投げた正太郎。親の罪業を理解しつつも唯一の肉親を殺されたことが受け入れられない少年の小さな抵抗に切なくなった読者も多いことだろう。
で、原作の正太郎に相当する美琴はというと恨み骨髄に徹する、と言った所か。特に今回は父親が(人間としての一線を越えてしまったとはいえ)善人だっただけに余計殺されたことに対して納得いかない部分が本人にはあるのだろう。自殺志願者の血を吸わせるという外道の選択をとろうとした場面は、ある意味彼女がおどろおどろと化したと言って良いのではないだろうか。
大人ならともかく、中学生で肉親を失う。しかも妖怪化したため肉体も骨も残らず死んでしまい、葬式をあげることも出来ない。誰にも言えない・共有出来ない苦しみと孤独を抱えた彼女。鬼太郎に対する恨みが生きる支えになってしまった感じがしたが、何とも皮肉な結末だ。
ところで、美琴は今後登場する可能性はあるのだろうか…。私なら鬼道衆の鬼巫女という形で登場させるかな。原作の内容にもマッチするし。
さて、来週はメジャー妖怪のっぺらぼうの登場。あらすじを見るに、アイデンティティーが関係しそうな感じがするが。