事前にこのサブタイトルを聞いた時から「ギャグ回臭がする」と散々言ってきたが…
こちらの予想を遥かに超えるギャグ回だった。
— タリホー (@sshorii10281) 2019年5月12日
視聴直後はホント胃もたれしたけど、何回か見てるうちにクセになってしまい、今は「ハラスメントネタを扱うくらいならこれ位でちょうど良かったな」と思うようになった。
狒々
アニメに登場するのは今期が初めての妖怪。伝承では巨大な猿の様な妖怪で、性格の獰猛さが面にも現れている。人を襲い食うこともあるようで、三重県には少女を食い殺した狒々を退治した由比正雪の伝説と、その狒々の霊を祀った庚申塚がある。
アニメでは昭和初期に出会った女性にテニスを教えてもらい、それ以降テニスにハマりコーチとして人間の女性を指導し、世界クラス4位の選手にまで育てたという実績を持っている。
ちなみに…。鬼太郎の原作にも狒々は登場するのだが、こちらはテニスではなく相撲をとっている。
55話ゲスト妖怪「狒々」
— タリホー (@sshorii10281) 2019年5月12日
原作「妖怪大相撲」(『鬼太郎国盗り物語』所収)に登場。巨大な猿の様な妖怪。地下帝国ムーが鬼太郎を倒すために仕組んだ相撲大会に参加した妖怪の一人だが、同じく参加していたバックベアードとの試合で刺殺されてしまう。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/JtsMylKB3G
『鬼太郎国盗り物語』という一般にはあまり知られていないマニアックな長編に登場するのだが、こちらの狒々は八百長も不正行為もするスポーツマンシップの欠片もない悪い妖怪。アニメも奇天烈だがこちらも奇天烈なので是非読んでみてね。(角川文庫から全3冊)
(狒々が登場する「妖怪大相撲」は3冊目に所収)
よい子のためのハラスメント講座
先述したが今回のテーマはハラスメント。セクシャルハラスメント・パワーハラスメント・モラルハラスメントなどはすっかり巷間に広まった用語だが、改めてハラスメントとは何かを考えるために以下の記事を貼っておこう。
https://www.osaka-med.ac.jp/deps/jinji/harassment/definition.htm
ざっくり言うと相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を生じさせる行為を総称したものをハラスメントと呼ぶみたいで、ハラスメント行為には精神的なものから肉体的なものまである。第7話「幽霊電車」で地獄送りになった社長の行為はパワーハラスメントとモラルハラスメントに該当する。
で、今回劇中でも上記以外の様々なハラスメントが出てきたがどんなものかと言うと、以下の通り。
・エンジョイハラスメント
飲み会における罰ゲームといった、楽しさを押し付ける行為のこと。オードリーの若林さんが提唱したのだとか。
・グルメハラスメント
焼肉の席で焼き方を口うるさく指示するといった、相手の食べ方にケチをつけ自分のやり方を押し付ける行為のこと。あの武田鉄矢さんも経験したハラスメント。
・カラオケハラスメント
カラオケの席で歌が苦手な人(或いは歌いたくない人)に歌うことを強要する行為のこと。これ、私タリホーも入社後すぐの頃に経験したことがある。何度も断って歌うことはなかったものの、相手の方が「それが社会の常識」みたいな感じで言ってきたのがホント不快だった。
・スメルハラスメント
臭いにより周囲を不快にさせる嫌がらせのこと。口臭・体臭は勿論、香水や柔軟剤の香り等もこれに該当する場合がある。
血液型によって相手の性格を決めつけたり不当な評価をする行為のこと。特に日本において少数派のAB型がこのハラスメント行為を受けている模様。
・ヌードルハラスメント
麺類を食べる時にズルズルと音を立てて食べる行為のこと。これは他のハラスメント行為とはちょっと事情が異なり、音を立てて麺をすする行為が外国ではマナー違反とされているため、それを慎むために作られた用語だとか。
・エアコンハラスメント
節電目的でエアコンの使用を制限したり、体調不良を起こさせる様な温度設定をする行為のこと。暑がりと寒がりがいる職場等で起きやすい。
劇中では登場しなかったが、他にもアルコールハラスメントや家事ハラスメント等、ハラスメント行為には枚挙に暇がない。社会的に排除すべき問題行為もあれば、「個人的に不快だと思っている行為」がハラスメントとして独り歩きするようになったものまである。
結局ハラスメントって…
狒々の行き過ぎたハラスメント指導によって体を壊した優美は新たにかわうそをコーチに迎え入れる。ここの流れで優美にとってのハラスメント地獄が狒々にとってのハラスメント地獄になるという転換が脚本の巧い所だと感じた。
この流れで思ったのだが、地区大会優勝までの指導方法でも十分ハラスメント行為として優美は糾弾出来たのにそれを狒々にしなかったのは狒々を信頼していたからであって、その指導方法に疑問を抱いた所でパワーハラスメントのことをマスコミに流すようになったと思う。つまり、相手との信頼がある時はどんな行為も(程度の差こそあれ)許されるが、信頼関係が無くなったらハラスメントになってしまうのだ。
(狒々が言っていた様に、顔の良さとかも多かれ少なかれ加味されるだろうが…ww)
厳しくてもその行為・内に秘められた愛情を理解してもらえれば指導となるし、理解してもらえなければ体罰となる。上に立ち人を指導する立場の人にとって考えさせられる話だったのではないだろうか。
さいごに
今回の脚本は鬼太郎アニメ初参戦の市川十億衛門氏(「十億」と書いて「ギガ」と読む)。これまでの6期脚本で主にギャグ回を担当していた横谷氏のレベルを遥かに超えた怒涛のギャグ展開の中に、加害者と被害者が逆転するかのようなハラスメント悲喜劇や、それを取り上げるマスコミの無分別さ、狒々・かわうそ・塗り壁を利用して全国制覇した優美のしたたかさ等が描かれ、トッピングてんこ盛りの油コテコテラーメンの様な物語だった。
来週は鬼太郎の人気エピソード、「吸血鬼エリート」!しかも脚本は5期鬼太郎と墓場鬼太郎を担当した長谷川圭一氏。
来週は6期鬼太郎、初の担当回です。
— 長谷川圭一 (@dinahasegawa) May 12, 2019
吸血鬼エリートは「墓場鬼太郎」でも書かせてもらった大好きな妖怪。
ぜひご覧くださいm(_ _)m pic.twitter.com/GGVGClxQ3X
しかも長谷川氏、墓場鬼太郎で「吸血鬼エリート」の元ネタである「霧の中のジョニー」の脚本を担当している。これは見逃せない…!