タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ゲゲゲの鬼太郎(6期)第88話「一反もめんの恋」視聴

6期、あるある~。

鬼太郎ファミリーで恋愛モノ、やりがち~。

 

古籠火

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鳥山石燕の『百器徒然袋』では「ころうか」として呼ばれており、「古戦場では鬼火が出るという話を聞くけど、まだ灯籠の火が怪をなす話は聞かない」(意訳)という一文が添えられている。

が、山田野理夫『東北怪談の旅』では、山形県で屋敷の古灯籠がボーっと光る怪があり、近くに住む古老が「ころうび」の仕業だと言ったそうである。

灯籠が怪をなす話は他にもあり、栃木県では化け灯籠として話が伝わっている。

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化け灯籠は5期の鵺の回で悪妖怪として登場したが、今回初登場した古籠火は住処の古灯籠が壊れた時こそ怒りで我を忘れて見境なく火炎攻撃をしたものの、水で濡らされ頭が冷えたのか、その後は大人しくなり、灯籠が元通りになると喜んで帰って行った。

根っからの悪妖怪ではなく、今回はとばっちりを受けた形での登場。大きなしこりを残すことなく収束したし、ホント今回は公式ツイッターでも言っていたように「今作で一番平和な回」だったな。

 

軽薄でも折れない心

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©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

今回は一反木綿のメイン回(これで鬼太郎ファミリーのメイン回は一通り済んだかな?)。原作では子泣きや砂かけ、ぬりかべと同様「妖怪大戦争」で初登場する妖怪だが、定番となった九州弁でのしゃべくりはアニメ3期から始まった設定で、それ以前は標準語で話している。

伝承で語られる一反木綿は、人の顔に巻き付いて窒息させようとするなかなかに恐ろしい妖怪だが、鬼太郎ファミリーとして登場する一反木綿は、遠隔地への移動や敵の追跡、空中での戦闘といった形で鬼太郎たちをサポート。また身体は切られても水を吸収すれば再生可能なため、鬼太郎ファミリーの中でも生命力と回復力に長けている。

攻撃方法は相手に巻き付いて締め上げたり窒息させたりするほか、身体を刃物のようにして切りつける「もめん切り」なる技を持っている。確か3話の妖怪城の回で一反木綿がかまいたちを一刀両断していたはずだが、あれが「もめん切り」なのだよ。

 

さて、6期一反木綿の最大の特徴は可愛い女の子を見ると口説くという軟派気質な性格。体も薄い(公式設定ではたった0.5ミリの薄さ)が心も薄いという設定で、悪く言えば軽薄と言えるだろう。重厚なぬりかべと真逆の存在ではあるものの、浮気性な感じはあまりしない。

というのも、今回ビビビハウスに参加した「まーちゃん」という女性が抱く恋愛の悩みに対する答えや、本気で恋した時のガチガチ具合などから、「相手にその気がない場合は空回りになったり、節操がなくなってしまう部分があるものの、相手が恋愛について考えていたり、ガチで好きになった場合はピュアに接する」という一反木綿の恋愛観のようなものが見えた気がするからだ。

最初は相手の嗜好も思考もわからない、いわば「取っ掛かりのない」状態から始まるので接し方も軽薄になってしまう部分があるが、相手がその気なら真摯に対応するのが一反木綿の流儀だろう。失恋しても新たな女性が見つかるとケロッと態度を変えられるのは「軽薄」ともとれるが、一回一回の恋に対して後悔がないようにしていると思えば、その立ち直りの早さは「ひとたびの出会いでも本気で接する」彼の流儀を裏付けている気がする。一回一回が本気だから後悔も少ないし引きずらない。

 

肉体だけでなく精神的にも回復力の早い一反木綿。上記の解釈はあくまで好意的に見たらの話なので、「6期一反木綿は軽薄だな~ww」という意見も勿論オールオッケーである。

 

今までの積み重ねが活きた回

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©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

今回の脚本は市川十億衛門氏。話としては恋愛モノで、特別強い敵が出た訳でもなく、深いテーマを扱った訳でもなく、風刺が効いた回でもない。恋愛部分にしても「傷つくことを恐れるな」程度のメッセージ性にもかかわらず、今回十分に面白く見ることが出来たのは、過去87回にわたって描かれてきた諸々の出来事がこの話の面白さに活かされているからである。

 

まずは序盤、一反木綿がアルカリユリコにプロポーズして玉砕する場面。

「薄っぺらい男が嫌い」と言っているから、88話以前の鬼太郎を見ていない人の立場だと「誠実な人が好きなのか」という感想になるけれど、58話の半魚人回で投資家の横井沢翼と電撃結婚し、後に横井沢がかまぼこ相場で失敗したことが原因(らしい)で婚約破棄した事実を知っている視聴者は「アルカリユリコ=金目当てで結婚する腹黒アイドル」だとわかっているため、先述した「薄っぺらい男が嫌い」発言も、

「いや薄っぺらい男でも金持ちの男は歓迎で、金のない妖怪はノーセンキューってことだろ?お前が言う『薄っぺらい』は財布の厚さが『薄っぺらい』じゃねーのか?」

と読み取れる。この時点で既に面白い。

 

そして、ねずみ男の人間と妖怪の共同生活を送る場「ビビビハウス」。女性を呼び寄せる謳い文句に「イケメン妖怪」が用いられたが、実際は豆腐小僧かわうそ・一反木綿の「子供と獣と布」トリオ。

イケメン妖怪と謳っておいてこの三体という、この落差だけでも面白いが、「そういや鬼太郎の世界でイケメン妖怪いたっけ?」とか「どのイケメン妖怪をビビビハウスに呼ぼうか?」という、視聴者同士の話題作りに貢献しているのが上手い。

ちなみに今期の鬼太郎で登場したイケメン妖怪枠は、

ヨースケくん(ただしストーカー気質)

目玉おやじ(ただし夢の世界限定でイケメン)

画皮(ただし魂を吸い取る。本体ブッサイク)

ヴォルフガング(ただし人間は妖怪奴隷化させる)

白山坊(ただし既婚者)

吸血鬼ラ・セーヌ(ただしショタ。血を吸われる危険性高し)

鬼童伊吹丸(ただし現在石動零の指導霊として全国放浪中。半身は地獄。ちはやという想い人あり)

 いずれのイケメンも交際するとなると相当の覚悟がいるので要注意(笑)。

 

数合わせ要員の豆腐小僧かわうそも、これまで登場した回のおかげでキャラとしての奥行きが出ている。

ちょこちょこ登場し続けている豆腐小僧はホントに人間が好きなんだな~って思わされるし、湯豆腐という形で一反木綿の頑張りを空回りさせる役回りをしているのも地味にナイス。

そしてかわうそは今回で女難体質であることが私の中で確定した。

一度目の女難は初登場した18話。貧困家庭の子供を装って猫娘から野菜を巻き上げた点に関しては自業自得なのだが、それがバレてしまったことに加えて猫娘が野菜を栽培してこっそり鬼太郎に送っていたことも間接的にバラしてしまい、猫娘に逆ギレされて追いかけられたのは完全に「もらい事故」だったな…ww。二度目の女難は55話の狒々回。釣りをしていたら岡倉ユミにテニスのコーチとして無理やりスカウトされた挙句、新しいコーチが見つかってクビにされるという、なかなかの振り回され具合。そして今回はモナー嗜好のあるまーちゃんからまさかのプロポーズ。盗撮レベルの「好き」はかなり厄介だし、一反木綿の後押しで恋がバーニングしているから、断ってどうにかなる感じではなさそうだ。

 

さて、皆さんは覚えているだろうか、ちょうど一年前の今頃放送された39話。この回で鬼太郎が目玉おやじから恋愛指導としてギャルゲーを徹夜でプレイさせられていた事実を…。39話はシミュレーションで止まったが、今回は実践練習みたいなもので、一時的にせよ人間の女性と共同で料理を作ったり釣りをして楽しんだ。が、当然ながら恋愛面ではこの一年で全く成長しておらず、恋愛面での変わらぬ朴念仁っぷりを見せつけた。猫娘的には悪い虫が寄らなくてありがたいような、でも私の気持ちはわかってもらえなくてありがたくないような…そんな複雑な気持ちが描写されていたのも面白かった。

 

以上、最低でも10話分以上の過去回によって面白さが引き立っているのがこの88話の特色であり、長編シリーズとしての利点を活かした回として評価したい。

 

 

過去最高のゆるさだった今回の次に登場するのは手の目。予告で判明したが、次回はぬらりひょん絡みの回であり、女性総理が映っていたことから間違いなく政府絡みの案件だろう。もう既に危険な香りがプンプンする。