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ゲゲゲの鬼太郎(6期)第56話「魅惑の旋律 吸血鬼エリート」視聴

さぁ遂に登場したよエリート先生。鬼太郎ファンなら知っていて当然。というか、彼を知らない鬼太郎ファンはモグリと言っても良い位。

 

吸血鬼エリート

昭和42年に墓場の鬼太郎シリーズ(この当時はまだ「ゲゲゲの鬼太郎」ではなかった)の一作として発表されたが、これは貸本漫画時代に描かれた墓場鬼太郎「霧の中のジョニー」をリライトしたもの。吸血鬼エリートは水木作品の中で最も歴史の古い吸血鬼だ。

アニメは1・4・5期、そして墓場鬼太郎に登場(意外にも3期には出てないのだなこれが)。4期は俳優であり水木先生のファンでもある佐野史郎さんが、5期は刑事コロンボの吹き替えを務めたことがある石田太郎さんがエリートの声をあてているのが深く印象に残る。今期は5期で陰摩羅鬼を演じた中尾隆聖さんがエリートを演じた。これまでの方々が渋い低音ボイスだったから合うのかなと少々思ったが、全然問題無かったね。

 

吸血鬼エリートの特徴はギターを用いた音響催眠術。他の吸血鬼たちとは異なる戦術方法をとって各国の要人を狙う。また吸血目的も糧となる血を得ることよりも、名士たちを征服する快感を得ることが目的だ。

ただ、4期では妹の吸血コウモリを自らと同じエリート吸血妖怪にするために優秀な女性の血を狙うという動機の改変がなされている。

 

ねずみ男とエリート

作中で「腐りきった世界を上手に生き抜く天才」としてねずみ男にシンパシーを感じたエリート。確かに直接的に世界を動かすタイプでないという点や世渡り上手な所は両者に共通している。

では違いは何かというと、やはり仲間の存在だろう。裏切りを恐れて孤独のままでいるエリートと違い、ねずみ男は鬼太郎や他の仲間たちとのつながりがある。その関係は腐れ縁に近いが、そのつながりがあったからこそ、ねずみ男は危機を脱したことが度々あるし、逆にねずみ男が鬼太郎たちを救ったこともある。この間のバックベアードの時とか正にそうだったもんな。

 

エリートの出自

「吸血鬼エリート」は鬼太郎のエピソードの中でも有名かつ人気のある作品で、先述した通り何度もアニメ化されている。にもかかわらず、原作も含めてエリートの出自は謎に包まれている。日本に別荘を構えているのだから、どこかに本宅があるはずだがその場所は不明。国籍も不明。容貌と能力と目的だけが独り歩きしているような存在。要は歴史が感じられないのだ。

だが、今期ではエリートの出自を明らかにし、なおかつそれを「エリートが要人を狙う目的」と結びつけているのが最大の特徴であり、この改変によってこれまでとは違う哀愁漂うエリート像が作られた。

 

貴族階級の吸血鬼がいるフランスで、下僕の吸血コウモリであるジョニーが美女の血を吸い続けたことで進化、特殊な能力を持つようになったのが吸血鬼エリートの出自。下賤なコウモリ故に貴族出身の吸血鬼たちから蔑まれ、それが特権階級、即ちエリートへの羨望・嫉妬・憎悪、そして支配欲につながっているのが今回の脚本の秀逸な部分。

自らを蔑んだ特権階級の吸血鬼を民衆を操ることで火刑に処し排除。支配される側から支配する側へ移ると今度は吸血相手を操り世の中を陰で支配するようになった。

この「陰で」操るというのがポイント。表立っての支配は裏切り・反逆の引き金になると経験からわかっていたからこそ、間接的な支配をとった。

孤高で不敵な笑みを浮かべるエリートの裏には、支配階級への羨望・嫉妬・憎悪と裏切りへの恐怖からくる孤独が常にあった。その弱さとも言うべき一面はエリートではない、本来のジョニーとしての一面なのかもしれない。

 

ダモクレスの剣

エリートが鬼太郎を溶かすため用意した毒液で逆にやられてしまうという演出は5期でもあったが、今回の演出ではダモクレスの剣という故事成語を思い出した。

ダモクレスの剣(ダモクレスのけん)とは - コトバンク

繁栄には常に危険がつきまとう事を示したワードだが、エリートの頭上に刺さった注射器は正にダモクレスの剣を象徴している様だった。TwitterのTLを見ていたけど、誰も触れていなかった気がするが、これに気づいた方はいたのだろうか?

 

手が溶けてギターが弾けなくなったとわかった途端に自害を選択するエリート。これは過去に火刑に処した吸血鬼たちの姿を見ているからこその行為。武器をなくしてむざむざ敵方に殺されたくない、自分の死は自分で決着させたいという強い意志の表れだろう。悪い妖怪ではあるが、何とも哀れである。

 指鉄砲でとどめを刺そうとする鬼太郎を止めたねずみ男の姿にもグッと来るものがあった。鼻もちならないエリートの鬼太郎に介錯されるなんて、彼にとっては屈辱だろうしね。

 

 

来週も吸血鬼が登場。しかもアニメでは1期以来登場していないあの吸血鬼ラ・セーヌが出て来るとは…!

そして何と、久しぶりに魔女のアニエスも登場する模様。

更に、公式サイトを見たら、どうやらバックベアードの復活計画があるらしい。これは西洋妖怪逆襲の兆しだろうか…?

 

ところで四将の方は一体どうなってるんですかね…。石動あれから全然出てこないけど。