竹藪・竹林と聞いて連想するものは何か?
ある人は芥川龍之介の短篇小説『藪の中』を挙げるだろう。
ある人は京都は嵯峨嵐山の竹林の小径を挙げる人もいるだろうし、
またある人は千葉にある禁足地「八幡の藪知らず」を挙げるだろう。
本格ミステリを読んでいる私ならば、真っ先に三津田信三の『碆霊の如き祀るもの』「八幡藪知らず」(『ついてくるもの』所収)を挙げるし、鬼太郎ファンなら今回の万年竹を挙げるだろう。
万年竹
45話ゲスト妖怪「万年竹」
— タリホー (@sshorii10281) 2019年2月24日
原作「妖怪万年竹」に登場。作中では竹の精に操られる妖怪として登場するため、能動的に襲うことはない。竹藪が宅地開発されることに怒った竹の精は万年竹を使って人間の生気を吸い取り、吸いとられた人間は妖怪竹となり他の人間を襲った。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/flz1SCSnmk
アニメでは3・4期で登場。原作が1986年に発表された作品なので、1・2期の放送は勿論ない。妖怪図鑑に載っている妖怪だが、伝承や記録がないため、水木先生のオリジナル妖怪と考えて良いだろう。
3期は原作通り、竹林の宅地開発に怒る竹の精が万年竹を操り周辺住民を次々と竹人間に変えていく展開。3期の後期で仲間入りしたシーサーの活躍も良いし、人間や鬼太郎の仲間たちが竹人間と化し建設会社を襲う様は、ゾンビパニックさながらの様相だ。
4期は竹屋敷と呼ばれる屋敷に鬼太郎・ねずみ男が潜入。屋敷を買う女社長・秘書が竹人間と化しねずみ男までも竹人間に。この回は鬼太郎が徐々に追い詰められていく展開が秀逸で、ホラーとしての緊張感あり、妖怪と人間との関係に感動する回としても良く出来た回だった。
3期と4期のブレンド+α
6期の万年竹回、観た感想としては3期と4期の要素をうまくブレンドさせた話だったと思う。3期の竹林開発要素をベースに、4期で見られた「妖怪と人間との関係」を取り込んでいる辺りが特にそうである。
3期と4期のブレンドに加えて、6期ではミステリ仕立てにしているのも注目すべき点。4期でも、隠された抜け道を一枚の絵画から見つけるというミステリ要素はあったが、今期は開発を固辞する金井雅彦の思惑にミステリ的などんでん返しを仕掛けたり、血文字の警告文を盛り込んでいる所がミステリ小説らしい。
更に言えば、金井清美の存在も鬼太郎ファンの人間をミスリードさせる役割を果たしているのも面白い点。と言うのも、清美の顔が原作に登場する竹の精と似ているからだ。竹の精は原作(アニメ)で事件の黒幕として登場したので、当然鬼太郎ファンは彼女の顔をみて「ははァ、こいつが黒幕だな」と先読みしてしまう。それによって本当の黒幕がカモフラージュされるよう仕掛けられている…と考えられないだろうか。
死んだ金井大吉と万年竹がいつまでも一緒にいられるよう竹藪が守られる…という所で終われば4期のオマージュ的な回という印象で記憶に残るのだが、そんな結末で終わらせないのが今期鬼太郎のいやらしい所。「真相」だの「藪の中」だの不穏なワードがタイトルにあったからハッピーエンドで終わる訳がないとは思ってたが…。
鬼太郎が竹藪の入り口で大吉殺しを指摘・自白を勧めたのは、雅彦に助かる余地を与えると同時に、それを固辞した場合万年竹が制裁出来るようにするためという目的があったのだろう。別場所で自白を勧めた所で雅彦の逃げ勝ちで終わってしまうのは目に見えているし、そうなれば身動き出来ない万年竹や死んだ大吉も報われないだろうからね。
雅彦にとっては自業自得だろうが、万年竹にとっては二重で人間に裏切られたようなものだから、今まで以上にあの竹藪は禁足地となるのだろうな。新たな「八幡の藪知らず」が誕生したという所か?
あ、そういやねずみ男が久々に登場したが、妖怪大裁判での「尻叩き百回の刑」が満了したのか。おつとめご苦労様(自業自得だけど)。
来週は麻桶毛。24話の石妖と同じく、原作の初アニメ化。公式HPのあらすじや予告を見る限り、これは今回の万年竹以上のガチホラーが予想される。
ひな祭り×麻桶毛の恐怖のコラボ!見逃せない!
さぁ、原作を予習しようぜ!↓
あと、余力がある人はこれも是非!
↑前述した「八幡藪知らず」と雛人形の恐怖を描いた表題作が収録されたホラー短編集。
↑シリーズものなので、いきなりこれを読むのは正直オススメしないが、本作で出て来る「竹林での変死」事件はなかなか面白いので紹介。