タリホーです。

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ゲゲゲの鬼太郎(6期)第2話「戦慄! 見上げ入道」〈再放送〉視聴

6期公式が3つの動画をあげた。

こういうの見ると、全然終わった気がしないんだよな。

 

見上げ入道

 見上げ入道は1~5期にかけて皆勤で登場するシリーズ定番の妖怪。ビジュアルは鳥山石燕が描いた「青坊主」に即したものだが、見上げるほど背が高くなる能力は見上げ入道の伝承通り。

ja.wikipedia.org

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原作やアニメでは背丈の大きさは空気の出し入れによって調節するという設定になっており、そこから派生して風を操る妖怪として描かれている。また、霊界ながしという秘法も持っている。

1・3・5期では原作通り妖怪学校を開いて悪戯好きの動物や人間を妖怪に変えようとしていた。また原作「妖怪大裁判」では検事側妖怪として鬼太郎を人間の味方ばかりする妖怪として批判しており、2・3期でも同様の形で登場している。

原作通りの物語でないのは今期と4期で、4期では入道沼に封印されていた設定になっているし、霊界ながしも使用しない。退治方法も原作と異なっている。

 

ちなみに、5期では見上げ入道と同様に背丈を調節出来る妖怪、見越し入道が38話に登場する。

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この回の脚本は何と漫画「地獄先生ぬ~べ~」の原作者の真倉翔氏。真倉氏は5期でもう一つ古椿の回も担当しているので、興味ある方は是非チェックを。

 

関心を示すもの

2話は猫娘ねずみ男といったお馴染みの鬼太郎ファミリーが初登場した回で、猫娘の強キャラ化にビックリし、「猫姉さん」という新たな関係が生まれた回でもあった。

そして、この回のテーマはズバリ「関心」

 

劇中で見上げ入道は「年間8万人以上の人間が行方不明になっている。なのに誰も騒がないではないか」と数字を挙げて、人間は他人のことなど気にしていないんだから5万人を霊界送りにしたって構わないだろうという旨の発言をするが、これには3つのツッコミが入れられる。

 

ツッコミ①その数いつどうやって知ったんだよ

行方不明者の統計は警察庁の公式HPで見ることが出来るが、いつ見上げ入道はそんな情報を手に入れたのだろうか。もしかするとねずみ男の入れ知恵であの発言は彼の受け売りみたいな所があるのかも…。

www.npa.go.jp

 

ツッコミ②一度に5万人送るな、バレるだろ

日常的に騒がれていないのは全国でちょこちょこ行方不明者が出ているからであって、一箇所で5万人も消えたら騒がれるだろ!

 

ツッコミ③その数字は無関心の証拠にならないんだよ

そもそも、行方不明者8万人という数は、警察に届け出された数を元にしたもの。つまり、家族なり誰かしらがいなくなったことを気にかけて警察に駆け込んで来る人がいることを統計が示しているのであって、この数で人間の無関心さを説くことは出来ないのだ。本当に無関心ならば、警察に届け出なんか出さないからね。

(…まぁ中には社会的体裁を気にして届け出を出す人もいるのかもしれないが)

 

関心を示すものはこれだけに止まらない。この後何回か登場することになった「電池組」も関心あってこそのアイドル商売だし、5万人集まったことが彼女たちに向けられた関心を証明している。

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©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

 

まなと猫娘の関係が始まったのも、猫娘が「鬼太郎を助けた人間ってどんな奴だろうか」と関心の念を持たなければそもそも成立しなかったかもしれないし、まなが猫娘の戦闘力に目をつけて称賛したのもこれまた関心であり感心の表れだ。

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©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

今回の敵である見上げ入道もまた、関心によって存在意義が見いだされる妖怪である。見上げ入道は人前に現れ、見上げれば見上げるほど高くなる妖怪であり、これがこの妖怪のアイデンティティーになっているが、もし人前に現れてもそのまま素通りされたり、背丈を大きくしてもつられて見上げることなく無視されてしまえば、この妖怪はアイデンティティーを喪失してしまう。

劇中で「人間は他人のことなど気にかけない」と言っていた見上げ入道だが、皮肉なことに彼が見上げ入道たり得るのは「人間の関心」あってこそなのだ

「人間の関心」は別に見上げ入道だけに限ったことでなく他の妖怪も同じ。人の関心が無くなれば存在してないに等しくなってしまうのだ。

 

そして存在を示すのは関心に加えて名前が必要になる。名前のないものに関心の向けようはないからだ。また、名前は相手の正体を示す場合があり、昔話でも化け物が名乗る名前の意味を見抜いて化け物を見事退治した僧侶の話がある。特に「化物寺」が良い例だと思うので以下に紹介する。

tyz-yokai.blog.jp

以上の理由から、名無しは捉えどころがなく正体不明の危険な存在として描かれているのだ。

 

さて、名無しとは反対に名のある見上げ入道は相手を見上げる妖怪であり、その対象となる人間の関心によって存在が確立している。その人間に「見上げ入道、見越したり」と唱えられると見上げ入道は妖力を失い退治されてしまう。

これは己の存在を確立する人間によって関心を断ち切られると同時にアイデンティティーである「相手を見上げる行為」が否定されることで彼を存在させるものを無に帰してしまう呪文、というか化学式になっており、存在を確立させている人間以外が唱えても意味を成さない。

 

呆気なく思える妖怪退治の裏にはこういった方式がある。これは既に4期で示されており、京極夏彦氏が脚本を担当した「言霊使いの罠!」で見ることが出来る。まだ見てない方は是非見るべし。

 

 

さて、次週は3~5話をすっ飛ばして6話のすねこすり回が放送されるが、な~にか語れることはあったかしら…。