タリホーです。

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ドラマ備忘録:「地獄先生ぬ~べ~」 ~ 許せない地獄の実写化 ~

地獄先生ぬ〜べ〜 1 地獄先生ぬ~べ~ (ジャンプコミックスDIGITAL)

基本的にうちのブログは酷評を前提にした記事は書かないスタンスでやっているけど、たまにはケチョンケチョンに悪口を書きたくなるというもので、今回は2014年10月に日テレで放送されたドラマ「地獄先生ぬ~べ~」について語ろうと思う。

 

今回このドラマを語る切っ掛けとなったのは、Twitter「#絶対に許さない映画」というタグがトレンド入りしており、それを見たことでこのドラマを思い出した。私は映画オタクではないので、今まで許せないレベルの映画には出会ってこなかったが、このドラマ「地獄先生ぬ~べ~」に関しては9年ほど経った今でも許せないくらい酷い作品だった。

 

あらゆる点で節操がない

さて、このドラマは色々と酷くてどこから語ろうかとちょっと悩まされる。なので一度原作マンガの魅力というか良さを簡単に言っておくと、原作は童守小学校を舞台にぬ~べ~こと鵺野鳴介と生徒たちの活躍が描かれる物語だ。そのため学園ドラマとして時に教訓的なエピソードや少年漫画らしい熱い激闘がある。また、妖怪や幽霊・都市伝説を題材にした作品なので割とガチなホラーもあるし、ある意味刺激的なお色気要素もあってエンタメ作品として申し分ないバリエーション豊かな内容となっている。

 

ある意味王道のヒーロー譚だから仮にキャストがイメージ通りじゃなくても脚本は原作に則ってやればさほど酷い駄作にはならないだろうと当時は思っていたが、いや~どっちもダメだったね…ww。

色白美男の玉藻を沖縄出身の浅黒いイケメン俳優である速水もこみちさんが演じるという時点で頭がクラクラしたけど、他にもコスプレかよって思うレベルの方々ばかりで、いちいち例を挙げたらキリがなさすぎて、ホントに頭が痛い痛い。まぁ、まだ生徒役の方はマシというか、原作の小学校から高校に改変したのも小学生の子役だと演技的に力不足なので許容の範囲内だったかな?(原作の広や郷子らが小学生のくせに発育が良すぎるんだよ)

 

で、脚本に関してはどうしようもない。いや脚本だけでなく演出面も酷かったわ。

一言で言うと節操がないんだよ。玉藻の中の人がMOCO’Sキッチンでオリーブオイルをドバドバかけているのをドラマに取り入れるし、役者でもないアナウンサーを妖怪役として出演させるし、いい歳した妙齢の女性(あ、高橋真麻さんですけど)トイレの花子さんをやらせるしと、このドラマを制作している人たちにはプライドというか信念がないのかと疑ってしまう。「妖怪は架空の存在だから誰にやらせても苦情は来ないだろう」という作り手の舐めた姿勢すら感じる。原作ファンだけでなく妖怪好きをも軽んじていると言って良いだろう。

 

原作でもコメディ要素として別の漫画をパロディしたものを取り入れたことはあったけど、そこはシリアスな物語も入れることでちゃんとメリハリのきいた作風になっていたし、だからこそ感動させられたりトラウマレベルの恐怖を味わえたのだ。

しかしドラマにおけるパロディ要素や演出は全て話題性という以上のものが見当たらない。初回で放送当時はやっていた「アナと雪の女王」や「妖怪ウォッチ」ネタがあったけど結局本筋にちょっと絡むくらいの程度で、物語そのものも高校を舞台にした割には思春期の高校生として幼稚に見えるきらいがあった。正直2012年に放送されたドラマ「悪夢ちゃん」の方がダークファンタジーとしても学園ドラマとしても上質で印象に残っているし、劇中で描かれる生徒の悩みも真に迫るものがあった。

 

仕事としてやってます?

www.cinemacafe.net

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そしてやはり制作陣の志の低さを感じたのが上に載せた起用エピソードだ。まぁ、単にリップサービスとしてこういうエピソードが語られているだけで実際は真面目にキャスティングしたのかもしれないけど、だとしても原作屈指の恐怖エピソードを何故さんまさんに演じさせたのかと小一時間問い詰めたいし、怪人赤マントが妖怪ではなく人間というのが怖さを引き立たせていたのに、それを夢の中で二者択一の問いかけをして相手を死に至らしめる悪霊に改変したのも何かな~。個人的にはセンスがないと評価した所だ。赤マントのエピソードを改変せずとも原作の「ブキミちゃん」のエピソードをアレンジしたら事足りたんじゃない?

釣瓶さんの件については本筋と関係ないチョイ役として出演したのでこれは大きな問題ではなかったけど、でも知り合いが出ていたからと言って出演依頼をしたらOKが出たって…。友達同士で自主制作しているドラマなの???

え、私たち趣味の延長線上で作ったドラマを見せられてたのですかね???

 

もはやドラマと言いたくない

色々言ってきたけど一番言いたいのはこれがドラマとして放送されたことが許せないんだよね。コント番組としてなら笑えただろうけど、ドラマでこの出来ではもうどうしようもない。最終回の坂上忍さん演じた覇鬼が学校の校庭に現れたシーンの緊迫感のなさというか、絵面がコント番組のそれ。全然ヤバさを感じない。

そもそも覇鬼を知性ある鬼にしたのが悪手だった。何か性善説の美奈子先生と性悪説の覇鬼との間で議論が行われるシーンがあったけど、完全に夫婦漫談状態でこの間は当然ストーリーは一切進行しないのだから、底の浅い議論に尺を費やすくらいならもっと描くべき出来事があっただろうとツッコまずにはいられない。

 

ちなみに脚本はマギーさんと佐藤友治氏で特にマギーさんは俳優が本業だしコントユニットとか落語の弟子とかコメディ専攻の人だからそりゃこういう出来になるのも無理ないわなと腑に落ちた。Wikipediaで調べたらあのこち亀の実写版の脚本も担当していたみたいで「あぁ~…」と何とも言えない気分になった。

 

褒める所があるとしたら…

無理に褒める所を探すなら、山田涼介さんが演じた絶鬼はまだ良かった方かなと思う。正直絶鬼と覇鬼のエピソードは原作の終盤の方のエピソードだし、絶鬼だけでも映画一本作れるくらいに大きな物語なので連ドラでやってほしくはなかった。案の定ドラマの絶鬼と覇鬼は原作より弱体化されていたし、覇鬼の改変については前述した通りの酷さだ。ただ絶鬼に関しては原作からそれほどかけ離れたキャラにはなっていなかったと思うし、山田さん自身原作のファンであり妖怪好きを公言している方だから、その心意気が反映されていたのは不幸中の幸いだったのではないだろうか?

 

さいごに

原作者は広い心でこのドラマを受け止めていたけど、一人のファンとしてこのドラマを許すことは出来ないし、これを黒歴史としてキチンと記録しておかないと他日どこかのバカが安易な気持ちでまた別の原作を実写化しようとするだろう。

それに、一度実写化されてしまうとリメイクなんて数十年先か、下手したら二度とない。「地獄先生ぬ~べ~」もこの実写化のせいで恐らく今後原作を尊重したリメイクが作られる可能性は限りなく絶望的に低い確率だ。だからこそドラマ制作陣は「これが決定版になる!」という覚悟で実写化に臨むべきであると、そう声高に主張したい。