タリホーです。

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ナンバMG5ざっくり感想 #8(「最強の男」のもろさ)

広島と言えばヤクザ映画でお馴染みだけど、今の若い人はそんな印象ないよね?

 

8話感想

ナンバデッドエンド(4) (少年チャンピオン・コミックス)

今回のエピソードは剛ら3年生が広島へ修学旅行に行く話だが、当然平穏無事に修学旅行を楽しめる訳もなく、大丸が同級生の水野友美を助けるべく広島のヤクザの息子・安藤剛平に関わったことで、またしても友人の窮地を救うべく奔走することになる。

相変わらず本作のキャラは他人の人生をしょい込んで、いらぬ苦労をしているなと毎度ながら思うが、そうでないと物語にならないから仕方がないと言えば仕方ない。

 

それはさておき、今回私が特に注目したのは広島ヤクザの息子・安藤だ。広島のみならず西日本で最強と恐れられ名の知れた男ではあるが、その最強の裏にはどこかしら脆弱性というか、ジェンガのように木片を一つ抜いたら一挙に崩れてしまうような脆さを感じる部分があった。

組の事務所の場面を見ればわかるが、彼は力こそあるものの、ヤクザとしては半人前であり、経済を回せなければダメだと父親から頭を引っぱたかれる始末である。ここら辺は難破一家と真逆の家風というか、難破家は勝負事で勝てばたとえニートだろうと家での居場所が与えられるのに対し、安藤の組は暴力だけではヤクザは世渡り出来ないことをちゃんとわかっているから、その点に関しては安藤の組の方が現実的で地に足がついているんだよね。

ただ安藤自身はそれが納得いかないのか、やたら暴力による支配や力の誇示にこだわっている。これは父親が自分をいつまでも半人前扱いするから天邪鬼になって暴力での支配にこだわっているのかそれはわからないけど、少なくとも相手をねじ伏せて屈服させている瞬間は誰も自分をのけ者にしないし、そういう場にこそ自分の居場所があるのだ、とそう私には感じ取れた。恐ろしいと言えば恐ろしい男だが、暴力でしか自分の居場所を確保出来ないという点では非常にみじめったらしい人物と言えるだろう。

 

一見すると最強の男でも、その地盤は一回の負けでガラリと崩れてしまうものであり、それだけにより一層勝ちにこだわってしまっているのが彼の不幸である。最後に安藤は剛から勝ちを買うと言ったが、もうあの時点で彼の居場所はどこにもなくなったなと思ったよ。

あと彼が喧嘩の際に「ヤクザ」だの「極道」だのを引き合いに出してきていたけど、私から言わせれば本当に最強な人間がこれをやっちゃあダメだよ。何故ならこの時点で彼は虎の威を借る狐になっているし、ヤクザや極道の人間だということを引き合いに出すってことは、心のどこかで親や組の威厳を保険にしている。親に反抗心があるのに親のすねをかじっているみたいな、そういう矮小さもうかがえるのだ。

だから余計に大丸や剛と勝負した際に安藤が弱く見えてしまう。そりゃ他人の人生を救うために喧嘩する人間と自分の居場所を確保するために喧嘩する人間を比べたら、ほとんどの人が前者を支持し後者を軽蔑するだろう。

 

今回の安藤というキャラクターは剛と対照的に勝ち負けにこだわる男として描かれたが、彼がもし難破一家の人間だったら居場所が与えられ善性の不良として全国制覇にいそしんでいたのだろうか…?とも思ってしまう。つまり、ヤクザの息子として生まれてしまったがゆえの不幸なのだろうかと一瞬思ったのだが、やはり根本的には本人自身の矮小さと視野狭窄な思考が招いたと言うべきで、(完全にではないが)そこから抜け出そうともがいている剛の方が自立心があってカッコ良いのだ。

 

ちなみにドラマではカットされたが、原作では安藤の背中に三目並べのような傷がのこっており、それが彼のコンプレックスであると同時に逆鱗となっている。だから原作の安藤はその傷が一種のトラウマ体験として体と心に刻み付けられているから負けることを極端に恐れるという読み解きが可能になっている。そういう意味では原作の安藤の方が(わずかとはいえ)同情の余地があるとは思わないだろうか?

 

 

さて、次回は予告でもあったように剛の二重生活が両親や兄にもバレてしまい、大きな修羅場と試練を迎えることになる。剛を応援する一視聴者としては心苦しい展開になりそうだが、この家庭内の衝突についても私なりに彼らの心情を汲み取っていこうと思うので、また次回の感想を夜露死苦