タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ナンバMG5ざっくり感想 #4(残酷なシャバい世界で輝く友情)

「ごくせん」は第一から第三シーズンまでキッチリ見ていた人間なので、今回は特に胸熱な展開でしたね。

 

4話感想

ナンバMG5(9) (少年チャンピオン・コミックス)

今回は原作の8巻と9巻のエピソード。市松と千鳥商の上級生の策謀によって伍代と大丸が喧嘩をして結果的に剛も入れて三人が友達になる展開や、剛の二重生活を後押ししてくれた恩人・関口との熱い友情が描かれる。どちらのエピソードでも、権謀術策をめぐらす性根の腐った悪党が登場し、それに打ち克つ友情や絆の強さを描いた回として感動的な内容だった。正直これはくどくど感想など書かずに「とりあえず見逃し配信でも良いから見ろ!」と言いたいのだが、一応感想は書くよ。

 

やはり今回見ていて思ったのはヤンキー・不良の世界より難破家でいう所の「シャバい」人間社会の方がずっと差別的で恐ろしい世界だということが表現されていたような気がする。不良の社会も熾烈な上下関係はあるし権謀術策も当然渦巻くことはあるが、それは目に見えることが多く策をめぐらすと言っても三手・四手先まで考えた計画を立てられる人物はそうそういない。だから暴力が比較的目に見えやすいという点でわかりやすさはあるし、乱暴なことを言うと強ければ大抵の問題は解消されてしまうので、ヤンキー・不良の世界は単純といえば単純な世界観と言えるかもしれない。

しかし、シャバい現実社会は暴力が見えにくい。今回のミツオらいじめグループのように人を雇って自分の手を汚さず邪魔な人間を排除する奴だっているし、底辺にいる人間が成り上がることを快く思わない人間だっている。自分が今いる地盤の安寧と優越感に浸る目的で他者をいじめ蹴落としたり、かりそめの万能感を得るために人を支配する人間だっている。難破家ではよく「気合い」が多用されるが、力や気合いで太刀打ち出来ないのがシャバい現実の恐ろしい所なのだ。

だからある意味今回のエピソードは、関東最強とも言える難破一家が、実は社会という大きな枠の中では一番淘汰されやすいタイプの一家であることを表した回でもあったんじゃないかな?今は全員の圧の強さで周囲を圧倒しているからまだ社会の中で生きていけてるけど、環境の変化に適応出来なさそう(特に兄の猛が!)なので、その点から考えても剛の存在は難破家において非常に重要な、命綱的存在と言えるだろう。

 

そんな生き馬の目を抜くような社会において友情を育むこと、もっと言うと誰かの精神的な拠り所として支えたり反対に支えられたりする関係を築くことがいかに難しいことか、今回の物語では思い知らされる。

いっそ執着し過ぎるか、反対に全くの無関心を決め込みがちな現代において、当人がその場にいなくても、「心の中にその人がいる」という安心感で勇気づけられるって本当に素敵なことだよ。例えるなら、真っ暗な海上を漂っている途中で見つける灯台の明かりという感じだろうか。直接灯台が助けてくれる訳ではないけど、それがあるから心が落ち着き、先に希望が持てるという、そんな感覚だ。

関口も、そんな精神の拠り所というか安心感が根底にあったから、暴力と辱めに耐え抜くことが出来たのではないかな。反対にミツオのような人間はそんな灯台のような存在がないから、他者を陥れてその魂をむさぼり喰うような人でなし、海の怪物的存在にならざるを得なかったのではないだろうか。

 

以上で4話の感想を終えるが、今回の剛は流血・上半身裸・金髪の三点が揃ったので否応なく映画「全員死刑」のタカノリを思い出した次第。勿論内容は「全員死刑」とは真逆の物語で、どちらかというと「ごくせん」的な王道の不良物語というのが「ナンバMG5」の個人的な評価だ。ただし、「ごくせん」の主人公であるヤンクミは先生としての仕事を実家から認められ応援されているのに対し、本作の剛は両親や兄妹に秘密で二重生活を送っているので、その点に関しては剛の方がハードモードと言えるし、そこに本作の独自性がある。

何か一部ネット記事で「『今日から俺は!』の二番煎じ」だとか言っている奴がいたけど、そんな表層的な部分をなぞって作品を評価・視聴している人はかなり損しているというか勿体ない見方をしている。ホントは「そんな表層的なものの見方しか出来ない人間はバカだ」と言いたい所だが、ドラマ視聴の態度は各個人の自由だし、表面をなぞるだけの視聴スタイルもあって然るべきだと思うので、これに関してはあまり差別的にならないよう気を付けたい。

 

ちなみに私、「今日から俺は」のドラマも一応初回から最終回まで見ていた一人なのだが、あの作品は思春期の葛藤云々以前に、ヤンキー・不良の世界にシャバい悪知恵を持った人間が介入することで生まれる面白さが売りだと思っているので、そこら辺が通常のヤンキーものとは違う独自性なんじゃないかな、と評価しているつもりだ。