タリホーです。

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恐さも謎もグレードアップ、「リトルナイトメア2」プレイ感想

リトルナイトメア 2 -Switch

昨晩、私は「リトルナイトメア2」をクリアした。

 

本作は2017年頃に配信された「リトルナイトメア」に続くシリーズ二作目。前作は黄色いレインコートの少女・シックス海上に浮かぶ巨大船舶「モウ」から脱出するというストーリーだったが、本作は電波塔によって歪められた街が舞台。そして前作に引き続き登場するシックスに加えて、紙袋を被った少年・モノが新たに主人公として登場。モノとシックスは共に協力しあって諸悪の根源となる電波塔へと向かう…というのが本作の大まかなストーリーだ。

LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア- Deluxe Edition - Switch

 

前作の方は未プレイで、YouTubeの実況動画を見たにすぎないが、ティム・バートン監督作品さながらのキャラクターや独特の世界観に興味を持った私は、シリーズ二作目である本作をプレイしてみようと思ったのだ。

 

リトルナイトメアシリーズの魅力

本作の感想に移る前にざっくりシリーズの魅力を挙げてみよう。

 

まず何といってもキャラクターの設定が優れている。主人公は小人サイズの人間だが、これによって何の変哲もない家具や道具がゲームクリアのためのギミックになったり或いはその障壁となる凶器に変わるのだ。

また、主人公の行く手を阻む異形の住人たちも非常に魅力的で、主人公の脅威であることは当然だが、異常な世界における異形の住人たちの営みを眺めるのも本作の楽しみ方の一つで、このシリーズが単純なサスペンスアクションゲームの枠に収まらないのはキャラ設定の秀逸さによる所が大きいと思う。

 

そして、これこそがシリーズ最大の特徴だが、作中の世界観を敢えて多く語らず映像や音という形でプレイヤーに提示している、つまり文字による情報がほぼ無いというのがこのシリーズの人気拡大に貢献したのではないかと考えている。

有名なバイオハザードシリーズにしろ、零シリーズにしろ、作中で何が起こったかをプレイヤーに伝えるために、ゲーム内で手記や音声記録といった収集物がばら撒かれているものだが、本シリーズではそういった文字媒体は一切ない。キャラの設定にしても公式サイトに紹介されている最低限の文章に止まっており、(主人公を含めて)彼らの経歴やその場所で何が起こっているかは謎に包まれている部分が多い。

そのため、YouTubeをはじめとするSNSでリトルナイトメアシリーズの世界観の考察が展開されており、国内外の様々な人がこの異様な世界の解釈に努めている。そんな解釈を調べてみるのもシリーズを楽しむ材料になるし、本作が日本だけでなく世界中で注目されているのも文字がないがゆえの利点と言って良いだろう。

 

※リトルナイトメアシリーズの考察に関して、こちらのチャンネルの考察が国内ではとりわけ詳しく紹介していると思うので、参考までに載せておく。

【考察・隠し要素・漫画など】Little Nightmares -リトルナイトメア- - YouTube

 

各チャプターの感想

シリーズ二作目となる本作は主人公二人による協力やより不気味で謎めいた世界観といった面だけでなく、ゲームオーバーからリロードまでの時間の短縮・細い足場からの転落防止・投げたものが対象に当たりやすくなっているといった、操作面でのイライラ部分の改善が見られるようだが、前作未プレイのため操作面での改善は紹介するに止めて肝心の内容についての感想を述べたい。

 

チャプター1「深林」

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物語の始まりは深い森の中。モノは森に仕掛けられた檻やトラバサミの罠を回避しながら一軒の山小屋に辿り着く。そしてこのチャプターで本作のもう一人の主人公・シックスとの出会いが描かれる。

チャプター前半部は既に体験版でプレイ済みのため目新しさや新鮮味はなかったものの、前作が巨大船舶という密閉空間からの始まりに対し本作が森という外界からのスタートになっていることや、チュートリアルに相当するチャプターで早くも巨大な敵(ハンター)の追跡に遭う点を見ても、前作からのグレードアップ具合がうかがえる。

グラフィックも前作以上にキレイになったようだが、生憎私はSwitch Liteでプレイしたため精密なグラフィックの恩恵にあずかることはなかった(ちょっとざらついた感じの画質になるの)が、それでも沼地とか場所によって微妙に色彩が違っておりそれによる空気感の違いが感じられるのは良かったと思う。

 

チャプター2「学校」

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森を抜け、主人公二人は本作の舞台である街へ辿り着く。人っ子一人いない街の異様な状況を眺めながら辿り着いたのは三階建ての学校。幾つものロッカーが並ぶ廊下に四段ベッドがある部屋から見て、日本の学校とは様式が異なる全寮制の学校だと推察されるがそれはさておき。

このチャプターは何といってもボスの先生のキャラ設定が出色の出来。詳しいことは未プレイの方にもやってもらいたいので敢えて伏せておくが、そのおぞましい追跡方法はトラウマ級。ちょっとした物音にも敏感に反応してくるため、先生がいる場所を進む時は常に緊張しなければならない。日本の某映画(学校の怪談2)で既に岸田今日子さんが同様のキャラクターを演じているが、そっちの先生は不気味ながら愛嬌があったのに対し、こちらのリトルナイトメアの先生はひたすら恐ろしい。

緊張感と隠密性が求められる「静」が要求される先生の部分とは対照的にアグレッシブに対応しなければならない「動」の面もあり、特に生徒(いじめっ子)がいるエリアなどは金槌や鉄パイプを片手に襲い来るいじめっ子たちを“退治”しなければならないが、個人的にいじめっ子を攻撃する際のタイミングがクセモノで、ちょっとでもタイミングが早いと攻撃があたらないし、遅いとたとえ武器を振り上げてもひるまず組み伏せられてしまうので、何度もゲームオーバーを繰り返して間合いとタイミングを身体に叩き込まなければならない。

とはいえ、難易度としては程よく謎解き部分もさほど難しくはない。それでいてトラウマ級の恐怖が体験出来るので、個人的にこの学校パートが一番おススメ出来る。このチャプターだけでも本作をやっただけの価値はあると言っても過言ではない。

 

チャプター3「病院」

いじめっ子たちの悪質なイタズラと先生の執拗な追跡を抜けた先にあるのは病院。

病院のチャプターは学校と異なり気持ち悪いまでに静寂。大きく5つのエリアに分かれており、1階はレントゲン室、地下に焼却炉、2階は義手・義足が収納されたエリアに多数の患者が収容されたエリア、そして最深部はドクターがうろつくエリアとなっている。

個人的に恐怖度こそ学校パートに劣る(いやそれでも十分恐いよ?)と思ったものの、高度な操作を求められるのがこの病院パートであり、ゲーム玄人ならともかくゲームを普段しない人にとってはこの病院パートが本作の鬼門となるかもしれない。ドクターのエリアはそれほど難しく思わなかったが患者が収容されたエリアが特に難しく、患者の動きを封じるライトの扱いが思うようにうまくいかず、コツをつかむまで20回くらいは患者に捕まえられた気がする。床を這いまわって襲って来る手首にしても(いじめっ子と違って)一発で仕留められなくても良いし回避出来るだけマシなのだが、それでも厄介なことに変わりはなかった。

 

チャプター4「青ざめた街」

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病院を抜けると物語はいよいよ佳境。いくつも建ち並ぶ歪んだマンション街を飛び移り目標の電波塔へと向かう。

このチャプターはこれまでのような執拗な追跡劇は薄めだが、本作のキーアイテムであるテレビを駆使したギミックが楽しく、先へ進むための謎解き要素も思いのほか難解で行き詰まる箇所がいくつもあった(特にエレベーターのある所ね)。謎解き部分は柔軟な発想が、追跡部分は瞬時の判断が求められるチャプターだ。

恐さとしては学校パートの先生や病院パートのドクターみたいにダイレクトな恐怖こそないものの、静寂の中で場違いな音楽が流れるテレビを見続けるテレビ中毒者の存在や本作で最も謎が多いノッポ男の追跡など、じわじわ精神的に来る恐怖が特徴。また物語終盤ということもあってドラマチックな展開があり、プレイヤーを飽きさせることもなければ中弛みすることもないという点で、物語構成が巧いと思わされたチャプターだった。

 

チャプター5「電波塔」

遂に諸悪の根源の電波塔へ辿り着く最終チャプター。

物語の結末部のためここで具体的な感想を述べることはやめておくが、敢えて述べるなら「目的が理解出来ないと迷うことになる」とだけ言っておこう。ラスボスについても前作をプレイしている人なら「やっぱりコイツがラスボスだよな」と思うようなラスボスだし、壮大かつ謎と衝撃が同時にくるようなラストになっていたのではないだろうか。

 

さいごに

前作はホラー要素はあったものの比較的ダークファンタジー的な印象を受けたが、本作は文句なしのホラーであり、より悪夢としての世界が煮詰まった秀作となっている。これは前作で登場したマスコットキャラ的存在のノームの出番が大きく減ったことも影響していると思うが、やはり舞台が街になったことでより現実世界とリンクした世界観になったのも理由の一つだろう。邪悪な電波で歪められた世界というのもどことなく風刺的なものを感じさせる。

一応シリーズものとはいえ、本作からいきなり始めても勿論問題ない作りとなっているので、未プレイの方は是非ダウンロード或いはパッケージ版を購入し、この悪夢に浸っていただきたい(ただし対象年齢15歳以上だけどね)。

 

最後に蛇足ではあるが結末部の感想を。(一応ネタバレなので伏せ字)

本作における電波塔の役割だが、直接的な怪電波による洗脳だけでなく電波塔に入ったものを歪んだ形で成長させ世に放つ母体組織(胎内)みたいなイメージを受けた。ノッポ男によってさらわれたシックスが電波塔で異常な形で成長したことから見て、学校のろくろ首先生や天井を這いまわるドクターも電波塔で成長したのではないかと思った。(更に言えば前作の管理人やレディもそこを経由した者たちかもしれない)

モノ=ノッポ男というのは予想外だったが、未来の自分が敵として現れたとなるとこの世界の時間軸は一体どうなっているのだろうか?もっと言えばそもそも電波塔は誰が建てたのだろうか?人類を支配・淘汰するための施設だとしたら異世界から来た宇宙人的存在による災厄なのか?謎は深まるばかりであり、まだこの悪夢の世界の広がり(=続編)を期待したいものだ。