もう三週間以上前に終わった回だが、一応感想は書くよ。
「消えた廃坑」
原作は『ポアロ登場』所収の「消えた廃坑」。銀鉱山をめぐる中国人殺しを扱った話で、原作ではポワロが過去に手掛けた事件として語られているが、ドラマは現在進行形の話として描かれる。僅か20頁ほどの原作を1時間分に膨らませたため、原作とは違う点が多々見受けられる。クリスティは筆を費やす方が面白いのだが、ここまで切り詰められると正直味気無さ過ぎるなと、原作を改めて読み思った次第。
(以下、ドラマと原作のネタバレあり)
個人的注目ポイント
・ポワロのこだわり
ポワロは預金口座にいつも444ポンド4シリング4ペンスをキープしている。日本人からしてみれば死に通じる4のゾロ目など不吉以外の何物でもないのだが、外国では4は別に不吉な数字ではないので、こういう設定になった。
ちなみに2020年7月13日現在の1ポンドは135.19円。現代だと444ポンド4シリング4ペンスはざっと6万円ほどになるが、探偵として成功しているポワロの預金が6万円などというのは絶対あり得ないので、ドラマの時代設定である1930年代のポンド価格を調べると、1ポンドは4万8千円ほどなので、444ポンド4シリング4ペンスは約2131万円となる。
これを多いと思うか少ないと思うかは各自の判断に任せるが、個人的には十分な額だと思う。
※ポンド計算が間違っていたので修正しました。電卓で計算した際「0」が一つ抜けていたので1ケタ少ない数字が出たのを鵜呑みにしてました…。(2020.12.09)
劇中定期的に出て来たボードゲーム「モノポリー」はアメリカ発祥。
平たく言えば外国版の人生ゲームみたいなものだが、人生ゲームと違い資産運用をして他プレイヤーを破産させることが目的のゲームなので、結構大人向けな感じがする。
・「ダブル」の意味
ポワロが何故真相に気づけたのか、いまいちピンとこない方がいた(というか私がそうだったのだが)と思うが、これはヘイスティングスがモノポリーで言った「ダブル」の意味によるもの。
「double」は倍増や二重といった意味だけでなく「代役」「替え玉」の意味もある。そのため、ポワロはホテルに来たウー・リンが替え玉で本物は既に殺されていたという真相に至ったのだ。そしてピアソンが犯した矛盾を突いて見事事件は解決した…という訳だ。
実質替え玉を利用した殺人という特別よく出来た話ではないが、ダイア―の追跡等の追加設定で一応退屈しない作りにはなっていたと思う。