タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

間宮祥太朗がミステリの世界にいる喜びを噛みしめる、「ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~」1話

過去に間宮さんが出演したミステリドラマ、私が覚えている限りだと放課後はミステリーとともに金田一少年の事件簿N」だけだったと思う。

「放課後~」の方は未見だからどういう役回りか詳しく知らないが、調べてみると不良青年で学校内の事件に巻き込まれたという様な役回りで、メインキャラという感じではなさそうだった。

そして「金田一~」の方は3・4話の「鬼火島殺人事件」のゲストキャラとして登場。一応事件の発端となる人物だから重要だといえば重要だが、いじめの末に自殺未遂を起こして植物人間状態の青年という役だったから、やや印象に残りにくい。

 

そんな訳だから、間宮さんが今回ミステリドラマに、しかも探偵の葉村晶と比肩する頭脳を持つキャラクターとして登場してくれたので、私、心が滾っている

 

原作ものの映像化だし書店にも原作本が置いてあったから予習に読もうかと思ったが、間宮さん演じる岡田警視はドラマオリジナルキャラクターだと知ったので、未読で視聴することにした。

現金な男だと思われるかもしれないが、オリキャラを入れる話は原作と展開が変わる故、事前に原作の情報を知っていて、もし原作の方が優れているとドラマが楽しめなくなるかな?と思ったのも理由の一つである。

 

(以下、ドラマのネタバレあり)

 

「トラブルメイカー」

1話は葉村の人物紹介と、彼女が不運な理由の一つである姉・珠洲がもたらした「顔の無い死体」が絡む事件となっている。

とはいえ、事件の謎解き自体は大したことなく、珠洲と生沢努の共謀による生沢メイ殺しで葉村が死体の役として選ばれた…というお話。別にミステリの玄人でなくても「珠洲が葉村に海外旅行を強要した」場面と努の態度から推理をはたらかせることは十分可能。

 

どっちかというと謎解きそのものよりも不運から逃れようと人生そのものを変えようとする珠洲の人物像が印象に残った。自分自身ろくでもない人間だとわかっており、大金と別の身分を以て「不運」から逃れようとする。あさましくも切実な犯行動機だ。

現代では身分詐称が難しいからリアリティに欠けるきらいはあるが、昭和のミステリ小説とかではよくある犯行動機であり、現に今回劇中で登場したパトリシア・ハイスミス太陽がいっぱいアラン・ドロン主演で映画化した)もそういう類の犯罪小説だ。

太陽がいっぱい (河出文庫)

生憎私はこの『太陽がいっぱい』を読んだことがないが、この小説の主人公であるトム・リプリーを紹介したミステリガイドブック『ミステリ国の人々』を読んでいたので、この小説が「自分の人生を憎み、他人の人生を羨む」という一種普遍的な人間感情を扱った小説だということは知っている。

ミステリ国の人々

 

今回の物語では珠洲二重の嫉妬が描かれている。一つは金を持つ生沢メイ、もう一つは葉村。前者は当然ながら後者に対する嫉妬は恐らく「葉村の自由な生き方」に対する嫉妬だろう。金と男を求めることしか出来ない珠洲にとって、職を転々としながら生きる葉村の姿は自由に映り、妬ましく思った。だからこそ、死体役に彼女をチョイスしたのだろう。ケバケバしい身なりで強引な所があるから共感は出来ないが、根底にある感情は誰もが抱きうるものだ。

 

書籍紹介

このドラマ、ミステリ小説専門の書店が舞台となっているため、私の知っている様々なミステリ小説が散見される。画面に映った小説を全部紹介したい所だが、そんなことをしていたらキリがないので、目立ったものだけ紹介する。(今後も紹介する予定)

 

アガサ・クリスティーミス・マープル」シリーズ

片田舎の老婦人、ミス・マープルを主人公としたシリーズ作品。劇中で葉村が読んでいた『牧師館の殺人』『スリーピング・マーダー』など、12の長編と20の短編がある。

ミス・マープル - Wikipedia

個人的なオススメは『ポケットにライ麦を』と『鏡は横にひび割れて』。ちなみに、今回の珠洲の犯行動機と同様の動機を持った犯人がこのシリーズで登場するので、気になる方は読んでみては如何?

 

P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』

女には向かない職業 女探偵コーデリア・グレイ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

大衆食堂の場面で岡田警視の側にあった数冊のミステリ小説のうちの一冊がコレ。新米の女性探偵コーデリア・グレイが主人公の探偵小説。自殺した探偵事務所のボスの仕事を受け継いだグレイは、青年の縊死の真相を調べてほしいという依頼を受け調査に乗り出すが、そのうち命の危険にさらされることになる…というストーリー。

実は私この小説を読んだことがなくて、上記のストーリーは『ミステリ国の人々』からの受け売り。個人的にハードボイルドものは敬遠していてどうしても謎解き・トリック重視のミステリばかり読む傾向があるので、まだまだ勉強不足だなと思わされる。

ところで、岡田警視は読んでいるだろうが、中の人となる間宮さんは読んだことがあるのかしら?まぁどっちにせよこれで間宮さんが関係する小説となった(こじつけだけど…)のでまた今度書店で買って読むか。

 

アガサ・クリスティー『忘られぬ死』

忘られぬ死 (クリスティー文庫)

岡田警視が書店で手に取った一冊がこちら。「過去の毒殺事件」の真相を暴くべく、事件関係者が集まり当時の再現を行おうとする物語…とだけ言っておこう。出来るだけ本作は前情報なしで読むのが良いからだ。まず読んで損はないよ、オススメ。

 

さいごに(雑感)

・生沢努を演じた村上淳さん、一昨年放送された悪魔が来りて笛を吹くで新宮利彦を演じていたのを見ているせいか、私の中で「クズキャラを演じる人」というレッテルが形成されつつある。

 

・今回間宮さんの役は「ミステリアスな警視」ということで、現時点では何故葉村と接触をしようとしたのか、その目的は不明で演技に関してもあれが正解なのかどうか評価出来ない。間宮さん本人も後々明かされる事実と乖離がないよう注意しながら演じている様なので注目していきたい。

 

・今回は「顔の無い死体」が出てくる事件なので、劇中でもそれを扱った小説が紹介されるかもしれないと思っていたが、全然そんなことはなかったね…。ミステリ小説マニアの客も出てくるから横溝正史の「黒猫亭事件」辺りワンチャン口の端にのぼると予想していたのだが。