最終章ぬらりひょん編が始まったが、さて、今回も色々と語ることが一杯だ。
ぬらりひょん
最終章ぬらりひょん編ゲスト妖怪①「ぬらりひょん」
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2019年10月6日
原作「妖怪ぬらりひょん」などに登場。盛り場でダイナマイトを爆発させるなど、悪事に生き甲斐を感じている老人姿の妖怪。悪事の邪魔になる鬼太郎を始末するため、落とし穴に落としてコンクリート詰めにしたことがある。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/NSvX7poqMd
今でこそ「鬼太郎の宿敵」「妖怪の総大将」みたいな立ち位置になっているが、週刊少年マガジン(1967年)で鬼太郎作品に初登場したぬらりひょんは爆弾騒ぎを起こす程度の妖怪。悪事を個人的な趣味としているだけで、別に妖怪世界のトップに立つみたいな壮大な夢は持っていない。
そもそも絵巻や文献に記されている「ぬらりひょん」にも妖怪の総大将といった情報は記されていない。というか、情報が皆無に等しいのだ。
普通の人より頭部が大きい老人姿の妖怪、という点は大体共通しているが、妖怪図鑑に記されている「人の家が忙しい時に勝手にあがりこんでお茶を飲んで帰っていく」という情報は後付けの設定だろう。はっきりしているのは「つかみどころが無い」という位だろうか。
ぬらりひょんが「妖怪の総大将」キャラとして確立したのは、妖怪図鑑の解説の影響もあるが、3期のアニメの影響が最も大きいのではないだろうか。1期では原作通りの爆弾魔に過ぎなかったが、3期からは様々な妖怪と取り引きをして邪魔な鬼太郎を排除しようとしたり、ぬらりひょん自身が力を付けて鬼太郎を倒そうとした。このスタイルは4期・5期にも継承され、今やぬらりひょんは妖怪の総大将として鬼太郎クラスタをはじめ妖怪好き以外の人々にも定着した。
アニメでは鬼太郎と敵対してばかりいるが、原作『国盗り物語』では鬼太郎側に協力。地下帝国ムーとの戦いで妖怪たちの陣頭指揮をとっている。またPS2のゲーム「ゲゲゲの鬼太郎 異聞妖怪奇譚」ではゲーム二周目に鬼太郎の仲間として参戦、操作することが出来る。
3・5期は青野武さん、4期は西村知道さんが担当したこの大役を務めるのは大塚明夫さん。大塚さんと言うとブラックジャックとか吸血鬼ドラキュラ(「ゲゲゲの鬼太郎 異聞妖怪奇譚」)の印象が強かったから老人系統にあたるぬらりひょんに合うのかな~と思っていたが、いや、あの、ごめんなさい。無茶苦茶しっくり来ました。ボスキャラとしての風格と底が見えない感じが体現されているし、(親子だけあって)大塚周夫さんに似ている所があるのも鬼太郎のファンとして嬉しい。
朱の盆
最終章ぬらりひょん編ゲスト妖怪②「朱の盆」
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2019年10月6日
大きな赤ら顔をした鬼の妖怪。アニメでは第3期4話以降ぬらりひょんの忠実な部下として登場する。原作では『鬼太郎国盗り物語』の「妖怪大相撲」で登場。相撲大会の初戦で鬼太郎とぶつかり敗退した。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/Bk0C3k006e
原作でぬらりひょんの部下として登場していないにもかかわらず、3期のアニメで登場してからすっかり「ぬらりひょんの部下」として定着してしまったこの妖怪。3期の制作陣が何を思ってこの妖怪をチョイスしたのか未だに謎だが、継続は力なりとはよく言ったもので、今やぬらりひょんの横に彼奴がいないとしっくりこないレベルだ。
これまでのアニメを見て来た方ならわかるが、朱の盆は別に有能な部下ではない。というか、むしろ足を引っ張ることがしばしばで3期ではヒロインのユメコの魅力にほだされてぬらりひょんを足止めするような行為をとっている。それでもぬらりひょんと行動を共にしているのは、単なる腐れ縁なのか、他に頼りにするアテがないのか…。
ところで…。目玉おやじが赤い顔の妖怪として挙げた妖怪だが、猩猩はともかく「赤がしら」と「二顔之相」は超マニアック。私も調べてようやくどんな妖怪かわかったわ。
(二顔之相↓)
http://akakutemarukkoi.yu-nagi.com/2gan.htm
土転び
76話ゲスト妖怪「土転び」
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2019年10月6日
原作「土転び」に登場。毛だらけの毬のような体に一つ目の妖怪。基本的には大人しい妖怪だが、人間の一方的な森林開発には怒りを露にし、人里に転がり出て家々を破壊した。なぎ倒した物を吸収し巨大化する力がある。眼下に生える二本の触角が弱点。#ゲゲゲの鬼太郎 pic.twitter.com/cr1iQz7EGZ
今回登場した土転びは、これまでアニメ化された2・3・4・5期の土転びとは別の原作に出て来る。これまでアニメ化された土転びは1969年発表の「土ころび」が元。工業廃水が混じった水を飲み続けた人間が妖怪化したという設定で、電力や妖力を吸うことでしか生きられない体になったという辺りも、「おどろおどろ」と通じた所がある。
しかし、今回の土転びは1986年発表の新編ゲゲゲの鬼太郎シリーズの「土転び」で、こちらは生まれながらの純粋な妖怪。つまり、新編バージョンの土転びは今期が初アニメ化ということになる。
基本的に原作の設定を利用してオリジナル展開をしがちなこれまでの話と比べると、今回はぬらりひょんの介入を除けばほぼ原作通り。ちゃんと原作の鬼太郎結びまでやってくれたのは良かった。指鉄砲で触覚をブチッ!とかやられたらどうしようかと…。
一年半の「沈黙」を経て
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
3期で鬼太郎の宿敵として活躍したぬらりひょんは4期では46話、5期では8話から登場して鬼太郎たちを苦しめた。
しかし今期のぬらりひょんは76話からの登場とこれまでの中で最も遅い登場となった。ここまで登場が遅くなったのは1年目で暗躍した「名無し」の存在が大きい。うろ覚えの記憶で申し訳ないが、以前どこかのインタビュー記事で「名無し」の誕生に関する記載があり、そこで「ぬらりひょんやバックベアードといったこれまでの敵とは違う新たな敵を作りたかった」と言及されていた。
ぬらりひょんやバックベアードは「脅威」ではあるが「恐怖」を描くうえではネックになる。何故ならこれまでのシリーズで既に定番となった妖怪であり、鬼太郎を追い詰めるやり口・戦術・動機もファンなら大体の人が把握している。故に得体の知れなさや展開の読めなさを描く上で障害になる。そして敬遠された結果、匿名の悪意の塊のような「名無し」が生み出された…というのが私が覚えている「名無し」誕生とぬらりひょんが登場しなかった理由である。
各話によって話のテイストを大きく変えたり、風刺的なストーリーにする等「攻めの姿勢」を謳う6期だけに、ぬらりひょんの度重なる悪事をその都度潰していくという3期から連綿と受け継がれたプロットに抗いたかったのだろう。その思いが各話の連続性・関連性が高いプロットとして結実し、2年目の実現につながったのならば、その挑戦を高く評価したい。
しかし1年目にぬらりひょんを起用せず、2年目で出してきたことで課されたハードルがある。これだけの大物が1年半も表舞台に出なかった動機付けが必要だし(少なくとも半年は四将脱獄という形で説明がつくが)、何より名無しやバックベアード、地獄の四将以上の強敵として描かなければ話として面白くないのだから、今後の展開は「1年半の沈黙をしただけのことはある」と言えるだけの周到かつ遠大な計画でなければならない。この最終章が何話あるのかわからないが、挑むなら尻すぼみになって欲しくないものだ。
(まぁ『ゲゲゲ ヒロインの森』の大野木氏のインタビュー記事で言及されている内容を見ればその心配は無さそうだが…)
マッチポンプ作戦
今回は原作「土転び」をベースにぬらりひょんの暗躍を描いているが、今回行われた計画をおさらいしよう。
・政治家の大塚勝人議員に伊達山のゴルフ場開発の認可をお願いする。
(大塚議員これを拒否したことで爆発に遭う)
↓
・「高見先生」に電話、伊達山のゴルフ場開発の認可をお願いする。
(→認可下りる。またこの認可には多額の金が支払われた)
・「白石さん」に電話、伊達山に準絶滅危惧種がいるか調べてもらう。
(開発中止の下準備として)
↓
・伊達山で開発開始。開発に怒った土転びが暴れる。
↓
・鬼太郎が仲介役として来る。土転びとの闘いの末、休戦という形になる。
↓
・鬼太郎、開発を行う会社の現場監督(五十嵐)に開発中止を交渉するが拒否される。
・土転びの前に現れ、鬼太郎よりも早く開発が中止出来ることを示す。
(→「高見先生」経由で開発中止を依頼する。ここで「準絶滅危惧種の生息」という開発中止のための名目が用いられる)
↓
・伊達山のゴルフ場開発が中止になる。
・土転び、開発中止を迅速に行ったぬらりひょんを評価、ぬらりひょん派としてつく。
↓
・「白石さん」に調査の礼として多額の金を支払う。
以上の計画は、ぬらりひょんの会話や土転びの話を参考に私自身の推測も含めて作成した。要は土転びを味方に取り込むための自作自演工作に過ぎないのだが、開発中止の名目を準備する辺りに周到さが窺える。単に金を出して「高見先生」とやらに開発を中止させると中止理由を聞かれた場合「高見先生」が困ると考えたのだろう。中止の口実を与えることで第三者の追及(マスコミ等)から逃れられるよう「高見先生」が“動きやすい配慮”をしているのがポイント。
これまでのぬらりひょんの戦術は巧みな話術で他の妖怪に鬼太郎を倒させるよう仕向けるか、或いは自分が妖怪として強大な力を身に着け、直接鬼太郎を叩きのめすかの2パターンだった。しかし今回の場合はそんな単純なものではなさそうだ。人間界に影響を与えるだけの人脈と豊富な資金を以て、じわじわと鬼太郎を追い詰める。今期のぬらりひょんはそんな感じがする。
5期の力業で勝負するぬらりひょんと比べて陰謀で追い詰めるタイプな6期ぬらりひょん。これは人間社会に疎い鬼太郎は苦戦しそうだ。
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2019年10月6日
少なくともねずみ男を味方につけないと勝ち目なさそう。#ゲゲゲの鬼太郎
開発を指示した人物ではなく、末端の作業員や現場監督に中止を求めている所に鬼太郎の世事への疎さが窺える。この弱みをカバーするにはねずみ男の存在が重要になってきそうだが、金もない鬼太郎にねずみ男がずっと付いてくれる訳も無いだろうし、う~ん苦戦しそうだ。
令和に蔓延る「昭和人間」
ところで…。今回は「ゴルフ場開発」というバブル景気でもない令和のこのご時世に不釣り合いなものが持ち出された。賄賂による開発の実行・中止にしても、いかにも昭和の政治家がやりそうな手口であり、印象操作を駆使した名無しと比べるとかなり時代錯誤の感がある。
それにもかかわらず、その賄賂を受け取り開発を実行する人間がいた、という辺りに現代社会に対する皮肉が込められているように思う。
確かに時代は昭和から平成、そして令和となり、新しいライフスタイルや性への理解といった文化・思想の改善・発展も進んできている。しかしである、時代は新しくなっても政治や経済を担い、社会の第一線で働く人物の大半は「昭和生まれ」であり、残念と言うべきか、中には考え方まで「昭和」な人間もいる。
これは絵空事ではない。現に関西電力の金品授受問題が報道されているし、来年開催されるオリンピックにしても開催理由には「海外観光客誘致による経済発展」という考えが少なからずあるだろう。これは昭和的思想を持った人間がいることを裏付けていると言って良いのではないか?
作中でぬらりひょんは「妖怪の復権」を謳っていた。復権と言うからには昔妖怪が繁栄していた時代があったことになるが、この様な「昔あった栄光を再び!」という考えは何だか現代の政治家や会社の重役にもありそうな気がしてならない。いくら時代が新しくなっても古い思想を持つ人間が実権を握っているのでは、国家として令和になってはいないのでは、と思ってしまう。さて、あなたはどう思う?
さいごに
何だか随分話が政治批判くさくなってしまったが、今回のプロットは最終章としての掴みにバッチリだったという訳だ。「人間と妖怪の共存」が未だ叶わぬ夢ならば「妖怪の復権」は旧態依然のものであり、ぬらりひょんの野望は旧態依然の力を以てその夢を潰そうとするものだ。これまでの戦力と戦力がぶつかり合うぬらりひょん戦とは趣が異なる感じがするだけに、今後の展開が非常に気になる。
そう言えば、前回明らかにならなかった四将脱獄の黒幕に関して。話の流れから見て黒幕はぬらりひょんで確定したと思うが、脱獄を手引きしたのはどういう目的だろうか。まぁ普通に考えたら妖怪復権の障害となる鬼道衆の殲滅なのだろうが…。
次回登場するのは猫仙人。
来週は猫仙人。6期初の仙人ですよ。#ゲゲゲの鬼太郎
— タリホー@ホンミス島 (@sshorii10281) 2019年10月6日
ようやく6期で仙人が来たよ~。4期までは猫仙人は定番の話ってことでアニメ化されていたけど、5期では仙人といえば井戸仙人だけだったから、余計に久しぶりって感じ。