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4月に届いて視聴してからなかなか書く余裕が無かったが、先週の5月19日に吸血鬼エリート回が放送され、本日吸血鬼ラ・セーヌが登場するので、ここらで西洋妖怪編を振り返るのはむしろ良い機会ではないだろうかと思い、ようやく着手しようという気になった。

 

西洋妖怪編の構成について

 西洋妖怪編の評価に入る前に、一度全11話の内容・構成をざっくりおさらいしておきたい。その方がプラスポイント・マイナスポイントを語る上でわかりやすいだろうし。

 

27話:西洋妖怪編序章。難民妖怪と日本妖怪の文化的衝突。魔女アニエスの逃亡。

28話:アルカナの指輪とブリガドーン計画。ゲゲゲの森に西洋妖怪襲来。行方不明になるアルカナの指輪。

29話:フランケンのメイン回。指輪の捜索。まなとアニエスの出会い。

30話:吸血鬼カミーラのメイン回。ハロウィンがテーマ。

31話:小豆連合回。小豆復権のため動く小豆妖怪の悲喜劇。箸休め回。

32話:悪魔ベリアル回。恋のパワーがテーマ。

33話:白山坊回。異類婚姻譚・約束がテーマ。

34話:バックベアード回。日本妖怪によるアニエス排斥運動。ねずみ男の活躍。

35話:アニエスとアデルの確執。ブリガドーン計画の全貌。

36話:西洋妖怪編最終章。指輪を狙う西洋妖怪たち。アデルの真意。

37話:バックベアードとの決戦。ブリガドーン計画の阻止。

 

以上ざっくりではあるが、各話の内容やテーマを振り返ると、27~30話は西洋妖怪軍団の各キャラクターの特徴を、31~33話は原作のある作品をアレンジして指輪の捜索を、34~37話で魔女姉妹の関係とブリガドーン計画の決着を描いている。

 

西洋妖怪編の功罪

6期の西洋妖怪編で最も評価すべき所は、これまでの様な二極対立という構造を撤廃している部分だろう。「日本妖怪 VS 西洋妖怪」という構造の中にアニエスという西洋妖怪だが日本妖怪の敵ではない存在を介入させることで、日本妖怪の中でも不和を生じさせているのが巧い所。27話の難民問題や34話のヘイトスピーチといった現代社会に通じるテーマを盛り込んでいる辺りは6期の社会風刺的な作風ともマッチしている。

また、魔女アニエスの境遇もこれまでの鬼太郎作品にはないテイストだ。魔女としての運命に抗おうとするアニエスと、魔女の運命に誇りを持つべきだと信じているアデルの対立や人間であるまなとの友情は、これまでの水木作品で描かれる残酷な魔女像とはかけ離れている。これは性格・容貌共に視聴者の需要を狙ったためであろうが、新奇性という点では十分評価出来る。

 

しかし、だからと言って全て褒められるかと言うとそんなことはなく、不満が残る部分は大いにある。

・構成の問題

27・28話こそ、西洋妖怪編の掴みとしては上出来だったのだが、終盤の35~37話は魔女姉妹の関係とバックベアードとの対決に時間を割いているため、最終的な印象に残るのは魔女姉妹とバックベアードが大半になり、仲間のヴォルフガングやフランケンの影が薄くなってしまっている。27~30話で各キャラクターのメイン回があるとはいえ、フランケンのメイン回となる29話はアニエスとまなの出会いに内容が割かれているため、フランケンにとって分が悪いことは間違いないし、フランケンの狂気も取ってつけたかの様な設定でイマイチな結果となった。つまり「物語の内容」と「各キャラクターの活躍」とのバランスが非常に悪いのだ。1話完結ならともかく、長編となるとこのバランスの悪さは無視出来ない。

・バトル面の問題

これは別に西洋妖怪編に限ったことではないが、特に西洋妖怪とのバトルが必至な37話でその問題が顕著に見られた。今期の鬼太郎は指鉄砲で止めをさすスタイルであり、3期でよくあった「レギュラーメンバー以外の仲間妖怪との共闘」がないため、最終的にドラゴンボールさながらのビームとビームを当て合う、悪い意味で鬼太郎らしくない戦いとなってしまったのがマイナスポイント。あれだけ破壊に手こずった指輪もあっさり自然消滅してしまったのも何というか勿体ない。

・舞台の問題

折角バックベアードの城があるのに、城を舞台とした戦闘が無かったのは非常に勿体無い。西洋妖怪が日本に乗り込む展開だから仕方ないのかもしれないが、1話位は逆に相手の本拠地に潜入する回とかあっても良かったのに。転移の魔法石とか利用出来そうな材料はあったし、そうすれば27話に登場した首無しの騎士たちも活躍出来たのに。あの首無しの騎士、妖怪大戦争に乗り気だったのに結局日本に乗り込むことなくあれっきりで出番が終わったのがね…。

・悪魔ベリアル回の問題

西洋妖怪編の平均点を大きく下げているのが悪魔ベリアルの回と言っても過言ではないと思うのだが、どうだろうか?

tariho10281.hatenablog.com

何遍も言うのはどうかと思うけどさ…、悪魔ベリアルとサブタイトルで銘打っておきながら劇中で西洋妖怪と呼ばれている違和感を制作陣は誰一人として覚えなかったの?

 

アニメージュ5月号で…

アニメージュ5月号の鬼太郎1年目を振り返る記事で、西洋妖怪編は起承転結の「転」にあたる部分であり、9月から始まった「仮面ライダー ジオウ」という強力な裏番組が制作の後押しとなったことが記されている。4月の初回以降、(一部を除いて)1話完結の回を続けて来たが連続モノとして西洋妖怪編を出すことで安定期から抜け出そうとした訳である。

つまり、6期制作陣にとって西洋妖怪編の時期は挑戦の時期であったと言えるだろう。