タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

「探偵が早すぎる」シーズン2感想 #7(化学に明るいチンピラ)

カブトムシの呼吸が出来るのなら、一華は虫柱なのかしら。

 

(以下、ドラマのネタバレあり)

 

7話感想(黒幕編、スタート)

美津山四兄妹との戦いも終わり、ようやく一華にも平穏な日々が舞い戻ったかと思いきや、会社の研究施設で小火騒ぎがあり、一華が消火しようと持って来た消火器に毒ガス「ホスゲン」が仕込まれていたことが判明。ダークウェブ上では彼女の暗殺に一千万円の賞金がかけられており、またしても一華は命を狙われることになる。

という訳で、今回から黒幕編がスタートしたが、これまでと違い敵が表立って姿を現していないのが不気味であり、黒幕探しというフーダニットの要素も入ってくるので、原作にはないサスペンス性のある物語になっていくと予想される。

また、今回から宗介の許嫁である奈々が登場。このいかにもお嬢様的性格な奈々も含めて、一華・奈々・宗介・大谷の四角関係が構築されているのも注目すべきポイントで、これが黒幕予想を更に混迷化させているのが実に憎らしい構成だ。

 

黒幕予想は後回しにして、今回の刺客とトリックをざっと説明すると、刺客はダークウェブの募集に乗った林田・森本(公式Twitterでは「純悪」コンビと呼ばれてた)。林田が一華の研究施設の消火器に毒ガスを仕込んだが未遂に終わったため、次なる手をと彼が考案したのは、地下駐車場を利用した窒息死トリック。

大谷の車のマフラー下に生石灰とアルミ粉の入った筒を用意、これが即席の発煙筒となり、マフラーから垂れた水滴によって化学反応を起こした発煙筒が煙を放出、火災報知器が作動し地下駐車場は防火シャッターで閉ざされ密閉空間となる。こうして一華・大谷が脱出不能状態になった所で消火用の二酸化炭素ガスが放出され、二人は酸欠状態となり窒息死に至る…というのが林田の計画だった。

CO2ガスを密閉空間に放出し自殺もしくは事故に見せかけるというのはミステリ作品でもよく使われる手なので凡庸と言えば凡庸なのだが、これまでの美津山四兄妹がバカの一つ覚えみたいに毒殺トリックを考案していたことを思えば、まだ創意工夫があるトリックだと思うし、ただのチンピラ風情にしてはやけに化学に明るいのもおかしさがある。

 

千曲川自動ブレーキ機能のある車が出合い頭の事故を起こしたという矛盾からトリックを見抜いたが、そこは原作小説と違って視聴者も見抜けるよう作られてはいないので、やはりシーズン2は黒幕編に入ってもトリックの解明が物語のミソとはならないようだ。

 

こうして新たなる刺客や正体不明の見えざる黒幕の存在が発覚し、次回以降は本格的に黒幕探しが始まっていくが、今回の流れを見て、やはり大谷も黒幕として考えるべきではないかな~と思うようになってきた。

というのも、ここに来て彼は一華の婚約相手になる可能性の高い人物として急浮上しており、当然婚約すれば一華が死亡した場合、彼女の資産5兆円は大谷のものになる。となると、婚約前に自分も死にそうになったことをアピールしておけば黒幕と疑われにくくなるし、ドライブに誘ったのは他ならぬ彼なのだから、「純悪」コンビのトリックのお膳立てだって自由に行える。

加害者が被害者を装うというのはミステリではよくある話だが、これは大谷に限らず今回の終盤、何者かによって階段から突き落とされた葉子も同じく疑わしい。本当は誰にも落とされず自分からわざと転落した可能性だってあるし、今の所劇中で一番怪しくない存在であるから、逆に彼女が黒幕なのではないかとも思えてくる。

 

そして今回から登場した奈々も、宗介が一華に気があることを知っており、彼女を疎ましく思っているという点では一華殺害の動機を持った人間の一人ではあるが、正直黒幕候補の中では大穴に近いかな。単なる恋敵ってだけで懸賞金をつけて暗殺を募集するとはちょっと考えられないし、一華の近辺を調べて暗殺募集のサイトに掲載していたことから見てもつい最近まで海外にいた彼女にそれが行えるとは思えない(誰かに委託していたら話は別だが)。

 

相対的に宗介が黒幕の可能性は低くなってはいるが、だとしても彼は物語の序盤から怪しい動きが多いし、今回だって一華の自宅にまで来て様子を見ているというストーカーじみたことをやっているから、怪しいと言えば怪しいのよね。

…いや、でも単に変人なだけで意外と純粋に一華のことを思っているだけかもしれない。そもそも一華って橋田といい千曲川といい、周囲に変人を引き寄せてしまうタイプの女性だからね。あと殺した所で彼女の財産を赤の他人の宗介が受け取れるはずがないから、その点から見ても黒幕である可能性は低くなっている。

宗介黒幕説が弱まっているのは他にも理由があって、それは秋菜未亡人に関係がある。秋菜は一華に報恩の精神を持っており、遺産という形で報いようとしている一方、一華はそれを断っている。となると、直接遺産を渡せないので間接的な贈与、つまり宗介と一華が婚約すれば、宗介経由で結果的に遺産を一華に贈与することが出来るのだ。プロット的に考えても宗介と一華の婚約エンドは十分あり得るし、このまま秋菜未亡人が何もせず一華のお断りを受け入れるとは到底思えないので、メタ的な観点で黒幕予想をしていくと宗介は黒幕でなさそうだし、逆に一華の真の婚約相手になりそうな予感さえする。

 

以上、黒幕予想をしたが、大谷・葉子の二者がまず黒幕の本命枠として先陣を切り、逆に宗介は大きく引き下がって黒幕ではなく一華の真の婚約相手の可能性が出て来たという感じだ。奈々は、う~ん、彼らの引き立て役になりそうかも。