タリホーです。

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「探偵が早すぎる」シーズン2感想 #3(二重のトリック返し in キャンプ場)

特にここ数年の連続ドラマ内におけるキャンプ場の登場率は格段に高まってますよね。

 

(以下、ドラマのネタバレあり)

 

3話感想(「屋根裏の散歩者」風毒殺)

今回はキャンプ回ということで、一華の会社の同僚に加えて宗介・葉子兄妹、更には橋田に千曲川まで参加し、ちょっぴりカオスなキャンプ体験となったが、当然美津山四兄妹の暗殺計画も進行し、今回は次女の明日香が仕掛けることに。

 

明日香の仕掛けたトリックは、毒キノコを煮詰めた毒液を一華らがいない間にテントの内側に塗布、夜になって彼女らが就寝する頃を見計らってキャンプ場の職員に扮してストーブと水入りの薬缶を設置し、テントの上部(一華の寝床の頭上付近)に切り込みを入れる。そして薬缶の水が水蒸気となってテントの内側に水滴となって付くことで再び毒液になり、切込みを入れた部分に溜まった毒の水滴が一華の口へと落ちる…というもの。

頭上から毒液を垂らしてターゲットを毒殺に至らしめるのは、かの江戸川乱歩の名作「屋根裏の散歩者」を彷彿とさせる。前回の順三郎のトリックと比べてもユニークで面白いと思うが、それでも事故に見せかけられているかというとちょっと厳しい。ソロキャンプならともかく、あれだけの人数で活動していながら一人だけ毒キノコで中毒死というのは不自然だし、テントに塗った毒液の痕跡を明日香は処理出来ないのでそこが完全犯罪という点では達成出来ていないポイントだ。

まぁ、中毒死に関しては一華が単独行動していた瞬間もあるので、その分殺人として捜査される可能性は低まると思うし、仮に殺人事件として捜査されたとしても、最悪一華に絡んで来た三人組の男に罪を擦り付けることも出来た訳だから、その点明日香はラッキーだったと思う。(ナンパを拒絶された腹いせという犯行動機が成り立つ)

 

で、今回の千曲川によるトリック返しは前回が凝っていた分シンプルだったが、千曲川のトリック返しが明日香だけでなく一華に対しても行われていたというのが今回の脚本として優れた所。序盤に一華が千曲川の食べるナポリタンに激辛デスソースを振りかけていたことが伏線として活かされていたこともさることながら、シーズン1から作り上げて来た一華と千曲川犬猿の仲とでも言うべき関係性が有効活用されているのも素晴らしい。原作の一華は割と普通の女の子だし、千曲川と派手に喧嘩するようなこともないので、今回の二重のトリック返しは、原作通りのキャラ設定で脚本を作り上げていたら生まれなかった名場面だと言えるだろう。

 

シーズン2に入ってからはトリック返しの趣向も面白い仕上がりになっているが、オリジナル脚本ということもあって、やはり原作小説を土台にしたシーズン1と比べると、千曲川がトリックを見抜く下りが雑になっているのは否めない。単純にトリックの痕跡を見つけて推理しているだけなので、シーズン1の時みたいに心理的矛盾や現場の違和感を突いてトリックを見抜く構成がとれていたらよりミステリとしての質は上がるだろう。元々原作小説も一種の倒叙ミステリなので、贅沢な要求になるがそういった点も留意してストーリー作りをしていって欲しいなと願う。

 

ドラマとして気になっている所といえば、やはり宗介の存在が非常にミステリアスで、彼の行動に一貫性が見られない。だから何が目的で一華のキャンプに同行しようとしたのか気になるし、敵側であるはずの明日香を助けようとする素振りまで見せた彼の行動原理も謎に包まれている。「一華に惚れたから」という説明ではつかない所もあるしね。

一応現段階で宗介の行為を合理的に説明しようとするなら、宗介は「弱者やいじめられている者に対しては、敵味方関係なく助ける」という宗介独自の行動理念・ルールがあるのではないだろうか?勿論まだ彼の過去や心理的背景が劇中で多く明かされていないので私の先入観が多分に混じった解釈なのだが、彼の父親である宗太の失踪が宗介の行動に影響しているような気がしてならない。