タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

ゲゲゲの鬼太郎(5期)第19話「河童池の相撲大会」視聴

今回は12月9日までの配信。

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河童(ガラッパ・メドチ・ネネコ・シバテン)

本編の話に入る前に例によって今回登場した妖怪を紹介。とはいえ、今回は超有名な河童なので河童全体の概要ではなく各地方で名称が異なる河童4体を紹介したい。

 

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まず今回登場した河童族の長老ガラッパは、鹿児島をはじめとする南九州に出没する河童。性格はイタズラ好きな一方、恩義を忘れない面がある。また、他の河童以上に女好きで、女の色気にやられて川に落ち流されたという逸話がある。今回のガラッパも猫娘やネネコ河童の相撲を見て鼻の舌を伸ばしていたから、元の伝承に忠実と言えるだろう。

 

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シバテンの側でキュウリの入ったカゴを抱えていた小柄な河童はメドチと呼び、元は青森県に伝わる河童。顔は猿に似ていて体色は黒色。10歳くらいの子供に見えるが少女に化けて人間を誘惑し、人間を水の中へ引きずりこんで溺れさせたり、人間に子供を産ませたりと、かなり悪質な河童の模様。アニメのメドチとはえらい違いだ。

 

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河童の中で最も有名なメスの河童がこのネネコ河童。茨城県にいた河童の女親分で、気に入らないことがあると川の堤を破壊する、子分を率いて子供や馬を川に引き込むなどかなりの暴れ者だったが、当時の川奉行・加納家が生け捕りにして檻に入れた所、もう悪さはしないと誓い、許されたそうである。

 

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そして今回人間と戦争する気満々だったシバテン。高知や徳島で出没した河童で、人間を見ると相撲を挑んでくる。外見は1メートルほどの大きさだが、その力は大人を上回る強さで、化かされると一晩中相撲をとる羽目になる。また人間を騙して、石や藁と相撲をとらせることもあるそうだ。

 

ファンタジーの裏に隠された鎮魂の思い

今回の内容に入る前に少し雑感というか視聴前の思いを吐露する。実は今回の話はストーリーを覚えており、正直今回は何も感想書くことないんじゃないか…?と頭を悩ます回になると思っていた。

というのも、今回の物語は前回のような熱いバトル回でもなければ、これといったテーマ性もない。夏休みに少女が体験した奇妙な出来事というひと夏のファンタジーだ。相撲勝負という見所はあるが、厳格なルールもないし、「これ反則じゃね?」みたいな技が決まり手になってるし、河童の国の掟で少女が相撲をとらなければならないのに代わりの河童が相撲をとることでOKになっているしと、相撲の描写自体かなりツッコミ所がある。

明確なテーマもないし、先生が河童になるとか何でもありな展開だし、はてさて困ったこれは今回難産だぞ…と悩んだ。視聴直後もその思いは変わらなかったが、「そういやこれっていつ放送されてたっけ」と何の気なしに調べたら8月12日に放送された回だった。この時期と言えば、大体の人が第二次世界大戦の記憶に思いをはせる頃だし、テレビでも広島・長崎の原爆や終戦のことを流す時期だ。6期も1年目はダイレクトに戦争をテーマにした回だったし、2年目はお盆をテーマにした「地獄流し」を放送している。

 

今回の物語が戦争を振り返る時期に放送されていると気づいた時、ようやく今回のテーマが見えて来た。そう、表面的には単なる河童の相撲大会に過ぎない今回の物語の裏には、戦争で死んでいった人々に対する鎮魂の思いが込められていたのだ。

今回の脚本の長谷川氏がそういうテーマでこの物語を書いたのかどうかは不明だが、劇中でも「戦争」「平和」というワードが出て来たし、戦争の隠喩とも思える場面が要所要所で見受けられる。

 

まず最初、物語は少女や生徒から慕われていた「かっぱ先生」こと山下先生が生徒たちに何も言わず急に転勤する所から始まる。この急な転勤というのを戦争に置き換えると、戦争によって慕っていた親が爆撃・空襲で突然死んでいなくなってしまうことの隠喩ではないだろうか。そう考えると、今回の少女や生徒たちは戦災孤児と見て取れるだろう。

続いて河童の国の場面に移るが、ここでは明らかに戦争というワードが出て来るし、河童の中に平和派と戦争派がいることがわかる。そして戦争派の声がどんどん大きくなって平和派が何も言えなくなり戦争色が濃くなるという展開も現実に即している。

そして河童VS鬼太郎・目玉おやじ猫娘の相撲対決となるが、この相撲対決にしても国技として我々人間が認知している相撲と違うと思うのは、女性が相撲をとっているという点にある。スポーツとして現在は女性も相撲をとるが、本来の相撲は女人禁制で力士と言えば男性だ。にも関わらず、この河童の国での相撲対決には女性同士の対決もあることから、これは戦争としての相撲なのではないかと推測される。戦時中は学生も学徒動員されたし、女性も工場で労働していたのだから、小柄なメドチや目玉おやじ、女性の猫娘まで相撲をとるというのは、ギャグ的な演出が第一にあるとはいえ、その裏に戦争の隠喩がこれまたあるような気がしてならない。

終盤に河童となった先生が助っ人として登場。相撲対決は白熱し、鬼太郎側の勝利で河童たちはよそへと引っ越すが、先生が河童になって少女の元に戻ってくるというのはお盆に死んだ先祖の魂が帰ってくることを河童で表現した場面だと思う。そう考えればあの河童たちも戦争で死んでいった人々を意味していると解釈出来るし、外敵への怒りをスポーツに対する興奮として昇華させ、新しい土地で平和に暮らすという展開には、戦争で死んでいった者たちが現世に恨みを残さず、来世へ転生し今度は平和に過ごしてほしいという祈り・願いが込められているように思う。

 

まぁこの解釈も誇大妄想と言われればそれまでだが、単なる奇妙なファンタジーとして漠然と受け止めるより、戦死者たちへの鎮魂の物語として見た方が今の自分は面白く感じたので、備忘録的な意味も込みで今回の解釈を記しておく。

 

 

次回もアニメオリジナルの物語。うわんともう一体6期に登場したあの妖怪が登場するが、これもなかなか感想が難しいんだよな…。