タリホーです。

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ゲゲゲの鬼太郎(6期)第34話「帝王バックベアード」視聴

今週はドラゴンボール特番のためお休み。そこで先週書きそびれた34話のことを書くとしよう。

ストーリーは今更くどくど言うまでもないので割愛する。久しぶりにヒーローとしての鬼太郎が見られたし、展開としても申し分なしの傑作だ。

 

バックベアード

原作「妖怪大戦争」以降、鬼太郎シリーズに何度も登場する妖怪。

原作では世界妖怪の大御所的立ち位置でありながらも、自動車ラリーや相撲大会に参戦したりと意外にフットワークが軽くてユーモラスな一面がある。

 

 

原作やアニメ4期まではアメリカ妖怪の強豪と言うべき立場だったが、5期以降西洋妖怪の首領・帝王という立場にグレードアップ。そのためか「鬼太郎=ライバル」という関係だった頃に比べると、ここ最近のベアードは「鬼太郎=反逆者(宿敵)」という目線で見ているかもしれない。

 

6期のベアード最大の特徴は「空間の裂け目から現れる目玉」。これまでは球体に神経のような触手が生えたビジュアルだったが、今回は空間の裂け目から現れるため、屋内でも自由自在に出現することが出来る、というのが何とも面白い。

 

ねずみ男の必殺技

西洋妖怪編に突入してからは、揉め事に巻き込まれたくないスタンスからか、出番が控え目となっていたねずみ男。そんな彼に今回最大の見せ場が。

ねずみ男の武器は自身の不潔さを利用したものが多いが、その中でもねずみ男自身が妖怪と人類のために使用を制限している技がある。

その技の名は、「最後っ屁」。

単なる屁ではない、その臭さはベアードの催眠術を無効化してしまうのだし、引火性のガスとしても威力を発揮する。

特に今回は、仲間外れの原因となった屁が、仲間を窮地から救うことになったという点でその技が効果的に活かされているのが巧い。これは脚本の方いい仕事したと思う。

 

6期西洋妖怪編の新奇性

これまでの鬼太郎シリーズの西洋妖怪との戦いは「日本妖怪VS西洋妖怪」という二極構成が定石だったが、今回はその間にアニエスという「西洋妖怪だが、軍団に属しない」言わば異分子的存在が介入している。耳長たちマレーシアの難民妖怪も敵の軍勢ではないが、味方戦力にならないという点で異分子と言って良いだろう。

また、アニエスと難民妖怪は彼ら自身に害をもたらす気は無いが厄介事を持ち込んできた存在という点で共通している。これまでは厄介事そのものである西洋妖怪軍団が直接日本に襲来するスタイルであっただけに、今期のワンクッション置いたストーリー展開には新奇性を感じた。

そしてこのワンクッションが、難民問題・ヘイトスピーチといった人間社会の問題にも通じているのが面白い所。

とりわけ、ゲゲゲの森にいる妖怪がねずみ男に扇動されてアニエスの国外追放を訴えるデモを起こす場面は人間社会にも通じる部分がある。西洋妖怪軍団という巨悪ではなく、火の粉をまき散らしに来た程度に過ぎないアニエスを叩く。

災いの原因やその本質を見極めようとせず、手近に見える表層的な災いの元を叩くというのは人間社会でもままあること。そんな人間の弱さ・愚かさが風刺的に描かれているのだ。水木作品には風刺的色合いが強い作品が多いだけに今回の西洋妖怪編のストーリー展開は水木作品全体に対するリスペクト精神を強く感じた。

 

新奇性と言えば、34話は吸血鬼がおでん屋にいたり、アニエスが魔法も使わずサンドイッチを作っている場面があった。こういうこれまでの鬼太郎シリーズにない妖怪のイメージが取り入れられているのもイイ所だよね。