タリホーです。

趣味を中心とした話題に触れていく所存(本格ミステリ・鬼太郎 etc.)

傑作本格ミステリ、映像化続々(『屍人荘の殺人』『大誘拐』『犬神家の一族』)

今年の7月に井上真偽原作のドラマ「探偵が早すぎる」が放送された時は、

「探偵が早すぎる」の映像化が早すぎる

といった一言がミステリクラスタの間で飛び交ったが、

この度またまた早すぎる映像化が決定した。しかも今回は映画化。

それが今村昌弘のデビュー作『屍人荘の殺人』

屍人荘の殺人

 

作品が発表されるや、様々な本格ミステリのランキングで1位を獲得したということで話題にもなった第27回鮎川哲也賞受賞作

しかもこの作品、2017年10月に初版発行されてから1年ちょっとで映画化が決定したのだから、デビュー作としては異例中の異例であることは間違いなし。

 

更に主演が神木隆之介、脚本が蒔田光治、監督が木村ひさしですと?

いや、文句なしのキャスト・制作陣じゃないですか!

蒔田さんも木村さんもミステリの映像化に定評のある方々だし、楽しみしかない。不満点が(今の所は)見当たらない。

 

個人的『屍人荘の殺人』所感

あ、まだ本作を未読の方に内容を紹介しておくとするか。

本作は夏合宿で山荘に集まっていた大学の映画研究部や演劇部のメンバーが「まさかの出来事」に直面し、山荘から出られなくなってしまう。そんな非常事態に山荘内で連続殺人が勃発する…というのが大まかなストーリー。

 

で、本作の特徴として挙げられるのが「前代未聞のクローズド・サークル」。これに関しては(宣伝的な目的として)ネタバレしても良いのでは?という意見もあるが、本ブログでは一応伏せておくということで。

どっちにしろ映画の予告編でバレてしまうだろうしね。

前代未聞と先述したが、クローズド・サークルになった原因となる「アレ」自体はこれまでのミステリ作品でも度々題材として扱われてきたもので何ら新奇性は無い。

それをクローズド・サークル形成の条件として組み込んだ所に本作の新奇性があるのだ。

 

あとこれは個人的な注目ポイントだが本作では「アレ」をクローズド・サークル形成の条件としてだけではなく「凶器」として使っているところ。それゆえに浮上する不可解な状況や謎が出て来るのが面白いのだよ。特に本作の舞台「紫湛荘」に備え付けられたエレベーターで起こった事件は要チェック。

 

あまり褒めてばっかりだと信憑性が薄れそうなので、ちょっと勿体ないと感じたポイントも述べておく。

まず犯人の意外性。勿論、これは本作が犯人の意外性よりもロジカルな推理に特化しているためだろうが、実は本作のとある場面で某有名推理漫画のワンシーンを思い出してしまい、そこからある人物を疑ってみた結果、案の定その人が犯人だった。これは著者自身のミステリ作品に対する経験値の問題だから仕方ないが、改良の余地があったのでは…と思ってしまう。

あとは犯人の動機だろうか。詳しくはネタバレになるので伏せるが、「あれだけの所業をする動機としてはやや釣り合いがとれてないな」と思った。

まぁ瑕疵としてはさほどのものではないから、読んで損はない。ミステリ初心者にも易しい設計だしね。

 

大誘拐』が現代版にアレンジ

映像化として見逃せない作品はまだある。

それが天藤真大誘拐

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

 

1978年に発表されたもので、和歌山を舞台に大規模な誘拐劇を描いた天藤氏の代表作。第32回日本推理作家協会賞受賞作であり、1991年には映画化、2007年には韓国でリメイク版が制作された。

この作品に関しては極端な話「読まずに死ぬな」と言いたい。作品全体に漂うユーモア・誘拐劇のスケールのデカさ・読者の予想を超えてくる誘拐劇の真の目的など、何をとっても申し分なしの出来栄え。

ここでくどくど何が面白いのかを述べるよりも、是非書店で本作を購入して読んでもらいたい。話はそれからだ。勿論、前情報無しで読むのが至高。

 

そんな誘拐ミステリの傑作が来週14日大誘拐2018」としてドラマ化・放送される。東海テレビ開局60周年記念のスペシャルドラマということで、舞台も原作の和歌山から愛知へと変更し、現代劇として物語が展開するようだ。

公式HPでキャストビジュアルも確認したが、原作のイメージとかけ離れたキャラがちらほら。内容も間違いなくアレンジされているだろうが、原作のプロットが最高過ぎるので改悪になっていないか期待と不安が半々。

視聴後本ブログでネタバレありの感想を書くが、これだけははっきり言っておく。

未読の方はドラマ視聴前でも後でもいいからとにかく原作は読んでおけ!話はそれからだ!

 

イブの夜に犬神家

今月24日に横溝正史犬神家の一族が放送される。

犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

 

ドラマ化は今回で6度目。前回は2004年に稲垣吾郎金田一を務めていたもの。ドラマとしては実に14年ぶりの映像化で、今回の金田一はNEWSの加藤シゲアキが務める。

もう何度も映像化されているので、新しい金田一が見られるのは嬉しい反面、ちょっと食傷気味であるのが贅沢な悩み。

しかも今回は2時間枠のドラマ化らしいので、どこまで原作の要素を拾えているかちょっと懸念している。キャストは豪華で原作のイメージと大きくかけ離れていないのでその点は楽しみだが。